特集
IPO支援でマーケットを切り拓く税理士法人
めざすは「あいわにしかできないこと」。
IPO支援をメインに「やりたい仕事」を貫きます。
杉山 康弘(すぎやまやすひろ)さん(左)
あいわ税理士法人 代表社員 税理士
1972年、東京都杉並区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。1995年、大手会計事務所入所。2000年、税理士登録。2005年、あいわ税理士法人入所。2015年、代表社員に就任。
石川 正敏(いしかわまさとし)さん(右)
あいわ税理士法人 代表社員 公認会計士・税理士
1960年、東京都葛飾区生まれ。法政大学経営学部卒。1983年、公認会計士2次試験合格。同年、監査法人入所。1990年から会計事務所に出向。1992年、株式会社ビジネス・アソシエイツに参画し、税務部門として藍和共同事務所を設立。2002年11月、あいわ税理士法人に組織変更、代表社員に就任。
「人員 50名の税理士法人の中に公認会計士、税理士が32名」。クライアントは上場企業と上場準備企業が中心で、その業務内容は IPO、M&A、組織再編から企業オーナーの相続・事業承継対策と、税務・会計分野を網羅したコンサルティング業務をメインに据える。それが、代表社員の石川正敏氏が顧問先ゼロから立ち上げた「あいわ税理士法人」だ。この高度な専門家集団が今ターゲットとしているのが IPO支援業務。「IPO(Initial Public Offeringの略)」とは、「株式公開」のことで、未公開企業が上場を通じて「上場企業」となることを意味する。今、なぜ IPOなのか。「やりたい仕事をやる」という信念を初志貫徹する石川氏と、代表社員・杉山康弘氏に、あいわ税理士法人のめざすところを伺ってみた。
監査、IPO、税務を網羅
── お二人が会計の道をめざした経緯から教えていただけますか。
石川 大学進学時に「最も経済に影響力のある仕事に関わりたい」と考えて公認会計士(以下、会計士)をめざしました。卒業した年に会計士2次試験(当時)に合格して監査法人に勤務し、7年間、上場会社と上場準備会社に関わる経験を積みました。その後、より会社側に近い立ち位置で仕事をしてみたいと考え、出向という形に魅力を感じたのはこの時です。2年後、出向を終える時には「企業・オーナーサイドに立ったおもしろい仕事がしたい。監査よりもっと身近な立場で、会社を通じて社会とつながることができる仕事がしたい」と考えるようになっていました。
ちょうどその時、会計士4名が立ち上げた株式会社ビジネス・アソシエイツというシステムコンサルティング会社に参画する話があり、1992年に同社の独立部門として税務会計事務所「藍和共同事務所」を設立しました。
監査もIPOも税務も経験した私をトップに、事務所開設当初は主に上場準備企業のインキュベーターとして監査法人と連携してIPO支援業務に力を入れました。運良くそのうち20数社が上場し、今では時価総額数千億円の東証一部上場企業としてあいわの中心クライアントになっています。これらのクライアントの成長過程で、M&Aや組織再編、連結納税や海外進出支援など、一人の税理士では対応しきれない、大規模で複雑な案件に組織的に取り組むようになっていきました。
そして、2002年の税理士法改正に伴い「あいわ税理士法人」に組織変更しました。すでにその時あいわは20名体制、ビジネス・アソシエイツは30名体制でしたが、あいわは100%転職組の有資格者採用、ビジネス・アソシエイツは新卒採用と企業文化が違ってきたので、それぞれのブランドを作る方向を見据えて法人化に踏み切りました。私は創業した時から、ゴーイングコンサーン(継続企業)であるクライアントに対して、我々も事業を継承できる組織にしていきたいと考え、法人に自分の名前を入れませんでした。法人化した組織は「100%税理士と会計士のプロフェッショナル組織」として、人員50名(うち32名が有資格者)にまで成長してきました。
杉山 あまり真面目な大学生でなかった私は、大学3年時に一念発起して税理士になることを決め、当時のTAC水道橋校に通い始めました。大学を卒業した年の夏に、かつて石川が出向していた大手会計事務所に入所しました。結局そこで10年勤務することになるのですが、前半5年はオーナー企業向けの法人業務と相続・事業承継関連の経験を積ませてもらい、後半5年は監査法人の会計士の方々と協働で仕事をする機会を得て、上場企業に対する税務コンサルティングやIPO支援業務などを経験することができました。
10年経験を積んだ後、より専門性の高い仕事がしたいと考え、あいわ税理士法人に入社しました。
