日本のプロフェッショナル 日本の行政書士

柏崎 幸一(かしわざき こういち)氏
Profile

柏崎 幸一(かしわざき こういち)氏

行政書士法人プロシアス総合法務事務所 代表行政書士

1981年、山形県生まれ。中央大学法学部卒業。卒業後、司法書士事務所を経て、大手派遣会社の法務部にて企業法務に従事。2006年度行政書士試験に合格。2007年4月、独立開業。2023年、事務所を法人化し、行政書士法人プロシアス総合法務事務所を設立、代表行政書士就任。

医療法人業務に絞り、
日本一の従業員研修レベルをめざす行政書士事務所として
「だれでも3ヵ月で即戦力になれるしくみ」と
「ミスを防ぐ標準化」を追求。

 行政書士法人プロシアス総合法務事務所は、医療法人の総合コンサルティングに特化した組織だ。代表行政書士・柏崎幸一氏は、未経験者をゼロから専門家に育てることに心血を注いでいる。なにしろ柏崎氏自身、開業したのが25歳。業界的にも若手の起業家に入る。柏崎氏がどのような経緯で行政書士をめざし、25歳で独立開業を決意したのか。医療法人の総合コンサルティングに特化した経緯も含めてお話をうかがった。

法曹から転じて行政書士をめざす

 高校時代に法律をテーマにしたマンガを読んだことから、法学部をめざして受験勉強を始めたという行政書士の柏崎幸一氏。高校時代は受験勉強とテニスに明け暮れたといっても過言ではない。大学は中央大学法学部に進学。司法試験を受けることが当然という雰囲気の中、もともと勉強好きだった柏崎氏も司法試験をめざし、ほぼ1日中勉強をする日々に突入した。

 「大学時代につらかったのは4月です。新入生歓迎会や新しい友だち、新しい授業でみんながワクワクしているとき、私は5月の司法試験を控えていました。模試の点数を1点でも上げるべく、あくせくイライラの毎日。でも、それだけ勉強しても合格への道のりは遠く、暗くて長いトンネルに入ってしまいました。周囲の学生たちが楽しい学生生活を送っているのがうらやましくて、今でもお花見の季節になると、つらかった受験時代を思い出すんです」

 同級生が就職するのを尻目に、卒業後1年目まで柏崎氏は受験を続けた。その後、進路変更し、学んだ法律の知識を活かせる司法書士事務所と人材派遣会社の法務部に勤務した。

 「人材派遣会社では社内の法務案件にほぼ1人で対応し、毎日難解な契約書と格闘しました。法的トラブルへの対応も数多く経験し、企業法務のエキスパートとしてやりがいのある日々でした」

 そんな柏崎氏だが、実はテニスにはかなり打ち込んでいた。

 「ずっとテニス部でしたし、一時期、進路変更をしてテニスコーチをめざしました。実際にコーチもしていたのですが、右足首を骨折。テニスコーチへの夢は閉ざされ、再び法律の道に戻ることにしました。ちなみにそのときの名残で今では士業・開業医向けにテニスを教えるテニス交流会を定期的に開催していまして、夢は半分叶いました(笑)」

 柏崎氏が受験勉強で培った法律の知識と、企業法務の実務経験を活かすことを考え、取得を考えたのが行政書士だった。そして25歳のときに2006年度の行政書士試験を受け、合格した。

Web集客で顧客拡大に成功

 行政書士の魅力のひとつに実務要件なしで行政書士登録ができる、つまり、すぐに独立開業ができることが挙げられる。士業の中でも開業率が高いと言われるゆえんでもある。

 合格後、柏崎氏が実務家講座に参加すると、多くの先輩から開業の成功事例を見せられた。自分だって企業法務をやってきたから、契約書作成や法人設立なら自信がある。

 「君もできる、開業しよう」

 そんな言葉に乗せられて、若さに任せて2007年4月、柏崎氏は25歳で独立開業を果たした。だが現実は厳しかった。実務経験、人脈、資金、事務所がなく、自宅で1人開業のないない尽くし。開業は順風満帆とはいかなかった。

