消防士(消防官)になるには?
試験内容、面接、受験対策について詳しく解説

消防官とは

消防士(消防官)とは、救助隊員として、主に消化、救助、救急といった消防活動に携わる地方公務員です。
消防士(消防官)になるには、東京都は東京消防庁、その他の自治体では市町村単位で行われる消防官試験に合格し、採用されなければなりません。

消防士(消防官)試験は、各自治体で大卒程度、短大卒程度、高卒程度の3つに分けて行われます。ここでは大卒程度の試験を中心に解説していきます。

1.消防士(消防官)の仕事内容

消防士(消防官)は、主に消化、救助、救急といった消防活動に携わります。具体的な仕事内容としては次のようなものがあります。

消防本部業務

各部隊の効率的運用・最新技術や装備の導入/管理・人材の育成・消防の将来像など、組織全体を見渡しながら各部隊を支え、施策を考え実行していきます。

消防業務

ポンプ隊・救急隊・特別救助隊など、災害の最前線に立ち、人命救助に挑む部隊です。消防学校での初任教育を終了すると、まずは原点であるポンプ隊に配属されます。

防火業務

防災指導や防火防災に関する消防情報の提供などを通じて、住民の火災発生時の対応力向上や防火防災意識を高めていく業務を行います。

予防業務

建物の設計段階から安全性や消防用設備などの設置に関する審査・検査・指導や立ち入り検査、防火管理指導、火災原因調査を通じて災害の未然防止に取り組みます。

特別部隊

大規模災害に挑むハイパーレスキューや特殊災害時に活動する化学機動中隊など、特殊な知識と技術を武器に、困難な消防活動に挑む部隊です。

2.消防士(消防官)になるには

 消防士(消防官)になるには、東京都(東京消防庁)や各政令市・市町村消防局で行われている消防職採用試験に合格し、その後消防学校での研修を修了しなければなりません。
 試験は、採用区分ごとに行われ、大卒程度(上級・Ⅰ類)、短大卒程度(中級・Ⅱ類)、高卒程度(初級・Ⅲ類)の3つに分かれている場合と、A(大卒程度)、B(その他)の2つに分かれている場合があります。

消防士(消防官)になるまでの流れ

消防官(消防士)になるには 流れ

3.受験できる人の条件(年齢、身体基準など)

 消防士(消防官)試験は、学歴に応じて試験区分が設定されていますが、誰でも受験できるわけではなく、受験するための条件、受験資格があります。受験資格には、「年齢要件」「身体基準」があり、大卒程度の試験の場合、次のような条件になっています。

年齢要件(大卒程度)

自治体や年度によって異なりますが、21歳~35歳程度・大学卒業(卒業見込み)となっています。

自治体名 年齢上限
さいたま市 30歳
千葉市 28歳
東京消防庁 35歳
横浜市 30歳
京都市 30歳
大阪市 28歳

上限年齢一覧表は、令和5年度試験の採用案内を元に作成しています。

受験する際は、必ず最新の採用試験案内をご確認ください。

身体基準(大卒程度)

 消防士(消防官)採用試験(大卒程度)では、身長・体重・胸囲・視力などの身体基準が定められています。多くの試験では各基準に「概ね(おおむね)」と記載されており、比較的緩やかな傾向にあります(一部身体要件を撤廃の自治体もあります)が、本格的な学習を開始する前に各人事委員会に確認しておくことをおすすめします。

消防士(消防官)(大卒程度)
項 目 男性 女性
身 長 概ね160㎝以上 概ね155㎝以上
体 重 概ね50㎏以上 概ね45㎏以上
胸 囲 概ね身長の2分の1以上
視 力 矯正視力を含み,両眼で0.7以上,かつ一眼でそれぞれ0.3以上
色 覚 職務執行に支障がないこと。
その他 四肢関節の運動及び基礎体力は,職務の遂行に支障がないこと。その他身体に異状がなく,諸機能が正常であること。

