人事担当者に聞く「今、欲しい人財」 第70回 カンロ株式会社
北島 恵美子(きたじま えみこ)氏(写真右)
人事・総務本部 人事部長
社会保険労務士
鎌田 香織(かまだ かおり)氏(写真左)
人事・総務本部 人事部人事企画チーム係長
「カンロに入りたい」方に、ぜひ来てほしい
カンロ飴で有名なカンロ株式会社は創業110年を超える老舗メーカーでありながら、1981年に菓子食品分野で初となるのど飴「健康のど飴」、2002年に大人向けグミの先駆けとなる「ピュレグミ」、2012年には「金のミルク」など、幅広い人々に愛される商品を発売し、キャンディ市場の新たな分野を開拓している。愛され続ける定番商品を大切にする一方で、研究・開発にも注力するカンロでは、どのような人材観を持って人材教育、採用活動を行っているのだろう。人事・総務本部 人事部長の北島恵美子さんと同本部 人事部人事企画チーム係長の鎌田香織さんに詳しく伺った。
Sweeten the Future 心がひとつぶ、大きくなる。
──最初にカンロ株式会社をご紹介いただけますか。
鎌田 カンロは、みなさんに親しまれてきた「カンロ飴」を作っているキャンディメーカーです。定番の「カンロ飴」や「健康のど飴」などのロングセラー商品を大切に育てながら、大人気商品の「金のミルク」、独創的な「ピュレグミ」、「カンデミーナ」といったグミの新商品を開発し、市場を開拓してきました。近年では直営店「ヒトツブカンロ」やオンラインショップ「Kanro POCKeT(カンロポケット)」での商品販売も人気を集めています。
カンロは大正元年(1912年)、山口県光市で生まれました。110年目を迎えた2022年には企業パーパス「Sweeten the Future 心がひとつぶ、大きくなる。」を新しく定めました。企業活動の中で培ってきた技術をさらに進化させて、「心がひとつぶ大きくなる。」瞬間を積み重ねていきたい。そして、人と社会の持続可能な未来に貢献していきたいと考えています。
3つのクレド「創意工夫」「信義誠実」「百万一心」を大切に
──カンロの「求める人物像」はどのような人材ですか。
北島 カンロには、パーパスの「Sweeten the Future 心がひとつぶ、大きくなる。」を軸にした、「創意工夫」「信義誠実」「百万一心」という3つのクレド(行動指針)があります。これに紐づいて、自律性、チャレンジ精神、リーダーシップ、 オーナーシップ的目線を持っている方を求めています。
──カンロの新卒採用についてお聞かせください。
鎌田 当社の新卒採用は、人気の商品を作る工場配属の技能職社員は各工場での採用です。新たなヒット商品を生み出す商品開発、原料を調査しアイデアをかたちにする研究職、生産ラインなど設備とそのメンテナンスでものづくりに貢献する生産技術職、商品の魅力を伝え提案営業をする営業職など、総合職の新卒採用を私たち人事で一括採用しています。
2024年4月入社の新卒は、技能職11名、総合職4名、計15名でした。2025年4月入社の新卒採用は、2024年と同様の採用数を予定しています。
──2024年4月の入社式と新入社員研修について教えてください。
鎌田 入社式は新宿の本社で行いました。その後、技能職は2日間、本社で新入社員研修を行い、各工場へ帰工後は設備や品質などに関する研修が行われ、4月末に本配属となりました。総合職は3週間、新入社員研修を行いました。最初の3日間で社内各部門のメンバーが部署を紹介。その後4日間を使って、ビジネスマナー研修、エクセル研修、ビジネスゲームを通して企業活動を学ぶ社外研修を実施しました。次に社内に戻って、山口県光市のひかり工場で1週間の製造現場研修。その後は全員、営業の同行研修を受け、4月末に本配属になりました。
──配属後、新入社員をサポートする制度はありますか。
鎌田 インストラクター制度があります。新入社員が本配属になってから約6ヵ月間、年齢が近い先輩社員が担当としてついて、業務だけでなく社会人としての心構えやカンロの社風などをお伝えします。
──新入社員研修の後、同期が一堂に会する研修はありますか。
鎌田 まず、入社半年後研修というフォローアップ研修で、再び集まる機会があります。研修の内容は「他部署ではどのような業務を行っているのか」や「同期が、今どういう仕事をしているのか」をお互いに知ってもらう機会にしています。
次に同期が一堂に会するのは、入社3年目研修です。上司、同僚、取引先のお客様との関係性をより円滑にする目的で、全員で外部研修に行ってもらいます。そこで、3年間自分たちが培ってきたベースの上に、さらに意思の伝達の円滑化や発信の仕方、受け取り方、といった部分を磨いていきます。
それ以降は階層別、各部門の業務研修といったスキル面での研修に入ります。
北島 恵美子
