どこよりも詳しく両資格を比較! 公認会計士と税理士の違いを「48項目」で徹底比較!
公認会計士と税理士は似て非なる者です。仕事内容・クライアント・試験制度・受験者層などに大きな違いがあります。各々の専門分野という視点から端的に表すなら、会計士は「監査」の専門家、税理士は「税務」の専門家と言えます。
当ページでは、「公認会計士と税理士の違い」と「どちらを目指すべきか?」について、48項目にわたり徹底比較し、かつ会話形式で分かりやすくご紹介します。
【1】仕事内容と働き方の違い
公認会計士・税理士いずれも、有資格者だけが行える「独占業務」があります。また、資格取得後の就職先や働き方、クライアント(顧客)には大きな違いがあります。まずは、「仕事内容と働き方」について、両者の違いを具体的に見ていきましょう。
独占業務(メイン業務)の違い
公認会計士と税理士って、何が違うんですか?
教えてちゃん
「会計の専門家」という点では両者共通しているね。
しかし、会計の中でも専門分野が異なる、と考えると分かりやすいよ。
専門分野って、どんな分野があるの?
会計業務には幅広い分野があるのだけれど、その中に「独占業務」に定められているものがある。独占業務は、有資格者だけが独占して行うことのできる業務を指すんだ。
仕事を独占できるのかぁ。
「お医者さんだけが手術や診療を行える」というのと同じね。
その通り!
公認会計士は「財務諸表監査」の専門家、税理士は「税務」の専門家、と言える。
両者の根本的な違いとして、メイン業務が異なるという点をまずは押さえよう。
ポイント解説
公認会計士は公認会計士法、税理士は税理士法により「独占業務」が定められています。両資格の大きな違いは、この独占業務の違いにあります。
もしあなたが仕事を依頼する立場なら、「どのようなサービスを受けたいのか?」を基準に、依頼先を選ぶと良いでしょう。
これから資格取得を目指そうとお考えの方は、「どのような業務を行いたいのか?」を基準に、目指す資格を選ぶと良いでしょう。
公認会計士の独占業務
独占業務が違うのは分かったけれど、
具体的にどのような仕事をするの?
教えて君
まず初めに「会計」とは何か?を押さえておこう。
会社が行う「会計」の主たる目的は、日々の取引を記録して「財務諸表」を作ることだ。
財務諸表は、1年間でいくら稼いだのか、いくら財産を持っているのか等の経営成績をまとめた報告書で、会社を経営していく上で、とても重要な書類なんだ。
僕たちにとっては、お小遣い帳や大学の成績表みたいなものかぁ。
それを前提に、次の図を見てほしい。
公認会計士の独占業務「財務諸表監査」は、会社が作成した財務諸表が正しく作られているかを、第三者の立場からチェック(監査)することだ。
なんでチェックする必要があるの?
財務諸表の信頼性を保証するためだよ。
投資家や銀行などは、財務諸表を元に投資や融資の判断を行うから、ここに不正や誤りがあってはならない。だからプロがチェックして「この財務諸表は正しいですよ」という太鼓判を押す。これを監査という。
たしかに、財務諸表が間違って作られていたら、正しい投資判断ができないよね。 投資家は世界中にいるし、その分影響力や責任感も大きそう。経済にとって、すごく重要な仕事なんだね。
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税理士の独占業務
税理士の独占業務「税務業務」は、財務諸表をベースにして、税金の申告書類の代行作成や、税に関するアドバイス(節税等)をすることだ。
自分の会社で、税金の申告書類を作ることはできないの?
もちろん、自分達で作成や申告はできる。
だけど日本の税金制度は非常に複雑で、数多くの税目があり、かつ改正が頻繁に行われるんだ。
だから「税金のプロ」である税理士と顧問契約を結ぶのが一般的だ。
「顧問契約」って、なんか頼もしい!
