LET'S GO TO THE NEXT STAGE 資格で開いた「未来への扉」 #29
千羽 太樹(せんば だいき)氏
株式会社FREE PEACE
AFP CFP® 資格審査試験合格者
1996年7月生まれ。東京都出身。小学校から15年間野球を続ける。国士舘大学経済学部に入学後、FPの勉強を開始。在学中の2018年にCFP®資格審査試験合格。大学卒業後、2019年に新卒で株式会社FREE PEACEに入社。FP事業部に所属し住宅購入をきっかけに個人の顧客にマネープランを提供している。最近はプライベートでも個別株式とインデックス投資に挑戦中。
【千羽氏の経歴】
2003年 6歳 小学校入学と同時に野球チームに入る。以降、高校卒業まで野球一筋の生活。
2016年 20歳 将来のことを考えたとき、お金の知識は人生に必要なものだと感じFP資格に興味をもつ。
2018年 21歳 TACで学んだ努力が実り、CFP®資格審査試験にストレート合格。
2019年 22歳 社長や先輩たちの人柄に憧れ、株式会社FREE PEACEに入社。CFP®登録に向けて順調に実務経験を積んでいる。
お金の知識を伝えることで、
不安を希望に変えていく手助けがしたい。
小学1年生から高校まで野球一筋。常に全国大会をめざすようなチームに所属していた千羽太樹氏。大学に入学後初めて自分の将来について考えたとき「人生のどんな場面でも必要なのは、お金の知識だ」と気がついた。大学在学中にCFP®資格審査試験に合格し、現在はファイナンシャル・プランナーとして企業内で活躍する千羽氏に、受験勉強中のエピソードや、仕事のやりがい、お金の知識を持つことでどんな風に世界が広がっていったのかなど、詳しく語ってもらった。
小学校から高校まで野球一筋、大学で初めて自由を満喫
「体を動かすのが好きで、やんちゃをしては叱られている落ち着きがない子どもでした。巨人ファンである父の影響で、夕方はテレビでプロ野球を見るのが定番。初めてバットを握ったのは3歳の頃でした」
東京で生まれ育ち、幼い頃から野球に親しんできた千羽氏。数多くの有力な選手を輩出してきた名門リトルリーグに入り、小学校から本格的に野球を始めた。ポジションは内野の要であるショートで、守備や走塁を得意としていた。
「私自身はなかなかレギュラーを掴めない選手でしたが、高校卒業までいつも全国大会をめざすようなレベルのチームにいました。勉強した記憶がほとんどないほど野球一色の日々でしたね。ひとりでは厳しくて音をあげてしまうような練習も、チームでなら乗り越えられる。そのことにやりがいと楽しさを感じていました」
高校卒業後はそのまま系列の大学に内部進学。野球にストイックに打ち込むのはやりきったという思いがあり、大学では準硬式野球部で楽しく野球をしながら自由な生活を楽しもうと決めた。
「大学入学後はとにかく遊びました。アルバイトでお金を稼ぎ、友達と食事をし、一晩中遊ぶ。その繰り返しです。旅行にも行きましたね。でも、毎日全力で遊んで1年半くらいが経ったとき、なんだか苦しいなと感じるようになったのです」
高校までは全国大会出場という目標が常にあり、練習がつらくても、目標に向かっている手応えがあったから耐えられた。それに対して今は自由を謳歌しているが、めざすべき目標がなくなったことで、生活に張り合いがなくなってしまった。
「そんなときふと、母から『ファイナンシャル・プランナー(以下、FP)っていう資格があるんだって』とFPの資格を勧められたことを思い出しました。そのときは関心が持てず聞き流していたのですが、お金の知識が手に入る資格ということを知って、次の目標はこれだと思ったのです」
振り返ると、それまで一度も真剣に勉強をしたことがなかった。人生一度でいいから、思い切り勉強をした経験が欲しい。それにお金は人生のどんな場面でも必要なものだから、知識を持っていて損はない。
「インターネットでFPの試験対策講座を受講できる学校を調べている中で、TACを知りました。渋谷校は大学にも近くて通学に便利だったため、すぐに申し込みをしました」
大学2年生の冬、千羽氏が申し込んだのはFP3級試験対策の講座。いわばFPの「入門レベル」の内容だ。だが、出てくるのは初めて耳にする用語ばかりで、最初は一つひとつ意味を調べることから始めることになった。
TAC講師に励まされて一歩ずつ上をめざす
「最初はほとんどの用語がわからず苦戦していましたが、担当の竹内裕子講師がとても親切にしてくださいました。講義の合間に質問したり、世間話をしたりするのも楽しかったですね。講義も週1回、全11回(注:旧カリキュラム。現在は7回)で終わるコースだったので、やると覚悟を決めたらできました」
努力の甲斐あって、3級試験は大学3年生の5月に合格。そのまま勉強を続け、同年9月の2級試験も一発で合格することができた。