身体基準一覧表は、2023度試験の採用案内を元に作成しています。

受験する際は、必ず最新の採用試験案内をご確認ください。

Pick up! 東京消防庁の受験資格

東京消防庁は令和5年度実施の試験から、身長・体重・胸囲・肺活量の要件を見直し、身体全般において「消防吏員の職務執行に重大な支障がないこと」という規定に変更しました。他の自治体でも「身長・体重要件」が廃止されている例が見られます。

4.消防士(消防官)の採用試験スケジュール

 消防士(消防官)の採用試験スケジュールについて2023年度の日程を参照しながら、ご説明します(年度によって試験日程は変わりますので、必ず最新の採用試験案内をご確認ください)。
 一般的に、消防士(消防官)の採用試験(大卒程度)は、「1次試験」「2次試験」の2段階で実施されています。
 1次試験では、「筆記試験」が課されます。1次試験を合格したら、2次試験に進むことができます。2次試験は、「人物試験」とも称されるように面接や集団討論等が実施されます。また、体力検査も2次試験で実施されることが多いようです。2次試験を合格すれば、最終合格となります。

消防士(消防官)採用試験の流れ

1次試験
教養択一試験/適性試験(SPI3)
論作文試験
適性検査 など
1次試験合格発表
2次試験
口述(面接)対策
体力検査
身体検査
適性検査 など
最終合格
採用内定

採用試験スケジュールと併願について

 採用試験スケジュールは次のようになっており、試験日が異なっていれば併願することができます。例えば、東京消防庁Ⅰ類試験(東京都)は、年間に2回試験(5月、9月)を実施しています。

消防士(消防官)(大卒程度) 1次試験実施日程(2023年度実施)
日程 試験種
5月 14日(日) 東京消防庁消防官Ⅰ類①
8日(月)~28日(日) 大分市
28日(日) 堺市
6月 4日(日) 松山市
11日(日) 前橋市
18日(日) 札幌市、青森市(地域広域)、仙台市、秋田市、さいたま市、千葉市、横浜市、川崎市、 相模原市、新潟市、富山市、金沢市、福井市、長野市、静岡市、浜松市、名古屋市、京都市、大阪市、神戸市、和歌山市、 岡山市、広島市、高松市、高知市、福岡市、北九州市、熊本市
8月 10日(木)~23日(水) 佐賀市(中部広域)
9月 2日(土)~18日(月) 宇都宮市
4日(月)~19日(火) 水戸市
17日(日) 盛岡市(地区広域)、山形市、甲府市(地区広域)、岐阜市、津市、大津市、鳥取市(東部広域)、松江市、 山口市、徳島市、長崎市、宮崎市、鹿児島市、那覇市
24日(日) 東京消防庁②、福島市
10月 10日(日)~15日(月) 奈良市

試験種横の○内の数字は実施回数(第何回目の試験か)を表しています。

上記の併願例は、あくまで1次試験の日程が被らなかった場合に併願を組んだ例です。自治体ごとの試験の傾向や試験日程を考慮して、無理なく対策可能な範囲で併願を組むようにしましょう。

年に複数回の試験を実施!

  • 上記スケジュールのうち、日時が被らない場合には併願を組むことが可能です。自治体ごとの試験の傾向や試験日程を考慮して、無理なく対策可能な範囲で併願を組むようにしましょう。また例年、他の公安系の試験を併願する受験生も多くいますので、警察官試験等の日程についても併せてご確認することをおすすめします。
    (☞5.消防士(消防官)採用試験と他の公安系公務員の併願)

5.消防士(消防官)採用試験の内容と対策

第1次試験

 教養試験(択一式)・論作文・適性検査などの、主に筆記試験が実施されます。1次試験合格者のみが2次試験に進むことができるため、まずはこの筆記試験の対策を万全にすることが求められます。