身近で何でも相談できるアドバイザーって感じよね。
そうだね。さらに小規模の会社では、税務に限らず財務諸表を作る手伝い(記帳代行・決算業務)も包括してサポートするケースが多いよ。
ポイント解説
同じ会計分野でも、公認会計士が行う「財務諸表監査」と、税理士が行う「税務業務」は、その目的が大きく異なることが、お分かりいただけたと思います。
財務諸表監査は、財務諸表の信頼性を保証することで投資家や債権者を保護し、円滑な経済活動に寄与することを目的に行われます。そして税務は、法により定められた納税義務の、適正な実現を図ることを目的に行われます。
いずれの仕事も、経済や社会にとって無くてはならない存在です。会計や税金、つまり資本経済や国家が存続する限り必要とされ続ける、安定した業務とも言えます。
関連業務の例
独占業務以外の仕事は誰でも行えるの?
そういうことになる。
具体例を挙げると、会計アドバイザリー(コンサルティング)、記帳代行・指導、決算業務、連結開示、M&A、企業再生、組織再編、株式公開(IPO)、IFRS導入、財務デューデリジェンスなどがある。これら会計関連業務は、公認会計士も、税理士も、そして有資格者でなくてもサービスを提供できる。
もし僕が経営者だったら、やっぱり有資格者にお願いしたいな。
プロに任せた方が安心だし、その分、本業に集中できるからね。
そう考える経営者は多いだろう。だから、それら業務も公認会計士・税理士がサポートするケースが多い。
そして医者に内科や外科などがあるように、個々の公認会計士・税理士にも知識や経験値による得意分野がある。
クライアントの違い
公認会計士と税理士では、主なクライアント(顧客)も異なるんだ。
どんな風に違うの?
公認会計士による「財務諸表監査」が義務付けられるのは、上場会社や規模が大きい会社(大会社)に限られる。新聞の株価欄に載っている会社や、テレビCMでよく見かける有名企業をイメージすると分かりやすいね。
一方で、小規模の会社や個人経営の商店などは、財務諸表監査を受ける義務はない。
つまり、社会的に影響力が大きい会社に、義務付けられているってことね。
一方で「税金」は、企業規模の大小を問わず申告義務がある。
代表的なものは「法人税」や「消費税」だ。そして私たち個人にも申告義務がある。「相続税」や「所得税」が有名だね。
聞いたことあります!
だからクライアントの「数」で比較するならば、税理士の方が圧倒的に多い。
「納税の義務」は、国民の三大義務の1つだしね。
昔、習いました!
まとめると、上場企業や大企業に対して監査を行うのが公認会計士。
企業や個人に対して税務を行うのが税理士というわけだ。
ポイント解説
財務諸表監査は、上場会社や大会社(資本金5億円以上又は負債200億円以上)に義務付けられています。
具体的には、上場会社は金融商品取引法193条2項、大会社は会社法328条の規定により、公認会計士(監査法人)による監査を受ける義務が定められています。
一方で税務はどうでしょうか?あらゆる企業や私たち個人は、1年間で得た利益(所得)に対して、税金を自ら計算して納める義務があります(ただし会社員の場合は会社が代わりに行ってくれます)。
そして日本の税制は非常に複雑で、かつ申告内容を間違えたり、申告期限を過ぎるとペナルティがあります。
そこで企業は税理士と顧問契約を結び、税務申告書の作成をサポートしてもらいます。それに併せて、日々の取引の記録(記帳代行)や財務諸表の作成(決算業務)、経営・財務面のアドバイスに至るまで包括的に税理士に依頼するケースが多くあります。
働き方や就職先の違い
さらに続けていこう!
業務内容やクライアントが異なれば、働き方や就職先にも違いが表れるんだ。
公認会計士は、何処でどのように働くの?
監査法人で働くのが一般的だ。
大企業の監査は、その規模の大きさや重要性から到底1人で完結できるものではない。必然的に、組織的なチームを組んで財務諸表のチェックにあたる。その公認会計士が集まった会社を「監査法人」と呼ぶんだ。だから平たく考えると、「監査法人」という会社の会社員として働くことになる。
どれくらいの人が監査法人に就職するの?
