特集 2023年度行政書士試験、最年少13歳合格者はTAC受講生!

矢野 絢三(やの けんぞう)さん
Profile

矢野 絢三(やの けんぞう)さん

都内私立大学付属校中等部2年生。
2023年度行政書士試験に最年少の13歳で合格(当時、中学1年生)。
現在、野球部に所属。
趣味は政治と選挙。選挙ポスターを見るのが大好き。

行政書士の資格を
自分の人生にうまく活かして、
今後の自分の強みにしていきたいと考えています。

2023年度の行政書士試験の最年少合格者はTAC受講生。現在、都内私立大学付属校中等部2年生の矢野絢三さんだ。矢野さんは中学校1年生の13歳で行政書士試験にチャレンジ。約7ヵ月間の受験勉強で合格を果たした。なぜ法律資格に興味を持ち、中学生で行政書士を志したのか。気になる受験のきっかけや学業との両立についてお聞きした。
(取材は2024年4月)

宅建士より難関で、試験範囲が重なる行政書士試験を受ける

──矢野さんは中学校1年生のとき、2023年度の行政書士試験で見事、最年少合格されました。おめでとうございます。なぜ中学校1年生で行政書士をめざそうと思ったのですか。

矢野 最初に資格試験を受けようと考えたのは、まだ中学受験が本格化していない小学校4年生のときです。父が不動産鑑定士なので、不動産系資格の宅地建物取引士(以下、宅建士)の試験を内緒で受けて驚かせようと思い勉強を始めました。ところが宅建士の試験日が、中学受験塾の試験日と重なってしまい宅建士受験は諦めました。
 その後、2023年2月に中学受験が終わり、宅建士より難しくて、試験範囲が重なっている行政書士を受けてみようと決めました。そしてすぐにTACの行政書士講座に申し込み、2月28日からプレミアム本科生として八重洲校に通い始めました。

──中学受験を終えてすぐに行政書士講座を申し込んだのですね。ちなみに宅建士試験は、どのような学習方法で進めていましたか。

矢野 宅建士はTACのテキストを書店で購入して、独学で進めました。模試は受けませんでしたが、過去の問題を解いてみた感触では合格ラインは越えていたと思います。

──行政書士受験に際して、TACの教室講座を選んだ理由を教えてください。

矢野 TACは、他校と比較した中で最もメジャーでした。八重洲校は学校からもアクセスがよかったので、TACに決めました。

──TACの講義では他に中学生はいなかったと思います。ご両親ほどの年齢の方もいたと思いますが、年上の受験仲間の中で不安はありませんでしたか。

矢野 受講生は大学生よりも社会人男性が多かった印象があります。受験仲間の皆さんにはジュースを奢ってもらったり、かわいがってもらえたので、不安などはまったくありませんでした。
 講義は基本的に欠かさず出席しました。ただし、学校の定期試験1週間前からのラストスパート期間は通学せずに、Webフォロー(講義動画)を活用しました。

展覧会(学園祭)2日目を休み、行政書士を受験

──授業、定期試験、部活動と学校生活が忙しい中、どのように行政書士試験の学習と学業を両立していたのでしょう。

矢野 僕の中学は私立大学付属の一貫校なので、エスカレーター式に大学へ進学します。高校受験も大学受験もなく、比較的自由で伸び伸びと過ごせる環境です。宿題も少ないので、行政書士試験の勉強時間は余裕で確保できました。
 1週間のスケジュールは、火曜・金曜の夕方はTACの150分の講義を受講しに八重洲校へ。当時所属していた卓球部の活動日、月曜・金曜・土曜は休まず部活に出ました。残りの木曜と土曜の帰宅後、日曜は勉強時間に充てていました。

──学校行事もいろいろあると思います。そのために行政書士試験の学習時間が取れないことはありませんでしたか。

矢野 先ほどお話ししたように宿題が少ないし、行政書士受験を考えて部活もそこまで厳しくない卓球部にしましたので、勉強時間は十分確保できました。ただ、かなり行事が多い学校で、その中のビッグイベントの1つに展覧会(学園祭)があります。この展覧会2日目が行政書士の本試験日でした。そのときは、1日目は展覧会に参加して、2日目は休ませてもらいました。