 まずは、どのような出題形式・傾向・内容なのか調べておきましょう。消防士(消防官)試験の科目数は多く、試験科目をじっくり学習するには膨大な時間を要します。したがって、出題数に応じて的を絞った学習が重要です。

教養試験(択一式)

 教養試験は、高校までに習った英語、国語、数学、社会などが出題される試験で、マークシート式になっています。幅広い科目が出題されるため合格レベルに達するまでに時間がかかります。予備校を利用することで学習時間を大きく短縮させることも選択肢の一つに入れておきましょう。

 

教養試験の配点一覧

数的処理の傾向と対策

傾向

数的処理はどの試験においても教養試験の中で最も出題数の多い科目です。従って、教養試験突破のカギは数的処理の攻略と言っても過言ではありません。公務員受験対策予備校の受験生と独学の受験生との差がつき易い科目です。

対策

過去問分析を基に頻出問題の解法パターンを学び、繰り返し問題練習を行うことが大切です。公務員受験対策講座を利用することで問題が解けるだけでなく、効率よく解くための解放パターンを身につけることできるので、1問あたりに掛ける時間を短縮することができます。数的処理の得点アップのためには、ある程度対策期間を要します。したがって、1日でも早く始めることに加えて、毎日解くことを念頭に継続して取り組む必要があります。

文章理解の傾向と対策

傾向

文章理解は、現代文・英文・古文で構成されており、問題のレベルは大学入学共通レベルです。多くの受験生が得意科目にしている傾向にありますので、確実な得点力が求められます。

対策

文章理解は、読解のテクニック・選択のテクニック、即ち「コツ」を体得することで、確実な得点源とすることができる科目です。繰り返しの問題練習はもちろんですが、普段から新聞や小説などを読み、文章を読むことに慣れておくことも、有効な学習法のひとつです。

社会科学の傾向と対策

傾向

社会科学は、政治・経済・社会・法律といった科目で構成されている、一般知識科目の中で出題数が最も多い分野です。頻出テーマを中心に、万遍なく学習することが求められます。

対策

政治では「英米の政治制度」「日本の選挙制度」「地方自治」「国際政治」などが頻出です。難易度自体は高くないため得点源とすることを目指しましょう経済は、経済(時事)用語の説明が頻出であるため、新聞やニュース等で見かける用語を押さえておくと良いでしょう。社会は時事問題を含む場合が多く、新聞やニュースを日頃からチェックしておくことが求められます。法律は、憲法が超頻出です。とくに、憲法の「統治」分野が良く出題されることが分かっているため、政治と同様に得点源にすることを目指しましょう

人文科学の傾向と対策

傾向

人文科学は、世界史・日本史・地理・思想・文学芸術といった主に文系科目で構成されています。どの科目も1~3問程度の出題ですが、各科目の学習量が膨大なため、頻出テーマに絞った効率的な学習をすることが大切です。

対策

社会科学の政治と重複するテーマがありますので、それらを優先的にインプットしていきましょう。世界史は近現代史や中国史などの頻出テーマから取り掛かりましょう。日本史は、世界史と同様に近現代史(とくに明治維新~現代)を重点的に学習しましょう。地理は、世界史や日本史と比べて出題範囲が狭くインプットしやすい科目です。思想・文芸は、覚える量が少ないのでマスターしやすいですが、受験先によって出題がない場合があるので、まずご受験される自治体の出題状況を確認しましょう。

SPI3

傾向

非言語と言語から構成され非言語(計数分野)の出題が科目が多いため対策が必要です。
ex)東京消防庁①、堺市など

自然科学の傾向と対策

自然科学は、数学・物理・化学・生物・地学といった主に理系科目で構成されています。文系の受験生を中心に苦手としやすい分野ですが、基礎的な事項からの出題も多いので、頻出テーマを中心にひととおりの学習をしておくことが大切です。

