人事担当者に聞く「今、欲しい人財」 第72回 株式会社パソナグループ

Profile

中澤 拓己(なかざわ たくみ)氏

HR本部
HCM部長

京都大学大学院修了後、メーカーで研究開発に3年間従事。2014年、株式会社パソナに転職。大阪で人材紹介事業の営業職、東京でマーケティング、営業企画を経て、パソナグループに出向。採用責任者として淡路島で新卒採用、中途採用、グローバル採用など、グループ全体の採用を担当。2023年より現職。

パソナの仕事は「人を活かす」こと。
従業員が高い志と使命感を持って
挑戦し続けられるよう
「自分のキャリアは自分が創る」を
基本方針としています。


 パソナグループは創業以来、企業理念に「社会の問題点を解決する」を掲げ、「働くを創る」「人生を楽しむ」「人財を育む」「文化を創る」をミッションに、「人を活かす」ことを標榜している。「人を活かす」ことを仕事とするパソナグループでは、どのように“イキイキと働く”ことを実現し、どのような人材観で人材教育や採用を行っているのだろうか。HR本部 HCM部長の中澤拓己氏に詳しく伺った。

ウェルビーイングな社会の実現に向けて

──最初にパソナグループ(以下、パソナ)をご紹介いただけますか。

中澤 パソナは、「社会の問題点を解決する」という企業理念を掲げている総合人材サービス会社です。誰もが自由に好きな仕事を選択でき、ライフスタイルに合わせて働く機会を得られる。そのような社会の実現をめざして、「人を活かす」ことで社会に貢献していきたいと考えています。
 パソナの創業は、女性の社会進出支援から始まりました。人材派遣という新しい働き方を創出し、そこからシニア、若者、外国人、障害を持つ方と、多様な雇用を生み出してダイバーシティ推進に努めてきました。
 人の雇用に携わる事業を中心に成長してきたパソナは、兵庫県淡路島にて、“人材誘致”による地方創生事業に力を入れています。
 地方創生事業は2003年、農業分野における雇用創造・人材育成をめざした「農業インターンシッププロジェクト」から始まりました。その後、2008年に、独立就農をめざす人材を支援する「パソナチャレンジファーム」を淡路島にて実施。現在は、多数の飲食・観光施設や様々なイベント、人材育成プログラム等を通して“人が集まるしくみづくり”を進めています。
 2020年からは「BCP」「真に豊かな生き方・働き方の実現」「夢のある新産業の創造」を掲げ、本社機能の一部を淡路島に移転し、これまで約1,300名分の業務を移転しており、淡路島島内では約2,000名の社員が働いています。BPOセンターやグループの営業バックオフィス業務の集約、デジタル化を進めながら業務効率化も実現しています。
 淡路市は市政発足以来はじめて2020年に社会増となっており、地域活性化にも寄与できたのではないかと考えています。

──パソナが現在、注力していることは何ですか。

中澤 パソナは、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博、以下、万博)にパビリオンを出展します。万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」で一人ひとりが活躍する社会の実現を考えるとき、「健康であること」はとても大切です。パソナは心、体、そして社会的にも健康な状態といわれる「ウェルビーイング」をキーワードに据えて、「いのち、ありがとう。」をテーマにパビリオンを出展します。万博を機に、ウェルビーイングな社会の実現に向けた取り組みをさらに強化していく予定です。

新入社員研修は淡路島のハイブリッドワーク

──本社機能が東京と淡路島の2ヵ所にありますが、新卒採用はどちらで行うのですか。

中澤 採用は、東京と淡路島の両方で行います。学生の居住地に合わせ、主に西日本の学生は淡路島ないし神戸周辺で選考し、関東圏は東京で選考します。また、人材サービス事業に興味がある学生は、東京のオフィスで営業の社員と話す場を設けて理解を深めてもらうとともに、地方創生事業に興味がある学生は、実際に淡路島で行っている事業をみてもらうこともあります。
 パソナは新卒採用の他、キャリア採用、グローバル採用、障害者採用と幅広い採用を実施しています。

──パソナの「求める人物像」とはどのような人材ですか。

中澤 新卒、中途問わず、まず理念への共感が最も重要です。パソナは企業が学生を選ぶのではなく、学生から選んでもらえることを非常に大切にしています。学生が考える「自分がこうなりたい」と、私たちが「世の中をこうしたい」というベクトルが、同じ方向を向いているかを重視しています。
 加えてパソナは新しいことにどんどんチャレンジする会社なので、新しいことへのチャレンジを楽しめる気持ちのある方を求めています。

──2024年4月の新卒者は何名入社しましたか。

中澤 2024年4月は、グループ会社も含め約200名が入社しました。2025年4月入社の新卒者は約250名となる予定です。2024年度採用は地方創生事業を強く打ち出したので、人材サービス事業を志望する学生が少なくなりました。そこで2025年採用では、改めて当社が行う各事業について均等に打ち出すことに努め、採用を行いました。

