将来の夢、見つけた!〈立正大学編〉
行政書士試験の勉強を通して広がった、将来の選択肢

今回は、TACとの提携のもと、行政書士試験、公務員試験、法学検定試験などの受験対策を課外講座として実施し、すでに高い実績を上げている立正大学に伺った。法学部の2年生で、実際に行政書士試験の課外講座を受講している3人の学生の皆さんに、行政書士をめざした理由、受講の感想、大学の授業との両立、そして将来の夢について伺うと共に、法学部教授の位田央(いんでんひろし)先生に、課外講座の趣旨と目的、学生たちの夢をどのように支えているかをお聞きした。

行政書士とは

行政書士の仕事は大きく分けて、官公署へ提出する書類、権利義務や事実証明に関する書類を作る「書類作成業務」、その申請を代わりに行う「許認可申請の代理」、そしてクライアントからの相談を受け、アドバイスを行う「相談業務」の3つに分類されます。現在は行政書士にも代理権が認められ、国民と行政のパイプ役を担う法律の専門家として、ますます活躍の場が広がっています。

左から
羽澤洸也(はざわこうや)さん
法学部法学科現代社会コース2年生

渡部有実(わたべゆみ)さん
法学部法学科現代社会コース2年生

坂本旭寛(さかもとあきひろ)さん
法学部法学科企業法コース2年生

行政書士の勉強が新たな夢につながった

──皆さんが、行政書士試験の勉強をはじめた経緯について教えてください。

羽澤 公務員の家庭に育って、自分も公務員をめざして法学部に進みました。1年生の時に公法に興味を持って位田先生の行政法ゼミをとった時、多様な行政法を学びたいと思うようになって講座を受けました。

渡部 私は行政法に興味があったというより、最初は位田先生に興味があってゼミに入って、その流れで講座を受けるようになりました。

坂本 行政法は多くのサムライ業、士業に通ずる法律です。商業高校時代に行政書士に興味が湧いて、立正大学法学部を選びました。1年生で位田先生の行政法ゼミを選び、2年生で講座を受講しました。

──行政書士課外講座を受講するには、大学の通常の授業の後、有料で受けなければなりません。坂本さんは高校時代から行政書士に焦点を合わせてきたそうですが、そこまでして行政書士の資格を取ろうと思ったのはなぜですか。

坂本 高校時代にITパスポートを取ったあとで、他にどんな資格があるのかを調べ、その時に興味を持ったのが行政書士でした。そしてどのような資格かを調べて、大学も、行政書士課外講座の存在を知った上で立正大学に入学しました。当然、2年生で講座がスタートする際は迷いもなく受講しました。

渡部 私は士業をめざしているわけではありません。国家公務員の中でも検察事務官をめざしています。そこで学習内容的にかぶる部分が多い行政書士試験を勉強して、3年生から公務員試験にステップアップしていこうと考え、受講を決めました。

──行政書士そのものというより、次のステップへの準備ですね。

羽澤 私も、元は渡部さんと同じ公務員志望で、その足がかりとして講座を受けようというのが動機でした。しかし、講座を受けている過程で行政書士に興味が湧いてきて、将来めざす道も公務員から士業へと変わりました。今では民事法なども勉強していきたいと思うようになっています。

──受講して将来の方向性が変わったのですね。羽澤さんは士業のどのような部分に興味が湧いたのですか。

羽澤 大学の授業は「こういう説があり、こういう考え方がある。あなたはどちらを選ぶか」という研究の話が中心です。それは学問としてはとても興味深いのですが、「では実際にどのように使うのだろう」と考えた時、「こういう審議をして、こうした手続きを踏んで、こういうことをやる」というTACの実務に則した講義はとてもリアルでした。そこで実務をやっていくにはどのようにするのか非常に興味が湧いてきたので、自分は行政書士だけでなく範囲を広げて士業に興味があるんだなと感じたのです。

大学の授業と講座のシナジー効果

──実際に課外講座を受けてみた感触はいかがですか。

渡部 憲法については多くの回数を使いみっちりやりますが、逆に行政書士法などは少ない回数で要所要所を押さえ、流れもあってかなりわかりやすかったですね。TACのテキストは実に簡潔にまとめてある上に先生がわかりやすく説明してくれるので、大学の授業の裏付けがとれました。

坂本 TACの講座はその日の範囲がカリキュラムで決められているので頭に入りやすかったです。同時並行して位田先生のゼミも受けていたので、そちらの予習・復習にも役立ちました。

──大学の授業と補完しあう部分もあったのですね。そうは言っても2年生は大学の単位を取るのも大変なのに、同時に講座を受けるのは大変ではなかったですか。

坂本 正直言って大変でした。私の場合、家から大学まで電車で片道2時間かかるので夜9時に講座を終えて帰宅すると11時半。精神的にはきつい面もありました。
もし今回の本試験がダメでも行政書士が第一目標なので、3年生でのリベンジをめざします。

