税理士ブログ 部分点も逃さない!理論答案作成のポイント
深町 利美 講師
TAC税理士講座 財務諸表論担当
応用問題で得点するコツとは?
みなさん、こんにちは。財務諸表論の本試験では必ずと言って良いほど応用問題が出題されますが、ここで如何に部分点を確保するかが合否に大きく影響すると言っても過言ではないでしょう。そこで今回は、第63回本試験問題を例に、如何に部分点を逃さず、理論答案を作成していくかを解説していきます。
第63回本試験問題より一部抜粋
『Z電器株式会社の個別注記表は、資産除去債務に関する以下の注記(一部分)を掲げている。
「(資産除去債務に関する注記)
(1)当該資産除去債務の概要:当社は、本社建物の賃借契約に基づき、退去時における原状回復に係る債務を資産除去債務として認識しております。(2)当該資産除去債務の金額の算定方法:財務省令別表耐用年数表に示されている耐用年数から、当該建物の完成時から入居時までを除いた期間を本社の使用年数と見積り、割引率は当該使用期間に見合う国債の流通利回りを使用して資産除去債務の金額を計算しております。」
以上の注記内容を踏まえて、資産除去債務に係る会計処理の手続が「継続企業の公準」によっていかに正当化されるかについて理論的に説明しなさい。』
解答がイメージできたでしょうか?
解答要求は、「継続企業を前提として資産除去債務を計上する根拠(正当性)」と「金額算定(割引計算)の根拠(正当性)」と考えられます。
解答例は、『企業は半永久的に継続して事業を営むことを前提とすれば、双務未履行の段階にあっても、将来の退去時において不可避的に生じる原状回復に係る債務は発生時に資産除去債務として認識すべきであり、また、金額算定に当たっては貨幣の時間価値を反映した無リスクの税引前の利率である国債の流通利回りを使用して割引計算すべきである。』となります。
部分点を確保するという視点から、解答をまとめてみましょう
解答に当たって最初に考えるべき点は、「継続企業の公準とは何か」と「資産除去債務とは何か」ですね。これらの意義(定義)について、皆さんは以下のように押さえていらっしゃるものと思います。
「継続企業の公準とは、企業が半永久的に継続して事業を営むものとする前提である。」
「資産除去債務とは、有形固定資産の取得、建設、開発又は通常の使用によって生じ、当該有形固定資産の除去に関して法令又は契約で要求される法律上の義務及びそれに準ずるものをいう。」
そこで、部分点を確保するという視点から、それぞれの意義を中心に解答をまとめてみましょう。
①『資産除去債務は、有形固定資産の除去に関する法律上の義務であるから計上しなければならない。』
②『企業は半永久的に継続して事業を営むことを考えれば、資産除去債務は、有形固定資産の除去に関する法律上の義務であるから計上しなければならない。』
③『企業は半永久的に継続して事業を営むことを考えれば、資産除去債務は、有形固定資産の除去に関する法律上の義務であり、支払いが不可避的であり、実質的に支払義務を負うため、発生時に負債計上すべきである。』
①で全体の2割、②で4割、③で5割程度の得点が可能ではないかと考えます。
このように、意義やその他学習済の論点から、1行でも解答を作ることが重要となります。応用問題への対応はとても難しいと感じられるかもしれませんが、事前にしっかりと準備しておけば十分に対応可能です。TACでは直前対策における答練問題や6月中旬に実施予定の全国公開模試を通して、得点の取り方、部分点の狙い方を訓練していきますので、残り3カ月、一緒に頑張っていきましょう!
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