特集 2024年度国家総合職試験合格者インタビュー
どのような立場の人たちにとっても
暮らしやすい国を作っていきたい
国家総合職とは、国家行政の中枢を担う幹部候補。政策の企画立案、法案の作成、予算編成などで活躍することが期待されます。今回は、TAC・Wセミナーの受講生で2024年度国家総合職試験に合格した内定者3名に、官僚をめざしたきっかけや、TAC・Wセミナーの活用方法、これから実現したいことなどをお聞きしました。
※WセミナーはTACのブランドです。
左から
■小沼 諒(こぬま りょう)さん
東京都出身
慶応義塾大学経済学部
受講コース:2年経済本科生(教室+Web講座・新宿校)
受験区分:教養
内定先:総務省(行政管理)
■宮本 純那 (みやもと じゅんな)さん
東京都出身
早稲田大学政治経済学部
受講コース:政治・国際本科生(教室講座・早稲田校)
受験区分:教養
内定先:農林水産省
■五十畑 伊織(いそはた いおり)さん
群馬県出身
国際基督教大学教養学部
受講コース:1.5年経済本科生(Web通信講座)
受験区分:経済
内定先:内閣府
企業の利益よりも自分の信念を貫く仕事がしたいと思った
──国家総合職への内定、おめでとうございます。皆さんが国家総合職をめざしたきっかけを教えてください。
小沼 高校生のとき、社会科の授業で少子高齢化などの社会課題について学んだのがきっかけです。持続可能な開発目標(SDGs)のことも知った時期だったのですが、「今の豊かな日本の生活を維持していくためには何ができるのだろう」と考えるようになりました。そして、大学で経済学を勉強するうちに、「公益を追求する行政官になりたい」という思いが強くなりました。
五十畑 私は自分の小学校時代がとても楽しかったので、小学校の教員になるつもりでした。大学では教員免許を取得し、塾や小学校でもアルバイトをして多くの子どもたちと接したのですが、家庭や地域環境で学力格差が生じることに気づき、問題意識を持ちました。それで、国家公務員になったほうが、この問題に適切にアプローチできると考え、受験を決めました。
宮本 「自分はどんな仕事をしていきたいか」と考えたときに「利益に縛られることなく、日本をよい方向に持っていきたい」と思ったからです。大学時代にアルバイトや民間企業への就職を経験する中で「もっと相手のためにいいものを届けたい、自分の信念を貫きたい」という気持ちが強くなり、それが実現できるのが国家公務員だと気づきました。
──国家総合職受験を決意した時期と、独学ではなくTAC・Wセミナーを選んだ理由を教えてください。
小沼 大学2年生の5月にTACで勉強を始めました。サークルやアルバイト、ゼミや友人との交流、就職活動など大学生の間にやりたいことがたくさんあったので、早めにスタートして時間の貯金を作っておこうと思ったからです。TACを選んだのは、経済系の勉強サークルの先輩でTACに通って国家公務員になった方がいたからです。試験や官庁訪問の情報も充実していると聞いて決めました。
宮本 私は大学3年生の4月です。周りに官僚をめざす仲間がおらず、情報を手に入れたかったので受験指導校に通おうと思いました。TACを選んだ理由は、春の試験で政治国際区分を受験しようと思っていて、政治国際区分があるのがTACだけだったからです。また、TAC早稲田校は大学の目の前にあるので、通いやすさも決め手になりました。
五十畑 春の1次試験が始まる約半年前の、大学3年生の8月に受験を決めました。とにかく時間がなかったので、オンラインでも受講できて大学の授業と両立がしやすい、講義のラインナップが充実している、合格者が多い、などの観点から受験指導校を探しました。TACは、講義内容はもちろん、一番不安だった人事院面接や官庁訪問対策のサポートが手厚いことに魅力を感じて入会しました。
業務説明会への参加で「官僚として働く」イメージが明確に
──皆さんが受験区分を選んだ際のポイントを教えてください。
小沼 経済学部なので春試験の経済区分を受験しようと思ってTACに入りました。そこで、春試験に先駆けて行われる秋試験の教養区分があることを知ったのです。教養区分は専門試験が課されない上に、早く始めた分、時間の余裕があるので、両方を併願しようと思って勉強を始めました。結果、先に受けた教養区分で合格することができました。
宮本 私は中学受験を経験しているのですが、中学受験の算数と教養区分の1次試験で課される数的処理は共通する部分が多いことに気づきました。それで教養区分で受験することにし、合格することができました。もし不合格だった場合は、自分が大学で勉強している内容と一致している政治国際区分を受験するつもりでした。