営業事務、税理士事務所、化粧品会社の経理・総務人事を経て、2014年、カンロ株式会社入社。入社後10年間、人事のキャリアを重ね、2024年1月、人事・総務本部 人事部長に就任。2016年、社会保険労務士資格取得。
「カンロに入りたい」方に、ぜひ来てほしい
──新卒採用の選考フローを教えてください。
鎌田 カンロの新卒採用は、3月の学生向け就職情報サイトのサイトオープンで始まります。4月下旬からオンラインでの説明会配信がスタートし、そこでカンロに興味を持った学生にエントリーシートの記入をしていただきます。書類選考の後、ゴールデンウィーク明けに作文と適性検査を実施。6月中旬に1次面接、7月上旬に役員面接で、内々定に至ります。
──選考プロセスを通して、ミスマッチを防ぐために工夫していることはありますか。
鎌田 ミスマッチはカンロのことをしっかり理解してもらえないことにより起こると考えています。そのため、オンラインでの説明会配信において、当社のパーパスや目指す方向性、キャンディ市場や自社の動向、働き方、各職種の業務内容など多岐にわたる情報を、データなどを使用しながら細かく説明しています。また、当社になぜ入社したいのか、将来はどのようになっていたいかを作文や面接など選考の中でしっかり聞かせてもらっています。
──具体的にどのようにしているのですか。
北島 エントリーシートに志望動機を記載してもらうことはもちろん、選考の中で作文を書いていただき、面接の中で作文についての質問をしてミスマッチがないかを確認しています。加えて「どのような軸で応募する企業を選んでいますか」や「複数内定が出たらどのような基準で選びますか」とお聞きしています。「複数の内定が出た場合、キャンディ(食品)で人々の笑顔をつくりたいのでカンロに入りたいです」という言葉が聞けたときは、「ぜひ入っていただきたい」という思いになります。面接の中でこうした話を聞いていくので、ミスマッチは少ないと思っています。
懇親会や工場見学で内定者をフォロー
──10月1日の内定式から4月の入社までの期間に、内定者をフォローする企画があればお聞かせください。
鎌田 最初に内々定者全員で研究所の見学に行き、その後、懇親会を開きます。これは同期になる仲間と親睦を深めたり、先輩社員と交流する、大切なイベントになっています。その後10月1日に内定式を行ったあと、11月頃、長野県にある松本工場と朝日工場に1泊2日で見学に行きます。工場では、白衣に着替えて飴やグミの製造工程を間近でご覧いただきます。年明けからは総合職・技能職それぞれに学んでいただきたい内容の通信教育を手配して、入社に向けて各自準備を進めていただきます。
中途採用は年間約20~30名を採用
──中途採用は、よい人がいれば採用する通年採用ですか。それとも必要となったタイミングで必要な人材を補充する採用ですか。
鎌田 必要となった部署の人材補充を目的に、都度採用しています。通年オープンでの採用は、今のところ実施していません。
──中途採用は年間何名の計画ですか。
北島 年によって差がありますが、年間約20~30名の採用を計画しています。ありがたいことに今、グミの市場全体が非常に伸びています。事業拡大や製品の生産量増加を受けて安定供給を目的に、製造現場の中途採用が多くなっています。
鎌田 香織
新卒で入社した食品会社で販売職に携わり、3年目に人事に異動しその後2年間、人事にて採用を担当。2016年、カンロ株式会社入社。入社後は、新卒・中途採用と人材教育を担当。2023年7月に人事・総務本部 人事部人事企画チーム係長に就任。
「カンロ経営塾」で経営層育成に注力
──教育研修制度で「カンロらしい」ものがあれば教えてください。
北島 階層別研修や女性活躍のための研修、eラーニング、通信教育など、一般的な研修はひと通り実施しています。その中でカンロらしい研修といえば、「カンロ経営塾」です。外部講師を招いて、管理職になる一歩手前の係長クラスを対象に、経営層育成のために行う社内研修です。全社で8名の選抜研修なので、選抜されなければ参加することができません。
もうひとつ、役員一歩手前の部門長クラス対象の経営塾も開いています。こちらはまさに経営層を視野に入れた社外研修で、他流試合に行って切磋琢磨してもらう趣旨で実施しています。この2本の研修で経営層育成にはかなり力を入れているのが、カンロの教育研修の特徴です。
──福利厚生面では、何かユニークなものがありますか。
北島 「カンロスピリッツアワード」という表彰制度があります。業績評価の評価基準では評価しきれない、けれどもその功労を労いたい方や中長期的な活動や、企業価値向上の貢献につながる委員会・プロジェクト活動での活躍を全社で推薦して、毎年1回表彰する制度です。
