各国家機関で活躍する公務員
国家公務員総合職と一般職の違いを解説!
試験合格のポイントも!
国家公務員は、行政府・司法府・立法府それぞれの機関に勤務する公務員です。例えば、行政府であれば1府12省庁・税務署・ハローワーク、司法府であれば裁判所、立法府であれば国会などの国家機関に勤務し、各機関が管轄する分野のスペシャリストとしての活躍が期待されます。
国家公務員になるためには、国家総合職や国家一般職などそれぞれの試験種別に実施される公務員試験で最終合格・内定を勝ちとらなければなりません。
地方公務員と比べ国家公務員はスケール感が大きく、ひとつの分野に特化して働くことが多いため、国単位の仕事や、ひとつの分野を追求してやっていきたい方へ向いていると言えるでしょう。このページでは、国家公務員(行政機関)の総合職と一般職の違いについてわかりやすく解説。試験合格のためのポイントも紹介します。
1.国家公務員とは?
憲法により「全体の奉仕者」と規定され公のための仕事に携わる公務員は大きく「国家公務員」と「地方公務員」に分けることができます。
国の業務に従事する「国家公務員」には大臣や国会議員、裁判官なども含まれますが、ここでは試験を受けて採用される国家公務員について紹介していきます。
国家公務員の仕事は医療や教育など暮らしに身近な分野から、国の財政運営・産業振興、外交・防衛まで、世の中のありとあらゆることと関わっており、府省庁等ごとに担当する分野が決まっています。
-
行政府
内閣府、財務省、厚生労働省、経済産業省などの府省庁や税関・労働局などの地方機関で働く職員
国家公務員総合職/国家公務員一般職/国家公務員専門職(国税専門官、財務専門官、労働基準監督官など) -
司法府
裁判所(最高裁判所、地方裁判所、家庭裁判所など)で働く職員
裁判所事務官/裁判所書記官/家庭裁判所調査官など -
立法府
国会の各機関(衆議院、参議院、国立国会図書館等)で働く職員
衆議院事務局職員総合職・一般職/参議院事務局総合職/国立国会図書館職員など)
国家公務員に適している人
国家公務員は、省庁、各機関などが所管している分野のスペシャリストとしての役割が期待されており、国や国民の役に立ちたいという精神を持つ人に適しています。また、総合職と一般職では、適性が異なることもおさえておきたいポイントです。
総合職は、常にグローバルな視点を持ち、世の中の動きを敏感に察知できるタイプが適しているといえます。自らが当事者となり、今ある社会の問題点を変えたいと考える人におすすめです。一般職と比べ、広いエリアを対象とした短いスパンでの異動が見込まれる点も踏まえておきましょう。
一方で一般職の仕事は、現場の最前線で活躍したいタイプに適しています。目の前にある問題に耳を傾けながら、自分がもつ能力を発揮したい人におすすめです。
また、総合職・一般職とも、省内や庁内、他部署の人と連携を図りながら、仕事をスムーズに進めていくコミュニケーション能力も求められます。
国家公務員の年収やボーナス
公務員の平均年収は、国家公務員で661万円、地方公務員は655万円です。そこから月給にあたる部分を抜き出すと、国家公務員の平均月給は約41万円になると考えられます。これは、民間企業の平均月給のおよそ1.5倍にあたる額です。
国家公務員のトップともいえる事務次官や官僚(事務職)の最高ポストになると、年収はさらに倍増します。人事院が発表した国家公務員のモデル給与例(令和6年度)によると、事務次官の月給にあたる金額は141万円です。
国家公務員は手当も手厚く、扶養手当、地域手当、通勤手当、特殊勤務手当、管理職手当、時間外手当などを含む、およそ8万円の手当が基本給に加算されます。
また、令和5年度における国家公務員の平均ボーナス額は、夏が約63万円、冬が約67万円です。こちらの金額を算出する根拠となる「月給の4.5カ月分」は給与法によって定められています。。
※地方公務員の平均年収はTACが独自に算出した都道府県庁および政令指定都市の一般行政職の令和2年度の推定額です。 ※国家公務員の平均年収はTACが独自に算出した一般職行政職員の令和5年度の推定額です。
2.国家総合職と国家一般職の違い
国家公務員にも様々な種類がありますが、特に1府12省庁で働く職員は、いわゆる官僚・キャリアと呼ばれる「国家総合職」と総合職をサポートする「国家一般職」に大別されます。その違いを4つの視点で見ていきましょう。
公務員について詳しく知りたい方は!