五十畑 受験勉強を8月に始め、教養区分の1次試験の申し込み締め切りがすぐだったので、念のため過去の問題を解いてみたのですが、1ヵ月程度で対策できるような難易度ではなかったため受験を諦めました。春試験は、お二人と同じように自分が大学で専攻している分野が多く出ている経済区分を選択しました。
──受験勉強を進める上で、どのようにモチベーションを維持しましたか。
小沼 TACには他の人よりも早く入ったのですが、時間に余裕があるからこそ「なんだかやる気がしない」という日がありました。そのようなときは「勉強から逃げたまま試験当日を迎えて不合格になる」という悲惨な未来をあえて想像し、「現実にしてはいけない」と焦りの気持ちを生み出すことによって、勉強を続ける力にしていました。
宮本 私は好きなグループの歌に元気づけられていました。特に気に入っている曲が前向きな内容の歌詞だったので、勉強前にじっくり聴いて「私もがんばろう」と気持ちを切り替えていました。また、興味がある省庁の業務説明会に行くのも効果的でした。すてきな先輩方がたくさん登壇されているので、「あんな風に働いてみたい」と憧れの気持ちが湧いてやる気が出ました。
五十畑 担任講師が実施するTACのホームルームがあるのですが、そこで「各試験での合格ボーダーライン得点」の一覧を見せてもらえます。それを参考に、基礎能力試験と専門試験で各分野何点取るかの目標を立て、過去の問題を解くときや模試でその目標を超えることをモチベーションにして対策を行いました。
──受験期間中に心がけていたことや、おすすめの勉強法、書籍等はありますか。
宮本 勉強をするときは、大学の授業などで出たプリントを裏紙として20枚ほど用意して、演習問題を解いていました。すべてナンバリングして最終的に300枚ほどになったので「こんなに勉強したんだから大丈夫」という自信につながりましたね。
小沼 教養試験の対策時期は、「講義を聞いただけで満足する」状態を避けたかったので、アウトプット重視で勉強していました。TACの問題集は確実にできるようになるまで数回解き直しました。講義中にとったメモはiPadのノートに保存して、電車で移動するときには必ず見直すようにしていました。
五十畑 満点をめざすのではなく、得意な分野で落とさないようにすることを心がけました。具体的には、過去問演習が特に大事だと考え、試験の問題傾向がわかり、実際にどのような問題が出そうか予想できるぐらいまでやりました。おすすめの勉強法は、自分なりに工夫して、楽しいと思って勉強することです。科目が多くてしんどいですが、工夫して何か覚えることや問題を解くことを楽しむことができれば、継続して対策できると思います。
対面とWebのメリットをどちらも最大限利用できた
──通学の方はライブ講義とWeb講義視聴の使い分け方、通信の方はWeb講義の進め方について教えてください。
小沼 1年目で教室講義を受けて自分の勉強法を確立し、2年目からはWeb講義に切り替えました。Web講義は移動中に講義が見られる点と、一時停止や倍速にできる点がよかったです。苦手な数的処理の学習も、教室講義だとすぐに解説に進んでしまうのですが、Web講義なら一時停止して自分が腑に落ちるまで手を動かしてから次に進むことができました。講義のレジュメはWebでアップロードされるので、iPadに取り込んで自分のメモを上書きできるのも便利でした。
宮本 アルバイトの日程が固定だったので、なるべく教室講義を受け、スケジュールが合わないときはWeb講義にしていました。高校の授業で一度習っている分野などは、教室で普通に聴くよりも倍速でインプットする方が効率的なので、暗記系の科目はWeb講義で受けるようにしていました。
五十畑 私の場合は対策できる時間が限られていたので、Web講義のみを受けていました。1から10まで全部見ず、自分に必要だと思ったもののみ視聴すること、小沼さんと同様に、講義を見ただけで終わらせず、そのあとのアウトプットまで絶対に行うことを心がけていました。ちなみに、私の場合は、講義のメモはテキストにそのまま書き込み、問題演習はA4サイズのノートで解いていました。このサイズのノートは一つの見開きにたくさん書くことができ、見直しもしやすいので重宝していました。
▲五十畑さんの解説冊子とノート。解説冊子は付箋を多用し、ノートも自分なりにまとめるなど工夫されている
──官庁訪問攻略のポイントは何だと思いますか。
五十畑 面接シートを時間の許す限り添削してもらい推敲すること、面接練習を積極的に行い、アドバイスをもらうことだと思います。また、すべての方におすすめできる方法ではないのですが、どうしても入りたい省庁があるのならば、一本に絞って訪問するのも一つの方法だと思います。私の場合は、大学で経済学の授業を受けたときに、内閣府の研修で計量経済学を取り入れているという情報を知り、そこから内閣府に興味を持ちました。他の省庁の説明会にも足を運びましたが「どうしても内閣府で働きたい」と考え、内閣府のみを受けました。志望先が1つだと、志望理由に100パーセントの熱意が込められますし、運がよければ1日で官庁訪問が終わるので、他のやりたいことにも時間を使うことができ、個人的にはとても満足しています。