とにかく毎日必ず『千問ノック』をやること

──矢野さんの行政書士試験の学習方法を教えてください。

矢野 僕の学習方法は、とにかく毎日必ず『行政書士 一問一答式出るとこ千問ノック(以下 千問ノック)※』をやること、でした。受験勉強期間は3月から本試験のある11月まで約7ヵ月と短期間の為、他のテキストにはあれこれと手を出さずに『千問ノック』だけに集中して毎日欠かさず続けていました。記述式と用語理解のインプットをしたら、並行して『千問ノック』でアウトプットするといったように、インプットとアウトプットを繰り返しました。あとは基本テキストと問題集は必ず1回通してやり遂げました。

※『合格革命 行政書士 一問一答式出るとこ千問ノック』 早稲田経営出版/行政書士試験研究会 (編著)

──宅建士の学習で法律用語は多少知っていたと思いますが、憲法や行政法などは初めて学びます。難解な法律用語はどのようにして攻略しましたか。

矢野 憲法、民法、一般知識は宅建士で学んだ範囲なのでスムーズに理解できました。行政法と商法は社会人経験がないので、イメージが湧かず厳しかったです。特に行政法は用語が多く、判例がわかりにくくて苦労しました。
 用語の攻略法として、憲法、民法を中心に判例集を読んで用語を理解するようにしました。ただし、判例集には結果が出ていません。実際の結果がどうなったか興味を持って調べていくうちに、民法はかなり楽しみながら学習できるようになりました。
 用語理解でもう1つ活用したのが新聞です。中学受験の時事問題対策のために新聞を読み始めたのが習慣化していて、株価欄以外、今でも毎日隅から隅まで新聞を読んでいます。おかげで文章理解と政治・経済は特に勉強もせず高得点を取ることができました。新聞では取り上げることがあまりない社会保障といった項目は、テキストを参照しつつ、『千問ノック』でアウトプットしました。

自分なりに考えてノートにまとめる

──全国公開模試や答練(答案練習)の結果はいかがでしたか。

矢野 憲法と一般知識はしっかり勉強していたので合格ラインをクリアできる手応えを感じましたが、行政法の択一式や記述式は最初半分も取れませんでした。そこで「まずは記述式をやろう!」と決めて、最初の5ヵ月間は記述式に集中することにしました。記述式を集中的に学習したあとは、馴染みのない法律用語を覚えていきました。
 ただ、最後の模試まで合格ラインの180点に到達できませんでした。実は合格最低点が160点だと思い込んでいて、直前期になって初めて180点だと知ったのです。それでも先生が「最後は点数が上がっていくから大丈夫だよ」と励ましてくださったので、その言葉をモチベーションにがんばりました。最低点の180点から逆算して、学習時間や学習量の配分を計画的に積算していくのは楽しい作業でした。

──記述式の学習で自分なりに工夫した点やお勧めできる勉強方法はありますか。

矢野 記述式は部分点がもらえるので、先生から「まず問題に対して○か×か、判定できるようになりなさい」とアドバイスを受けました。○か×かの判定は割とすぐにできるようになったので、次のステップとして用語を覚えていくと、安定的に半分以上点数が取れるようになりました。
 とはいえ、記述は最後のほうまで高得点は取れなかったので、他にもっと良い学習法があるのかもしれません。ただ、このようにルールを決めて学習するスタイルは、僕には合っていると思います。
 それよりもお勧めなのは、『千問ノック』を徹底的に活用することです。僕は、『千問ノック』で間違えた問題をすべて書き出しました。そこに、資料で見たり講義の中で出てきた重要文や記述式の解答を一緒に書き込んでノートにまとめておいて、本試験会場に入る前に見ていました。本番でテキストを読んでいるようでは手遅れなので、間違えたところをピンポイントでまとめたノートさえ直前に見ておけば間違いないと考えたのです。「復習をきちんとすること」と先生から聞いていたので、自分なりに考えてノートにまとめておいたのはよい方法だったと思います。

──講義や問題集でわからないところは、どのように解決しましたか。

矢野 教室ではあまり質問しませんでしたが、受講生専用サイト「TAC WEB SCHOOL」のマイページにある「質問メール」は何回か利用しました。教室では気後れして聞きづらいことも、「質問メール」なら質問しやすかったですね。基本テキストで理解が厳しかった商法と一般知識などのわからない部分まで質問しました。

