ITサービスマネージャ試験とは?試験の難易度や勉強方法などを解説
ITサービスマネージャ試験とは、安全性や信頼性の高いITサービスの安定提供に貢献する人材を認定する試験です。
今回は、ITサービスマネージャ試験の合格率や難易度、出題範囲、合格によるメリット、勉強方法などを解説します。ぜひ参考にしてください。
ITサービスマネージャ試験の合格率や難易度
ITサービスマネージャ試験とは、経済産業省が認定する「情報処理技術者試験」という国家資格の試験区分のひとつです。取得すると、企業の情報システムを安定稼働させ、障害があった場合にも対処する能力があることを証明できます。
ITサービスマネージャ試験は、資格保有が社内での手当金支給や昇格の要件となっている場合があります。まずは資格取得を検討する際に気になる試験の難易度の高さを、合格率とともに確認していきましょう。
「ITSSレベル4」のハイレベル試験
ITサービスマネージャ試験は、「ITSSレベル4」のハイレベル試験です。ITSSレベルとは、ITスキルのレベルを表すものです。レベル4は、ITSSレベルのなかでも特に難易度が高い試験だといえます。
ITSSレベルにおける達成度指標によると、レベル1~3までは「プロジェクトのチームメンバとしての能力」が求められます。一方で、レベル4になると「チームリーダとしてプロジェクトを達成する能力」が求められるなど、難易度に大きな差があるため理解しておきましょう。
なお、ITサービスマネージャ試験の対象者は、高度IT人材として確立した専門分野を持ち、ITサービスの計画立案から設計、移行、提供、改善まで、組織の活動を指揮・管理するものだとされています。
ITサービスマネージャ試験の合格率は14%~15%
ITサービスマネージャ試験の合格率は、例年14%~15%程度で推移しています。試験の受験者は実務経験者や他の高度試験合格者が多いといわれていますが、合格できるのはその中の7人に1人ほどなのです。
近年の実際の合格率は、以下のとおりです。
年度 | 受験者数 | 合格率 |
---|---|---|
2019年度 | 3,388名 | 14.7% |
2021年度 | 2,018名 | 15.9% |
2022年度 | 1,954名 | 14.8% |
2023年度 | 1,936名 | 15.2% |
注)2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響で中止
このように、合格率からも難易度の高い試験であることがわかります。
ITサービスマネージャ試験の出題範囲と難易度
ITサービスマネージャの試験は、午前と午後それぞれ2部ずつにわけて実施されます。休憩時間を除くと、実施時間は計5時間です。
試験 | 試験時間 | 出題形式 | 出題数/解答数 | 合格基準点 |
---|---|---|---|---|
午前Ⅰ試験 |
9:30~10:20 (50分) |
多肢選択式 (四肢択一) |
出題数:30問 解答数:30問 |
60点以上 (100点満点) |
午前Ⅱ試験 |
10:50~11:30 (40分) |
多肢選択式 (四肢択一) |
出題数:25問 解答数:25問 |
60点以上 (100点満点) |
午後Ⅰ試験 |
12:30~14:00 (90分) |
記述式 |
出題数:3問 解答数:2問 |
60点以上 (100点満点) |
午後Ⅱ試験 |
14:30~16:30 (120分) |
論述式 |
出題数:2問 解答数:1問 |
ランクA【※】 |
【※】午後Ⅱ(論述式)試験の評価方法について(IPA情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験試験要綱より抜粋)
・設問で要求した項目の充足度、論述の具体性、内容の妥当性、論理の一貫性、見識に基づく主張、洞察力・行動力、独創性・先見性、表現力・文章作成能力などを評価の視点として、論述の内容を評価する。また、問題冊子で示す “解答に当たっての指示”に従わない場合は、論述の内容にかかわらず、その程度によって評価を下げることがある。
・評価ランクと合否の関係は次のとおりとする。
評価ランク | 内容 | 合否 |
---|---|---|
A | 合格水準にある | 合格 |
B | 合格水準まであと一歩である | 不合格 |
C | 内容が不十分である・問題文の趣旨から逸脱している | 不合格 |
D | 内容が著しく不十分である・問題文の趣旨から著しく逸脱している | 不合格 |