宮本 着飾らず、ありのままの自分を伝えることが重要だと思います。私の場合、官庁訪問で最もリラックスして面接を楽しむことができたのが農林水産省でした。先輩方の人柄も温かく、業務内容も自分のやりたいことに合っていると感じました。「自分がやりたい仕事」と「自分に合う仕事」が合致するとは限らないので、訪問先で自分が背伸びしていないか、先輩方の雰囲気に溶け込めそうか、冷静に見極める視点も持つべきだと考えています。
小沼 言語化能力と応答力が大切だと思います。官庁訪問では、自分のこれまでの経験や、自分はどのような人か、将来どのようなことをしたいかなど、様々なことを説明することになります。また、職員の方から唐突に政策についての考えを聞かれたり、意表をついた質問をされることがあります。その場合、核心に迫る答えを即座に打ち返さなければなりません。普通の日常会話からは何歩も切り込んだやり取りをする必要があるので、その心構えと練習はしていくべきだと思います。
──民間企業での就職活動や、他の公務員試験との併願はしましたか。
宮本 官庁訪問対策をしたかったので、数を絞って民間企業への就職活動を行いました。実際に面接を受けてみて「利益を追及するよりも、立場の弱い人や、マイノリティの人にとっても暮らしやすい社会を作りたい」という気持ちが以前にも増して強くなったので、国家総合職として働きたい気持ちがブレることはなかったです。
小沼 民間企業は金融機関とコンサルティング会社を回り、他の公務員試験は新方式の東京都庁を受けました。就職活動中に、コンサルティング会社が省庁から依頼を受けることもあると知ったのですが、外部から関わるよりも、直接、政策立案に関わりたいと思ったので、私も宮本さんと同じく国家総合職への志望度がより高まりました。
五十畑 絶対に内閣府で働きたいと思っていたので、民間企業や他の公務員試験との併願は一切しませんでした。もし国家総合職試験に不合格だった場合は、大学院へ進学し、院卒での再受験を考えていました。
学業、アルバイト、サークルなど、やりたいことに全力投球しよう
──国家総合職試験を受けるにあたり、経験しておいてよかったと思うことがあれば教えてください。
五十畑 大学で学業を自分なりにがんばったことです。大学の授業の中で内閣府の存在を知ることができたのも、数学や経済学に関心を持って自ら動いていたことが大きいと思います。大学生活や授業の中に志望先を決める情報があると思うので、まずは学業に真剣に向き合ってほしいです。他には、大学入学前にポーランドに留学していたことや、英語のスコアを取っていたこともよかったです。やっておけばよかったのは、省庁やTACなどで開催される説明会に早めに参加することです。私が受験生のときは、試験のことばかり気になっていて、その先の官庁訪問まで考えられていなかったため、余裕のあるスケジューリングができたらよかったなと思っています。
宮本 私は大学1年生から4年間、中学受験を指導する塾で講師のアルバイトをしていました。社会や企業の仕組みを知る上でも勉強になりましたし、保護者の方と頻繁にお話をするのでビジネスの場でも通用する言葉遣いを身につけることができました。大学生活とアルバイト、受験勉強を両立させるスケジュール調整力も磨かれたと思います。もう少し力を入れればよかったと思っているのは、民間就活です。面接対策で受けたのですが、もっと本格的に取り組んでいたら、自分の適性や志向に早く気づくことができ、官庁訪問の順番も変わったと思います。
小沼 大学のゼミ活動に熱心に取り組んでいてよかったと思っています。社会課題や政策について教授から指導を受けながら他の学生と議論し、知識獲得や論文執筆についての機会を得られたことはとても有意義でした。また、私も宮本さんと同じように、大学4年間、同じアルバイトを継続しました。ターミナル駅のカフェで働いていたのですが、シーズンごとに変わるメニューを覚え、日々多くの人を接客することで処理能力が上がった気がします。経験しておけばよかったと思うことは留学です。留学経験者の方とお話しすると、語学力はもちろん、社交性があり視野が広い人が多いと感じるからです。入省後、留学のチャンスがあれば挑戦したいと思っています。
──TAC・Wセミナーを選んでよかった点はありますか? 講師とのやりとりで印象に残ったエピソードもあれば教えてください。