仕事と使命
国家総合職の場合
国家総合職は「政策の企画立案等の高度の知識、技術または経験等を必要とする業務に従事する職員」と定義され、政策の企画立案を行います。
いわゆる中央省庁(本府省)の幹部候補(官僚)として、省内での異動を繰り返しながら政策立案、法案作成、予算編成などに携わり、国家のデザインともいえるダイナミックな仕事を行います。
ポイントは以下の通りです。
point
- 圧倒的な昇進速度
- 国費留学の制度がある
- 関係業界・政界への転身もある
幅広い見識を身に付けるため、早くから幹部養成コースを歩み、人事異動を繰り返しながら、多彩な職務を経験します。昇任のスピードが速く(40代で課長級)、若くして政策の企画や立案といった責任ある仕事を任されます。
毎年120名以上の職員が諸外国の大学院(修士課程又は博士課程)に研究員として送り出されています。
財務省や外務省で採用された場合、全員が国費留学することができ、他府省庁採用の場合でも、TOEFL iBTなど決められた英語試験のスコアをクリアすることで国費留学することが可能です。
【文部科学省】パリ政治学院(経営工学)、【財務省】ハーバード大学(法律学)、【警察庁】ケンブリッジ大学(犯罪学)など
課長から上は出世競争になり、関係業界や、独立行政法人への再就職、政治や学者の世界への転身をするケースもあります。
全国都道府県の知事の半数以上が総合職出身者で占められるなど、退官後にも仕事の経験を活かして活躍する方が多いです。
国家一般職の場合
国家一般職(大卒)は「主として事務処理等の定型的な業務に従事する職員」と定義され、政策の実行を行い、企画立案を支える立場になります。
職場としては、中央省庁(本府省)と地方機関(出先機関)とに分かれます。本府省を職場として選んだ場合は、国家総合職と共に国の政策立案に携わります。
point
- 本府省採用(霞が関勤務)
- 地方出先機関採用(地方勤務)
・各府省に採用され、特定分野について専門的業務を行う。
・国の中枢、霞が関で主に企画立案を行い、スケールが大きな仕事ができる。
・「○○省関東××局」といった出先機関に採用され、管区内の本局や事務局で活躍。
・採用先や配属先によっては窓口業務もあり、勤務地域はある程度限定される。
勤務先
国家総合職の場合
内定は各府省から得て、内定先の府省の職員となります。
勤務地は基本的に東京(霞が関)ですが、省庁によっては2年~3年程度の間隔で地方への出向(転勤)があります。
また、海外の大使館や総領事館、政府代表部での勤務を経験することもあります。
国家一般職の場合
内定は各府省から得て、内定先の府省の職員となります。府省をまたいだ異動はなく、一度入った府省の中でずっと働くことになります。
本府省採用の場合、勤務地は基本的に東京です。地方出先機関採用はブロック採用(関東甲信越地域、東海北陸地域、九州地域など)となります。
公務員について詳しく知りたい方は!