およそ、その年度の合格者の内、約9割が監査法人へ就職する。
勤務エリアは、クライアントの本社機能が集中する東京・名古屋・大阪などの大都市圏が中心だ。海外勤務も希望すれば叶えやすい。監査が必要なのは、日本国内に限らないからね。
じゃあ税理士は、何処でどのように働くの?
同じように税理士が集まった「税理士法人」で働くケースもあるけれど、圧倒的に多いのは「個人事務所」だ。自分で独立開業するんだね。
街中でよく見る「XX税理士事務所」は、これに該当する。
どうやって開業するの?
数年間、税理士法人や個人事務所で実務を学びながら試験合格を目指し、合格後に独立開業するケースが一般的だ。地域に密着して、近隣の会社や個人に対して税務・会計サービスをきめ細かく提供するイメージだね。
大都市圏で働くなら公認会計士もしくは税理士。
地域に密着して働くなら税理士、という感じかな。
そうだね。 働く場所で選ぶという方法も、一つの考え方だ。
みんな合格後は、転職や独立をするものなの?
なんか勇気がいりそうだなぁ…。
公認会計士の場合、合格後に監査法人に就職・転職するケースが一般的だ。
税理士は、現在勤めている会社で昇進やスキルアップのために目指す人も多いよ。
ポイント解説
公認会計士は、登録要件(後述)に実務経験が必要なため、多くの合格者はまず監査法人へ就職(転職)します。
国内には約250社の監査法人があります。その中で、大手監査法人が4社あり「BIG4」とも呼ばれています。どのくらい「BIG」かと言うと、4社で国内上場会社の監査業務シェアの約8割を占めています。所属する公認会計士が3,000名を超える法人もあり、人気の就職先となっています。
税理士にも、BIG4系列や独立系の大手税理士法人があります。
しかし税理士法人の数は、大小合わせても税理士業全体の1割に満たず、大多数を占めるのは「個人開業の税理士事務所」です。
税理士の就業エリアも大都市圏が多い傾向はありますが、監査法人と異なり全国に幅広く事務所が存在します。資格取得後、地元にUターンして独立開業する人もいますし、自宅マンションの一室で開業するケースもあります。
税理士業は自分1人でサービスを完結することができます。かつ開業コストが低いため、独立開業がしやすいのです。
給料や年収の違い
あと気になるのは…給料とか年収はどれくらいなのかなぁ。
公認会計士が監査法人に勤務する場合、合格初年度の月給は30~35万円、年収は550万円前後からスタートする。昇給スピードは速く、人によっては7~10年で1,000万円を超えるケースもある。高収入が望める職業と言えるね。
税理士の場合、働く場所や規模によって大きく変わりそうね。
そうだね。さらに何科目に合格済みかや、実務経験の有無によっても待遇が変わるんだ。
大手税理士法人の給与水準は、監査法人に近しい。ただ、小規模の個人事務所などでは「将来の独立に向けた修行の場」と割り切って働くケースもあるね。
開業ノウハウを学ぶための下積み期間ってことかぁ。
職人の世界みたいね。
その代わり、晴れて独立開業して順調に事業を拡大すれば、年収に上限はない。
実力主義の世界、と言えるね。
ポイント解説
給料や年収は、企業規模・業務内容・地域・個人のスキルや経験等に応じて決まるため、一概に比較することはできません。
強いて挙げるならば、「安定性を重視」なら公認会計士、「独立して稼ぐ」なら税理士、というイメージでしょうか。一方で、独立開業する公認会計士もいますし、組織内で安定して働く税理士もいます。
また、上記以外のキャリアパスも幅広く存在します。
例えば、コンサルティング会社、金融機関、上場企業の経理・財務部門、会計参与(役員)、スタートアップ企業のCFO(最高財務責任者)などです。
専門職ゆえに働き方のバリエーションは多種多様です。いずれも自らのキャリアを自らの意思で切り拓くことができる資格と言えるでしょう。
[参考リンク] 公認会計士の年収は本当に高いのか。年収でみる、公認会計士を目指す価値
[参考リンク] 税理士の仕事とビジネスフィールド(年収目安)
【2】試験制度や資格の取り方の違い
次に、試験制度や資格の取り方について比較していきます。
日商簿記検定の上位資格として、両資格を検討されている方もいらっしゃると思います。会計系資格という面においては、学習分野で共通する部分は多々ありますが、試験制度や受験者層という面では大きな違いがあります。
受験資格の違い ~あなたは受験できる?~
よし、試験に挑戦しよう!
