読めばモチベーションUP?ビジネスや会計の気になる「あの本」を紹介 萌さんとカッキーの読書室 #1

仕事と資格マガジン『TACNEWS』から生まれた会計小説『女子大生会計士の事件簿』のメインキャラクター、公認会計士・藤原萌実(萌さん)と新人スタッフ・柿本一麻(カッキー)のふたりが、気になる本について激論を交わす…?!ゆったり、まったり、時に激しい、「楽しく、ためになる読書室」です。

会計探偵リョウ・ホームズ


『会計探偵リョウ・ホームズ』

 著者  :Rootport
 出版社 :KADOKAWA
 初版  :2018年8月

カッキー はい、久々に帰って参りました。書評コーナー『萌さんとカッキーの読書室』でございます。

萌さん 厳密に言うと、帰ってきてはいないわよ。だって、この連載をしていたのは別の雑誌よ(注1)。

カッキー たしかに読書室は『TACNEWS』では初登場かもしれませんけど、そもそも『TACNEWS』は僕たちのホームみたいなもんじゃないですか。

萌さん ホームだって? ははっ、ナニ冗談を。私たちが出ていた小説『女子大生会計士の事件簿』がこの雑誌で掲載されていたのは、もう10年以上も前の話よ(注2)。

カッキー ああ、僕らのことを誰も覚えていないかもしれないんですね。

萌さん 覚えていたらそれこそ問題じゃない? 受験生向け雑誌を10年以上も前から読んでいるということが、いったい何を意味するのかをよく考えてみなさい。

カッキー あっ、僕も合格までに7年かかりましたが、それ以上の方ということですね!

萌さん シーッ! そこまでハッキリ言わなくていいの!

(注1) 2004年から雑誌『会計人コース』で掲載されていた連載。会計系資格受験生の息抜きになるような本を紹介していた。
(注2) 2001年から2008年まで『TACNEWS』本誌で連載されていた。公認会計士・藤原萌実(萌さん)と新人スタッフ・柿本一麻(カッキー)の前に次々と起こる事件の謎を解く監査ミステリー小説。角川文庫等で書籍化。


カッキー 気を取り直して、今日は会計小説を紹介しようと思います。

萌さん 私たちと同じジャンルね。

カッキー その名も『会計探偵リョウ・ホームズ』。美少女の名探偵と、その彼女に振り回される青年が主人公です。

萌さん 私たちと同じ配役ね。

カッキー え、ええ、まあ(萌さんは、自分が美少女だと言いたいのだろうか?)。えー、この通称“ホームズ”こと、リョウ・ランカスターが19世紀末のロンドンで会計探偵事務所を開いていて、そこに依頼者から事件が舞い込んできます。

萌さん 正統派の探偵モノね。

カッキー 帳簿にある生命保険料の勘定科目や、減価償却の動きから推理を進めていくんですよ。会計を知っている人間からすると、そこがたまらないんです。

萌さん トリック自体は本格ミステリーで、そのトリックに気付くキッカケが会計、という構造が新鮮だったわね。

カッキー そうですか?

萌さん 『女子大生会計士の事件簿』もそうだけど、これまでの会計小説って、トリック自体が会計ネタ、というシンプルな構造だったからね。会計小説がもう一段、進化した感じがしたわ。

カッキー あと、萌さん。僕、凄いことに気が付いたんですけど言っていいですか?

萌さん 勝手にどうぞ。

カッキー なんと、この作品は『シャーロック・ホームズ』のオマージュなんですよ! 主役の通称が、ホームズとワトソンですし、敵役の名前がモリアーティ教授なんです! 僕、実はちょっとホームズが好きで。へへ。

萌さん ふーーっ。それを言うなら章タイトルだって、第1話の『墨色の研究』はシャーロック・ホームズシリーズの最初の作品『緋色の研究』、第2話の『日本語通訳』は『ギリシャ語通訳』、第3話の『赤い柘榴石』は『青い柘榴石』。シャーロキアン(シャーロック・ホームズの熱狂的ファン)じゃなくても気が付くわ。

カッキー 萌さんも詳しかったんですね……。

萌さん 作者がホームズが好きなことも伝わる作品だから、ミステリーとしても本格派、ということね。それにプラスして、一つひとつの台詞がカッコいいのよねぇ。

【リョウ・ホームズ名言集】

・わずか一ペニーの計算違いでも、十二回繰り返せば一シリングの間違いになる。それが二十回重なれば一ポンドだ。計算結果が一ポンドも違えば、誰かの人生をめちゃくちゃにするには充分だ。

・帳尻は合った。総決算だ。

・誤解しないでほしい。言うなれば『重要性の原則』だよ。

・会計の世界ではちょっとした違和感に注意を払うことが重要なんだよ。

・大切なのは違和感を言語化することだ。どこに違和感があるのか説明できれば、その原因も突き止められる。

・何より私は、人間の言葉をあまり信用していない。(中略)帳簿や領収証のほうがずっと信じられる。

・人間は嘘をつく生き物だ。けれど、お金は嘘をつかない。

・故人の歴史を調べる際には日記や自伝が研究されがちだが、私の見解では、帳簿こそ調べるべきだね。そこに記された数字の羅列は、どんな言葉よりも雄弁に、その人の生き様を語る――

(本文より抜粋)

カッキー こういう言葉を目にすると、会計や監査の勉強を頑張ろう!と思いますよね。

萌さん 今思い出したんだけど、私たちのドラマ版『女子大生会計士の事件簿(注3)』の時も、TBSのプロデューサーからドラマ用に決め台詞を考えて、って言われたわね。

カッキー 何にも思いつかなかったんですよね……。

萌さん 『総決算だ!』とか思いつけば、ドラマもヒットしたかもしれないわね――。

カッキー ということで『会計探偵リョウ・ホームズ』を紹介しました。あっ、そういえば僕らの小説にも『会計探偵クラブ(注4)』という続編がありましたけど、あれは1巻だけ出て終わっていますよね。あの続きはどうなったのですか?

萌さん 私に訊かないで。それこそ探偵に調べてもらいなさいよ!

(注3)2008年、TBSやBS-TBSで放送された連続ドラマ。全12話。
(注4)2008年から『TACNEWS』本誌で連載され、2010年に『会計探偵クラブ』(東洋経済新報社)、『フラン学園会計探偵クラブ』(角川文庫)として書籍で発表された。

[『TACNEWS』2018年9月号│連載│萌さんとカッキーの読書室]

著者プロフィール

山田真哉(やまだしんや)

公認会計士・税理士。TAC梅田校出身。中央青山監査法人(当時)を経て、現在、芸能文化税理士法人会長。株式会社ブシロード等の社外監査役。著書に『女子大生会計士の事件簿』シリーズ、『世界一やさしい会計の本です』『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』等。

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