傾向

自然科学は、数学・物理・化学・生物・地学といった主に理系科目で構成されています。文系の受験生を中心に苦手としやすい分野ですが、基礎的な事項からの出題も多いので、頻出テーマを中心にひととおりの学習をしておくことが大切です。

対策

自然科学は出題数が少なめなので、基本的な問題を中心に広く浅く取り組むことが重要です。数学は、出題分野の偏りが多く頻出の単元に絞った学習が必要です。物理は、苦手意識を持ちやすい科目ですが、興味の持てそうな単元や等加速度運動のような簡単に理解できる単元から取り組むと良いでしょう。化学・生物は、単純な暗記で対応できるところが多くあります。頻出度が高く、覚えられそうなところからインプットしていきましょう。地学は、地球の内部・岩石・火山・地震などが頻出で、かつ関連性が強いのでまとめて覚えていくと効果的です。

論作文試験

字数:600字~1200字程度/時間:60分~120分程度

 消防士(消防官)として業務に取り組む姿勢や消防行政に関する課題、一般的な社会問題に関する考察などが出題されます。
 まずは文章の書き方の基礎を学び、論作文の予想テーマや今までの出題テーマを実際に自分の手で書くだけでなく、書いた答案を第三者に見てもらい、評価・添削をしてもらうことが、上達のコツです。

 たとえば、令和5年度の東京消防庁Ⅰ類(第1回)試験の論文では、以下の問題が出題されました。

東京消防庁 出題テーマ例(令和5年度)

消防職員の使命についてあなたの考えとその達成に向けてあなたができることを述べよ。(800字以上1200文字程度/90分)

 一見容易なテーマに見えますが、実際に書いてみるとなると何から書き出せば良いのか迷う方がほとんどです。また、論文試験では設問に対する解答のバランスも重要です。「消防職員の使命」についてだけ長々と書いてしまうと、他の触れるべき論点にあまり言及できず、大幅な減点になりかねません。このような留意点を知るためには、論文答練を行い、その答案をプロに添削してもらう必要があります。「書きっぱなし」では、正直上達のレベルに限界があります。公務員対策講座を受講すれば、プロによる添削を何度も受けることができ、合格レベルの答案に着実に近づいていくでしょう。
 また、自治体ごとにある程度論文試験の傾向が分かっているものが多く、過去問答練→添削→書き直しといった一連の流れを繰り返していくことで、合格水準に達した状態で試験当日に臨むことができます。

適性検査

消防士(消防官)としての適性を見極めるために、クレペリン検査・性格検査などが課されます(試験によっては2次試験で実施の場合もあります)。これらの検査の目的は、筆記試験では測定できない適性や性格を効率的に評価することにあります。具体的には、事務処理能力(速さと正確さ)と性格を判断します。
 あくまでも、「職業に適しているか=消防士(消防官)として適性があるか」を判断する参考資料となるものなので、配点があるわけではありません。基本的には対策を必要とするものではなく、試験当日の指示に従って取り組むようにしましょう。

第2次試験

 全ての消防士(消防官)採用試験で口述試験(個別面接)や体力検査が課されます。2次試験の配点比率は、どの自治体でも高まる傾向にあります。1次試験を通過してから、2次試験の対策を始めるというスケジュールでは間に合わない受験生が多くなってきているのも事実です。したがって、早い段階から筆記試験対策と並行して人物試験のための用意をしておく必要があります。

口述試験

 口述試験(個別面接)は、全ての消防士(消防官)採用試験で課されます。 面接の質問は、質問カードを中心に行われ、志望動機や自己PRについて、色々な角度から質問がなされます。また、試験によっては、時事について意見を求められることもあるため、自己分析・仕事研究はもちろんですが、日々の生活の中で新聞やニュースにも気を配り自分の意見をまとめておくことも有効な面接対策の方法です。