 「他の人の開業話やうまくいった成功例ばかりに目がいって、足元の現実を見ていませんでしたね」

 今振り返って、柏崎氏はそう思う。よいところばかりに目を向けず、地に足のついた情報収集や顧客データ収集を徹底し、将来を見据えるべきだった。

 「自分が情報を伝えるときはメリットばかり強調しないで、デメリットこそあえて詳しく説明しよう」

 そのとき誓った思いは、現在に至る。挫折から学んだ一歩だった。

 開業時点では、企業法務以外の行政書士業務は一切未経験。やったことのない仕事が来たら、本を読んで勉強する、あるいは先輩に依頼して見よう見まねで覚えた。人脈を広げるために異業種交流会や名刺交換会にも参加した。

 若手起業家には、若手にしかできない戦略があるはずだ。柏崎氏が注目したのは以前から興味を持っていたWebマーケティングだった。独学とセミナー受講でWebマーケティングの知識を蓄積してきた柏崎氏は、開業後、まず事務所のWebサイトを立ち上げ、業務内容ごとにWebサイトを作り込んだ。なにしろ開業した月は1日15時間活動して月収ゼロの状況。時間だけはあった。そこで開業3ヵ月間、ほぼWebサイト運営に時間を費やしていると、当初は5割程度だったWebからの集客率が、徐々にWebにシフトして9割近くになった。

 「若手はWeb集客のほうが顧客拡大できる」と 確信した柏崎氏は、Web集客に多額の広告費を投入。Web集客による事業展開に集中した。

 Web集客で柏崎氏が考えた戦略の1つに、「Web上で自動的に集客できるしくみ」作りがある。集客とアフターフォローを自動化していくと、会社設立、契約書作成、社団法人設立の3つがうまく軌道に乗った。中でも社団法人設立は収益性が高いので、事務所の経営基盤安定化につながる。

 「法人設立に専門特化していく中で心がけたのは、一つひとつ丁寧に、お客様にわかりやすく説明することでした。そして会社設立、起業家支援の依頼は月7件までと決めて、それ以上は受けないようにしたのです」

 努力と配慮を重ねていくと、着実に売上が積み上げられるようになり、開業5年目にはスタッフ数13名を数えるようになった。

99.99%が医療法人業務

 法人設立と契約書作成に強みを持つ柏崎氏は、2008年12月の一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(社団法人法)の施行前からWebサイトで社団法人設立センターを立ち上げ、受け入れ体制を整えた。その結果、改正後は社団法人の新規設立の申し込みが殺到。全体の約80%を占めるようになった。その中で、社団法人に近い法人として依頼が多かったのが医療法人設立だ。

 「当時から医療法人設立を受託する行政書士はあまりいませんでした。しかもクリニックは個人事業主なのでWebで集客しやすい。そこで毎月医療法人設立セミナーを開催すると、お客様がどんどん来るようになって、医療法人設立が突出していったのです」

 2016年には医療法人設立の実績総数は200件を突破。事務所は医療法人手続特化に舵を切った。当時の業務比率は、医療許認可が約60%、運送・倉庫等の許認可が約30%、その他の法人設立・契約法務申請が約10%だったが、現在では99.99%が医療法人とその他法人設立が占めるようになっている。

 今は紹介だけで膨大な依頼が舞い込む医療法人案件。紹介は税理士を中心に、弁護士、社会保険労務士など専門家からが多い。

 「特に税理士からの依頼が多いのは、税務と法務が関わる部分をないがしろにすると、最悪、顧問契約解除になってしまうからです」

 税理士にとって医療法人案件でもっとも多い悩みは、都道府県ごとの「行政手続ローカルルール」だと柏崎氏は指摘する。都道府県ごとに異なるルールに翻弄され、法務面まで手が回らないため問い合わせが多く寄せられてくる。セーフティネットとして、柏崎氏は専門家のためのチャットグループを作り、その中で逐次相談対応も行っている。税理士には、直近の事例を集めたオンラインセミナーも開催するようにした。