メインターゲットは上場系の会社
──あいわ税理士法人のメイン業務と組織の特徴についてご紹介いただけますか。
石川 事業領域の中心は法人税務ですが、特徴的なのは有資格者の比率が非常に高い組織なので記帳代行は基本的にお受けしないという点です。自計化が可能な会社の税務顧問がメインで、特に上場会社との契約が多いのが他事務所との大きな違いです。昨今はIPO市場が活況を呈している流れを受けて上場準備会社が一番のターゲットになっています。顧問契約の半数以上がこれらの上場会社と上場準備会社を合わせた、いわゆる「上場系」の会社との契約です。
もう一つの特徴は、すべてのメンバーがオールラウンドプレーヤーとして自らの専門分野だけでなく税務全般の幅広い対応ができる点です。あいわのクライアントは上場会社でもオーナー系の会社が多いため、「資産税はできません。法人税しかわかりません」ではクライアントの満足を得られません。有資格者がそれぞれ得意分野を持ちつつ、チームで対応するのが理想です。そこで実力的に甲乙つけがたいレベルまでメンバー全員を育てて、トータルでサービス提供できる形を整えています。
──社内はどのような組織体制になっていますか。
杉山 通常の業務を担当する事業部と新規開拓やスポット業務を中心に担当する開発部に分かれています。事業部はさらに各々10名前後のメンバーから成る4つのチームに分かれています。各チームは業種や税目別に分かれているのではなく、チームの中の2~3名で各クライアントを担当し、法人業務もオーナーに関する個人業務もオールラウンドで対応します。
開発部はちょっと毛並みの違う部署で、監査法人でIPO支援をしていた会計士や大手税理士法人出身の国際税務に強い税理士など、少しとがったメンバーが揃っています。経験豊富なメンバーが多いので、専門性が高く特化した業務を担当するほか、石川や私と一緒に営業に回ったりします。最近では上場準備会社が非常に多いので、IPO支援の会計士も契約からその後のサポートまですべて関わっています。いわゆる特殊部隊や遊撃隊として動いてもらっているわけです。開発部には事業部からも異動でメンバーが入ってきて経験を積んでいきます。
また、あいわでは執筆やセミナー講師の機会もかなり多いのですが、開発部にはそうした業務専門のメンバーがおり、本の執筆やセミナー講師をメインに担当しています。ここ数年、税制改正の書籍を出版していますが、新入社員を含む事業部のメンバーからも希望者を募って執筆をしてもらうなどしています。
ゴーイングコンサーンをめざす
──あいわのめざすビジョンと経営方針をお聞かせください。
石川 あいわとしてのビジョンは、独立した時から変わっていません。上場会社、上場準備会社、中堅企業とのお付き合いを通じて社会とつながる中で「あいわだからできること」、「あいわにしかできないこと」で社会貢献をめざしていく。以前は、「誰がトップというのではなく、いろいろな案件がきた時に、10人のプロフェッショナルがそれぞれに即答できる円卓の騎士」というコンセプトでやっていました。どちらかといえば大きくなるより、小さくても業界で光る存在になろうとしていたのです。
しかし、創業から24年という経緯の中で、クライアントがあまりにも大きくなってしまったという現実がありました。しかも、クライアントの社長も若い方がどんどん多くなっているので「アグレッシブに経営したほうがいい。若手が経営したほうがいい」と考え方が変わってきたのです。あいわがゴーイングコンサーンになるにはどうしたらいいかを考え、ブランド化と規模感を考えるようになりました。
──規模的にはどのくらいの大きさをめざしているのですか。
石川 グループ会社を含め110名、税理士法人としては50名超、有資格者32名ほどですが、この業界で有資格者が100名超えている事務所はそう多くはないので100名を超える事務所にしていきたいと考えています。おそらくその時には上場クライアントも100社を超えているでしょうから、頭一つ抜けだせます。そこをめざしていきたいですね。
──今後も有資格者を中心とした採用を行うのでしょうか。
杉山 50名中32名、約6割が有資格者です。これまではほぼ全員有資格者か税理士試験4科目合格者を採用していたのですが、ここにきて仕事量がかなり増えてきたので、あいわとしても組織をあげて人材を育てていこうということになりました。この夏あいわでは、30才前後の社員を8名採用しました。最近のクライアントの社長は30代が多いので、同年代の経営者と接することで若手のモチベーションも上がっていくのではと期待しています。
