弁理士合格体験記|R.Oさん【一発合格】

弁理士試験合格に寄せて

R.Oさん

R.Oさん
(27歳)
神戸大学大学院
理学研究科
物理学専攻修了

一発合格

DATA BANK

受験回数 1回
2022年度 短答・論文・口述合格
受講講座 1年本科生
得意科目とその理由 特許
最も力を入れて勉強していたため、知識の定着が早かったから
不得意科目とその理由 特になし
ズバリ合格の秘訣 試験までのスケジュールを逆算し、十分な量の復習と試験対策を行ったこと
1日の平均学習時間 入門期~基礎期 平日2時間 休日8時間
直前期 平日2時間 休日8時間
弁理士を目指した理由、TACを選んだ理由

 弁理士試験の受験を決意した当時、私は企業の知的財産部に勤務しており、技術者から提案される発明について特許出願の判断を行うといった業務を主に担当していました。しかし多くの企業の知財部がそうであるように、出願書類の作成や出願手続きなどは外部の特許事務所に依頼しており、必ずしも弁理士の資格が業務上要求されているわけではありませんでした。そのような状況にあって私が弁理士を志した理由は、主に2つあります。
 まず1つ目は、上述の業務に取り組むに際し開発者のキャリアを長年歩んできた技術者と対等に議論を行うためには、経験の差をものにせず、相手から頼りにされるためのスキルを有している必要があることを実感したからです。そのスキルの一つとして自分が考え付いたのが弁理士資格でした。技術内容の理解に関しては技術者の方には敵わないかもしれません。しかしながら、例えば特許出願の判断を行うにあたり特許法等の専門知識を身に付けていれば、発明の権利化を希望している技術者に対して法律や制度の観点から有用なアドバイスをすることができます。このように弁理士資格を活かすことで、技術者と自分とでお互いの強みを発揮しつつ議論の場で対等にやり取りができるようになるのではないかと考えました。
 2つ目は、業務に要求される資格であるか否かにかかわらず、担当する分野に関連する知識や能力を有しているかどうかは仕事でやり取りをする相手方との信頼関係に大きく影響を及ぼすものであり、仕事を円滑に進める上で弁理士という資格が有利に働くのではないかと考えたからです。弁理士試験は世間的には最難関資格の一つとして認知されています。そのため、弁理士の資格が、単に知的財産法の知識をもっていることの証明というだけにとどまらず、自身が有する能力を、資格という目に見える形で周りにアピールできるツールとなるという点に非常に魅力を感じました。以上2点の理由により私は弁理士を目指しました。

TACの講師、教材、カリキュラムで良かった点、活用したフォロー制度

 私は4月開講の1年本科生コースを受講しましたので、こちらのコースのカリキュラム等でよかった点を振り返りたいと思います。
(1) ELEMENTSについて
 1年本科生コースは、最初にELEMENTSという基本参考書を用いた基本講義(体系編)から始まります。ELEMENTSには特許法、実用新案法、意匠法、商標法、条約、不正競争防止法、著作権法の概要がコンパクトにまとまっており、それぞれの内容をスムーズに理解することができました。また講義終了後には、過去問題集のうちその講義で習った内容に関連している問題を復習するように案内があるので、講義の理解を定着させるのに非常に有用だったと思います。ELEMENTSを用いた基本講義(体系編)は7月初旬頃まで続くのですが、講義と同じペースでテキストを読み進めた場合、1回分しかテキストに目を通さないことになります。そこで自分の場合、復習もかねて何度もELEMENTSを読み直すようにして、知識の定着を図りました。スケジュール通りに基本講義(体系編)が終了する7月初旬までに3回は通しでテキストを読んだように思います。しかし、先にも述べましたがELEMENTSには概要がコンパクトにまとまっていたため、繰り返し読むにしても多くの時間をかけず学習に取り組むことができたので非常に助かりました。