 「医療法人手続業務で全国にお客様がいるのは、かなりレアだと思います。全国のローカルルールを熟知していることが絶対的な差別化ポイントです」

法律未経験から育てる研修プログラム

 一般的な行政書士が医療法人設立手続を受けるのは年間2~3件と言われている。柏崎氏は、定期的な医療法人手続セミナーで、毎回20名前後の参加者を集める。聴講した開業医はすでに3,000名超。現在ではオンラインセミナーも開催し、全国津々浦々、あらゆる地域から医療法人手続の相談が寄せられる。

 医療法人業務に特化していくと、次第に受注に対して業務処理が追いつかなくなっていった。喫緊の課題は、需要と供給のバランス。そこでひらめいたのが、ずっと温めてきた「自動化」の活用だった。もともと開業1年目には集客とアフターフォローはすでに自動化できていた。広告やセミナーからの資料請求に対して、自動配信のステップメールで無料メールセミナーの特典を付ける。ステップメールはメールマガジンとは違い、送る側が逐一記事や返信を書き続ける必要がない。サイトアクセス、資料請求、ステップメールの流れで、自動的、継続的に長期にわたって「自分で動かずに」連絡が取り合える。そして気心しれたときに依頼が来るというしかけだ。

 「いかに自分で動かずに集客できるか」

 需要供給曲線から必然だったその戦略は、現在、組織の基盤となっている。

 2023年、柏崎氏は行政書士法人プロシアス総合法務事務所(以下、プロシアス)として事務所を法人化。中には広島県、和歌山県といった地方在住のスタッフも活躍している。

 法人化した理由について、柏崎氏は「日本一教育熱心な事務所でありたい」という思いを口にする。

 「基本的に『スタッフ教育投資No.1』の事務所をめざしていて、2019年から教育体制の整備を始めました。教育によって専門知識の豊富なスタッフが自分の人生を変え、お客様の人生も変えていく。そのような事務所でありたいと考えました。スタッフに投資することは、クライアントの人生と、クライアントの周りの地域環境、さらには日本の地域を変えていくことにつながると考えています」

 教育環境の整備は、所内の教育だけでなく入口の採用にも広がる。プロシアスの採用の最大の特徴は「未経験優先採用」。全員未経験から採用し、わずかな期間でプロフェッショナル、つまり管理職・高度専門職に育てる。

 教育プログラムの特徴は、自然の流れで成長していける点にある。まず30分~3時間の教育音声ファイル100個以上を順番通りに聞くと、複雑な法務書類が作れるようになる。それを業務中に何度も視聴可。さらに1ヵ月で仮想案件10件の法律書類を作成し、自分で添削と解答。これをひたすら繰り返していくと、多様な知識と経験が積み上がっていく。また、スタッフのための自動配信の教育ステップメールを毎日配信。「先輩が動かずに」教育が完了する。

「いかに先輩が動かずに社内教育が自動的に完了するか」を徹底したやり方だ。

柏崎氏はさらにこう続ける。

 「業務上では法務相談対応のひな形メールを100種類以上、1つの業務処理に80~200項目のチェックリストを用意して、実務に落とし込んでいきます。その後はOJTとセットで最大300時間のプログラムを用意。さらに1~3ヵ月の研修中に、仮想実例に基づく実際の書類作成を完了します。こうすることで、他社が2~3年かかるOJT期間をわずか3~5ヵ月で終えられます。その間、実例にも触れるので高難易度案件にも対応できるように成長していきます。

 なにしろ医療法人業務は、ものすごくニッチな世界。極端にいえば所内には私以外経験者がいないので、みんなが未経験者。だれがやってもいいし、だれが参入してきてもいい。その前提で、すべての教育研修体系を作り込んでいます。研修するのが大好きなので、研修用教材はどんどん増えています(笑)」