 また、消防士(消防官)試験に特有の質問も多くありますので、それらの情報を持っているかどうかによって合否を大きく分ける可能性があります。最終的には、試験当日に臨機応変に応答することになりますが、実際に過去に聞かれた消防士(消防官)特有の質問内容や、合格者の受け答えを知ったうえで練習を行った人と、そうでない人では力の差がどうしても生まれてしまいますので、このあたりの情報は入念に集めておくことをお勧めします。さらに、自治体によっても質問内容には特色がありますので、併願先を含めた幅広い情報を得られるようにしておきましょう。

面接試験の質問例

  • 志望理由
     「なぜ消防士(消防官)になろうと思ったか?」「なぜこの自治体なのか?」「本当に第一志望なのか?」など
  • やりたい仕事
     「どんな仕事をしたいか?部署・部隊は?その理由は?」「希望しない部署に配属されたらどうする?」など
  • 自己PR
     「長所は?」「短所は?短所の改善のためにやっていることは?」「長所・短所に関するエピソードは?」など
  • 大学生活(ゼミ・サークル活動等)
     「今までで一番力を入れてきたことは?」「アルバイトで学んだことは?」など
  • 趣味・特技
     「ストレス解消になっているか?」など
  • 併願状況
     「併願先と志望順位は?」「民間企業は受けているか?」など

体力検査

 体力検査は、1次試験または2次試験で多くの自治体で課されます。体力検査の内容は自治体により異なりますが、腕立て伏せ・反復横跳び・持久走などが実施され、受験者の体力をチェックします。勉強はもちろん大切ですが、勉強の合間などに、リフレッシュの一環として、ある程度の筋力トレーニングを行うなどしておくことをおすすめします。
 回数を競って得点を稼ぐというよりも、試験当日の試験官の指示通りに、正確に実施することが求められますので、あくまでも「適否」を見られているというイメージで臨まれた方が良いでしょう。

体力検査例

  • 腕立て伏せ
  • 腹筋
  • 反復横跳び
  • 持久走
  • シャトルラン(20m程度の往復持久走)

6.消防士(消防官)採用試験と他の公安系公務員の併願

 消防士(消防官)を受験される方は警察官・皇宮護衛官・海上保安官等、他の公安系公務員も併願されるケースが多くなっています。これらの試験は日程が被らなければすべて併願受験が可能です。

 

消防士(消防官)以外の公安系公務員 第1次試験実施状況 ※令和5年度実施
日程 試験種
4月 29日(土) 警視庁警察官Ⅰ類①
5月 14日(日) 東京消防庁消防官Ⅰ類①
6月 4日(日) 皇宮護衛官 海上保安官
18日(日) 政令市消防・市役所消防職A日程
7月 9日(日) 市役所消防職B日程
9月 17日(日) 市役所消防職C日程 警視庁警察官Ⅰ類②
24日(日) 東京消防庁消防官Ⅰ類②
1月 7日(日) 警視庁警察官Ⅰ類③

試験種横の○内の数字は実施回数(第何回目の試験か)を表しています。

 第一志望先の消防士(消防官)試験と被らない日程で併願を組むと良いでしょう。とくに、本命とする志望先よりも早い日程で実施される公安系の試験がある場合には、併願先として受験することをお勧めします。ある程度公安系の公務員試験がどのような雰囲気なのか経験しておくことで、本命試験への臨み方も大きく変わってくるでしょう。また、複数の併願先を受験しておくことで万が一のリスクに備えることもできます。

7.消防士(消防官)試験は難しい?どんな人が有利?