小沼 教材の質がとてもよかったです。私は宮本さんと違って中学受験の経験がなく、時間的にもハードな教養区分の数的処理に苦手意識がありました。しかし、TACでは問題量が豊富な上に良問が厳選されているので、問題を1つ解く度にいろいろなエッセンスを学ぶことができました。他の科目も過去の問題とそれに対する丁寧な解説で力を伸ばすことができましたし、合格者の復元答案、官庁訪問体験記には助けられました。また、模擬面接で面接官の方から様々な角度から深い質問をしていただいたことが、人事院面接や官庁訪問で役立ちました。
宮本 TACの担任カウンセリングを自分のペースメーカーにしていました。月に一度、担任講師と一緒に勉強のスケジュールを立て、振り返りをしながら次に進むというやり方が自分に合っていたと思います。また、人事院面接や官庁訪問で話すための「学生時代に力を入れていたこと」は、自分一人でまとめるのは難しいので、担任カウンセリングで相談できたことがありがたかったです。
五十畑 試験の合格ボーダーラインや人事院面接、官庁訪問対策など、内定を獲得するために必要なほとんどの情報を入手することができました。特に、面接・グループディスカッション対策では、担当講師の方から多くの的確なアドバイスをいただき感謝しています。
例えば、面接カードの記入漏れがあったときは「公務員になるなら細かいことこそおろそかにしてはいけない」と教えてもらいましたし、初回の模擬面接では「このままでは受からないよ」とハッキリと指摘してもらえました。そこから、書類一つひとつを丁寧に書くようになり、面接官にマイナスイメージを与えるような口癖をやめたり、質問に対する答えを簡潔に述べる練習をしたりするようになりました。国家総合職として働く上でも大切なことを学べたと思います。
長い試験期間を乗り越えるため、TACを「居場所」として使ってほしい
──入省後、実現したい夢や目標を教えてください。
五十畑 目の前の仕事の一つひとつに真剣に向き合うことで、結果的に社会によい影響が残るような仕事をしたいです。
宮本 海外に行くと実感するのが「日本で食べられないものはほとんどない」ということです。それは決して当たり前のことではなく、日本の豊かな自然と、「食」を支えるために働くたくさんの人の存在があることで、多様な食の選択肢が守られています。「安全でおいしい日本の食事」を、自分の孫の代にも伝え、世界中の人に味わってもらうために、今できることを考え、実行していきたいと思います。
小沼 少子高齢化や国際競争力の低迷によって、国民生活の水準が低下してしまうことに対して危機感を抱いています。それらの問題を、行政サービスの向上により対処しつつ、効率的で持続可能な行政を築いていきたいです。
──これから身につけたいスキルはありますか。
宮本 国際交渉に携わりたいと思っています。いろいろな国の文化を吸収しながら、英語をはじめとする外国語スキルを身につけたいです。
五十畑 国家総合職は、仕事の性質上、多くの場面で説明責任を果たさなければなりません。そのためには、想像力を豊かにし、わかりやすく説明し、説得する力を鍛えていきたいと思っています。
小沼 若手のうちは事務処理を通じて行政や政策に関する知識やノウハウを身につけていかなければならないので、知的体力を高めていきたいと考えています。
──最後に、国家総合職をめざす方にメッセージをお願いします。
五十畑 国家総合職を志したときの気持ちを忘れないようにしてください。私の場合は、内閣府のことを知り、「ここで働きたい」と願った日のことをよく思い返していました。「なりたい気持ち」を大事にすることは、試験や官庁訪問の多くの場面で役に立つと思います。
宮本 私は大学に国家総合職をめざす友人がいなかったので、TACで同じ目標を持つ仲間に出会えたことはとてもラッキーでした。仲間と相談し、励まし合うことで、あきらめずにゴールまでたどり着けたと思います。途中で「やっぱり民間に行こうかな」と思う時期があるかもしれませんが、一度きりの人生、やりたいことをやってみましょう。周囲の力も味方につけ、がんばってください。
小沼 試験勉強を始めてから内定まで、長く辛い道のりが続くと思います。特に官庁訪問の時期は、周囲で民間企業に就職を決めて海外旅行に行く人も出てくるので、心が揺れることがあるかもしれません。そのようなときは、ぜひTACを頼ってください。国家総合職講座では、知識と経験の豊富な先生方と、私たちのように内定を得ることができた合格者アドバイザーがいつでも受験生のみなさんを待っています。TACを安心できる「居場所」として活用しましょう。強い意思を持てばきっと大丈夫です、応援しています!
──皆さんのご活躍をお祈りしております。本日はありがとうございました。
[『TACNEWS』 2025年1月|特集]