公務員から行政書士になる場合は試験免除?
特認制度の概要を解説
公務員から行政書士になる方法は、行政書士試験に合格することだけではありません。特認制度を利用する方法もあります。
ただし特認制度の利用には条件があるため、必ずしも近道となるわけではありません。
本記事では、公務員から行政書士になる方法や公務員試験との共通点、行政書士を目指す際の注意点について解説します。
公務員から行政書士になる2つの方法
一般的に、行政書士になるには行政書士試験に合格する必要があります。しかし、公務員であれば、特認制度を利用する方法もあります。
行政書士の業務は、官公署への提出書類や権利義務・事実証明に関する書類の作成、書類作成に伴う相談業務などです。公務員は官公署への提出書類を受け取る側にあり、扱う書類に共通点があるため、特認制度が設けられています。
ここでは、公務員から行政書士になる2つの方法について解説します。
1.行政書士試験を受験し合格する
公務員から行政書士になる方法として挙げられるのは、行政書士試験を受験して合格することです。行政書士試験の受験者の年齢層は30~40代が多く、受験者のほとんどが社会人です。
試験合格後は、行政書士会への登録・入会をすることで、行政書士としての仕事を行うことができます。
2.特認制度を利用する
公務員が行政書士になるには、特認制度を利用する方法があります。特認制度とは、国家公務員や地方公務員として17年以上または20年以上行政事務に従事していれば、行政書士となる資格を得られる制度です。
行政書士試験は、行政書士の業務に必要な基本知識を受験者が有しているかを確認する試験です。基本知識を有していると証明できるものがあれば、試験を受けることなく行政書士となる資格を得ることができます。
知識の証明となるものが実務経験です。公務員と行政書士の業務内容には重複する部分が多いため、公務員の実務経験があれば行政書士としての基本知識を有しているとみなされるのです。
なお、特認制度は試験合格者と同じく行政書士となる資格を得られるのみであり、実際に行政書士として仕事をするには行政書士会への登録・入会が必要です。
公務員が行政書士資格を取得するメリット
公務員が行政書士資格を取得するメリットとして、独立開業のチャンスが出てくることが挙げられます。公務員が行政書士として独立開業する場合、これまでの業務経験を活かせるため、未経験で独立開業するよりもスムーズに実務を行うことができるでしょう。
独立開業すれば、労働時間の制限はなくなります。公務員の場合、法律により年収基準が定められているため、年収には上限があります。
しかし、行政書士として独立すれば年収の上限はありません。自分の頑張り次第で年収が上がります。
ただし、いくら公務員と行政書士の業務に共通点が多いとはいえ、独立すれば誰もが成功するわけではありません。事業を軌道に乗せるには、戦略や営業活動といった準備が必要であることを理解しましょう。
資格取得後、その先は…?実務家インタビュー
行政書士と公務員、各試験の共通点と違い
行政書士試験と公務員試験では、法令や一般知識科目など試験内容で共通している部分が多く存在します。
ここでは、行政書士試験と公務員試験の共通点や難易度について解説します。
共通点の多い行政書士試験と公務員試験
行政書士試験と公務員試験は、文章理解以外に以下の内容が共通しています。
- 法令等科目:憲法・行政法・民法
そのため、公務員試験に合格しているのであれば、行政書士試験に必要な知識の多くをすでに習得しているといえます。
行政書士試験の内容
行政書士試験では、行政書士の業務に必要な法令と基礎知識に関する問題が出題されます。それぞれの出題範囲は以下の通りです。
法令等科目 |
|
---|---|
基礎知識科目 |
|
行政書士試験の科目では、行政法と民法の出題割合が多いです。
難易度はどちらが高い?