教室講座、Webフォローはどちらもわかりやすい

──教室講座とWebフォローの感想を教えてください。

矢野 TACの教室講座、Webフォローは、どちらもわかりやすくて助けられました。 教室講座のメリットは、重要な科目をまとめて効率よく教えてもらえることです。必要なところを丁寧にわかりやすく教えてもらえたので、理解を深めるのに大変役立ちました。特に商法では頻出問題について先生が詳しく教えてくださったので、他は手をつけずに最低限、商法は教わった頻出のところだけをやって試験に臨みました。
 教室講座に出席できないときに活用していたWebフォローは、教室講座と同じで決められた範囲をきちんと教えてもらえるので、抜けや漏れがなくなる点がよかったと思います。また、Webトレーニングも活用しました。

──夏期特訓オプションや直前オプション、実力チェック模試、超・直前ファイナルチェックなども受講されましたが、感想をお聞かせください。

矢野 商法はほとんど勉強したことがなかったので、重要な部分だけに絞ってやっていました。オプションを受けることで、全体をきちんと確認できました。記述式に関しても、オプションの記述式問題演習で先生には、苦手だった漢字までしっかり添削してもらい本番に役立てることができました。

──スケジュール管理や学習計画はご自分で考えて進めていたのですか。

矢野 スケジュール管理や学習計画は、母と一緒に決めていました。でも予期せぬ学校の宿題や予定変更になることが多かったので、最後は柔軟にやれるときにやるという方向になりました。自分で予定を組むのは得意なのですが、実践するのは苦手なんです(笑)。
 実際には、問題の解説を口頭で説明して母に聞いてもらったり、自分で覚えたことや理解したことを人に聞いてもらうことで、より自分の理解が深まりました。

資格を取得したことでさらに広がった視野

──本試験を受けた手応えはいかがでしたか。

矢野 学校の展覧会と日程が重なったので、クラスメイトや部活の仲間に「行政書士試験を受けるので休むね」と伝えたら、みんなが「がんばれ!」と送り出してくれました。直前期の全国公開模試も最後の答練もそこまで点数がよくなかったので自信はありませんでしたが、みんなに後押しされて「よし、がんばろう!」と一気にモチベーションが上がりました。
 本試験は模試とは雰囲気が違っていたので、受かったのか落ちたのか最後までわかりませんでした。でも、当日の記述式の問題がたまたまその日の朝見ていた問題と似ていたので「これは吉兆だから受かる」と信じました。夜になって配信されたTACの解答速報で自己採点をしてみたら、余裕で大丈夫そうだったので安心しました。
 「落ちたらもう1回チャレンジしよう」、「受かるまでやりたい」と思って勉強を続けてきたのですが、最後になると、やはり「受かるならこの1回で受かってやる」という気持ちになっていました。

──1月の合格発表で合格を知った瞬間の気持ちを教えてください。

矢野 発表までが長かったし、その間に学校行事が山ほどあったので、合格発表の頃には緊張感や不安感はなくなっていました。合格して、もちろんうれしかったけれど、それ以上に両親や学校の友人たちが喜んでくれたことがうれしかったです。

──同級生に行政書士や宅建士のような国家資格を勉強している人はいますか。

矢野 英検(実用英語技能検定)や漢検(日本漢字能力検定)を受ける人はかなり多く、1級の合格者がいます。でも、宅建士や行政書士といった国家資格を受ける人は見当たりません。ただ、同級生に大学に入ったら公認会計士の勉強を始めると言っている友人が何人かいます。

──行政書士試験に合格して何か変化はありましたか。さらに次の資格をめざすことは考えていますか。

矢野 資格を取得したことで視野が広がりました。ニュースで民法が関わる裁判などが出てくると注目して観ています。この先については、理系か文系か、まだ大学の進路も決めていない段階なので、詳しく決めるのは先になると思います。もしも法律系に進むのであれば、司法試験をめざしてみたいですね。

できるなら今すぐ行政書士登録したい

──矢野さんは未成年なので、まだ行政書士登録はできません。今後、どのような将来を思い描いていますか。

矢野 もし登録できるなら絶対に今すぐしたいですね。実は18歳にならなければ登録できないことを、合格するまで私も母も知りませんでした。母は「高校のアルバイトは行政書士でいいね」と言っていたくらいです。捕らぬ狸の皮算用でした(笑)。
 将来的には、ユニコーン企業の大型版「デカコーン企業」はまだ日本には存在しないので、起業して目指したいと考えています。今は定款を決めつつ、会社法を読み込んだり、Excelを学んでみたりと分野も含めて模索中です。
 学校では行政書士受験期間はそこまで厳しくない卓球部に所属していましたが、合格後はやりたかった野球部に入りました。中学ではまず野球に励みたいと思っています。
 将来、資格を活かすとしたら、政治家になりたいと言っている友人がいるので、立候補の際は、必要な届出書類を手伝いたいです。あとは行政書士業務の中でも外国人のビザや在留資格、帰化申請に興味があるので、登録後にやってみたいと思っています。

