税理士試験の選択科目をズバリ解説! 法人税法・所得税法の学習内容・合格率・難易度は?
税理士試験の税法科目のうち、1科目は必ず合格しなければならない選択必須科目が「法人税法」「所得税法」となります。今回はそれぞれの科目の特徴や学習上のメリット等を詳しくご紹介します!
なお、「法人税法」「所得税法」の学習には、「簿記論」「財務諸表論」の事前知識が必要です。
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法人税法の内容・合格率・学習メリット
法人税法とは
法人税とは、法人(会社)の所得(もうけ)を基に算出される、国に納めるべき税金を言います。この”もうけ”を、法人が勝手に計算するのでは問題があり、「課税の公平」を図るために一定のルール(法律)が必要となってきます。このルールを学習していくのが「法人税法」となります。
そもそも法人ってなんですか?
さつきさん
国税先生
個人と同様に「人格や法的義務、権利を認められた団体」を法人と言うんだ。
代表的なものは株式会社といった「普通法人」だね。
他にも「公共法人」「公益法人等」「人格のない社団等」「協同組合等」という区分があって、全部で5種類あるんだ。
法人税法の出題傾向
試験は理論(50点)と計算(50点)に分けて出題されます。理論は具体的な事例に基づき法人税に関する規定を論述させる形式が多く、計算は国に納めるべき会社の税金額を計算する基礎となる所得を算出する形式で出題されます。
法人税法の計算問題
法人税は、法人の「もうけ」に対して課す税金ですが、この法人税の計算対象となる「もうけ」のことを「所得金額」と言います。 そして、この「所得金額」に税率を乗じて法人税の額(税額)を計算することになりますが、法人税では、課税の公平性の観点から、「別段の定め」により、企業会計の利益と税法上の「所得金額」にズレが生じます。そのことから、計算では主にそのズレを調整する計算方法を学習することになります。
なぜズレなんて出てくるんですか?
さつきさん
国税先生
法人税法の目的は「課税の公平性」だったよね?
会社によって収益や経費の考え方が違ったりすることは多々あるんだけど、そこがズレになるんだよ。例えば、営業で使う車について、毎日乗るから2年で減価償却する会社もあれば、5年の会社もあるよね?
法人税法では課税の公平性の立場から車の耐用年数を一律に決めておき、ズレがあれば正すための計算をするんだ。
法人税法の理論問題
法人税法及び租税特別措置法の法人税に関する規定(条文)の内容と適用関係を理解して、さらに覚えることが学習の中心となります。TACでは条文の暗記は理論教材の「理論マスター」を使って行います。最初は慣れない税法の条文の暗記に苦戦をするかもしれません。 何度も声に出して暗唱をしていくことにより「条文を暗記する」ことに慣れていきましょう。
暗記ってどれくらい時間が必要なんでしょう?
さつきさん
国税先生
個人差があるから一概に何時間とは言えないんだよね。
時間をかけずに暗記できる人もいれば、1000時間はかかるって人もいる。
TACでは暗記がなるべくスムーズに進むよう、重要項目を中心に覚えるべき箇所をピックアップして、受講生の負担を減らす努力をしていくよ!
法人税法の標準学習時間
600時間
※TACの講義時間を含みます。
※理論暗記については個人差があり、学習時間には含みません。
法人税法の合格率
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |||
---|---|---|---|---|---|
令和5年(73回) | 3,550名 |
497名 |
14.0% | ||
令和4年(72回) | 3,454名 | 425名 | 12.3% | ||
令和3年(71回) | 3,532名 | 453名 | 12.8% | ||
令和2年(70回) | 3,658名 | 588名 | 16.1% | ||
令和元年(69回) |
4,260名 |
627名 | 14.7% |
法人税法の学習メリット
法人税は納めるべき税金がない場合にも申告が必要なため、実務での重要性は極めて高く、その知識は実務において必須と言って過言ではありません。規模の大小を問わず法人を相手に末永く仕事を続けたい方にはたいへん向いている科目です。
実務で法人税法ってそんなに使うんですか?
さつきさん
国税先生
そうなんだ。
現在、日本には約270万社の法人が存在するんだけど、法人税額を正しく計算して納付するということは、ほとんどすべての法人にとって避けられない手続きになる。
だから法人をメインクライアントとした税理士を目指すなら法人税法は必須の知識となるね!
他科目との関連性
「法人税法」と「事業税」
「法人税法」は会社のもうけに対して国から課される税金について学習する科目です。それと比較して「事業税」は、事業活動を行う法人又は個人等に対して都道府県から課される税金について学習する科目となります。それぞれ学習範囲が重複していますので2科目同時に学習する。もしくは、「法人税法」「事業税」と2年続けて学習することで、効率的な学習が可能です。
※「事業税」の学習には「法人税法」の学習知識が必要となります。
「法人税法」と「所得税法」
選択必須科目である「法人税法」と「所得税法」はそれぞれボリュームが多く両方受験する必要はありません。しかし両科目とも”もうけ”に対して課される税法科目のため、法律の組み立てや計算の手続きが似通っている箇所が多数あります。両科目の受験を検討されている方は、それぞれ2年続けて学習することで、相乗効果が期待できます。
法人税法と所得税法の2科目の合格を目指すメリットって何ですか?
まず、法律の構成や計算の手続きが似ている所があって学習上の相乗効果が期待できる。
そして何より、法人税法と所得税法の2科目合格している税理士って、税理士業界では一目置かれる存在だから、将来的なメリットも大きいね。
しかし、学習負担がかなり大きいので同時学習は避けた方がいいし、実務に必須な科目は消費税法をはじめとして他にもあるから、無理な学習計画を立てることは禁物だよ!