行政書士試験の合格率は10~12%で推移しており、難易度が高い試験と言えます。
公務員試験には国家公務員試験や地方公務員試験といった種類があり、公務員試験の種類によって難易度が異なるため、行政書士試験より容易な場合もあれば、行政書士試験より難易度が高い場合もあります。
公務員試験の種類によって難易度が異なることを理解しましょう。
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公務員から行政書士へ!知っておきたい3つの注意点
公務員が行政書士を目指す際は、以下の3つの注意点を理解することが大切です。
- 特認制度には一定の要件がある
- 公務員と行政書士は兼業できない
- 行政書士登録には一定の費用が必要
ここでは、それぞれの注意点を解説します。
1.特認制度には一定の要件がある
特認制度を利用するには、一定の要件があります。特認制度を利用して行政書士になるには、公務員として17年以上または20年以上行政事務に従事することが必要であるとともに、行政書士会の審査に合格しなければなりません。
20代や30代で行政書士を目指す場合は、特認制度を利用せずに、行政書士試験を受験して合格する方法がおすすめです。
2.公務員と行政書士は兼業できない
公務員と行政書士は兼業できないことも注意すべきポイントです。公務員は兼業が認められていないため、行政書士として活動するには退職する必要があります。
公務員を退職しなければ行政書士会への登録もできません。公務員から行政書士を目指すのであれば、ライフプランを検討したうえで準備しましょう。
3.行政書士登録には一定の費用が必要
行政書士の登録には一定の費用が必要です。例えば、東京都行政書士会の登録時に必要な諸費用は以下の通りです(令和4年3月時点)。
- 登録手数料:25,000円
- 入会金:200,000円
- その他、登録免許税など
参考:https://www.tokyo-gyosei.or.jp/registration/admission.html
各都道府県の行政書士会により異なりますが、行政書士として登録するには、最初に合計30万円近くの費用を必要とします。その後も会費等、一定の費用が必要であることを理解しましょう。
行政書士になるには試験合格が近道の可能性も
公務員の特認制度を利用するには、行政事務の従事が17年~20年以上という期間がかかります。一般的に年齢が上がるにつれ転職が難しくなります。
すでに公務員として長年のキャリアがあり、退職後のキャリアプランとして行政書士を検討しているのであれば、特認制度を利用すると良いでしょう。
しかし、20代や30代で公務員としてのキャリアが浅い段階で行政書士になると決めたのであれば、特認制度を利用するのではなく行政書士試験の合格を目指す方が近道でしょう。
また、行政書士試験に合格していれば、行政書士以外の仕事に就く可能性も広がります。一般企業の法務部や法律事務所といった法律を扱う仕事では、行政書士試験の合格で得た知識を活かすことができます。
若いうちに転職したい人や行政書士としての独立開業を考えている人は、特認制度を利用するよりも、行政書士試験の合格を目指す方が近道であることを覚えておきましょう。
自分に合った方法を見極め行政書士を目指そう
公務員が行政書士として活動するには、行政書士試験に合格する以外に、特認制度を利用する方法もあります。公務員が行政書士資格を取得するメリットとして、独立開業のチャンスが出てくることが挙げられます。
公務員での業務経験を活かせるため、未経験で独立するよりもスムーズに事業を進められるでしょう。行政書士として独立すれば年収に上限はなく、自分の頑張り次第で年収増加も狙えます。
行政書士試験と公務員試験の試験内容には、法令や一般知識科目など多くの共通点が存在します。そのため、公務員試験に合格しているのであれば、行政書士試験での基礎知識はすでに習得しているといえるでしょう。
公務員が行政書士を目指す場合「特認制度には一定の要件がある」「公務員と行政書士は兼業できない」「行政書士登録には一定の費用が必要」といった点を理解しておく必要があります。
特認制度を利用して行政書士になるには、一定のキャリアが必要です。
公務員としてのキャリアが浅い段階で行政書士になると決めたのであれば、特認制度を利用するのではなく行政書士試験の合格を目指す方が近道です。自分の状況に合った方法を見極め、行政書士を目指しましょう。
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