あいわから独立していったメンバーも多数いますが、繁忙期に一部業務を手伝ってもらったり、あいわの社内研修に参加してもらったりと、かなり連携をとっています。独立しても大枠であいわグループの一員なのです。彼らには「もうこれ以上いりません」というくらい、仕事を手伝ってもらっています(笑)。
IPOをトータルでサポート
──現在の新しいクライアントはほとんどがIPOをめざす会社なのですか。
石川 そうですね。IPO支援をメインに据えるにあたり、税理士法人ではカバーしきれない領域がたくさんあるので、IPO支援の仕組み作りを手掛ける「株式会社プロネット」という会社を立ち上げました。元監査法人のIPO責任者をトップに招聘して、IPOにからむ幅広い士業たちとのリレーションをとりながら情報交換をしているので、自然にIPOのクライアントが集まってきます。IPOマーケットとしては、 2015年は92社が上場した中で8社が当社の支援です。東証一部への指定替えも3社あったので、マーケットで「あいわ」の名前がそれなりに知られるようになってきました。
こうした仕組み作りをして動き出すまでには3~4年かかりましたが、一度うまく回転し始めると、上場会社の社長が紹介してくれたり、自然と回るようになってきました。
──なぜ「あいわ税理士法人+プロネット」でIPO支援を展開しようとされたのですか。
石川 IPOを車で例えると、重要なのはIPOという目的地に向かって4つのタイヤが各々真っ直ぐスムーズに動くということです。そのうち1つでも動かなかったり、方向が誤ったりしていると目的地には到達しません。だからこそ、それぞれのタイヤにIPOをわかっているメンバーがついていることが理想的なのです。
そこで、弊社が支援する上で、足りない部分はプロネットで連携する専門家のアライアンスでサポートしていく体制をめざしました。例えば、私たちは法務や労務についてある程度の経験則でお話しすることはできても、さらに深い専門的な話はできません。法務や労務、内部統制、上場の書類作成、審査対応などでは連携して、ケースバイケースで柔軟に対応していきます。
──現在、具体的に上場に向けて準備している会社はどれぐらいあるのですか。
杉山 80~90社あります。私たちが一番ターゲットにしているのは新興市場をめざしている企業で、メーカーよりもIT系企業やサービス業、飲食業が多いですね。当社のクライアントの半数以上がこれらの「上場系」で、残りの半数が上場に興味のないオーナー系企業が占めています。
──IPOをめざして準備をしている会社が増えてきたのはいつからですか。
杉山 アベノミクスで株価が上がってからIPOを指向する会社が増えています。潜在的なマーケットが大きくなってきたので、設立時からIPOをしたいと希望する社長もいらっしゃいます。
──2000年当初のいわゆるIT系ブームではIT系企業が続々と上場しました。その後徐々に下火になって、リーマン・ショックを経て、IPOは減少傾向にあったと思います。今回の増加傾向はしばらく続くと思われますか。
石川 2020年の東京オリンピックまではいけるのではないかというのが、市場関係者の大方の意見です。オリンピック開催国の景気はオリンピックが終わった瞬間に悪くなるので、パターンとして2019年までは良いだろうけれど2020年からの景気見通しはよく分からないと言われていますね。そのため、2020年までに上場したいという企業経営者が大勢いらっしゃいます。
というのは、日本にはリーマン・ショック後に上場マーケットが縮小して、上場できなかった経験を持つ企業がたくさんあるからです。一度IPOの機会を逃してしまうと、10年近く上場の機会が得られなかったのです。こうした経験則があるので、今回の波に乗れないと35歳の社長に次のチャンスが来るのはもう45歳の時になってしまいます。その10年間で上場できた会社とできなかった会社では、圧倒的な差ができてしまう。そうした思いが企業経営者のみなさんにあるんですね。
──IPOができる会社の経営者とは、どのような人物ですか。
石川 起業することは誰でもできますが、その中でIPOまでいける会社は何百社もしくは何千社に1社だと思います。そういう意味では「やりきれるかどうか」です。もともと事業のコンセプトが外れている企業は論外ですが、同じ事業領域の会社でも大きくなれる会社と潰れてしまう会社があるのは、高い目標を頂として、その頂を見て経営できるかどうかにかかってきます。
──逆に上場を考えてお付き合いしていても、できずに終わってしまう会社とはどのような会社ですか。