──最後に中学1年生で行政書士に合格された矢野さんから、資格取得をめざす方にアドバイスをお願いします。

矢野 何かを始めるときは「始めるときにどれだけできるか」が重要なので、最初に時間が必要になります。中学1年生は、まだ学校での学習内容が簡単なので、何か始めるなら中学1年生のときがいいと思います。プログラミングでも資格試験でも、その時期にめざしたい目標のとっかかりをつけておけば、その後の継続は流れに乗ってできるはずです。
 僕が18歳になって行政書士に登録すれば、会社設立や外国人の入管業務などやりたかった仕事が待っています。資格を1つ持っているだけで、将来設計は大きく変わります。僕は行政書士を自分の人生にうまく活かして、今後の自分の強みにしていきたいと考えています。

★お母様にインタビュー★ 「信賞必罰」で、家庭での学習をサポート

「自分らしく楽しめる学び」で見つけた行政書士

 息子は、何事も自分で決める性格です。進学した大学付属の中高一貫校を決めたのも本人でした。自由に伸び伸びと育って欲しいと考えて、教育方針も特に決めていなかったので、親としても付属校の自由な時間の中で、自分らしく楽しめる学びをたくさん見つけて欲しいと考えていました。
 その「自分らしく楽しめる学び」の中で息子が見つけたのが行政書士です。夫が不動産鑑定士なので、最初は父親に内緒で宅建士の資格を取って驚かせてやろうと目論んだようです。幼いころ、法律用語が出てくるコミックを何の抵抗もなくスラスラと読むので、行政書士に方向転換したときも、「この子なら行政書士の勉強をこなせるだろうな」と思いました。

「信賞必罰」に則って30分ゲームOK

 それでも中学受験が終わったばかりの3月初旬は、周囲の友人たちが羽を伸ばしている中、自分だけ夜TACに行くのは乗り気ではなかったようです。乗り気でなかったのは、小学生を対象におもしろく楽しく授業を進める中学受験塾に慣れていたため、仕事を終えた社会人が自ら進んで学ぶ講義に、最初は違和感があったのかもしれません。でも、150分の講義はそれまでの「おもしろさ」とはまた違う「おもしろさ」があることを知って、楽しくなったみたいです。
 学習スケジュールは息子と私の2人で決めていましたが、中学受験のように必要に迫られての試験でもないですし、学校行事や宿題で計画通り進まないときは「本当に受かるのかな」と不安に思うこともありました。私自身も解けない問題ばかりでしたし、息子の申告した進捗状況が疑わしい時も多々ありましたが、そんな時Webトレーニングは正答率が何%かが明確にわかって安心しました。また息子は怠け癖のある自身の性格をよく分かっているようで「信賞必罰」(目標をクリアしたらご褒美、できなかったときは罰を与える)でいこう!と自分から提案してきました。
 息子に教わった「信賞必罰」に則り、問題を20問クリアしたら30分好きなゲームをやっていいことにしました・・・実際はオーバーすることも多々ありましたが(笑)。

法律の知識を、たくさんの人のために役立てて欲しい

 息子は与えられた課題をまじめにコツコツと頑張る優等生ではなく、学校の成績もほどほどな普通の子です。無理なく生きて、特にストレスも感じないタイプのようで、受験勉強中も決して自分からすり切れるほど集中して勉強することは最後までありませんでした。だからこそ半年以上も法律の勉強を続けられて、合格を手にできたのだと思います。
 最近は話題になっている会社がどうやって利益を出しているのかを話したり、起業にも関心を持ち始めているようで、定款から詳細にわたる事項まで決め、私に取得条項付株式をくれると言っています(笑)
 政治と選挙も大好きなので、18歳で行政書士登録をしたら政治家をめざす友人の立候補をサポートしたいと張り切っています。資格を取得したことで、私が中学生の頃には想像もつかなかった未来を思い描いているようです。これからは身につけた法律の知識を、たくさんの人のために役立てて欲しいと願っています。

[『TACNEWS』特集|2024年6月 ]