 突出したハイスペック、ハイスピードな教育体制。これを実現することで、一気に未経験からプロフェッショナルに引き上げていく。

1日3回の業務進捗確認会議

 育てる軸はもう1つ。毎日3回の業務進捗確認会議にある。

 「10時、12時半、16時。1日3回Webミーティングを行い、10時は今日1日の予定から方向性確認、12時半はでき上がったメールや納品物の確認、16時の段階で残り2時間の優先順位を決め、やることとやらないことの取捨選択をします。質問もその3回ですべて行うので、その時間をめざしてみんな書類を作り、質問事項を固めていきます。法律系事務所あるあるの『先輩が忙しそうで質問できない雰囲気』をなくすため、そして、忙しい上司が自動的に部下の進捗確認するためのミーティングです」

 1日3回のWebミーティング動画は録画され、さらに研修動画に編集され、毎日配信される。教育担当上司の教育時に話す内容も、チャットツールですべて文字化し、教育の均一化を図る。

 めざすのは、究極的な業務の均一化、標準化。内部の書類作成だけでなく、お客様対応チームもすべてのメールがテンプレート化されている。

 「いろいろな人がいろいろなメール内容を好き勝手に作ると、その内容確認が一番大変になります。そこでメールテンプレートをひたすら作って、みんな同じメールを送れることで解決しました。最初に来る相談は『法人化したいんだけど、医療法人と一般社団法人のどちらを作るべきか?』とほぼ決まっているので、大枠で聞かれそうなことはメールテンプレートに落とし込んでおき、回答は均一化されています。ヒアリング表も必要書類一覧もすべて動画解説があるので、疑問や相談のある方にはそれをメールに添付して送ればいい。わざわざ説明する必要もなく、だれでもできるんです」

 イレギュラーな相談メールが来た場合も、まずはセミナーへの参加を促し、参加してもらえれば3万円のセミナー参加を無料にするサービスで顧客にフィルターをかける。

 「すべてのフローでテンプレート化が可能なのは、入口でフィルターをかけているからです。依頼者には最低1回は医療法人セミナーや講演を聞いていただき、質疑応答で対応します。こうしてある程度均質な基礎情報を依頼者が蓄えた上で相談メールを送っていただく。その後、相続、閉院、事業承継、MS法人(メディカルサービス法人)、医療法人分院設立といった詳細な内容で、月1回の講演を設定します。大枠の分野の大枠の情報はセミナーで話しているので、実際に依頼に落とし込まれる段階では大枠からはずれた質問はまずありません。

 「もう1つ心がけているのは、私と聴講者が先生と生徒の関係を作ってから契約締結すること。スタッフが開業医の先生にアゴで使われて疲弊しないように弊社のサービスに敬意を持ってから申し込んでもらえるように配慮しています」

 効率的な業務環境で、サクサク動く業務。「自分が動かないで自動的に回っていくしくみ」は、開業当初からWebマーケティングなどを駆使して、業務の標準化、自動化に取り組んできた柏崎氏の努力の結晶と言える。

 徹底した標準化と充実した研修の成果で、ここ2~3年に入社した新人スタッフは30日の研修で2~3年分の知識と情報を得られるようになった。これこそ「入ったら即戦力」だ。

 「医療法人手続でこれだけの組織規模の行政書士事務所は、ほとんどありません。しかもだれに頼んでも均質のサービスを提供できる。かつ対応が早い。だから紹介が積み上がっていくんです」

行政書士法人に法務事務を行う税理士有資格者が在籍

 有資格者を多数抱え(行政書士有資格者7名、税理士有資格者1名)、平均年齢35歳、男女比1対2。スタッフの前職はお菓子メーカーの営業、カード会社のカスタマーサポート、会計事務所の勤務経験者、司法試験受験生、SE、医療事務、主婦…。プロシアスでは、様々な前職の未経験者がプロフェッショナルとして活躍している。その中でこだわっているのは、開業医にきちんと対応できる社会人経験を持った経験者採用だ。

 「新規医療法人手続業務は、年間総数250件超。相談件数はその約3倍なので800件あまりです。ものすごい顧客数なので、採用を通年実施しても追いつかない状態です。Webサイトからの業務依頼も止めています。料金も高めに設定して、防波堤にしているぐらいです」