「用語やしくみが一切わからなかった3級の勉強当初と比べ、2級のほうが勉強も試験も楽にできたような気がしました。竹内講師からも『この調子でがんばれば上級資格のCFP®の試験も合格できると思うよ』とアドバイスをいただき、挑戦することにしました」
その後AFPの認定も受けた千羽氏は、CFP®資格審査試験合格に向けて動き出した。CFP®は世界25カ国・地域(2020年8月現在)で認められた世界水準のプロフェッショナルであることを証明する資格だ。
「大学3年生の秋から勉強を開始しました。全部で6課目あり、課目合格の制度があるので、自分のペースに合わせた受験が可能です。しかし、私の場合は就職活動も控えていたので、4年生の6月に行われる試験で6課目すべてに合格するつもりで臨みました」
勉強を始めてみて、CFP®はこれまでの試験とは異なる手強い内容だということを痛感したという千羽氏。特に、計算が必要でボリュームもある「金融資産運用設計」、理論を理解しないと先に進めない「不動産運用設計」と「相続・事業承継設計」に手こずった。
「ここでもやはり、講師の皆さんにたくさん質問して味方になっていただきました。金融資産運用設計の講義では国分さやか講師にお世話になったのですが、国分講師も竹内講師の下で学んだ方なので考え方など共通する部分が多く、より内容への理解が深まりました」
全課目一発合格を果たすために、試験日まで毎日問題を解くと決めた。3年生のときは大学の講義と並行して1日3時間、4年生になってからは1日5時間の勉強を自らに課し、就職活動中も移動時間にテキストを開いて勉強時間を確保した。
「受験勉強と就職活動の両立は大変でしたが、CFP®の勉強をすることで、不動産や証券についての知識も得られたので、より金融業界に興味が湧きました。実際、金融系の企業にエントリーもしています」
問題が解けずに苦しむこともあったが、受験勉強中は目標に向かっている充実感や、講師陣とコミュニケーションをとる楽しさのほうが心に残っていると振り返る千羽氏。
「難しい計算も多かったですが、答えの数字がぴったり合うと気持ちがいいですよね。また、講師の皆さんは講義の中で実務の内容や、FPをめざした理由などを詳しく教えてくれたため、ただの丸暗記にはならず理解して覚えられました。それでますますFPの仕事に興味が湧いてきました」
大学4年生の春、CFP®の試験を6月に控え就職活動の忙しさはピークを迎えた。千羽氏は、証券会社の選考で順調に駒を進めていた。就職活動中の学生の中でFPの資格を持っている学生は少なく、CFP®の勉強をしていると話すと、企業側も興味を持ってくれたという。
「大きなお金を動かしていてかっこいいな、という単純な憧れから大手の証券会社を受け始めたのですが、社員の方とお話をしても、なんだかピンと来ないことに気がつきました。自分がその会社で生き生きと働いているイメージが持てなかったのです」
人の役に立ち、知識が増えるFPの仕事が楽しい
順調に進んだ就職活動だったが、違和感を覚えた千羽氏は、違う業界も覗いてみようと思い立つ。インターネットで「FP」「会社」「新卒説明会」と検索してヒットした、FPコンサルティング事務所の説明会に参加してみたのだ。
「まず、社長の話に魅了されてしまいました。『ファイナンシャルプランニングという仕事を通じて、お客様一人ひとりが持つ大切なものを守るサポートをしていく』という内容だったのですが、社長の言葉や所作には相手への思いやりがあって、発言と本心に矛盾がない。こんな人の側で働きたいと思いました」
実際に働いている人たちも、エネルギーや向上心に溢れているように感じた。具体的にどんな仕事をするのか千羽氏が質問をしたところ、社長も先輩たちもわかりやすく答えてくれたのもありがたかった。
「『会社の仕事はどこでもほとんどやることは同じ。誰と働くのかが重要』という社長の言葉を聞いて、なるほどと腑に落ちたと同時に、今まで自分は、『大手企業で働く』といった外側のことだけにとらわれていたことに気づきました」
ここで千羽氏は思い切った行動をとる。選考が進んでいた企業をすべて辞退し、このFPコンサルティング事務所だけに的を絞ったのだ。
「保険があると思うと気持ちが緩んでしまうので、本当に働きたいと思う一社に絞りました。家族からは大手を諦めてベンチャーに行くなんてと反対されましたが、自分が本当にやりたい仕事であること、今まで勉強してきたFPの知識が活かせることなどを説明し、なんとか納得してもらえました」
千羽氏の意欲が通じ、5月には見事、唯一の志望先としていたFPコンサルティング事務所から内定を得た。そして6月にはCFP®️試験を受け、7月に無事全課目合格の知らせを受けた。
「自己採点で点数が低い課目があり、不合格だと思っていたので驚きました。私が受験した年は難易度が高かったため、合格基準点が下がったようです」