 ここまで試験の内容やスケジュールについて解説してきました。「やるべきことが多そう!」「筆記試験が難しそう…」などと思った方も多いのではないでしょうか。実際にどの程度試験が難しいのかどのような人が消防士(消防官)に合格しやすいのかを解説していきます。

消防官試験の難易度

  1.  消防士(消防官)試験はどの程度難しいのでしょうか。年ごとの採用数によって合格率に変動がありますが、消防士(消防官)試験の合格率はだいたい10%~30%程度となっています。
     このため、1次試験(筆記試験)、2次試験(論文、人物試験、体力試験)ともにしっかり準備しておかないと合格は難しいといえるでしょう。筆記試験科目の多さや論文に加えて近年重視されている面接対策の必要性から消防士になるための勉強期間の目安は1年程度と言えます。
2023年度 主な消防士(消防官)試験の結果(大卒程度)
試験名 受験者数 1次合格者数 最終合格者数 合格率
東京消防庁
消防官Ⅰ類 第1回
2,473名 1,295名 790名 31.9%
横浜市消防局
消防一般
457名 201名 60名 13.1%
さいたま市消防局
消防
190名 49名 22名 11.6%
千葉市消防庁
消防士行政
138名 65名 32名 23.2%
名古屋市消防局
消防
357名 280名 102名 28.6%
大阪市消防局
消防吏員A Ⅰ(男性)
300名 79名 55名 18.3%
大阪市消防局
消防吏員A Ⅰ(女性)
19名 8名 5名 26.3%
福岡市消防局
消防官吏員A
229名 57名 25名 10.9%

面接試験が最終合格を決める?

 従来通り1次試験(筆記試験)も重要ですが、最近の傾向として面接(人物試験)を重視する自治体が増えています。
では、なぜここまで「面接(人物試験)」の試験傾向になってきているのでしょうか。ひとつは、受験者数が減少してきていることが要因として考えられます。筆記試験のボーダーを低めにして、できるだけ多くの受験生の合否を人物試験で判断したいという狙いがあるように思います。さらには、やはり消防業務は対人で行うものが大半ですので、受験生の「人柄」や「コミュニケーション能力」が重要になることも大きな理由でしょう。だからこそ、採用側の本音としては「人物」で判断したいという意図があるのでしょう。
 さらに、試験ごとの「配点」を見てみるとその傾向は一目瞭然です。

〈消防士(消防官)試験(大卒程度)の配点の一例〉

〈消防官試験(大卒程度)の配点の一例〉

網掛け部分は1次試験で実施する試験

1 ( )内の点数は1次試験判定の得点。最終合否の判定は( )の点数を40点として換算した点数を用いる。

2 堺市消防は教養試験の代わりに適性検査(SPI3)を実施し導入しています。

  とくに最終合否を2次試験の得点のみで決定している自治体は、面接試験の配点比率が極めて高いことがわかります。合否を判断する要素のうち、面接試験が6割近くを占めることになるため、いかに「人物重視」かがお分かりいただけるかと思います。

 「1次試験は何とか合格したけれども、教養試験の得点が低い…」という方がいたとしても、上記の傾向にあることを考えれば、「面接試験で十分挽回できる!」ということになります。したがって、1次試験を要領よく計画的なスケジュールで突破してしまえば、面接試験の一本勝負に近い状態に持ち込むことも自治体によっては可能なのです。ただし、配点がわかっている以上、他の受験生も同じような戦略で面接対策を入念に行ってくるため、それ以上の対策の質と量が求められるでしょう。

消防士(消防官)試験合格に有利な人

① 有資格者や優秀なスポーツ成績を収めた人

 消防士(消防官)試験には、各種資格やスポーツでの活躍が得点に換算され、加点される制度があります。加点対象になる資格や加点の幅は自治体によって異なりますので、受験する自治体の採用案内をご確認ください。一例として、【令和5年度東京消防庁】の加点制度について見てみましょう。

② 多様な経験がある人

 消防士(消防官)に必要な経験値には様々なものがあります。部活動の経験やアルバイト経験、大学のゼミ研究といった学生生活における経験はもちろん、インターンシップや消防署見学、ボランティアなどの消防士(消防官)の業務に直結するような経験があると望ましいでしょう。

