若手官僚インタビュー
金久保 樹 (かなくぼ いつき)さん
令和2年度 厚生労働省入省
保険局医療課
Q. 国家公務員を目指したきっかけを教えてください!
「これがきっかけだ」という出来事は、実はありません。元々は民間企業を中心に就職先を考えていましたが、どの企業も面白いことをやっているなと思いつつも、なんとなく違和感を持っていました。一度腰を据えてじっくり考えてみたときに、自分のいちばんやりたいことは、「世の中に絶対必要なことをやる」ということだと気がつきました。その上で、自分のやりたいこと・やりたい分野について突き詰めていったところ、国家公務員の仕事が自分のやりたいことに沿っていると思い、国家公務員を目指し始めました。
Q. 他省庁とは迷いませんでしたか?
すごく迷いました。最初は経済産業省と総務省(自治分野)を志望していて、あるとき「厚生労働省もいいかも」と思い始めました。最終的には、厚生労働省一本に絞っていましたね。
そもそも自分は、「みんなが自由に楽しく生きていける社会」を目指していました。そのためには、まずは社会保障が重要だなと思いました。社会援護や医療制度、社会保障のベースが整っていれば、生活の安心・安全が担保されるわけですから。では、「楽しい」とはいったい何でしょう?お金があれば好きなことができますし、「楽しい」ですよね。そこで、最低賃金が上がり、国民全体の賃金が上がれば、全体としての「楽しさ」、つまりみんなが感じることができる「楽しさ」は増えていくのではないかと考えました。
こんな考えから、「社会保障と経済の両方に携わることができるところに行きたい」と思うようになりました。厚生労働省は、社会保障に加え、診療報酬や最低賃金など「お金=経済」に関する分野も所管しています。また、厚生労働省には「規制」と言われる法律等を多く所管しており、規制を外せばそこに新たな市場が生まれ、経済を回すことができると考えました。例えば、医薬品の使用規制を緩和すれば、使用方法の幅が広がり、マーケットが広がりますよね。このような「社会保障にも経済にも携われる」という点に惹かれ、厚生労働省を志望しました。
Q. 就職活動の中で印象に残っていること・辛かったことはありますか?
公務員試験の勉強は確かに大変でしたが、それ以外に辛かったことは特にありません。就職活動というのは、世の中を知ることができる機会、社会人とじっくり話せる機会であって、普段はそのような機会はなかったので楽しかったです。
官庁訪問では、「民間企業の抱える問題は、国が制度を通じて解決できる」ということ、「民間企業の場合は利益が出ない仕事はできないが、国はそのような仕事もできる=足りない部分を補える」ということを強く感じました。また、官庁訪問で診療報酬についての話を聞いた際に、「保険適用の範囲を決定し、医療機関に支払う金額を決める立場であるため、経済にも携わっている」との話に惹かれ、配属先の第1希望になりました。
とはいえ最後まで他省との迷いを捨てきれていなかったのですが、「働く上で、自分のバックボーンとして何を持っていたいか」と官庁訪問で聞かれ、はっとしました。自分はそれまで、「この省では何ができるのか」という視点でのみ各省を見ていましたが、仕事をしていく中で得られる経験・考えがあってこそ、次にやりたいことへと繋がっていきます。こうした点も踏まえて、自分は他省ではなく、やはり厚生労働省で働きたいと考えました
Q. 所属している課の仕事内容を教えてください!
保険局医療課という、主に診療報酬を所管する課に所属しています。自分はその中でも、いわゆる「原課の窓口」としての仕事をしています。課全体には、医師・薬剤師などの技官の方々も含めて100人ほどいて、医療にまつわる様々な分野が集約されているのですが、自分は外部からくる依頼を各分野に振り分けたり、決定された内容を最終的に言葉として形にし、告示・通知等の形で外部へ発信したりするなど、取りまとめの業務を行っています。
Q. 仕事をする上で難しいと感じることは何ですか?
課の所掌分野が広く、医薬品の成分名など、わからないもの・わからない用語が多いことです。知識をどんどん詰め込んでいかなければ、ついていけません。
しかし、そういったものを理解できるようになると、別々の分野の問題・事象が繋がることがあります。この分野で悩んでいた問題が、実はあの分野ではすでに解決できていた......などなど。分野間での橋渡しができるのは、取りまとめ業務ならではかなと思います。大変な仕事ではありますが、大変であるがゆえに面白い仕事だと思っています。