石川 絶対失敗するのは社長が暴走する会社ですね。今は上場審査が厳しいので、コンプライアンスを重視した組織経営ができるかどうかが大きな鍵になります。ですから社長が暴走したり、社長が役員会で意思決定できない会社は難しい。経営者はとても大事ですが、ある意味上場するということはパブリックカンパニーになることなので、統制がとれていない企業は難しいですね。
──実際にIPOをめざして準備を始めるのはいつ頃ですか。
石川 実際にめざすとなると、社長が意思決定するのは上場の大体4年前ですね。2年間分の監査証明が必要で、上場申請に1年ほどかかります。上場申請に向けての監査契約をする段階ですでに準備が必要になってくることを含めれば、最低でも4~5年が必要です。
──あいわ税理士法人のスタッフには、どのようなスキルが求められますか。
杉山 IPOで重要な資本政策の面から言うと、当然税務の観点も必要ですし上場審査の観点も必要、それにオーナーの個人資産からの切り口も必要になりますので、かなり総合的なスキルが必要になりますね。また、未上場会社と上場会社では適用される会計基準が大きく異なります。上場会社では監査法人のチェックを受ける必要があることから非常に専門性の高い会計基準に沿った会計処理が求められます。と同時に複雑で難しい税務処理も必要になりますので、会計・税務両面でより高い専門性が必要になるのです。世の中は圧倒的に未上場のオーナー系企業ばかりなので、そうしたクライアントだけを担当している税理士が上場会社に対応しようとするのはかなり難しいでしょう。
普通の会計事務所で複数の上場会社をクライアントに持っているケースは稀ですが、弊社では基本的に全員複数社の上場会社を担当してもらいます。転職組で当社に入ってきたメンバーには、税効果会計は初めてという人も中にはいますが、やっていれば自然とできるようになります。上場会社の四半期決算も1年通して4回やれば、みなひと通りできるようになります。
──一人当たり、平均何社担当されるのですか。
石川 うちは複数担当制なので一人ですべてを担当するわけではありませんが、数的には平均約10社ほどです。ただそのうち半数が上場もしくは上場準備系なので1社のボリュームがかなり大きくなります。業務量で言えば、3分の2が上場系の仕事になりますね。
杉山 通常の顧問業務以外にもM&Aや組織再編、海外進出、ホールディングス化とスポット業務もいろいろあるので、幅広い経験を積むことができます。こうした多くの事例やノウハウが豊富にあるので、新たな案件に対して特に新しく勉強しなくても対応できるのがあいわの大きな強みです。一つのお客様のノウハウがいろいろなお客様と共有できるので、とても効率が良いと言えます。
──今、国内及び海外での拠点展開はどのようになっていますか。
石川 2016年6月に大阪とシンガポールに拠点を設けました。今後日本の人口は減少傾向にあるので、企業が成長を求めようとすると人口の増えていくエリアは東南アジアかアフリカです。海外進出の難しさを考えれば、まずは東南アジアが一番の候補となり、金融センターや情報拠点という意味ではやはりシンガポールです。そこで私たちもシンガポールにデスクを置いて、クライアントサポートにあたることにしました。すでにいくつか問い合わせもきているのでニーズは確実にあります。
杉山 上場する・しないはさておき、どの会社もアジアを中心に海外に出ていく時代です。シンガポール事務所は「行きたい」と言ったメンバーが自ら赴任しすべてを担当しています。海外赴任によってさらに経験値が高くなるでしょう。大阪事務所も自ら手を挙げたメンバーが任されて今頑張っています。積極的にやりたいと自ら希望する人に任せるのがあいわの人材育成です。
「やりたいか、やりたくないか」
──上場系企業の仕事に携わる会計士、税理士のおもしろさややりがいはどこにありますか。
石川 会社の成長を身近で見られることと、上場前から関わっているので上場してからも気軽に社長に会えることですね。そこでビジネスの話だけでなく人生についても語り合えるんです。上場を境に会社は変わりますが、社長も公の場に出る機会が増え、器が大きくなってくるのが分かります。その変化を間近で見られるのも、この仕事の醍醐味ですね。
杉山 この仕事をしていると、お客様とは長いお付き合いになりますね。私にも15年ほどお付き合いしているお客様がいます。もう70歳を過ぎて引退されているのですが、会社は引退しても個人資産の相談役として遺言もお預かりしています。
仕事の側面で見ると、会社の税務もできなければいけないし、個人の資産税もできなければならない。そこに「おもしろさ」があると思っています。
上場前の資本政策はオーナーでなければ決められないので、経営者は相談できる相手がなかなかいません。社内では相談できないし、顧問税理士も資本政策は専門外です。そこを私たちがサポートできるのは、この仕事の大きなやりがいですね。