3.国家公務員になる方法
国家公務員になるには、人事院が実施する国家公務員試験に最終合格し、内定を得る必要があります。
また、試験は国家総合職試験、国家一般職試験、国家専門職試験、経験者採用試験の4つの分野に分かれています。国家専門職試験は、試験に合格することで内定が出ますが、その他の国家公務員試験は、試験以外に官庁訪問(志望府省庁で面接などが行われます)があり、ここで志望先から内定を得る必要があります。試験区分も細分化されているため、事前にしっかりと確認しておきましょう。
試験の区分・レベル
国家総合職の場合
国家総合職試験は【院卒者試験】と【大卒程度試験】に分かれます。
国家一般職(大卒)と比較して、出題科目数は少なくなっていますが、国家総合職のほうが難易度の高い問題が多いということが最大の違いです。
国家一般職の場合
国家一般職試験は【大卒程度試験】と【高卒者試験】のほかに、【社会人試験(係員級)】も実施されます。
国家公務員試験合格のための3つのポイント
国家公務員試験に合格するためには、次の3つのポイントをおさえておきましょう。
1.試験対策は早めにスタート
2.独学と通学を上手く使い分ける
3.まずは過去問研究から
特に、試験勉強を始める時期は悩む方も多いのではないでしょうか。また、独学と通学、それぞれのメリットとデメリットを踏まえ上手く使い分けることも大切です。合格のための効率的な勉強法もあわせて参考にしてください。
1.試験対策は早めにスタート
国家公務員試験に向けた対策は、試験本番のおよそ1年前を目安にスタートしましょう。余裕があれば早く始めるに越したことはありません。公務員試験では、教養試験(基礎能力試験)から専門試験まで幅広いジャンルの知識が問われるからです。
特に、国家公務員試験合格のためには、筆記試験だけでなく面接試験の対策が必要になります。面接試験では本番を想定した練習もポイントになるため、余裕をもって試験対策に臨んでください。
2.独学と通学を上手く使い分ける
国家公務員試験の学習をするために、独学と通学どちらを選べばよいか迷うときは、それぞれのメリットとデメリットを確認しましょう。
まず、独学のメリットは通学にかかるコストが抑えられることです。通学時間が削減されるぶん、学習時間を捻出できるでしょう。
一方で、デメリットとして挙げられるのが、モチベーション維持の難しさです。他者からのアドバイスが得られず、効率の悪さを感じることもあるかもしれません。また、試験で出題される様々な科目の教材を自分で選んで揃える、情報の少ない官庁訪問の対策を独自で進める必要があるなど学習のみに専念できない点もデメリットだと言えます。
反面、通学であればプロからの助言を受けながら学習が進められます。独学では難しい面接対策も可能です。通学のデメリットとして挙げられるのは、受講料として一定のコストがかかることでしょう。
独学と通学、どちらで学習すべきか迷う場合は、自分に合った方法を見極めましょう。なるべくコストを抑えつつプロの指導を受けたい場合は、通信講座の受講もおすすめです。
3.まずは過去問研究から
国家公務員試験の学習は、まずは過去問研究からはじめましょう。過去問を研究すると、出題されやすい分野や傾向について理解が深まるからです。
あらかじめそれらを理解しておけば、自分が苦手とする分野がより明確になります。結果的に、無駄のない学習計画の立案が可能です。配点の高い科目に着目すれば、重点ポイントをおさえつつより効率的に学習を進められるでしょう。
各省庁の役割
人事院
国家公務員のライフステージに寄り添う!
国家公務員の採用試験、人材育成から人事評価や給与をはじめとした勤務条件等を所管。公正・中立な人事管理を確保することで、国家公務員一人ひとりの生活を支える。国家公務員を受験する人であれば、必ずお世話になる省庁。
内閣府
重要政策の司令塔として政府を支える
経済財政や科学技術、男女共同参画、防災、沖縄・北方対策など、幅広い分野の重要政策のとりまとめを担う。政府の重要政策の最前線で、日々生じる新たな課題に挑戦してみたいという意欲を持つ人や、経済分析の専門家を目指される人材が求められている。
警察庁
国民の安全と社会正義を実現する
霞が関では治安対策の企画立案を行い、都道府県警察では事件捜査を行う。現場で養った感覚を生かして国政に携われるのも魅力だ。国民生活に身近な治安上の課題から、国境を超えた犯罪まで、警察庁のフィールドは広い。
金融庁
金融を通じて経済を支える
