簿記1級の勉強時間と効率的な勉強法とは? 専門家が詳しく解説!
非常に高度な会計知識とスキルを証明する資格、それが日商簿記1級です。しかし、簿記1級に合格するためにどれくらいの時間を割いて勉強すべきか、どのように効率的に学習するかは多くの受験者にとって悩みの種です。
この記事では、簿記1級合格を目指す方々に向けて、合格に必要な勉強時間、効率的な学習方法や1級特有の論点などを具体的に解説します。1級合格者の貴重な合格体験談も交えながら、合格への道を明確に示します。
さあ、効率的な学習で簿記1級の合格を目指しましょう!
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簿記1級の特徴
試験科目
簿記1級は以下の4つの科目から成り立っています
- 商業簿記(配点25点)
- 会計学(配点25点)
- 工業簿記(配点25点)
- 原価計算(配点25点)
各科目は25点満点で、合計100点満点となります。試験時間は商業簿記と会計学であわせて90分、工業簿記と原価計算であわせて90分、合計3時間の長丁場の試験になります。
簿記1級の合格ライン
(3級や2級と同じように、) 簿記1級の合格基準は、合計で70点以上になります。ただし、各科目ごとの得点が40%以上必要です。つまり、1科目でも10点(25点×40%)に満たない科目がある場合は、仮に合計で70点以上だとしても、残念ながら不合格となります。
苦手科目を作らずに全ての科目で満遍なく得点することが重要です。
簿記1級の難易度と合格率
試験範囲が広く、その範囲を一通り網羅して合格するまでに、最低でも半年から1年程度の勉強が必要となります。難易度も3級・2級に比べより高くなるのですが、長い間合格率が10%付近だったところが、近年は上昇傾向にあり、2023年11月試験では16.8%ととても高い合格率をはじき出しました。
従来に比べ、努力がより報われやすい試験になってきているといっていいでしょう。
簿記1級の出題傾向
簿記1級試験と聞くと、難関資格ゆえ、難しい問題を解けるようにならないといけないのではないか?と思いがちですが、そんなことはありません。むしろ、簡単な問題を確実に解けることが重要なのです。
難しい問題を積極的に解くのではなく、まずは比較的難易度が低い問題で着実に得点することが合格への第一歩です。また、上述したように各科目で足切りラインが設定されているため、捨て科目や捨て論点を作らず、全体的に満遍なく得点できるように勉強することがポイントです。
簿記1級合格に必要な勉強時間
簿記2級合格レベルの知識がある場合
約500~1000時間
初心者の場合(3級→2級→1級の順で学習)
約800~2000時間
簿記3級は100時間、簿記2級は300時間程度の勉強時間が合格には必要とされていることからも、簿記1級の難易度の高さが伺えますね。
簿記1級の効率的な勉強法
基礎的な内容を最優先にマスター
上述した通り、1級の学習範囲はたしかに広いものの、本試験では“基礎力の実践”がなによりも求められます。言い方を変えれば、難しい問題を解くことで合格できる試験、ではないとも言えます。
「商業簿記・会計学」「工業簿記・原価計算」いずれも、テーマごとに丁寧に学習しつつ、すべての内容を平たくマスターするのではなく、メリハリをつけて習得することを心がけてください。
科目ごとの特性を理解する
2級において商業簿記と工業簿記の2科目を学習し、この両者の科目の違いを感じたこともあったかと思います。1級においても同様です。
2級商業簿記の延長線上にあるといえる「商業簿記・会計学」と2級工業簿記の延長線上にあるといえる「工業簿記・原価計算」とでは、科目の特性が異なります。簿記の学習であることはもちろん同じなのですが、1級学習時においても、両者の違いを意識しながら学習を続けるようにしましょう。
いずれの科目も苦手にしないように
上述した通り、商業簿記、会計学、工業簿記、原価計算の各科目は25点満点で、合計100点満点となります。合格判定の基準は2つあり、1つは合計点が70点以上であること、もう1つは各科目ごとに10点以上を取ること、この2つの条件を満たす必要があります。 例えば、以下のケースはどうでしょうか。
商業簿記25点、会計学20点、工業簿記25点、原価計算8点
合計すると78点ですので一見すると合格しているように見えます。ただし、“各科目ごとに10点以上を取ること”につき、原価計算がそれを満たしていないため、残念ながらこれだけの高得点でも合格できないのです。このことから、学習をするうえで、どこかの科目や論点を著しく苦手にしてしまうと、その科目や論点に足を引っ張られて、不合格になってしまうおそれがあるということになります。学習に臨む段階で、嫌いな科目を作らないように心がけておいたほうがよいでしょう。(もちろん、学習した結果として、得意不得意が出てくるのはやむをえませんよね…。)
下書きを固める
簿記3級・2級にはネット試験がありますが、簿記1級は統一試験(ペーパー試験)のみになります。そうなると、問題用紙への書き込みや下書き用紙の使い方など、自分なりのやり方をきちんと確立しておく必要があるでしょう。
各論点ごとに下書きの「型」を把握しておくことも重要でしょう。例えば、連結会計ではタイムテーブル、総合原価計算ではボックス図などがあります。下書きを繰り返し作成することで、正確な解法を安定して導けるようになります。
勉強仲間を作る
仲間と一緒に勉強することで、新たな視点やアイデアを得ることができます。簿記1級の勉強は比較的長期間に及びます。スクールなどを利用して勉強仲間を作ることも、モチベーションアップに大いに役立つことでしょう。
簿記1級で新たに学習する論点や受験生が苦手な論点は?
