読めばモチベーションUP?ビジネスや会計の気になる「あの本」を紹介 萌さんとカッキーの読書室 #7

仕事と資格マガジン『TACNEWS』から生まれた会計小説『女子大生会計士の事件簿』のメインキャラクター、公認会計士・藤原萌実(萌さん)と新人スタッフ・柿本一麻(カッキー)のふたりが、気になる本について激論を交わす…?!ゆったり、まったり、時に激しい、「楽しく、ためになる読書室」です。

『2020年6月30日にまたここで会おう』


『2020年6月30日にまたここで会おう』

 著者  :瀧本哲史
 出版社 :星海社
 初版  :2020年

萌さん 今回の読書室は、若い学生の子たちに読んでもらいたい一冊よ。

カッキー いやいや、萌さんだって大学生じゃないですか! まあ、それにしても、『2020年6月30日にまたここで会おう』って小説のタイトルみたいですね。

萌さん これは2019年に病気で亡くなった瀧本哲史さんが2012年に行った伝説の東大講義を、そのまま本にした講義録なの。そこで言ったセリフが『2020年6月30日に、またここで会いましょう』なの。あー、なんてカッコいいセリフ!

カッキー あのう、瀧本哲史さんってどういう方なんですか?

萌さん 経営コンサルタントから、ベンチャービジネスへの投資家(エンジェル投資家)に転身して、京都大学の客員准教授もやって、東大でゼミもやって、テレビとかにも出ていたわよ。クイズ番組の『東大王』とかで活躍していた鈴木光さんとかは教え子の1人ね。

カッキー 凄い人なんですねー。

萌さん そんな瀧本さんが、2012年6月30日に東大のホールで全国から10代・20代限定で300名を集めて行った講義だったの!

カッキー なんで、10代・20代限定なんですか?

萌さん それはこれからの社会を作るのが、若者だからよ。

カッキー 一応そうですが、これから人口的には高齢者のほうが多い時代になりますよ。

萌さん チッ、チッ。甘いわね、カッキー。瀧本さんはこう言っているわ。「旧世代の方と、みなさんのような新世代の方の人口比って、だいたい『2対1』なんです。なので、じつは、旧世代の人を『ひとり説得すれば勝ち』なんですよ」ってね。

カッキー なんですか、その屁理屈は。

萌さん 違うわよ。相手を分断させて、交渉して説得する。世の中を動かすには、こうした戦略が大事って仰っているの。他にも、パラダイムシフトって知っている?

カッキー 世の中の常識や価値観が、ガラッと変わることですよね。

萌さん そう。例えば、天動説から地動説に変わったパラダイムシフトはどうして起きたか知っている?

カッキー それは、ガリレオ・ガリレイが「それでも地球が回っている」とか言って、みんなを説得したからじゃないですか?

萌さん そうじゃないのよ。答えは簡単、天動説を唱えていた古い学者がみんな死んで、ガリレオを支持する若い学者が多数派になったから、なの。つまり、パラダイムシフトとは世代交代のことなの。

カッキー また身も蓋もないことを。

萌さん いかに正しくても、古い理論を一瞬で駆逐することはできないのよ。でも、逆に考えると、今の若者が不満に思っていることも、何十年か経てば世代交代が起きて世の中が変わる、ってことでもあるの。

カッキー 若者には希望がある、ってことなんですね。

・奴隷でも、猿でもなく、「人間」になろう。
・本を読んで終わり、人の話を聞いて終わりでなく、行動せよ!
・「正解」なんてものはない。
・自分の人生は、自分で考えて、自分で決める。
・そのための「思考の枠組み」として、リベラルアーツがある。
・自分自身を拠りどころとするために、学べ!
・まずは「言葉マニア」になろう。
・パラダイムシフトとは、「世代交代」である。
・君と君たちが正しい選択をし続ければ、いつか必ず世界は変わる!
・弱者こそ、「交渉」という名の武器を持とう。
・常に「相手の利害」を分析せよ!
・自分の仮説を、試せ!
・見込みのある人を、支援せよ!
・仲間を、探せ!
・目的のために、つながれ!

(各章の「手に入れた武器」より)


萌さん この本の一番面白いところって、最後の質疑応答なのよねえ。

カッキー 講義の最後の質疑応答って、だいたい的を射ない質問が多いから、蛇足感であふれますけど、この本は違うんですね。

萌さん うん。例えば、「どうして瀧本さんはベンチャー企業への投資の勝率が高いのか?」という質問に対する答えは「事業がまったくうまくいかなくても、誰かがその会社を買収したくなる会社にしか投資しない」から。

カッキー なるほど、上手くいかなかったら会社を売ればいい、ってことですね。ドライですけど、たしかに失敗しないですね。

萌さん 他には、「起業する予定だけど、アイデアをパクられるのが心配」という学生に対しては、「アイデアなんてものに価値はなくて、それをやるメンバーの実行力とかのほうがはるかに重要」って。

カッキー 学生に対して、身も蓋もない斬り方をしますね。

萌さん こんな回答ばっかりじゃないわよ。「人に盗まれないものは何か?」という質問には、「その人が過去に生きてきた人生とか、挫折とか、成功とか、そうしたものは盗めない」って答えているの。

カッキー その人にしかない人生の裏打ちが大事ってことですね。

萌さん そして瀧本さんは、2020年までにはこの日本の将来がある程度見えてくる、ダメなら海外に移住する、その答え合わせのために8年後の今日、2020年6月30日にまたここで集まりましょう、という話でこの講義を締めるの。

カッキー 8年間あれば、若者たちが社会を変えるかもしれない、ということですか。

萌さん そういうことよ。実際には瀧本さんはその日が来る前に亡くなってしまったし、生徒たちもコロナの影響で同じ会場に集まることはできなかったのだけど、彼の遺言はこうして本になって、多くの人に読まれるようになった―――。

カッキー その瀧本さんが、今のコロナ禍の日本をどう分析して、どういう解決策を出すのかも見てみたかったですね……。

萌さん そうね。でも彼の代わりにこの本を読んだ私たちがそれを成し遂げていく、ということが大事なのよ。

[『TACNEWS』2020年8月号│連載│萌さんとカッキーの読書室]

著者プロフィール

山田真哉(やまだしんや)

公認会計士・税理士。TAC梅田校出身。中央青山監査法人(当時)を経て、現在、芸能文化税理士法人会長。株式会社ブシロード等の社外監査役。著書に『女子大生会計士の事件簿』シリーズ、『世界一やさしい会計の本です』『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』等。

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