…って、まず受験するにはどうすれば良いの?
最初に「受験資格の有無」を確認しよう。
※税理士試験の受験資格は令和5年(2023年)試験より一部見直しが行われ、簿記論・財務諸表論の2科目については受験資格不要となりました。
公認会計士試験は、受験資格がないので誰でも受験ができる。
始めたいときに、すぐに目指せるんだね!
税理士試験は、いずれかの受験資格を満たす必要があるので注意が必要だ。
上記は一例なので、詳しくは国税庁のHPを参考にしよう。
しっかり確認します!
ポイント解説
公認会計士試験には受験資格は必要ありません。税理士試験には受験資格が必要です。
いざ、受験しよう!・・・と思っても、受験資格を満たしていなければせっかくの学習が無駄になってしまいます。必ず受験勉強を始める前に、確認しましょう。
[ 参考 ] 公認会計士試験に受験資格は必要?いつ始める?
[ 参考 ] 国税庁「税理士試験受験資格の概要」
試験制度と受験者層の違い
試験制度も異なる点が多いんだ。
特徴的な点を挙げるなら「科目選択制度」と「科目合格制度」だね。
公認会計士試験は、基本的に一度に全科目を受験するのかぁ。
税理士試験は、1科目ずつ受験できるから受験しやすそうね。
そうだね。公認会計士試験にも科目合格制度(期限付き)はあるけれど、基本的には全科目を一度に受験するのが一般的だ。
だから、公認会計士試験は短距離走、税理士試験は長距離走、とも表現できる。
大学生や受験専念できる人は、公認会計士にチャレンジできそうね。
社会人や時間にゆとりがない人は、税理士試験の方が相性が良さそうね。
実際に受験者層もその傾向にあるよ。
ポイント解説
公認会計士試験は、短答式試験で4科目、論文式試験で6科目を一度に受験します。
同時並行で複数科目を学習するため、一定の期間内で多くの学習量が必要となります。
税理士試験は、1科目ずつ受験することができます。かつ一度合格した科目は一生涯有効です。5科目合格までに何年かかっても良く、受験する科目・数・順番も自分で決めることができます。
そのため、受験期間・学習量を自分で調整できるので、特に社会人にとって取り組みやすい試験制度となっています。
合格後から登録までの流れ
試験に合格したら、みんなどうするの?
それぞれの「協会」に名簿登録することで有資格者と認められ、独占業務を行えるようになる。
ただし、登録には要件があるんだ。
合格してすぐに、公認会計士や税理士とは名乗れないんだね。
一人のプロフェッショナルとして、
責任ある仕事に就くための「最終条件」という訳だ。
ポイント解説
公認会計士登録には前述の通り3要件が必要です。
[ 1 ] 業務補助3年は、合格後に監査法人で就業することでクリアできます(一般企業で満たせるケースもあります)。
[ 2 ] 実務補習3年は、実務を学ぶ「実務補習所」と呼ばれる機関に3年間通い、一定の単位を取得することで満たせます。通常は監査法人で働きながら週1~2回程度、平日夜(もしくは土日)の講義に参加します。なお一定要件を満たせば期間短縮も可能です。
[ 3 ] 修了考査は、言わば実務補習所の卒業試験(年1回)です。合格率は50~60%と高く、再受験も可能で、合格期限もありません。
税理士登録は実務経験2年の1要件のみです。これは試験合格前後を問いません。
そのため、2~3科目合格時点で税理士事務所などに就職・転職をして、将来の独立を見据えて実務を学びながら(実務経験も満たしながら)合格を目指す人が多いです。
【3】どちらの試験が難しい?