 とくに、消防士(消防官)の業務に直接繋がる経験は試験に有利に働くでしょう(加点があるというわけではありません)。消防士(消防官)として働くイメージを鮮明にできるだけでなく、面接試験の応答でも役立てることができる一石二鳥の経験です。実際に消防士(消防官)の方と触れ合う機会は大変貴重な経験です。現場の生の声を聞くことで、より具体的な消防士(消防官)の理想像を描くことができるでしょう。多様な経験のうち、ボランティア活動やイベント情報の一例をお示しします。

 いずれの経験も全て面接試験で活用することができます。面接ではどこにでも書いてあるような表面的な応答よりも、その受験生にしか話せない、具体的なエピソードに基づく応答の方が評価は高くなるでしょう。消防士(消防官)に必要な「適性」を身につけることで、面接官に「ぜひ来てほしい!」と思ってもらえるわけですが、そのために、多くの経験値を得て、「3~4人に1人」の競争試験を勝ち抜きましょう!まずは、身の回りにどのような経験の機会があるか調べてみるところから始めましょう。自主的に動いた分だけ、経験値は身についていきます。

8.消防士(消防官)試験 勉強期間の目安は?

 筆記試験、体力試験、面接など消防士(消防官)になるための試験は準備をすることがたくさんあります。確実に合格できるようになるにはどの程度の勉強期間が必要でしょうか。
 理想的な目安としては、1年間かけて対策することが望ましいでしょう。1年間の対策スケジュールを例にご説明していきます。

 

対策スケジュールの目安

 

早い方で新年度を迎える1か月前の3月に対策をスタートします。ただし、闇雲に対策を始めることは得策ではありません。ある程度、ゴールを見据えたうえで対策をスタートさせた方が効率的です。たとえば、TAC警察官・消防士(消防官)講座では、各科目の講義よりも前に、「合格必勝スタートアップ講義」と題して、消防士(消防官)等の公安系公務員試験の概要や、近年の試験傾向、理想的な学習スケジュール、効率的な対策方法について解説しています。

 独学であれば、ある程度志望先を想定したうえで、志望先の情報収集、テキストの選定、学習スケジュールの作成、対策方針の決定など、すべての準備段階をおひとりですることになります。とても大きな負担であり、何より相当時間を要してしまいます。さらに、この下準備が整わないと、その後の継続的な学習に結びつかず、1か月程度で「燃え尽きてしまう…」なんてこともあります。

 したがって、予備校の講座を受講するメリットは大きいと言えます。最終合格に向けて逆算されたスケジュール、洗練されたテキスト・問題集、気軽に利用できる講師によるフォロー制度、直近の合格者による試験の復元情報など、充実の仕組みがあると最終合格可能性はぐんと高まるでしょう。独学者との差はまずスタート時点でつくと言って良いでしょう。

9.まとめ 消防士(消防官)になるには?

装備確認をする消防官

 消防士(消防官)になるには、逆算されたスケジュールが必須です。まずは、試験日までどのくらい日数があって、どのくらいの学習量が必要なのか、さらに1日に捻出できる学習時間を整理してはじめて試験対策のスタートです。

 つまり、難易度や必要な学習量、効果的な対策方法、優先順位等について「知ること」が重要なのです。独学の場合、そのような情報を一から自分で探らなければなりません。資格の学校TACであれば、高い合格実績をもとに作られたカリキュラムやテキスト、フォロー制度があります。公務員試験という「情報戦」を勝ち抜くために、自分に合った環境を整えることからはじめていきましょう。


TAC警察官・消防官講座担任 安達圭亮講師

この記事の著者 TAC警察官・消防官講座 担任 安達 圭亮 講師

 新宿校、通信講座担任講師。自然科学、試験対策ゼミを担当。
 講義以外にも模擬面接、面接カード指導、受験生のことを誰よりも本気で考え、ひとりひとりに寄り添った指導に定評がある。
 TAC公務員講座 YouTubeではショート動画を中心に警察官・消防官試験に必要な情報を配信中。

警察官・消防士(消防官) 合格への第一歩はココからスタート!

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