午前Ⅰ、午前Ⅱ、午後Ⅰ試験は100点満点中60点以上で合格、論述式の午後Ⅱ試験はランクA~DのうちランクAのみが合格です。各試験の基準点を一つでも下回ると、不合格となってしまいます。すべての試験を1日で受ける体力・精神力が必要な点も、難易度が高いといわれる要因です。
それでは、各試験の概要や出題範囲、難易度の高さを解説していきます。
午前Ⅰ試験
午前Ⅰ試験の詳細は、以下のとおりです。
試験 | 午前Ⅰ試験 |
---|---|
試験時間 |
9:30~10:20(50分) |
出題形式 | 多肢選択式(四肢択一) |
出題数/解答数 | 出題数:30問/解答数:30問 |
合格基準点 | 60点以上(100点満点) |
午前Ⅰ試験では、応用情報技術者試験の午前試験と同様の範囲が出題されます。出題内容は本試験の同日に実施される応用情報技術者試験の午前試験問題からの抜粋となるため、既に応用情報技術者に合格されている方や同等レベルの方は対策として過去問題を解くのがおすすめです。
また、午前Ⅰ試験には免除制度があります。以下のいずれかの条件を満たせば、午前Ⅰ試験において2年間の免除を受けることが可能です。
・応用情報技術者試験(AP)に合格
・情報処理技術者試験の高度試験、情報処理安全確保支援士試験のいずれかに合格
・情報処理技術者試験の高度試験、情報処理安全確保支援士試験の午前Ⅰ試験で基準点以上の獲得
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午前Ⅱ試験
午前Ⅱ試験の詳細は、以下のとおりです。
試験 | 午前Ⅱ試験 |
---|---|
試験時間 |
10:50~11:30(40分) |
出題形式 | 多肢選択式(四肢択一) |
出題数/解答数 | 出題数:25問/解答数:25問 |
合格基準点 | 60点以上(100点満点) |
午前Ⅰ・Ⅱ試験はIT産業全般や関連技術に関する基礎知識が問われる内容です。午前Ⅱ試験は午前Ⅰ試験よりもさらに高度な問題が出題され、難易度が高くなります。
午前Ⅱ試験の内容は、コンピュータシステムや技術要素の「テクノロジ系」、プロジェクトマネジメントやサービスマネジメントの「マネジメント系」、企業と法務に関する「ストラテジ系」です。
午後Ⅰ試験
午後Ⅰ試験の詳細は、以下のとおりです。
試験 | 午後Ⅰ試験 |
---|---|
試験時間 |
12:30~14:00(90分) |
出題形式 | 記述式 |
出題数/解答数 | 出題数:3問/解答数:2問 |
合格基準点 | 60点以上(100点満点) |
午後の試験は、午前試験よりも難易度が高まります。午後Ⅰ試験は試験時間が90分で、全3問より2問を選択して解答する形式の記述式問題です。
午後Ⅰ試験では、ITサービスマネージャに関する深い知識が必要です。さらに、知識だけではなく、長文内容を的確に捉える読解力と、意図を正確に汲み取る能力、文章の表現力も求められます。
午後Ⅱ試験
午後Ⅱ試験の詳細は、以下のとおりです。
試験 | 午後Ⅱ試験 |
---|---|
試験時間 |
14:30~16:30(120分) |
出題形式 | 論述式 |
出題数/解答数 | 出題数:2問/解答数:1問 |
合格基準点 | 評価ランクはA~Dで「A」のみ合格【※】 |
【※】評価ランクについては こちら をご参照ください。
午後Ⅱ試験は、全2問より1問を選択し、論述式の形式で解答する試験です。試験時間は120分で、問題の意図を理解しつつ、それに対する自分の考えを答えます。
評価の際の基準となるのは、設問で要求した項目の充足度・内容の妥当性・論理の一貫性です。指定文字数が多く、文章構成能力や設問で要求された項目の充足度、論述の具体性、内容の妥当性が求められるもので、4つのなかでも特に難易度の高い試験だといえます。
ITサービスマネージャ試験に合格するメリット
ITサービスマネージャ試験は難易度が高くて合格は簡単ではありませんが、合格できればさまざまなメリットが得られる試験です。
企業によっては、資格保有が社内での手当金の支給や昇格の要件となっていたり、管理職への昇格審査の際に加点されたりなど、仕事をするうえでプラスとなるさまざまなケースがあります。
それでは、試験への挑戦を検討しやすくするためにも、ITサービスマネージャ試験に合格するメリットを確認しておきましょう。
高度なITスキルを証明できる
ITサービスマネージャ試験に合格すれば、高度なITスキルを有していることの客観的な証明が可能です。難易度の高いレベル4の試験に合格することで、高度なITスキルがあると実力をアピールしやすくなり、就職や転職、昇進などに対して有利に働くと考えられます。
今後ITサービスは拡大していくと予想されています。そのため、IT人材としての高い実力を証明できれば、企業に必要な人材として高い評価を受けやすいといえるでしょう。