商業簿記・会計学
どの論点というわけではありませんが、3級・2級では学習しないところとして、複利計算が登場します。いわゆる利率の計算ですね。細かい計算が要求される部分ですが、貸倒引当金や固定資産会計などいろいろなところに登場しています。
純資産勘定に関する取引
特に「ストックオプション」や「自己株式」、「新株予約権の行使」など、1級で学習する典型論点が頻出です。
収益認識基準
2級で学習している収益認識の基準ですが、「商品券」「代理人」「ポイント制」など1級ではさらに幅広く取り扱います。本試験でもしばしば出題されている重要論点ともいえます。
連結会計
2級に引き続き連結会計も頻出で、細かい論点に注意が必要です。例えば「コンサルティング料金の支払」や「広告費への振替」などの細かい内容も出題されています。
有価証券
「有価証券」は1級だけでなく2級や3級でも出題される論点です。会計学には典型論点の中でも重要なものが登場するため、しっかり押さえておくことが必要です。
固定資産
3級・2級でおなじみの固定資産ですが、1級でもまだまだ学習は続きます。減損会計や資産除去債務など実務でもしばしば目にする内容もあり、やはり重要性は高いでしょう。
工業簿記・原価計算
2級工業簿記で学習している費目別計算、個別原価計算、総合原価計算、標準原価計算などを、1級ではさらにより深化させ、各論点を学習します。2級で習得した基礎知識をさらに上積みさせて確固たる理解に繋げるようにしてください。
また、2級工業簿記では学習しない論点もまだまだ多く登場します。とくに、「管理会計」といわれる経営管理に役立つ原価計算については、まさに1級の真骨頂といえるでしょう。利益の計画や統制、適正かつ効果的な業績の評価、都度迫られる経営判断の解決(意思決定)など、盛りだくさんです。
簿記1級合格体験記
難しさも段違いだが面白さも段違い!
高山 信一さん
より深く会計の勉強をしたい、と思い1級を目指しました。
講義は平日19時からで仕事終わりでも受けやすく、講義が受けられなくても他校舎やWEB講義で振替受講でき、大きな後れを取ることなく講義を全て受けきることができました。講義もわかりやすく、毎回ポイントがレジュメにコンパクトにまとめられていたので効率よく勉強することができました。
簿記1級は2級と比べて難しさも段違いですが、面白さも段違いです。どんな職種であっても会計の知識は持っていて絶対に損はしないと思いますので、長丁場ですが諦めずに頑張ってください。
【受講コース】1級合格本科生
高3で1級合格!
篠原 利玖さん
高校1年時の進路セミナーで聞いた公認会計士の影響で、会計に興味を持ちました。3、2級と学習を進めていく中で、簿記の楽しさ、奥深さを知り、さらに知識を深めたいと思い1級に挑戦しました。
Web通信講座を受講していましたが、Webでありながら気軽にわからないところを質問できたり、様々なサポートのおかげで合格することができました。自分は今高校3年生ですが、大学生になったらこれまでの簿記の知識を生かして公認会計士試験合格を目指そうと思っています。簿記1級は3・2級より試験範囲が広く難易度が高いですが、合格するという気持ちを持って頑張ってください!
【受講コース】1級合格本科生
この記事を書いた人
佐藤 浩之 講師 (TAC簿記検定講座専任講師)
日商簿記検定の“最終章”ともいえる簿記1級は、3級・2級に比べ学習範囲が広くなるため、学習時間も必然的により長くなります。
とはいえ、その膨大な学習範囲をなんの指針もなく、ただ進めるだけでは、いたずらに時間を消費するだけでしょう。
合格点を獲得するための勉強とはなんなのか、3級・2級とは何が違うのか、を意識しながら1級を勉強しましょう!