金融システムのルールメイクや金融機関・金融システムのモニタリング、さらに金融外交までを担う。金融のポテンシャルを最大限に引き出すことで経済のパフォーマンスを最大化させることをミッションとしている。
総務省
総て(すべて)を務める、国家の基盤を支える
「国家のOSを創り、変革していく」という使命の下、行政管理・評価、地方自治、情報通信といった重要施策を所管。常に国民の視点から世の中の課題を捉え、柔軟な発想・現場主義で業務に取り組む、新たな時代の創造者が求められている。
法務省
人を通じて、「当たり前の日常」を実現する
登記や戸籍等に関する法整備を行う民事局、刑事施設や少年院等の矯正施設を指導・監督する矯正局、犯罪者の再犯防止や立ち直り支援を行う保護局の3つに大きく分けられる。全ての人が安心して暮らせる社会を創ることが法務省のミッション。
出入国在留管理庁
日本の中の世界ーー共生社会の実現へ
主に出入国管理、難民認定、外国人の受入れ環境整備を担う。日本の中の世界を的確に管理し、同時に支える。国籍を超え、我が国で生きる全ての人にとって、日本が真に魅力的であるために。コンセンサスが存在しない「外国人」という課題に、立ち向かうチャレンジングな場所。
外務省
日本を魅せる、新たなチャンスを創りだす
日々変化する国際社会の中で、日本の安全を守り繁栄をもたらすため、世界各地にネットワークを張り巡らせる。相手国と関係を築く際には、「個」の力が試される瞬間もある。常にスキルアップし続けることが求められる、チャレンジングな場所。
財務省
国の財務を管理・運営する使命
予算編成を通じて日本の課題と向き合い、税制の構築を通じて日本社会の姿を描く。予算を組む際には、各省庁の政策担当者から話を聞き、本当に有効な政策を選び抜く力が必要とされる。政策分析のプロとして、見識と矜持が求められる。
文部科学省
「未来省」ーー我が国の未来を創る省庁
人の可能性を切り拓き社会の根幹を支える教育、夢や心の豊かさを育む文化・スポーツ、社会変革を起こす科学技術に携わる仕事。未来の創造に人生と情熱をささげる現場の方々を全力で支える仕事。志と覚悟を持ってこの職場を選び、人と知の力で日本の未来創りに貢献したい人材が、文部科学行政には求められる。
厚生労働省
ひと、くらし、みらいのために
ゆりかごから墓場まで、その言葉通り全ての人のライフステージに寄り添うのが厚生労働省。少子高齢化対策や働き方改革等を通じて、「課題先進国」日本の基盤を支える。一人ひとりの幸せをいかに大きくし、その総和を最大にするか。難題であるが、一生をかけて取り組む価値がある。
農林水産省
生命を支える「食」と安心して暮らせる「環境」を、未来に継承する
この使命を果たすためには、ヒト・カネ・チエを効率よく回す必要がある。そのため所管する分野は生産・加工・流通のみならず、金融、そして国際交渉まで多岐に渡る。国内だけではなく、他国の食料事情まで考慮するダイナミックさを持ち合わせるのも特徴のひとつ。
経済産業省
繁栄をデザインする
貿易を通じて、「国富の拡大」を追求する。世界で戦う日本の現実を見据え、豊かな未来を切り拓くべく、斬新な発想で改革を推し進める。新たな時代の潮流を読み解き、既成概念をも乗り越える。豊かで強い日本を作りたいという熱い志を持つ人々が集まっている。
国土交通省
この国をつなげる、未来をカタチにする
暮らしを支えて守りながら、より良くし続ける。人、住まい、まち、道路、鉄道、河川、港湾、航空。そのつながりは、想いとともに世代を超えて受け継がれ、この国を強く、豊かにする。そして世界へ広がり、多くの幸せをつくりだす。国民が誇れる国。世界から愛される国。国土交通省は、その未来をカタチにする。
環境省
この地球を次世代へつなぐ
21世紀が「環境の世紀」と言われるようになって久しいが、環境汚染や資源の枯渇など課題は尽きない。将来世代に豊かな環境を継承するため、そして豊かな環境の中から新たなイノベーションを起こすため、長期的視座を持ち地球規模の課題に取り組むことが急務とされる。
防衛省
変わりゆく世界で、変わらない平和を守り抜く
日本を取り巻く国際情勢は刻々と変化しており、防衛省が直面する課題も宇宙やサイバー空間など新たな領域に及び始めている。ただし、社会が変化しても国を守るという任務がなくなることはない。日本の平和と独立を維持するという使命を担うのが防衛省である。
内定と採用
国家総合職も国家一般職も官庁訪問を経て内定が出る!
- 官庁訪問を経て、機関ごとに内定が出ます。試験の実施主体は人事院ですが、採用・内定は省庁ごとです。
公務員試験(国家総合職)への第一歩はココからスタート!