例えば、以前商品開発をして商品化したものが、ある程度の年月が経ってからものすごいヒット商品になることがあります。そのときは、会社の業績に貢献したということで「カンロスピリッツアワード」で開発当時のメンバーが表彰されました。工場では、VM(Visual Management)活動という改善活動においてひかり工場・松本工場・朝日工場で1番優秀だったチームを表彰しています。同じような表彰は営業部門でもありますし、ダイバーシティ面では、メンバーの産休・育休などのお休み期間やその後の時短勤務の間、仕事をフォローしてくれた社員を表彰しています。
簿記や英語を学べる通信教育を用意
──北島さんは社会保険労務士(以下、社労士)資格をお持ちです。いつ、どのような経緯で取得されたのですか。
北島 前職で人事に関わったとき、社会保険を担当することになりました。そこで人事という仕事をより深掘りするため、自分のスキルアップを図るために何が必要かを調べていき、社労士にたどり着きました。社労士の専門知識は人事にいれば仕事にも活かせると考えて、カンロに転職後、取得しました。
──合格後、どのような点で取得前との違いを感じましたか。
北島 まず、社労士になってから労政企画チームに異動になりました。そこからは法改正に伴う規程改定や手続き業務といった、社労士ならではの業務に携れるようになりました。専門的業務を任せてもらえるようになったのは、社労士資格を取得したからに他なりません。
また、社労士会に入って会合やセミナーに参加するなど、職場とは違う情報収集の場ができたことは大きな収穫です。そこで得たものを仕事にどのように還元するか、考えることができるようになりました。ほかの社労士のお話を聞くことも新鮮で、仕事にも自分自身にもプラスになっていると感じます。
──社労士会の会費はご自身の負担ですか。
北島 公認会計士、税理士、弁護士、司法書士など一定の資格を持っている場合、資格維持のための年会費については会社で補助してくれます。社労士もそのひとつなので、会社で補助してくれています。
資格試験に合格した際の登録料も会社の負担です。ただ資格取得のための専門学校の受講料補助は、現時点ではありません。
──プロセスよりも結果にコミットした支援なのですね。
北島 そうですね。ただ社外ビジネススクールや研究職として大学院に通うための大学院履修に対する支援制度はあります。
あとは年に1回、自分で好きな講座を選べる通信教育を実施しています。その中には簿記やTOEIC® L&R TESTの勉強ができる講座も入っているので、自己啓発として資格取得をめざす機会も用意されています。
──新卒応募者が、日商簿記検定2級やTOEIC® L&R TESTの点数といった学生時代に取得した資格をエントリーシートに記載していた場合、どのように判断されますか。
鎌田 学生時代に、日商簿記検定やTOEIC® L&R TESTの勉強に時間やお金を費やすことは簡単なことではないと考えています。しかし、それが内定に直結するとは限りません。選考の中で資格欄は参考材料として拝見しています。
──会社として推奨している資格はありますか。
北島 全社的に人事として「この資格を取りましょう」と推奨している資格は、特にありません。ただ部署によっては営業職なら販売士、工場ならITパスポートといったように、業務上の必要性に応じて各部で推奨している資格はあります。あとは経理部門でなくても、会計・税務の知識は必要だと考えて、自分で税理士の勉強をしている社員もいます。
資格取得はものすごい自己投資
──資格取得やキャリアアップをめざしている読者に向けて、メッセージをお願いします。
北島 私は前職で社労士を1度受けて落ち、カンロに転職してから再チャレンジして合格することができました。資格取得は、本当に大変です。それでも取得したことで広がる世界があるのは事実です。取得がゴールではなくて、その先がとても大切。まずは今チャレンジしている資格の合格をめざしてがんばってください。
鎌田 資格取得をめざしているほとんどの方が、仕事や学業があり、日々忙しい中にも関わらず、時間をやりくりされて勉強時間を捻出されていることと思います。資格取得という高い目標を設定された皆様なら必ずその壁を超えられると思いますので、ぜひ最後まで諦めずに挑戦し続けてください。
[『TACNEWS』人事担当者に聞く「今、欲しい人財」|2024年11月 ]
会社概要
社名 カンロ株式会社
創業 1912年11月10日
設立 1950年5月6日
代表者 代表取締役社長 村田哲也
本社所在地 〒163-1437 新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティビル37階
事業内容
菓子、食品の製造および販売
従業員数
648名(2024年3月末現在)
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