Q. 入省してから成長したと感じることはありますか?
そもそも、1年目の頃はわからないことだらけでした。しかし、ひとつひとつの仕事に向き合ってきた結果、2年目の今はのびのびと仕事をすることができています。「大変でもだいたいなんとかなる」と思えるような体力はついたのかなと思います。
また、学生の頃から意識していたことではありますが、「人と人とを繋いで組織の流れをスムーズにする」ということから、雑談力も含めて人と仲良くなれる力はついたと思います。学生の頃は、「苦手な人は苦手」と割り切っていましたが、社会人になるとそうもいきません。しかし、「この人とは合わないな」と思っていても、話してみたらとても面白い人だった、ということはよくあります。そういった意味では、人としても成長できましたね。
Q. 国家公務員の魅力・厚生労働省の魅力を教えてください!
まず、国家公務員は法律などの規制をツールとして持っているため、規制を変えることができる立場にあります。外圧があったとしても、最終的に判断をするのは自分たちです。何らかの必要があるとき、規制を変えられるのは自分たちしかいません。
特に厚生労働省の場合は、持っている規制が現場(人の生活)に直結しているため、なおのことそれを感じます。例えば、「ある薬は投与に一定の危険性があり、一度に1週間分しか出せない」という規制があったとして、「難病で病院に通うのも一苦労なので、一度にもらえる量を増やしてほしい」という要望がきたとしますよね。もちろん本人にとって薬が必要なのはわかりますが、この制限をなくすことによって、患者をよりその危険性にさらすデメリットも生じてしまいます。では、どうにも解決できないかと言われると、そうではなく、「一度に1週間分」という規制は変えられずとも、例えばオンライン診療で処方可能であると規制を整理して解決するなど、他の処方の仕方を考えることはできます。このように、規制をツールとして持っており、かつそれが現場に直結しているということがいちばんの魅力だと感じています。
Q. 仕事をする上で常に意識していることはありますか?
ひとつひとつの仕事にきちんと向き合うことです。厚生労働省の仕事は国民の生活に直結していますし、その生活を良くしたいと思って働いているわけですから。仕事は大変ですが、手を抜けば後々大きな問題に発展することもあります。どんなに忙しくても、ひとつひとつの仕事に丁寧に向き合うということは常に意識しています。
Q. 「官僚=多忙」と言われがちですが、霞ヶ関の働き方の現状を教えてください!
自分の所属している課は省内でも特に忙しいところなので、残業は当然ながらあります。しかし、残業代はしっかり出ますし、自分の場合は夏に長期休暇も取りました。
Q. 厚生労働省はどのような人が多い・どのような雰囲気の省だと思いますか?
優しい人が多いですね。所掌している業務の性質からか、心配りができる人が多い印象です。
Q. 学生時代にやっておいて良かったことや、自分の原動力になっている経験はありますか?
そもそも、「みんなが自由に楽しく生きていける社会」をつくりたいという考えに至ったのは、サークルや友人との交流など、日常生活からの影響が大きかったと思います。だからこそ、学生時代に何をしたら良いか悩んでいる人は、自分が楽しいと思うこと・やりたいことをぜひやってほしいと思います。それがきっと、将来に繋がってくるはずです。
自分の場合は、「この出来事があったから......」というように原動力になっている経験は、実はありません。サークルなど組織内の世界を良くしたい・楽しくしたいと思って動いたり、そうした経験の中で「みんなが楽しく生きるためにはどうしようか」と考えたり......そういった日常生活での出来事が、今の自分をつくっているのだと思います。
Q. 国家公務員として必要な素質や心構えは何だと思いますか?
まずは、ひとつの分野に縛られないことですね。総合職の場合は、基本的に2年ごとに異動があります。「今はこの分野に特に興味がある」というのはもちろん良いですが、その他にも色々なことに少しずつ興味を持てるという人は、国家総合職に向いているかなと思います。
そして、先ほどもお話しした通り、ひとつひとつの仕事にきちんと向き合う、という心構えも必要です。組織が大きいからこそ、ひとつひとつの物事に気を配ることは大切だと思います。国が細かい部分を見ることができていなければ、現場にも苦労をかけてしまいますからね。
Q. 最後に、金久保さんのつくりたい社会はどんな社会ですか?
社会保障が担保されつつ、経済もまわる社会。少し抽象的ではありますが、「日本で生活するのっていいよね」と思われる社会をつくっていきたいです。
ご協力ありがとうございました!
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