所得税法の内容・合格率・学習メリット
所得税法とは
所得税とは、わたしたち「個人」が1年間に稼いだ「所得」(もうけ)を基に算出される、国に納めるべき税金を言います。しかし、一口に「所得」といっても、「個人」には給与、不動産貸付、株のもうけなど、様々な「所得」があります。
そこで所得税では「所得」の性格に応じて10種類に区分し、段階を経て納付税額を計算することになります。この所得税の計算方法や、法律で定められた内容や解釈、その意義を学習していくのが「所得税法」となります。
所得税って、毎月のお給料から引かれちゃいますよね!
さつきさん
国税先生
源泉徴収のことだね。
所得税は年間の所得に対して課税されるんだけど、会社が予め毎月差し引いておくことで、従業員ひとりひとりが確定申告をする必要がなくなるし、国は会社からまとめて納税されるので、手続き上のメリットが大きいんだ。
所得税法の出題傾向
試験は例年、理論(50点)と計算(50点)に分けて出題されます。
理論は応用問題と個別問題で所得税に関する規定を論述させる形式が多く出題されます(近年の試験では、具体的な事例に対してその取扱いを述べさせるといった出題もされています)。
計算は個人が国に納めるべき税金額(所得税額)までを計算する形式がよく出題されます。
事例問題ってどんなものが出題されたんですか?
さつきさん
国税先生
平成29年の裁判において競馬の払戻金が話題となったニュースがあったんだ。その事例が本試験に出題されたことがあったよ。
所得税法の計算問題
所得税の計算問題は、提示される資料に基づき、五つの段階を経て(Ⅰ各種所得の計算、Ⅱ課税標準の計算、Ⅲ所得控除の計算、Ⅳ課税所得金額の計算、Ⅴ納付税額の計算)所得税額を計算することになります。この段階ごとの計算方法を学習することとなります。
段階ごとの計算ってとても複雑そうです!
さつきさん
国税先生
正直いって所得税法の計算は、複雑で細かいんだ。本試験では正確に計算する能力が必要にるので、焦らず丁寧に処理できるようにしたいよね。
所得税法の理論問題
所得税は、その「所得」の性格に応じた「区分」や、個人の事情に考慮して納税額を調整するための「控除」など、さまざまな規定が設けられています。その所得税に関する規定(条文)の内容と適用関係を理解して覚えることが学習の中心となります。TACでは条文の暗記は理論教材の「理論マスター」を使って行います。
「所得の性格」ってなんですか?
さつきさん
国税先生
例えば、働いたお給料などの「給与所得」と、株の配当といった「配当所得」は、税率も適用できる控除も異なるんだ。そのため、どういった要因で発生した所得なのかということを性格分類して、定められた区分で分ける必要があるんだ。
所得税法の標準学習時間
600時間
※TACの講義時間を含みます。
※理論暗記については個人差があり、学習時間には含みません。
所得税法の合格率
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |||
---|---|---|---|---|---|
令和5年(73回) | 1,202名 |
166名 |
13.8% | ||
令和4年(72回) | 1,294名 | 182名 | 14.1% | ||
令和3年(71回) | 1,350名 | 170名 | 12.6% | ||
令和2年(70回) | 1,437名 | 173名 | 12.0% | ||
令和元年(69回) |
1,659名 |
212名 | 12.8% |
合格率は例年安定していますね!
さつきさん
国税先生
試験問題は年によって難しかったり、その逆に解き易かったりするんだけど、数字のうえでは安定して合格者が出ているね。こういった試験で合格するためには、みんなが解答できる問題はミスなくしっかりと解けることがとても重要だね!
所得税法の学習メリット
所得税は、「所得」に対して課される国税で、我が国の税収入の大部分を占めています。そのため学習範囲は広く、細かな計算が求められることも多い科目ですが、すべての国民にとって切り離すことのできない税金のため、重要性が高く、その知識は実務においても大変有用となります。特に富裕層を顧客とした「資産税分野で活躍したい方」にはなくてはならない科目です。
毎年、源泉徴収とか確定申告とか細かくて面倒だなって思ってましたけど、個人個人で事情がぜんぜん違うから、細かくなるんですね!
さつきさん
国税先生
そうなんだよ!
国民の義務である納税を、中立で公平に課税するためにも、人に寄り添った規定がいくつも設けらてれいるんだ。もちろんそのせいで細かくはなってしまうけど、国民一人一人のためと思えば仕方がないよね。
所得税法ってわたしの生活の延長線上にあって面白そうですね。
視野が広がりそうで学習したくなりました!
みんなにとって身近な税金の学習だから、
個人に役立つ知識を楽しみながら学習できるのも所得税法のいいところだね!
他科目との関連性
「所得税法」と「住民税」
「所得税法」は個人のもうけに対して国から課される税金について学習する科目です。それと比較して「住民税」は、個人等に対して都道府県等から課される税金について学習する科目となります。住民税は所得税法の規定を引用して算定されるため、それぞれ学習範囲が重複しています。したがって「所得税法」→「住民税」と2年続けて学習することで、効率的な学習が可能です。
※「住民税」の学習には「所得税法」の学習知識が必要となります。
「法人税法」と「所得税法」
選択必須科目である「法人税法」と「所得税法」はそれぞれボリュームが多く両方受験する必要はありません。しかし両科目とも”もうけ”に対して課される税法科目のため、法律の組み立てや計算の手続きが似通っている箇所が多数あります。両科目の受験を検討されている方は、それぞれ2年続けて学習することで、相乗効果が期待できます。
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