公認会計士試験と税理士試験、いずれも会計系資格の最高峰と言われています。では果たして難易度はどちらが高いのでしょうか?
どちらも難易度は特Aクラス
正直、どちらの資格も魅力的!
なるべく試験が簡単な方を選びたいのだけど…。
最高峰ゆえに、難易度はいずれも高い。特Aクラスだ。
そして結論から言うと、試験の制度・性質が異なるので単純比較はできない。
それじゃあ、目安としてどれくらいの学習時間が必要なの?
両資格ともに、最低限2,000時間以上が必要となる。
いずれもライバルとの競争試験のため、確保できる学習時間は多い方が有利だ。
なお税理士試験は、受験科目の選び方によっても大きく変動する。
学習内容の違いはどうですか?
会計科目は、実務の根幹となるため両資格ともに深く学ぶ。故に共通部分は多い。
ただし公認会計士試験では、大企業特有の会計制度や製造業の簿記(工業簿記・原価計算)についても深く学習する。そのため公認会計士試験の方が範囲は広いと言えるだろう。
他の科目はどうですか?
税に関する科目「租税法」が公認会計士試験にもある。
ただし公認会計士試験は、一度に受験する科目数が多いため広く浅く。
税理士試験は、税法ごとに独立して試験が行われるから狭く深くというイメージだ。
それ以外の科目は、共通点はほぼ無い。
ポイント解説
公認会計士試験は一度に複数科目を学習します。広く浅くと言えども各科目の学習量は相応にあるため、論文式試験の一部科目では、法令基準集(法律集)が配布されるなどの措置が取られています。
税理士試験では、科目ごとに試験が独立しています。そのため、解答にあたって法律の暗記が必要になるなど、学習の深度はかなり深くなり、受験レベルは高いものとなります。
いずれの資格も「会計科目」が基幹科目となります。例えば日商簿記検定などで「簿記」を学習されたことのある方は、知識をそのまま受験勉強に活用することができます。
受験にかかる期間と勉強方法
受験勉強を始めてから合格するまでは、
何年くらいかかるんですか?
学習環境にもよるけれど、
公認会計士は1.5~2年、税理士は3~5年を目標設定にする人が多い。
いずれも、各試験で順調に合格することを目標に設定した場合だよ。
独学でも受かるのかな?
かなり厳しいと考えてほしい。なぜなら両資格とも実質的に「競争試験」だからだ。
つまり「知識を身につける」段階に加え、「ライバルに勝つ」という要素が加わるんだ。受験指導校(資格の予備校)に通うのが、合格への近道と言える。
ポイント解説
公認会計士試験は1.5~2年間(社会人の場合は+0.5~1年間)の学習期間を設定するのが一般的です。複数科目の学習を同時並行で進めるため、1日あたりの学習時間も平均5時間程度が必要です。
税理士試験は自分で科目(学習量)を選択できるため、個々の状況に応じて柔軟に受験できます。受験専念型は2~3年、社会人は3~5年を目安に設定する人が多いです。
[ 参考リンク ] 公認会計士試験の勉強時間はどのくらい必要?
[ 参考リンク ] 税理士試験~短期合格を実現するために~受験計画の立て方
【4】公認会計士と税理士をトコトン比較!