他試験が一部免除になる
ITサービスマネージャ試験に合格できれば、午前Ⅰ試験が免除になることもメリットのひとつです。ITサービスマネージャ合格後に他の試験区分にチャレンジする場合などに大きなアドバンテージをもって臨むことができます。
免除の対象となるのは、条件を満たしてから2年後の同時期試験までです。つまり、一部免除の対象となったのが春期試験の場合は2年後の春期試験まで、秋期試験の場合は2年後の秋期試験まで、午前Ⅰ試験が免除されます。
ITIL(アイティル)に関する知識が身に付く
ITサービスマネージャ試験は、ITIL(アイティル)に関する知識が身に付くこともメリットです。ITILとは「Information Technology Infrastructure Library」を略した言葉で、「ITサービスマネジメントの成功事例やノウハウをまとめて体系化したガイドライン」のことを指します。
試験の合格に向けて勉強することで、ITサービス運用に関する一連のプロセスの外観や、サービスを改善する方法などの知識を身に付けられます。
ITサービスマネージャ試験合格に向けた勉強方法
難易度の高いITサービスマネージャ試験に合格するには、効率よく勉強を進めることが大切です。それでは、ITサービスマネージャ試験に向けてどのような対策を講じると良いのかを確認しておきましょう。
午前Ⅰ試験の勉強方法
午前Ⅰ試験は基礎的な問題が多いです。そのため、過去問などの問題を繰り返し解きながら、自信を持って解答できる問題を増やしていくと良いでしょう。
午前Ⅰ試験は、テクノロジ系の内容が多く出題される傾向にあります。特にテクノロジ系の問題をしっかりと対策しておくと、得点につながりやすくなると考えられるでしょう。
午前Ⅱ試験の勉強方法
午前Ⅱ試験は、サービスマネジメントやプロジェクトマネジメントに関する問題に重点を置きながら、過去問などで対策を進めていくのがおすすめです。特にサービスマネジメントから出題される割合が多い傾向にあるため、しっかりと対策しましょう。
サービスマネジメント以外の分野からの出題にはあまり偏りがありません。まんべんなく勉強を進めると良いでしょう。
午後Ⅰ試験の勉強方法
午後Ⅰ試験の勉強をする際も、過去問や参考書などで対策を進めていくと良いでしょう。
午後からの試験は多肢選択式ではなくなるなど、午前中の試験とは問題の傾向が異なります。午後Ⅰ試験の解答文字数は50文字程度で、必要な情報を要約して簡素に解答を記入することが大切です。
過去問などを解きながら、文章の内容を的確に読み取り、解答に必要となる要素を見つける練習を繰り返していきましょう。
午後Ⅱ試験の勉強方法
午後Ⅱ試験は、論文形式で解答します。問題の意図を把握して、わかりやすく要約し、的確に伝えるための読解力や表現力を付けていくことが大切です。
午後Ⅱ試験に合格できる能力を身に付けるためには一定の時間を要します。
試験全般を通して、独学では学習方法に迷う受験生が多く、独学での合格は簡単ではありません。効率的に勉強を進めるのであれば、独学ではなく、受験対策ノウハウが豊富にある「資格の学校TAC(タック)」のような受験指導校の利用がおすすめです。受験指導校でしっかり計画を立てて、洗練されたオリジナルの教材を使いながらスケジュールに沿って学ぶことで、効率良く合格をつかめる可能性が高まるでしょう。
TACではITサービスマネージャ試験の合格に向けて、経験豊富な講師が「答案用紙の使い方」から丁寧に指導してくれますので、特に記述式や論文式試験の対策でどうしても独学の方とは大きな差がつきます。短期間で効率よく合格を目指したい方はぜひTACを活用してみてはいかがでしょうか。
ITサービスマネージャ試験は難易度高!勉強は効率的に進めよう
ITサービスマネージャ試験は、ITSSレベル4に該当するハイレベルな試験です。午前Ⅰ試験の免除制度を使えると午前Ⅱ試験からの対策に力を注げるため、免除制度の対象となる方は忘れずに申請しましょう。そのほかの情報処理技術者試験の高度試験なども一部免除の対象となるため、多くの資格を取得したい方はうまく活用すると良いでしょう。
試験勉強を効率的に進めたい方は、独学よりも受験指導校を活用するのが得策です。合格実績のあるTACであれば「ITサービスマネージャ専用の受験対策コース」も設けられていますし、無料で受講相談を開催していますので、まずはお気軽に参加されてみてはいかがでしょうか。経験豊富な講師に教わりながら、難関であるITサービスマネージャ試験の合格を目指しましょう。
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