渡部 夏休み前は大学の授業を受けた流れで課外講座を受けていたのですが、夏休みに入ってからはいろいろな用事で出られなかったことが多々ありました。でも、出られなかった時は、テキストを読んだり、空いている時間に受けられなかった部分のTACの映像講義を見て補完することができました。
私の場合、11月から公務員課外講座のガイダンスがスタートするので、行政書士試験の勉強は、次のステップへの腕試しになったと思います。

羽澤 6~7限目に講座を受けるのは正直つらかったですね。何より直前期の10月は一番きつかった。最初のころはその日の講義の範囲をやっていけばよかったのですが、直前期は最初からその日の講義に至るまでの内容をすべてやらなければならないので、めちゃめちゃ大変でした。

他資格への展開で行政書士資格を活かす

──行政書士資格の他に、なにか資格取得を考えていますか。

坂本 仮に今回行政書士試験が不合格でも、来年11月の試験までの空き時間にビジネス著作権検定を取ってみたいです。

羽澤 行政書士試験に受かったら、在学中から登記や刑法についても勉強して、司法書士をめざしたいと考えています。

──羽澤さんは具体的に次の目標を決めて、渡部さんも具体的に検察事務官と決めていますね。

渡部 やはり大学で学んだ法律系の知識を活かせる職に就きたいんです。ゼミの仲間には地方公務員をめざしている人もいますが、私はどちらかというと地方の活性化よりも、国家公務員として法的知識を活かしていきたいと思っています。

──羽澤さんは司法書士試験に合格したら、その先はどうしますか。

羽澤 まずは司法書士事務所で実務経験を積みたいですね。そこで自分は開業司法書士が向いているのか、雇われる勤務司法書士が向いているのか、次の方向性を探っていきたいと考えています。

──坂本さんは行政書士資格を取った後、卒業後の進路はどのように考えていますか。

坂本 漠然としていますが、やはり一般企業に就職して、それと同時並行でどこかの事務所で実務を経験したいと思っています。その先はうまくいけば何かしら展開があるはずだと思っています。

将来の選択肢を広げよう

──将来の夢として、それぞれなりたいイメージが明確にあるのはすばらしいですね。どのような司法書士、行政書士、検察事務官になりたいですか。

羽澤 司法書士は、資格取得後に一定の研修・考査を受け認定司法書士となることで、簡易裁判所での一部の民事訴訟の代理等の業務を行うことができるようになります。そうした司法書士の資格としてできる範囲の中で自分の可能性を見極めていきたいです。さらにその先は、行政書士と司法書士の簡裁代理権の両方をクロスした範囲をカバーできるようにして、どちらの資格も活用して、専門性の高い士業をめざしていきたいと考えています。

渡部 裁判官・検事・弁護士は法律のエキスパート。そうした人たちをサポートすることで検察事務官としての自分もいろいろ学べると考えています。

坂本 私は、行政書士の資格を活用して、民間企業で法務関係の仕事に携わっていきたいと考えています。しっかりとした意見を持って仕事をこなせる行政書士になりたいですね。

──行政書士講座を受けて感じたことを一言ずつお願いします。

羽澤 位田先生はよくいろいろな経験をすることは大事だとおっしゃいます。私自身、講座を受けたこの数ヵ月で目標が変わったので、将来に影響を及ぼすのであればたくさんのことに挑戦するのは大切だと感じました。

渡部 高校時代になぜ勉強しなくてはいけないのか悩んでいた時に、ある先生から「それは自分の将来の選択肢を広げるためだ」と言われたことがあります。大学ではあまり勉強する人を見かけませんが、1年後、2年後には就活(就職活動)ですから、将来を決めなければなりません。その時の選択肢を広げるという意味で、大学の授業にも講座にも積極的に参加して良かったと感じています。

坂本 2人の意見に共通するのですが、何かしらアクションを起こしつつ、人の話を聞いたり、体験して視野を広げたりして、自分にもこんな選択肢があるんだと可能性を探るのは、その先の人生においてとても重要だと思います。私の場合はスタートがたまたま行政書士でしたが、そこをフックに、将来の夢を探っていきたいと考えています。

──本日はありがとうございました。将来の夢に向けてがんばってください。

学生の夢を支える、大学の取り組み

法学部教授
位田央(いんでんひろし)先生

プロフィール
三重県桑名市出身。立命館大学法学部を経て、平成16年3月、神戸大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得満期退学。同年4月より、立正大学法学部に奉職。東京都廃棄物の処理施設の審査に係る専門委員会委員(平成16年9月1日~平成25年1月31日)、熊谷市事務事業評価外部評価委員会副委員長(平成23年6月3日~平成25年3月31日)等を務める。趣味は、囲碁、将棋、チェス、読書、映画鑑賞、アメリカンフットボールの試合観戦