これまでに様々な視点で公認会計士と税理士の違いを比較してきましたが、お伝えしきれない部分も数多くあります。そこで、今までにご紹介した点も含めて、比較一覧表にまとめました。ご参考になさってください。
仕事内容の比較一覧
まずは「仕事内容」について比較しよう。
独占業務が、両者の大きな違いだったね。
比較項目 | 公認会計士 | 税理士 |
---|---|---|
独占業務 | 財務諸表監査 | 税務業務 |
主な仕事内容 | 財務諸表監査 内部統制監査 会計アドバイザリー |
記帳代行・決算書の作成 税務申告書の作成 税務コンサルティング |
主なクライアント | 上場企業 大企業 |
中小企業 個人事業主・個人 |
クライアントとの関係 | クライアントから独立した 公正な第三者 |
クライアントの信頼に応え 納税義務と成長をサポート |
業務スタンス | 監査チームを組んで活動 | (主に)個人で活動 |
国際性 | 企業の国外進出に合わせ グローバル化が進む |
グローバル化が進むが 国内企業も依然多い |
なお、それぞれの資格には「公認会計士法」と「税理士法」という法律によって、使命や独占業務が定められている。これらを知っておくと、国家資格としての位置づけがより明確になるぞ!
比較項目 | 公認会計士 | 税理士 |
---|---|---|
使命 | <公認会計士法 第1条> 公認会計士は、監査及び会計の専門家として、独立した立場において、財務書類その他の財務に関する情報の信頼性を確保することにより、会社等の公正な事業活動、投資者及び債権者の保護等を図り、もつて国民経済の健全な発展に寄与することを使命とする。 |
<税理士法 第1条> 税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそつて、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。 |
業務 | <公認会計士法 第2条1項> 公認会計士は、他人の求めに応じ報酬を得て、財務書類の監査又は証明をすることを業とする。 |
<税理士法 第2条> 税理士は、他人の求めに応じ、租税に関し、次に掲げる事務を行うことを業とする。 一 税務代理 二 税務書類の作成 三 税務相談 |
独占業務の 根拠法 |
<公認会計士法 第47条2項> 公認会計士又は監査法人でない者は、法律に定のある場合を除くほか、他人の求めに応じ報酬を得て第2条第1項に規定する業務を営んではならない。 |
<税理士法 第52条> 税理士又は税理士法人でない者は、この法律に別段の定めがある場合を除くほか、税理士業務を行つてはならない。 |
就業環境の比較一覧
続けて「就業環境」を比較しよう。
一つ補足すると、現状は両資格とも「売り手市場」が続いている。
会計人材が不足しているから、公認会計士・税理士を求めるニーズは常に高い状態にある。
比較項目 | 公認会計士 | 税理士 |
---|---|---|
主な就職先 | 監査法人 事業会社 コンサルティング会社 |
税理士法人・事務所 独立開業(個人事務所) 事業会社 |
有資格者 | 約35,000人 (2023年) |
約81,000人 (2023年) |
法人数 | 約280法人 (2023年) |
約7,700法人 (2023年・主従合算) |
求人状況 | 合格者有利 (売り手市場) |
合格者有利 (売り手市場) |
就職時期 | 論文式試験合格後 | 1~3科目合格後 |
採用活動時期 | 原則11月 (論文式試験合格発表後) |
8月(本試験後)・ 12月(合格発表後) |
独立開業 | 可能 (監査業務では困難) |
可能 (5科目合格後) |
試験制度の比較一覧
次は「試験制度」の違いだ。
受験資格の有無、受験システムの違いについて押さえよう。
公認会計士は短距離走、税理士は長距離走というイメージだよ。
比較項目 | 公認会計士 | 税理士 |
---|---|---|
試験種別 | 国家試験 | 国家試験 |
実施機関 | 金融庁 公認会計士・監査審査会 |
国税庁 国税審議会・税理士分科会 |
受験資格 | 必要なし | あり ※注 (学歴・職歴・資格等) |
試験月 | [ 短答 ] 12月・5月 [ 論文 ] 8月 |
8月 |
合格発表 | [ 短答 ] 1月・6月 [ 論文 ] 11月 |
12月 |
試験形式 | [ 短答 ] マークシート式 [ 論文 ] 論述式 |