(2) 逐条編テキストについて
 そして、7月上旬ごろから各法律の条文を一文ずつ確認し内容を理解していく基本講義(逐条編)が始まります。ここからが真に弁理士試験の勉強が始まるといっても過言ではないと思います。短答試験の過去問を確認すると分かるのですが、ELEMENTSはあくまで各法律を体系的に理解するためのテキストであり、実際の試験問題を解き、合格点以上の成績を残すためには法律を条文ベースで理解することは不可欠です。したがって、この基本講義(逐条編)は最も時間をかけて取り組むべき講義です。基本講義(逐条編)で使用するテキストは、法律ごとに条文がすべて掲載されているので非常に分量が多いのですが、条文ごとに、審査基準、逐条解説(青本)の内容、頻出の過去問、他の法律との違いを意識すべき箇所、重要判例が整理されて記載されており、この教材で短答試験の試験内容をほぼ網羅できていたのではないかと思います。講義では、各条文の「主体」「客体」「時期的要件」「効果」をそれぞれ区別して下線を引くように指示されるのですが、これにより、習った内容の見直しを行う際に、どういう趣旨の条文であったかが一目で理解できるようになり、効率的な復習ができました。ちなみに先の体系編とこの逐条編の基本講義を受講する際の心構えとして重要な点は、それぞれの講義の目的を明確に理解したうえで受講する必要がある、という点です。講師が講義を開始する前にその目的を説明してくださるのですが、例えば体系編では各法律の条文について内容を深く解説する、ということは行われません。それは体系編が、条文を精読することではなく、各法律の概要を一通り理解することを目的としているためです。ここで目的を誤解し、概要を理解すべきところ一つ一つの条文の理解にこだわって、学習のペースを落としてしまう、といったことにはならないよう注意が必要だと思いました。一方で逐条編では条文の内容を一条ずつ確認していき、過去問において条文の表現を一部のみ変えたようなイジワルな問題や、時期的要件をすべて覚えておかなければ正誤の判断を行うことができないような問題に対処するためのトレーニングを積んでいきます。ここでは、体系編で理解した各法律の概要をもとにじっくりと時間をかけて知識を定着させていくフェーズになりますので、根気強く取り組む必要があることを自覚しなければモチベーションの維持が困難なのではないかと感じました。いずれにせよ、それぞれの講義に使用されるテキストは上記の目的に合わせて効果が最大限発揮されるように情報量やレイアウトが工夫されているので、そのおかげで短期間でも効率的に必要な知識を定着させることができたのではないかと思います。

(3) 短答答練について
 答練には、各法律の基本講義(体系編)が終わった後に理解度の確認のために行われる基礎答練と、基本講義(逐条編)がすべて終わった後に複数回行われる応用答練がありました。基礎答練は、習った知識が過去問を解ける程度にまで整理されて頭に定着しているかどうかを確かめるためにちょうどよいタイミングで提供されているように感じました。基礎答練では、正誤を間違えてしまった枝については、ノートにまとめるようにし、同じ問題を解くときに2回目以降は間違えないようにするという意識で取り組んでいました。応用答練は、TACから学習用に渡される短答式枝別過去問題集に掲載されている問題以外にも幅広い問題が出題され、試験本番に向けて多くの問題に触れることができたという点で非常によかったです。それぞれの答練で解答・解説も充実しており、正答できなかった問題を解けるようになるまで繰り返すなど妥協なく取り組めば、本試験に必要な実力を十分に身に付けられると思います。

(4) 論文答練について
 論文答練は、合計で12回の論文添削を受けることができます。添削により論文の基本的な書き方から記載量の調整、重要論点についての指導を受けることができ、答練を受講するごとにうまく書けるようになっていったことを実感しました。論文答練を最大限利用する方法としては、問題を解いて自分の解答を作成したのち、論文答練の模範解答をノートなどに一度は書き写すようにすることです。これにより、模範とされる解答と自分の解答とのギャップが明らかになったり、また解答の構成を考えるのに難儀した問題について、「こんなコンパクトなまとめ方があるのか」という気付きがあって、答案の構成力を磨くためのトレーニングになりました。

オリジナル学習法

 自分は、1週間におよそ20時間から25時間の勉強時間を確保していました。特に平日は通勤時間(20分×2)、会社の昼休みの時間の一部(30分)を勉強時間にあてており、隙間時間を有効活用して勉強を行うように心がけていました。内容としては、土日に講義を受講したり、テキストを読み込んだりといった知識のインプットを十分に行い、その確認を上記の隙間時間に行うというやり方です。また、土日に勉強した内容を忘れてしまうことを防ぐために、平日の仕事が終わってからは1時間ほどインプットの補完のための時間としていました。このように1週間単位で勉強のサイクルを確立し学習を繰り返していったことが、短期に知識を身に付けて試験に合格することができた秘訣なのではないかと思います。
 その他の学習法としては、学習した内容のうち重要ポイントをメモしたオリジナルのノートを作成するようにしていました。重要ポイントとは、問題でよく問われる点や自分が過去問を解いて間違えてしまった問題、知っていなければ問題を解くことができない重要な審査基準などです。これを法律ごとにまとめて、答練や模試など問題演習に取り組む前に一通り確認して臨むようにしていたので、問題演習を取り組むにつれて必要な知識を確実に定着させることができました。

これから受験する人へのアドバイス

 弁理士試験は世間的に難易度の高い試験であるとされており、自分が投資する時間に対して思ったような成果が得られないのではないかと不安に感じ、試験に興味はあるけれど挑戦するまでの決断に時間がかかってしまっている、という人がいるかもしれません。しかし、弁理士試験に必ず合格するという強い意志を持ち続け、正確に計算されたTACのカリキュラム、豊富な合格実績を有する教材等を活用しながら学習を継続すれば、確実に良い結果にたどり着けるように思います。ですので、少しでも挑戦してみようという気になったのであれば一刻も早く行動を起こすのが重要かと思います。これから受験を考えている人の成功を心から祈っています。

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