──自然豊かな淡路島では、どのような人材育成を考えているのですか。

中澤 淡路島では「夢のある新産業」を創ることをめざしており、「淡路島で人財を育てたい」という思いも強くあります。人と人とのつながりが色濃く、豊かな自然の淡路島を、私たちはウェルビーイングを体現するモデル事業にしていきたいと考えています。
 2024年入社の新卒者は、1年間、淡路島で研修と実際の仕事を経験してもらっています。また、配属先の仕事をしながら別の仕事にもチャレンジする、ハイブリッドワークを実施しています。例えば、人事に配属された社員は、人事の仕事に週4日携わり、残りの1日は淡路島の農業や文化芸術創造に携わる、というような働き方です。そのほか淡路島で私たちが雇用創造を掲げて取り組んでいる観光事業の一員として、実際に各施設で観光事業の運営に携わることもあります。

──2024年の新入社員研修はどのように実施しましたか。

中澤 最初の2ヵ月は研修期間として、社会人マナーや企業理念の浸透、IT研修、パソナの様々な事業を勉強する期間に充てました。研修期間中からハイブリッドワークで農業や文化芸術創造に触れ、2ヵ月後に本配属となります。

──ハイブリッドワークは入社後すぐに始まるわけですね。

中澤 そうですね。また、入社1年目で終わるものではありません。 ハイブリッドワークは、変化の激しい社会に柔軟に対応できる複線的なキャリア構築、自律型人材としての成長を支援するキャリア開発を目的としています。
例えば、入社4、5年目の社員向けには「コミュニケーション」「DX」2つの領域を軸に、部門を超えた幅広い学び・自己研鑽・共創を促進しています。「入社4年目のテーマは英語を学びながら仕事をする」といったように、実際の業務と並行してTOEIC® L&R TESTの点数アップをめざす年次、ITパスポート取得をめざす年次というように、共通ミッションのためにトレーニングを受ける期間を設けており、新たな専門性の向上や、能力・スキルの幅の拡大をめざすこともハイブリットワークと考えています。

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キャリア採用でも等しくチャンス

──2025年新卒者の研修はどのように計画していますか。

中澤 まだ企画段階ですが、2025年は万博があるので、これまでの研修に加え、万博についても研修の中で取り入れていきたいと考えています。

──新入社員が一堂に会する研修は最初の2ヵ月間の他にもありますか。

中澤  「パソナこころざしユニバーシティ」として研修体系を設け、2年目研修、3年目研修のような年次研修を実施しています。それ以降はリーダー研修、マネージャー研修のように階層別研修に入っていきます。

──キャリア採用はどのように育成していますか。

中澤 新卒だけでなくキャリア採用にも非常に力を入れていて、社員の比率も新卒とキャリアが半数ずつ占めています。管理職登用など、入社からのステップアップも等しくチャンスが与えられていて、どちらも活躍できる環境を整えています。

体験型企画とインターンシップを実施

──新卒採用プロセスの中でミスマッチを防ぐための工夫はしていますか。

中澤 ミスマッチを防ぐために、面接という選考の枠だけでなく実際に東京と淡路島でリアルに五感で体感してもらい、できる限りいろいろな接点を持つように心がけています。
 例えば東京では、実際に営業メンバーとの営業同行を行います。淡路島では私たちがどのような観光事業を行っているのか、観光施設の事業や淡路島で実施するイベント等を実際に見てもらいます。学生からの希望があれば、興味がある事業分野で働いている社員から話を聞く機会を設けています。
 人事と学生、オンライン上のコミュニケーションだけでなく、営業現場や観光事業の現場でリアルな接点を作ることで、いろいろな人と会って、実際に自分の目で確かめて、話を聞いてもらうことを重視しています。

──体験型の取り組みはインターンシップとは別に実施しているのですね。

中澤 そうですね。インターンシップはパソナの取り組みがワンデーで理解できるゲーム型のオープンカンパニー形式で実施しています。またいろいろな大学と連携して、大学の単位認定インターンシップも実施しています。

淡路島で内定式合宿を実施

──内定者が入社するまでの間、どのようなフォローをしていますか。

中澤 全体的なイベントとして、淡路島で10月に内定式合宿を行います。内々定の学生が全国から一堂に会し、2泊3日で内定式を行ったり、親睦を深めたり、未来について議論します。その前段階にオンライン研修を行い、各事業会社の社長からの講話やグループワークを行い内定式研修へとつなげています。
 一方で学業が落ち着いて入社までにパソナについてもっと知りたい学生は、営業部や観光事業で就業する、有償の内定者インターンシップを用意しています。受け入れる配属先はきちんと教育も行い、内定者は責任を持って仕事に就いてもらいます。

