国家総合職試験とは?
試験制度について詳しく解説!
霞が関の中央省庁では、国の政策立案や運用、法律の制定など、国の舵取り役として多くの国家公務員が活躍しています。中でも国家総合職試験に合格したいわゆるキャリア官僚には、中央省庁の幹部候補として、政策の企画立案、法案の作成、予算編成など行政の中枢を担うことが期待されています。
この国家総合職になるための試験はどのような仕組みになっているでしょうか。ここでは春に行われる試験の仕組みについて詳しく解説していきます。
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国家総合職試験とは
国家総合職試験は、年2回実施されており、秋に行われる教養区分と、春に行われるその他の区分があります。いずれかに合格(最終合格)することで希望府省庁に官庁訪問(採用者を選考するための面接などが行われます)する権利が得られます。
春に行われる試験については大卒向け、院卒向けの試験ともに専門科目(大学以降専門的に学ぶ科目)が出題され、この専門科目についてどの分野のものを選ぶかによって法律区分、経済区分、政治国際人文区分、デジタル区分、工学区分などといった区分が設定されており、受験生が得意な区分で受験することができます。
国家総合職試験(教養区分以外)の受験資格
国家総合職試験は以下のような受験資格があり、これを満たす方であれば受験できます。ただし、日本国籍を有しない方や二重国籍の方など受験資格を満たしても受験できない場合もあります。
(1)1994(平成6)年4月2日~2003(平成15)年4月1日生まれの者
(2)2003(平成15)年4月2日以降生まれの者で次に掲げるもの
a)大学を卒業した者及び2025(令和6)年3月までに大学を卒業する見込みの者
b)人事院がa)に掲げる者と同等の資格があると認める者
※その他国籍要件などもあります。
1994年(平成6)年4月2日以降生まれの者で次に掲げるもの
(1)大学院修士課程又は専門職大学院の過程を修了した者及び2025(令和7)年3月までに大学院修士課程を修了する見込みの者
(2)人事院が(1)に掲げる者と同等の資格があると認める者
国家総合職試験(教養区分以外)の受験区分
大卒程度試験の受験区分
法文系として法律、経済、政治・国際・人文が設けられており、法文系以外にも人間科学、デジタル、工学、数理科学・物理・地球科学、化学・生物・薬学、農業科学・水産、農業農村工学、森林自然環境といった理工系区分が幅広く設けられています。
受験者は、これらの中から出願時にご自身の専攻・出身学部に応じて自由に受験区分を選択することができます。なお、受験区分は、ご自身の専攻や出身学部に合わせて選択するのが一般的です(例:法学部出身:法律区分、経済学部出身:経済区分など)。
院卒程度試験の受験区分
法文系の受験区分は行政となっていますが、受験者は選択I(政治・国際・人文系)、選択II(法律系)、選択III(経済系)から受験当日に解答する分野を1つ選択することができます。試験制度上は受験当日に解答分野を選択する形式ですが、学習効率の観点から、学習開始前にご自身の専攻や出身学部に合わせてあらかじめ選択するのが一般的です(試験問題は大卒程度試験と同様です)。
<大卒程度>春試験 法文系 試験内容、実施スケジュール
人事院から発表された試験変更で日程が早まり、2024年春の1次試験は3月17日(日)実施、最終合格発表が5月28日(火)になりました。民間企業の選考解禁日である6月1日から官庁訪問ができるよう日程が変更される見込みです。
ここでは法文系の法律区分、経済区分、政治国際人文区分を例にとって解説いたします。
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国家総合職試験 春試験の内容を解説
国家総合職試験の1次試験
国家総合職 基礎能力試験
基礎能力試験の出題科目は全区分共通で、一般知能分野(数的処理・文章理解)と一般知識分野(自然科学・人文科学・社会科学・情報 ※時事を含む)です。基礎能力試験は、全体の約46%を数的処理が占めていることから、数的処理が最重要科目です。
また、自然科学・人文科学・社会科学・情報の出題科目と科目ごとの出題数は異なる場合があります。
30題必須解答(2時間20分)
一般知能分野: 文章理解10題、数的処理14題
一般知識分野: 自然科学・人文科学・社会科学に関する時事・情報 6題
国家総合職 専門試験(五肢択一式)
専門試験(五肢択一式)は区分ごとに出題科目が異なります。出題科目は各区分に応じた科目となっており、必須解答の科目と選択解答の科目があります。
国家総合職 <法律区分>の専門択一試験
49題中40題解答(3時間30分)
必須問題: 憲法7題、行政法12題、民法12題の計31題
選択問題: 商法3題、刑法3題、労働法3題、国際法3題、経済学・財政学6題の18題から任意の9題解答
国家総合職 <経済区分>の専門択一試験
46題中40題解答(3時間30分)
必須問題: 経済理論16題、財政学・経済政策5題、経済事情5題、統計学・計量経済学5題の計31題
選択問題: 経済史・経済事情3題、国際経済学3題、経営学3題、憲法3題、民法(担保物件、親族及び相続を除く)3題の15題から任意の計9題解答
国家総合職 <政治・国際・人文区分>の専門択一試験
【コースAを選択する場合】55題中40題解答(3時間30分)
必須問題: 政治学10題、国際関係10題、憲法5題の計25題
選択問題: 行政学5題、国際事情3題、国際法5題、行政法5題、民法(担保物件、親族及び相続を除く)3題、経済学3題、財政学3題、経済政策3題の30題から任意の計15題解答
【コースBを選択する場合】55題中40題解答(3時間30分)
必須問題: 政治学1~2題、国際関係1~2題、憲法1~2題、思想・哲学4題、歴史学4題、文学・芸術3題、人文地理学・文化人類学2題、心理・教育学・社会学に関する基礎7題の計25題