論述式 |
試験科目 | [ 短答 ] 財務会計論 管理会計論 監査論 企業法 [ 論文 ] 会計学 監査論 企業法 租税法 選択科目 (経営学・経済学・民法・統計学) |
[ 必須科目 ] 簿記論 財務諸表論 [ 選択必須科目 ] 法人税法 or 所得税法 [ 選択科目 ] 酒税法 or 消費税法 固定資産税 事業税 or 住民税 国税徴収法 (上記の科目別に試験を実施) |
科目選択制度 | なし (論文式で一部あり) |
あり (一部制約あり) |
科目合格制度 | 一部あり [ 短答 ] 合格後2年間短答免除 [ 論文 ] 科目合格後2年間論文科目免除 |
あり ※合格科目は一生涯有効 |
合格基準 | [ 短答 ] 満点の70%以上 [ 論文 ] 偏差値52以上 ※いずれも実質的には競争試験 |
満点の60%以上 ※実質的には競争試験 |
試験合格まで | 短答式試験合格 ↓ 論文式試験合格 |
累計5科目に合格すると 最終合格 |
受験料 | 19,500円 | 1科目4,000円 以降1科目追加ごとに1,500円 |
筆記用具 | [ 短答 ] 鉛筆又はシャープペンシル [ 論文 ] 黒のボールペン又は万年筆 |
黒又は青インキの筆記用具 |
法令・条文集の持込 | 一部科目で配布あり (論文式試験のみ) |
不可 |
実務登録要件 | [ 1 ] 業務補助等(3年以上) [ 2 ] 実務補習(通常3年) [ 3 ] 修了考査の合格 |
租税または会計に関する 実務経験(2年以上) |
※試験制度等は変更となる場合がありますので、必ずご自身にて試験実施機関の最新情報をご確認ください。
※注:税理士試験の受験資格は令和5年(2023年)試験より一部見直しが行われ、簿記論・財務会計論の2科目については受験資格不要となりました。
加えて、「受験者の特性や学習時間」もどうぞ!
なお学習には個人差があるから、あくまでも目安として考えてほしい。
比較項目 | 公認会計士 | 税理士 |
---|---|---|
受験者層 | 学生・受験専念者が中心 | 社会人が中心 |
最低限必要な 学習量 |
2,500~3,500時間 | 2,000~3,000時間 |
受験プラン例 | 1.5~2年 | 3~5年 |
メリット | 受験資格が不要 短期合格を狙える |
受験計画の柔軟性高い 科目合格は一生涯有効 |
デメリット (リスク) |
まとまった学習時間が必要 科目合格が期限付き |
合格まで年月を要する 科目ごとの受験レベルが高い |
試験統計データの比較一覧
最後は試験機関が公表している「統計データ」の比較だ。
試験制度が異なるため、単純比較はしないように注意しよう。
<2023年度試験比較>
比較項目 | 公認会計士 | 税理士 |
---|---|---|
願書提出者数 | [ 短答 ] 18,229人 [ 論文 ] 4,192人 |
41,256人 |
実受験者人数 | [ 短答 ] 13,660人 [ 論文 ] 3,770人 |
32,893人 |
最終合格者数 | 1,544人 | 600人 (科目合格者数は6,525人) |
形式合格率 ( )内は欠席者除く 実質合格率 |
[ 短答 ]11.5%(15.4%)※ [ 論文 ] 36.8%(41.0%) ※属人ベース合格率 |
17.3%(21.7%) ※科目合格者を含む 全体合格率 |
合格者の平均年齢 | 24.5歳 | 非公表 40歳前後と推測されます |
合格者の最高年齢 | 61歳 | 非公表 |
合格者の最低年齢 | 18歳 | 非公表 |
合格者の 女性割合 |
22.3% | 23.5% |
さらに受験者の年代別割合についても、表にしてみたよ。
受験者層が大きく異なる点が、良く分かると思う。
<受験者の年齢層>
比較項目 | 公認会計士 | 税理士 |
---|---|---|
25歳以下 | 49.7% | 21.4% |
26~30歳 | 23.3% | 15.0% |
31~35歳 | 11.1% | 15.1% |
36~40歳 | 6.2% | 14.0% |
41歳以上 | 9.8% | 34.5% |
※2023年度試験比較。上記の年齢区分は税理士試験に合わせています。公認会計士試験の年齢区分は上記区分「-1歳」となりますが、比較便宜上、同表に掲載しております。
ここまで押さえたら、もう違いに迷うことはないだろう。
こうやって比較してみると、本当に違う点が多いのね。
【5】どちらを選ぶ?オススメは?