 注目したいのは、法人内に法務業務を行う税理士有資格者が在籍している点だ。税理士有資格者は、デューデリジェンス、その後のスキーム策定、手続をセットで担当している。税理士有資格者を所内に置いたのは2年前。医療法人設立にあたり、必ず依頼者から「それって、税金面で問題ないの?」と聞かれることからだった。

 「医療法人手続分野では事業計画策定や数字関係の書類等、書類を出す前段階で税務的にも法務的にも合致していることを確認しなければ、先に進められません。M&Aもたくさん扱っているのですが、決算書を見なければその医療法人の経営状態は把握できません。しかも税務・会計的にはOKであっても、法務的にはNGというケースがとても多い。それを知らずに『メリットがありますよ』と顧問税理士が提案してしまい、のちのち顧問契約解除になるケースが多いと聞いています。

 このように医療法人手続は、税務・会計と法務が密接に絡む特殊な世界。医療法人かMS法人かの選択、相続問題、事業承継問題、どれをとっても税金が絡む。節税を念頭においた依頼が7~8割を占めていますから、税金に詳しくないと、行政手続を完結できないこともあるんです」

 行政書士は、節税対策コンサルティングをするわけにはいかない。しかし、行政書士法人といえども、税務的に問題ないスキームか否かの判断が社内でスピーディーにできなければ、数百件の医療法人手続は受けられない。それゆえ会計知識と法務知識を合わせ持つ行政書士事務所が求められているのが現状だが、それに対応できている事務所がないと柏崎氏は言う。

法律系事務所で活躍する会計系人材の必要性

 医療法人設立手続に必須になってくるのが会計系人材の目線。だが、果たして行政書士法人に入ってくれる税理士試験の科目合格者や日商簿記検定試験の合格者がいるかどうか。柏崎氏は、税理士事務所経験者に魅力を感じてもらえるように、入社前に業務体験企画を行っている。

 「まず会社説明会、事務所見学会、業務体験セミナーに参加し、そのあと求人応募いただくというフローです。業務体験セミナーでは、まず実際のクリニックの価格算定やM&A交渉などの業務を体験してもらいます。

 そこで法律系事務所でも会計系のスキルが必要で、おもしろい活躍ができるとわかってもらえれば、採用は成功です。医療法人業務の場合は、法律と会計、両方の知識を持ったハイブリッド型人材が必要です。それは私の著書『はじめて医療法人と顧問契約する税理士が読む本』(※1)でも書いています。TACは会計系資格の受験生が多いので、そういう方にはぜひ興味を持っていただきたいですね」

 また会計事務所や税理士から紹介される難解な医療法人案件では、特殊な法的スキームを組むケースが多い。相続、分院、解散、事業承継、すべての場面で会計知識と法律知識が求められる。その中には、医療法人を解散して個人クリニックに戻るスキームがある。

 「医療法人解散・医療法人から個人クリニックへの変更に特化したスキーム本『年間売上5000万円未満のクリニックはいますぐ医療法人を個人医院に戻しなさい』(※2)を出版しているのは、全国ではたぶん私だけ。この本を読んだ税理士から多くの依頼がきます」
※1・2は、kindle版

 法人化に関して法的部分を抑えた上で著書を執筆している税理士は大勢いる。しかし、多店舗展開やオンライン診療での問題点といった、さらにその先にある収益を上げるための法的問題までは追いかけてはいない、と柏崎氏は指摘する。

 「法人化で終わっているケースがほとんどです。株式会社主体の医療法人を作る、別事業を行う、法人から個人に戻る、医療法人格だけ譲渡して自分は個人に戻る……。医療法人にはいろいろなスキームがあるのに、法人を活かしきれていないんです」

 今後の組織計画では、毎年3~5人ずつ増員する計画だ。その中で、今後の採用でこだわっているのも、もちろん会計系人材だという。

 「弊社は研修が充実しているため、専門知識がなくともだれでもすぐに即戦力になれます。その上で幹部候補として求めているのは日商簿記検定2級から税理士試験の科目合格者。そこが一番求めているターゲットゾーンです」

 弊社では3ヵ月即戦力化研修で複雑な法務事例も会計出身者に教えられる。会計知識に加え法務のプロになり唯一無二の人材になれる。そこを会計人材にアピールしたいと、柏崎氏は話している。