大学を卒業した2019年の春、内定先のZenshin Groupに新卒1期生として入社した千羽氏。研修期間を経て6月より、念願叶ってグループ会社である株式会社FREE PEACEのFP事業部に配属となった。担当するのは、住宅購入をきっかけに個人の顧客にマネープランを提供する業務だ。
「家を買うというのは人生において非常に大きな決断で、プランがしっかりしていなければリスクも伴います。また、購入後も火災保険や生命保険など、お金に関連する支出が増えますので、パートナーとして伴走しながら、家計の自衛力アップをお手伝いしています」
入社後しばらくは、ベテランの先輩について顧客を訪問した。千羽氏が驚かされたのは、先輩たちが持つ「聞き出す力」の高さと金融に関する知識の豊富さだ。
「私も会話するのは好きなほうなのですが、先輩たちのコミュニケーション能力は段違いだと感じました。資産というプライベートな部分に関して、お客様から包み隠さず話してもらうためには、信頼関係を築いていくことが大切だということに気づきました」
先輩に同行してコンサルティングの技術を学んだ千羽氏。新規の顧客と話すときは、「すぐにお金の話に入らない」という自分なりのルールを決めているという。
「『どうしてこの家を買おうと思ったのですか?』というように、お客様の大切にしているものを確認できるような質問から入って、会話のキャッチボールをするようにしています。さらに、『またこの人に会いたい』『相談したい』と思ってもらえることも重要なので、無駄な出費を抑える方法や、資産が増える方法など、日頃からお客様の役に立つ情報をストックするようになりました」
入社以来、オンオフ関係なく、仕事に関して貪欲に学んできた千羽氏。やがてひとりでも顧客を訪問できるようになり、数字も取れるようになってきた。
「そうはいっても、まだ失敗ばかりで、周りの方にフォローしていただくことはしょっちゅうです。ミスをしてしまったときは、隠さない、すぐにお詫びして訂正する、ということを徹底しています」
お客様の力になりたいという熱い気持ちは先輩たちにも負けていないが、思いが先走って見当違いな準備をしたり、重要な書類を間違えたり、ということもあった。お客様や関連会社、上司や先輩など多くの人に助けられているので、成長をして恩返しをしたいと強く思っているという。
「就職活動のとき、FPとして組織で働くという決断をして本当によかったと思います。いろいろなバックグラウンドや仕事を持つお客様と話せるのが楽しいですし、教えてもらうことも多いです。お客様が知らなかったことをお伝えして、『ありがとう』と感謝されると、しみじみとうれしい気持ちになりますね」
顧客への資産形成アドバイスの中で、金融資産運用について説明することもあるという千羽氏。知識は持っているものの、経験がなければ話に説得力が欠けると考え、自ら個別株式とインデックス投資も始めた。お金の動きや世の中の流行りなどを調べることが増え、以前よりも新聞やインターネットの記事を熟読するようになったという。
「お客様の役に立つといいなと思って始めたことですが、知識も資産も増えるので結局自分のためになっています(笑)。リスクとリターンのバランスを理解してもらうためにも、自分で経験するのは手っ取り早いですね。お金を銀行に預けても金利がほんのわずかなことを考えると、投資をしてお金に働いてもらうのはいい方法だと思います」
勉強熱心さを見込まれ、最近は若手ながらも投資に関する社内セミナーの講師に指名された千羽氏は、グループ会社の社員に向け、NISAや投資信託について資料を作り、噛み砕いて説明した。わかりやすさが評価され、今後も続く予定だという。
「人前で何かを教えるのはほぼ初めての経験でした。緊張しましたが、一生懸命に勉強したCFP®の知識をここでも活用することができてよかったです。教えるといえば、友人が税金や年金のことで困っているときにアドバイスすることが増えました。やはりお金は生活全般に関わるものなので、勉強して損はないなと改めて思いましたね」
千羽氏に今後の展望や目標を聞くと、穏やかながらもきっぱりとした表情で「今はありません」と答えてくれた。目の前のことに精一杯取り組むことが、今の自分がやるべきことだからだという。出社前や移動時間は情報収集と勉強に充てているが、範囲が広いので学ぶ内容には事欠かないと笑う。
「仕事は楽しく、職場では周りに助けられ、恵まれているなと日々思います。その一方で、自分には足りないものがたくさんあるとも感じています。先輩たちのように、もっとお客様に対する想像力を身につけたいですし、金融の知識もまだまだです。この悔しさをバネにさらに勉強して、お客様のお金の不安を将来の希望に変えていくために、成長し続けたいです」
[『TACNEWS』 2021年3月号|連載|資格で開いた「未来への扉」]