「モラリスト×エキスパート」を育む。

──立正大学について教えてください。

位田 立正大学は1872年(明治5年)に開校し、今日では8学部15学科7研究科を擁し、2016年10月現在、10,323人が在籍する総合大学です。キャンパスは品川と熊谷の2校あります。
 大学のブランドビジョンとして『「モラリスト×エキスパート」を育む。』を掲げ、真実を求め人類社会の和平の実現を念願する立正精神に基づく教育を行い、「自ら前向きに律することのできる人」、「人の喜びや悲しみを想像し、共有する感受性を持った人」、と「大人としての基礎的な教養を身につけた人」いった「モラル」という基盤の上に専門分野を見つけ、掛け合わせることで有能な人材を育成することを目的としています。

──行政書士課外講座を含む、学内講座の主な活動内容と目的について教えてください。

位田 学生たちの将来の進路に向け、1年生から課外講座を充実させています。学年に応じ、それぞれの講座を展開することで段階的にステップアップできるようにしており、学内講座で取り組んだ、「公益財団法人日弁連法務研究財団」が実施する法学検定試験ベーシック<基礎>コースの試験では、2015年度の団体賞合格者数の部で、合格者180名を輩出して全国第1位となりました。
 学内講座としては、ステップアップを考慮し、以下の講座を設置しています。

・ 法学検定試験対策・法律入門課外講座 : 法学検定試験対策課外講座(1年生対象)
・ 行政書士試験対策 : 行政書士課外講座(2年生以上対象)
・ 公務員試験対策 : 公務員入門講座(2年生対象)・公務員試験対策講座(3年生対象)
・ 社労士試験対策 : 社労士課外講座(2年生以上対象)

ステップアップを考慮した学内講座を設置

──学生の皆さんの夢の実現に向けて、立正大学ではどのような支援をしているのでしょうか?

位田 学生たちへの支援では、制度面、メンタル面などでさまざまな取り組みを行っています。

 まず制度面については、以下の3つの履修コース制度を導入し、将来の志望に従って履修コースを選択し学修を進められるようにしています。
・ 企業法コース―「社会の中で生きていく」ために。
目標 : 法律の専門知識を活用する企業人、司法書士や社会保険労務士等法律の専門家
・ 公共政策コース―「社会を創る」ために。
目標 : 国や地方の公務員、行政書士
・ 現代社会コース―「社会を知る」ために。
目標 : 法律的素養を身に付けた教員や、メディアを中心に活躍できる企業人


 さらに6つの教育プログラムを導入し、入学時点でプログラムを選択することにより、4年後の将来のキャリア形成に向けて計画的に過ごすためのガイドラインとしています。
 先にお話しした、行政書士を含む課外講座は、この教育プログラムの一環として実施しています。

・公務員・行政書士プログラム
・国税専門官・税理士プログラム
・警察官・消防官プログラム
・金融・不動産法務プログラム
・教職プログラム
・法曹養成特別プログラム
 上記の他、語学・留学特別プログラムや法曹養成プログラムといった特別プログラムもあります。

教育プログラムに基づき4年間を過す

──入学時点から将来に向けた教育プログラムがあり、それに基づいて4年間を過せるのですね。

位田 そうですね。もちろん学修を進めて行く中で、興味の方向が変わったり、新たな分野に挑戦することも可能ですし、プログラムとしては柔軟に対応しています。
 そして、ステップアップ方式のカリキュラムを採用し、難解な法学の知識や論理を、無理せず確実に修得できるようにしています。中でも、憲法、民法、刑法などの重要な学びは、入門講義 →本講義 →応用演習のステップアップ方式を採用し、併せて課外講座を実施することで各種の検定試験、採用試験、資格試験に対応しています。

──メンタル面のフォローについてはいかがでしょうか。

位田 ゼミや演習科目を多数設置し、教員と学生が常に対話できる少人数教育を重視しています。そのため、例えば課外講座についても学生は教員に直接相談をしながら取り組むことができます。また、教員が学生のメンタル面のサポートをしながら、学生の声を反映した課外講座を実施することができるよう努めています。
 そして、学生の将来の志望の実現のために、一人ひとりの学生の顔が見える環境のもとで、学生・教員・学部事務室の風通しがよい学修指導を心がけています。

──学生の皆さんにはどのようなOB・OGになってもらいたいですか?

位田 一般企業への就職はもとより、資格取得、公務員試験に挑戦する学生たちについても、学内講座などでフォローしています。
 深い教養を備え、モラルと融合した感性豊かな法的素養を有する指導的職業人になってもらいたいですね。

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