──入社までに課題図書や資格取得、eラーニングなどは設定していますか。

中澤 パソナは「自分の必修だけでなく、自分が少しでも興味を持った分野があれば、自由な時間のある学生のうちに勉強してほしい」と考えています。「自分の世界を広げる」ことを大切にしてほしい。その意味で課題は出していません。

自己啓発や健康促進などにも使えるカフェテリアポイントを付与

──社内制度や福利厚生でパソナらしいものがあればご紹介ください。

中澤 教育制度としては先ほどのハイブリッドワークが特徴的です。社員教育と福利厚生では、カフェテリアポイントを大いに活用しています。使える用途を幅広く設定し、例えば、住宅補助や奨学金返済に使う社員もいれば、持株購入補助に充てる社員もいます。資格取得やセミナー参加といった自己啓発にも使えます。
 よって、資格支援制度もカフェテリアポイントに含まれています。自己啓発が資格取得につながった場合、取得した資格によってカフェテリアポイントが追加で付与されます。パソナは人材事業を展開しているので、キャリアコンサルタント資格の取得に利用する社員が大勢います。そのほかウェルビーイングの観点から心と身体の健康面サポートとして、ジムやリラクゼーション、マッサージ、お子様も含めた予防接種をはじめとする医療費、ベネフィットステーションの利用にもカフェテリアポイントを利用できます。アクティビティでは、淡路島のパソナの施設利用も可能です。
 このようにカフェテリアポイントが社員の生活面から自己啓発による教育面までをサポートし、個人個人のライフステージやめざしているものに合わせて補助が出るしくみになっています。

──資格取得でカフェテリアポイントが追加付与される資格にはどのようなものがありますか。

中澤 本当に幅広い資格が対象です。列挙すると、社会保険労務士、中小企業診断士、キャリアコンサルティング技能士1級・2級、キャリアコンサルタント、産業カウンセラー、メンタルヘルスマネジメント、給与計算実務能力検定1級・2級、FP2級、日商簿記検定1級・2級・3級、ビジネス会計検定、秘書技能検定。IT系ではITパスポートや情報処理系資格、観光系ではレストランサービス技能士、国内旅行業務取扱管理者。そのほか保育事業、介護事業もグループ会社で行っているので保育士、介護福祉士、ケアマネージャーといった資格も対象です。私たちの事業領域が広がれば広がるほど、対象資格は増えていきます。

──教育研修制度で特徴的なものがあればご紹介ください。

中澤 ハイブリッドワークは社内プログラムですが、対外的にパソナグループとして「パソナリカレント」という社会人向けの学び直しプログラムを提供しています。人が自分の人生設計に合わせて働き方を選んでいく上で、学び直しはとても大事です。個人のキャリアやライフプランに合った学びの場の提供もパソナらしい制度です。
 他に階層別研修などのビジネス研修、次世代リーダー研修、女性管理職向け研修、デジタル人材育成、サステナブル人材育成にも注力しています。

よりよいキャリアを築くための資格の魅力

──エントリーシートや履歴書に在学中に取得した資格の記載があった場合、どのように判断していますか。

中澤 資格があるのは、自分のキャリアに対するスタンスの表れです。モチベーションを維持しながら勉強してきたことを本人が活かしたいのであれば、それは聞いていきたいと考えています。その前提として、なぜその資格をめざそうとしたのか、その思いを必ずお聞きします。例えば、将来的に経理や財務会計、経営に携わりたいという思いで日商簿記検定2級を取得したのであれば、入社後の配属検討で財務・経理に近しい仕事という要素を加味できるようにしています。

──最後に資格取得やキャリアアップをめざしている読者にメッセージをお願いします。

中澤 私は、自分のキャリアを自分で創っていくときに、可能性をさらに広げてくれるものが「資格」だと思っています。資格があれば万事良しということではないかもしれませんが、より自分が満足できるキャリアを築ける可能性が高まることが、資格を持つ魅力だと思います。ぜひ、今勉強している資格の合格をめざしてください。

[『TACNEWS』人事担当者に聞く「今、欲しい人財」|2025年1月 ]

パソナグループの淡路市のオフィス「グローバルハブスクエア」

会社概要

社名     株式会社パソナグループ
設立     1976年2月16日
代表者    代表取締役グループ代表 兼 社長CEO 南部靖之
本社所在地  東京都港区南青山3-1-30

事業内容

BPOソリューション(委託・請負)、エキスパートソリューション(人材派遣)、キャリアソリューション(人材紹介、再就職支援)、グローバルソリューション(海外人材サービス)、ライフソリューション(子育て支援事業・教育事業、介護事業、ライフサポート事業)、地方創生・観光ソリューション

従業員数

25,046名(連結・契約社員含む)

URL

https://www.pasonagroup.co.jp/

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