ここまで多岐にわたって両資格の違いを比較してきました。
それでは最後に、これから資格取得を目指す場合、どちらを選ぶのが良いのでしょうか?
仕事内容・働き方で選ぶなら
両者には、仕事内容や働き方に大きな違いがあったね。
公認会計士 | 税理士 |
---|---|
対大企業 組織的 高度な会計知識 第三者的視点 公共性 雇用就業 |
対中小企業・個人 個人的 高度な税務知識 顧客視点 個別支援 独立開業 |
これらのキーワードを軸に、自分が取り組んでいきたい仕事を選ぶのが良いのではないだろうか。
僕は大企業を相手に、バリバリ仕事をしていきたいな。安定性も魅力だな。
ということは、公認会計士があっているのかな。
私はお客さんと一緒になって、会社の成長をサポートしていく仕事がいいな。
そうすると、税理士がいいのかもね。
受験環境で選ぶなら
両資格には、試験制度にも大きな違いがあったね。
公認会計士 | 税理士 |
---|---|
短距離走 1度に全科目を受験 1.5~2年の短期間勝負 学生や受験専念者が多い |
長距離走 受験科目数を選べる 3~5年の長期間勝負 働きながら受験しやすい |
自分の置かれている環境から、目指す資格を選ぶという方法もあるね。
僕は今、大学生で時間にゆとりがあるから、
短期間で早く合格を目指せる公認会計士にチャレンジしよう!
私は就職活動を視野に入れて、卒業後も働きながら資格を目指したいわ。
働きながら目指すなら、税理士が合っているのかも。
公認会計士は税理士登録ができる
最後に、実は公認会計士登録をすると、税理士試験を受けなくても税理士登録ができる。
えっ…そうなの!?
それって、公認会計士なら税理士の業務も行えるってこと?
そういうことになる。
ただし、公認会計士「登録」(公認会計士となる資格を有する者)が条件だから、公認会計士試験の合格だけでは満たさないことに注意しよう。
公認会計士 | 税理士 | |
---|---|---|
登録が 可能な 資格 |
公認会計士 税理士 行政書士 |
税理士 行政書士 |
それじゃあ、公認会計士を取った方がお得じゃない?
そうとは限らない。
例えば公認会計士が独立開業する場合、税理士業務を行うケースが多い。なぜなら、財務諸表監査は一人では行えないからだ。よって、税理士業務を行う公認会計士は、税法や税務に関する知識を改めて深く学ぶ必要がある。
資格の損得だけで選ぶものではないってことね。
その通りだね。
将来、税務業務を専門分野としたいなら、税理士試験の方が圧倒的に得られる知識は広く、深い。受験勉強の過程で得られる知識や経験もよく考えてから、どちらを目指すのかを決めてほしい。
【6】まとめ ~資格を考えるとは~
公認会計士と税理士の違いについて、とても良く分かりました!
詳しく知ることで、さらに迷ってしまったわ。
どちらも「会計の専門家」という点では共通しているけれど、受験過程や資格取得後のキャリアには大きな違いがある。だから将来を見据えて、最善の選択ができるようにしっかりと考えて選ぼう!
資格を考えるということは、
将来の働き方を考えるのと同じなんだね。
そうだね!
TACでは、公認会計士・税理士ともに無料セミナーや詳しい資料を用意しているから、是非それらも活用してほしい。強い決意が固まったなら、後は合格を目指して頑張ろう!
はいっ!しっかりと受験計画を立てて、頑張ります!
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
公認会計士と税理士の違いについて、ご参考になりましたでしょうか?
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