働きやすい環境を支える制度が充実

 プロシアスの特徴の1つに、働く環境を支える制度がかなり手厚いことがある。お堅いイメージの法律系事務所とは思えないほど、所内はフリーダムな空気があふれている。まず子育て世代にかなり手厚い。子どもの同伴出勤可で、育児中のスタッフのためのキッズルームが用意されている。管理職には在宅勤務でベビーシッターを頼める制度もあるし、子どもの急な発熱などで当日欠勤も大丈夫。シフトも自分で決めるので雨で子どもの運動会が流れたら休みを変えることもできる。基本的に時短勤務は残業なし、在宅勤務への急な変更もOKだ。そのため働きながら行政書士資格取得をめざすこともできる。もちろん行政書士資格取得のために受験中のスタッフの通学は自由。ときにはすぐ隣の横浜スタジアムでの野球を見ながら、バーベキューを楽しむこともある。自由な空気の中で、多様な人材が働きやすいようにサポートする制度が充実している。

 「広島県と和歌山県で働くスタッフは完全在宅勤務で、和歌山県にいるスタッフは子どもを脇に抱えながら仕事しています。近々、地方在住で法律知識と会計知識のある方向けに、完全在宅勤務のスタッフ採用専用サイトを作っていきたいと考えています」

 開業当時からWebマーケティングを積極的に導入し、立ち上げたサイト数は法人と個人事務所併せて現在50~60。求人サイトだけで4~5もある。以前はすべて柏崎氏が管理していたが、さすがにやりきれなくなってサイト専任スタッフを置いた。

 「経営の分岐点になりそうな手続に絞り、標準化できる範囲で、だれでも即戦力になれるしくみ前提で提供できるサービス」。それが、柏崎氏が考える究極のサービスだ。

 「統計的には医療法人の設立は、減ることはないでしょう。ただ法人化の受託件数は競合で減っていくと思うので、クリニック閉院手続、閉院計画の立て方といった、相続やM&Aとはまったく違う軸で新商品を作っていこうと考えています」

 医療法人を作ったり、M&Aで一緒になったり、分割で分かれたり、法人から個人に戻ったり、最後に閉院して閉めたり。医療法人絡みの手続をすべて標準化して提供していく。「そのための教育に日本一熱心な行政書士」と、柏崎氏は自負している。

 最後に士業の先輩として、受験生にメッセージをお願いした。

 「受験勉強中の皆さんは、今つらい時間を過ごしていると思います。私自身、ひたすら勉強ばかりで大変つらかった時代があったので、その気持ちは痛いほどよくわかります。ひとつ伝えたいのは、今のつらい時期は10年後に必ず活きてくるということ。専門知識があれば自分の人生を変えられるし、相手の人生も変えられる。地域環境を幸せに変えていくことだってできる。だからこそ、今この瞬間を無駄にしてほしくないですね。

 税理士、公認会計士をめざしている方は、会計事務所で学ぶだけでなく、プラスでもう1つ法務スキルを短期間で手に入れれば唯一無二の存在になれることを忘れないでください。弊社のように短期間でいろいろなスキルを学べる事務所は、キャリア形成上、非常に有意義です。M&A、事業承継、補助金申請、事業計画、閉院コンサルティングなど、税理士が絡む領域を一から丁寧に教えます。税務会計をめざして勉強中の方には、ぜひ行政書士法人プロシアスを選択肢の1つに加えていただきたいと思います。もし興味を持たれたら採用説明会や事務所見学会(参考:採用ページ)に参加いただければ私が直接キャリアプランをお話しします。また、行政書士になりたい方は、著書『行政書士で開業してはいけない』(※3)や、定期的に開催中の同テーマのセミナーをおすすめします。行政書士の開業の本当の実態を知っていただけるはずです」

※3は、kindle版

 「教育ならどこにも負けない」。挫折をバネに、柏崎氏は今日も向かうところ敵なしの強さで突き進んでいく。


[『TACNEWS』日本のプロフェッショナル|2024年6月 ]

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