石川 例えれば、大手術をしてもらうことになった時、経験の浅い医師と成功手術例の多い医師なら、当然後者に頼みたい、というのと同じです。上場しているクライアントに「資本政策できます、やります」といくら口で言っても、経験のない会計事務所に一生に一度の自社の上場を任せたりはしないものです。
つまりこの仕事は「知識と経験」なのです。その結果、IPOは加速度的にできる事務所に集約されていく傾向があります。そしてよりたくさんの事例が蓄積され、それに伴いノウハウが増えて、また案件が集まるようになっていくのです。しかも昨年の新規上場会社は年間92社と、IPOのマーケットは税理士業界の規模に対しそれほど大きくないので、おそらく日本ではIPOに得意な事務所は多くは生まれないだろうと推測しています。
──今後もIPO絡みの案件を中心にやっていかれるのですね。
石川 そうですね。企業経済の成長という側面では、そこが今一番成長していると思います。大手の税理士法人は今、資産税系にシフトしていますが、私たちは「儲かるかどうか」よりも「やりたいか、やりたくないか」で決めています。そこは事業をスタートした時からブレずにずっと初志貫徹しています。
ということで、2020年前後まではこのまま継続していこうと考えているので、そこまでは大きくしていきたいというのが中期的な目標ですね。
──石川先生は、今後の事業展開をどのようにお考えですか。
石川 私の代でできるだけアグレッシブにやって、次の代に引き継ぎたいと考えています。シンガポールや大阪の拠点設立経緯に見られる自由闊達な組織風土を大切にしながら、海外展開も含めて「走りながら決めていきたい」と思っています。
将来に向かって広がる税理士の選択肢
──働きやすさのための環境づくりではどのようなことが挙げられますか。
杉山 あいわではワーク・ライフ・バランスを考慮し、完全フレックス制度を導入しています。何時に出社しても退社しても自由。土日働いて平日休んでも、月160時間の労働時間を確保してくれればOKです。中には週1日、在宅で執筆するメンバーもいます。この業界で、これだけフレキシブルで柔軟、かつ快適な職場環境作りをめざしている法人はそうそうないと思っています。
女性社員の人数も増えていますので、時短勤務や育児休業はもちろんありますが、完全フレックスなのである程度自由に時間を工夫できるのは大きな魅力だと思います。た
だしクライアントに上場企業が多いので、先方の都合で仕事が押す局面もあるということは、理解してもらっています。
石川 結婚を機に辞めてしまうケースも少なくないので、いかに女性の継続率を高めていくかが私たちの大きな課題です。あいわには女性の部長がいるように、全く男女差がない業界です。女性にとって魅力ある職場になるよう、積極的に対応していきます。
──会計士や税理士の受験生や『TACNEWS』読者にメッセージをお願いします。
石川 私たちのやりたい「会社とつながることで社会経済に貢献していく」理念はおわかりいただけたと思います。今の若い人はお金も重要かもしれませんが、やりがいを求めて仕事を選ぶ人も多いと思います。私たちも「やりたい仕事をやる。あいわしかできない仕事をやる」という大きな志をもって臨んでいます。
税理士の魅力は、何と言っても若いうちから経営者と対等の立場で相対できることです。この点で、自らを成長させられる非常に魅力的な仕事だと言えます。なおかつ今は税理士法人という組織で働く税理士が増えていますが、普通のサラリーマンとは違って自由職業人と呼ばれるように、組織で働きながらも専門家として自由に働ける地位が確立されています。そして、選ぼうと思えば上場会社の部長や役員、社外取締役といったポジションに就くことも可能です。このように税理士は、人生の選択肢が将来に向かって幅広くひらいている素晴しい職業です。皆さんもぜひその魅力を感じて、この世界に飛び込んできてください。
杉山 私は大学を出てすぐ、税理士試験2科目合格で会計事務所に入所しました。その時の経験から、とにかく早く会計事務所に入って働いてみることをお勧めします。同じ経験でも20代前半で経験するのと30代になってから経験するのとでは、経験の蓄積がまったく違います。ひいては、その後の税理士としての人生が大きく違ってきます。受験に専念する期間は1~2年で充分。早く実務の世界で活躍してください。
──ご興味深い話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
[TACNEWS 2016年12月号|特集]