選択問題: 思想・哲学6題、歴史学6題、文学・芸術6題、人文地理学・文化人類学2題、心理学3題、教育学3題、社会学4題の30題から任意の計15題解答
国家総合職試験の2次試験
国家総合職 専門試験(記述式)
専門試験(記述式)は区分ごとに出題科目が異なります。専門択一試験対策による各科目の理解はもちろん、配点比率が高い専門試験(記述式)で高得点を狙うためにはより正確な知識の習得に加え、十分な答案練習を行う必要があります。
国家総合職 <法律区分>の専門記述試験
5科目中2題解答(3時間)
憲法1題、行政法1題、民法1題、国際法1題、公共政策2題
※公共政策からは1題のみ選択可
国家総合職 <経済区分>の専門記述試験
4科目中2題解答(3時間)
必須: 経済理論1題
選択: 財政学1題、経済政策1題、公共政策2題から1科目選択
※公共政策からは1題のみ選択可
国家総合職 <政治・国際・人文区分>の専門記述試験
【コースAを選択する場合】6科目中2題解答(3時間)
政治学1題、行政学1題、憲法1題、国際関係2題、国際法1題、公共政策2題
【コースBを選択する場合】3科目中2題解答(3時間)
思想・哲学2題、歴史学2題、文化・芸術2題
ここがPoint
政策論文試験
1題必須解答(2時間)
政策論文試験は、「政策の企画立案に必要な能力その他総合的な判断力及び思考力についての筆記試験」とされています。出題される課題は政策に焦点をあてたものとなっており、与えられる資料の1つは英文が含まれているため、ある程度の基礎的英語力も必要となります。
人物試験
人物試験として、人事院による個別面接(面接官:受験者=3:1)が行われます。おおむね15~20分程度で、質問内容は面接カードの記入内容に沿って、受験者の回答を掘り下げながら人間性や将来性を探るコンピテンシー評価型面接です。人物試験の評価は、A~Eの5段階評価で行われます。
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英語試験による加点制度
行政実務の国際化の流れを受け、人事院は、国家総合職試験の採用者が従事する企画立案などの業務の遂行には「基礎的な英語能力」を有していることが望ましいとしています。これにより、国家総合職試験では、一定レベルの英語試験のスコア等を有する受験者に加点措置が取られています。
以下の通り、国家総合職試験実施年度の4月1日から遡って5年前の日以後に受験した英語試験スコア等が対象となります。院卒者試験のみならず、国家総合職試験のすべての区分が対象となります。
TOEIC®L&R TESTは他の英語試験と異なり、リスニングとリーディングのみで受験できますので、短期で国家総合職の加点制度に必要なスコアを取得したい方にはおすすめです。
国家総合職試験の試験実施状況
教養区分と行政系各区分の試験実施状況です。倍率だけを見ると法律区分が高くなっていますが、最初に受験する国家総合職試験が教養区分であること、教養区分で不合格になった受験生が春試験専願の受験生とともに春試験を受験することから難易度が一番高いのは教養区分と言われています。
国家総合職試験 大学別最終合格者数
教養区分(秋試験)とその他の区分(春試験)の大学別合格者数は次の通りです。
教養区分は1次試験の合否を大学入試の共通テストに近い基礎能力試験の点数だけで判断するため、東京大学をはじめとする上位国立大学やその受験経験者が多い大学から最終合格者が出やすくなっています。また、教養区分が先に行われるため、後で行われる春試験は幅広い大学から最終合格者が出ています。
国家総合職試験の官庁訪問
官庁訪問とは
国家総合職試験は、最終合格=採用内定ではなく、最終合格発表後に採用を希望する各府省庁を訪問して選考を受ける官庁訪問を経て、採用内々定を勝ち取る必要があります。官庁訪問開始から採用内々定に至るまでの期間は約2週間程度と非常に短く、各府省庁が独自の選考を行うため、正確で質の高い情報と入念な事前準備が必要です。例年2月頃に官庁訪問ルールが国家公務員試験採用情報NAVIにて発表されます。
2023年の官庁訪問は従来の5クール制から4クール制に変更され、内定までの官庁への訪問回数が4回になりました。1つの官庁に訪問すると朝8:30に集合して夜まで時間がかかりますので、1日に訪問できる官庁は1つです。このため必然的に、各クールで回ることのできる官庁の数は決まってきます。第1クール、第2クールは3つまで、第3クールは2つまで、第4クールは1つといった形です。
学生時代の経験から国家総合職として何ができるか、訪問先の官庁に入ることができたら何がしたいのかといったところをしっかり固めて官庁訪問に臨みましょう。
採用に有利な受験区分は?区分別・府省庁等別採用人数
これまで国家総合職試験について説明してきましたが、ここではどの区分を選べば採用に有利か解説していきます。
結論からお伝えしますと、どの受験区分で合格したから採用に有利、不利ということはほぼありません。一部の省庁では残っていますが、最近はほとんどの省庁で合格した受験区分に関係なく採用されています。
一昔前の東大や京大の受験生が多かった時代には、試験合格者の中からさらに優秀な人を取るために、法律区分の成績優秀者でないと採用されないといったことがありましたが、今は東大や京大といった大学の受験生が減ったことで、受験区分に関係なく、さまざまな大学の学生の中から国家総合職としての適性のある人を採用するように変わっています。
国家総合職は府省庁の幹部として、管理職として活躍することが期待されています。このため、リーダーシップ、調整力やコミュニケーション力などといったスキルも重視して採用しています。教養区分は東大生、京大生の最終合格者が多いため、採用人数も多くなっていますが、今は他の大学の方にも十分に採用されるチャンスがあるようになっています。
2023年度 国家総合職 受験区分別 採用人数
※( )は女性の採用人数