弁理士合格体験記|前川 恭行さん

粘り強く最後まであきらめなければ道は開ける

前川 恭行さん

前川 恭行さん
(46歳)
立命館大学大学院
理工学研究科
応用科学系 修了

DATA BANK

受験回数 6回
2021年度 論文・口述合格
受講講座 上級論文本科生、論文ファイナルチェック
得意科目とその理由 意匠
覚えることが少なかったため
不得意科目とその理由 特許
一番勉強しましたが、一番得点が低かったため
ズバリ合格の秘訣 勉強を継続すること
1日の平均学習時間 入門期~基礎期 平日2.5時間 休日8.5時間
直前期 平日3時間 休日10時間
弁理士を目指した理由

 私は特許事務所に勤務していたため、周りに弁理士の方も多くおられ、資格取得の勉強をしている事務所員も多く、自然と勉強をする環境にありました。しかし特許事務所での仕事も忙しく、特に事務所に勤めてからの最初の3年ほどは、業務を覚えるのに精一杯で勉強どころではありませんでした。
 しかし、事務所で働いている方を見ると、やはり弁理士の資格を持っていらっしゃる方のほうが、仕事の内容や幅も広がり、やりがいも相当あると感じていましたので、自分もいつしか弁理士として資格を取得してそれに見合う仕事をしていきたいなと思い、弁理士を志しました。

TACを選んだ理由

 特許事務所に勤務してから4年目に初めて弁理士試験を受験しました。しかし結果はさんざんたるもので短答試験は4割ほどの出来でした。当時の自分は受験1年目なので最初はこんなものだろうと思い、特に反省や振り返りもせず、また特許事務所での仕事もそれなりに忙しく、その後も勉強に時間を多く割いていませんでした。今思えばそれは単に言い訳で、短期では合格しなかった理由だったのかなと思います。他の予備校の通信講座は受講していましたが、仕事の忙しさを言い訳にして途中でついていけず、中途半端な勉強で終わっていました。そんな状態が4年ほど続いていました。その後、結婚や子供の誕生があり、試験勉強はしばらく中断して、家庭や育児に時間を費やしていました。
 そして、子供が幼稚園に入り、少し時間の余裕ができたのでもう一度弁理士試験に真剣に挑んでみようと思いました。そのときに、初学者ではなかったのでいろんな予備校の講座を調べていたときにTACの短答答練パックが目につきました。弁理士試験の難しさはこれまでの受験で身に染みて感じおり、また、仕事や家庭の時間も大切にしたかったため、まずは短答試験合格を目標に頑張ってみようと思ったので、2年で合格することを目標にして、1年目はTACの短答答練パックのWEB講座のみを受講して短答試験合格に向けて勉強を再度開始しました。

TACの講師、教材、カリキュラムで良かった点、活用したフォロー制度

 WEB講座の利点は自分の都合の良い時間に講義を受講し、何度も繰り返して視聴することができることでした。また、質問にも担当の講師の方が随時答えてくださり、フォロー制度も充実しており特に不便なく受講できました。そして私のこれからの将来を決定付けることになると言っても過言ではない出来事が起こりました。
 それはTAC弁理士講座の小松先生との出会いでした。WEBでしたが初めて小松先生の授業を視聴したときはこんなにわかりやすく的確に指導をしてくださる先生がいるのだと目から鱗が落ちる感覚でした。しかも受験指導だけではなく、人としての生き方や試験勉強時のモチベーションの維持の仕方などにも示唆に富み、毎週WEBで受講するのが楽しみになりました。
 私にとっては小松先生でしたが、弁理士試験を合格する上では、指導してくださる講師の方との相性はかなり大きいものだと思います。自分に合った講師の方との出会いも合格の秘訣だと思います。私は小松先生の短答応用答練や短答的中答練の講義を受けて確実に実力が向上していったと思います。
 そして2020年に無事に短答試験に合格することができました。その年の論文試験は準備不足のために不合格でしたが、もともと2年計画で進めていたため、次の年は必ず合格する思いで、迷わずTACの上級論文本科生のWEB講座を受講しました。WEB講座では自己管理が重要になるため毎週この時間に講義を視聴したり、答練を解くなど、一定のペースを守って進めていました。

効果的学習法

 短答試験は、講義で小松先生がおっしゃっていましたが、「過去問は未来問である」ということを意識して過去問10年分をとにかく繰り返しました。過去問で出題された問題やそれに伴う条文などは、形を変えて出題されることが多いので、過去問とそれに関連する条文を徹底的に学習しました。著作権や不正競争防止法は直前に詰め込んで学習される方も多いと思いますが、私は直前期は特実意匠にかける時間が多くなると思い、著作権や不正競争防止法は早い段階に過去問で8割以上は取れる状態にし、それを維持することを心掛けて、試験直前は特実意匠を重点的に学習しました。条約は足切りにならないことを思って勉強していましたが、過去問をやり込んでいたこともあり、本試では条約で8割を取ることができました。
 論文試験については、最初は論文の書き方がわからず、答練を受けても思うように点数が上がらず焦ることもありましたが、TACの論文上級講義テキスト、論文応用答練・論文的中答練、過去問10年分(早稲田経営出版)を繰り返し学習しました。そうしていくうちに、自然と論文の書き方が身に付き、答練の点数が上がっていき手応えを感じるようになりました。テキストの内容や答練、過去問で出てきた問題に対する解答を条文ごとに自分でまとめたノートを作成し、試験直前までそれを何度も見返し、この問いには、どの条文を使い、どのように書くのかといったことを徹底的に頭に叩き込み、反射的にアウトプットすることができるようにしました。
 そのおかげで論文試験の本試では、問題文が長く、論点を整理するのに時間がかかりましたが、この問いにはこの条文を引用してこのように書けばいいという内容を、自分の頭の中の引き出しから引っ張ってくることができ、満足のいく答案を作成することができました。

直前期の学習方法

 短答試験は過去問と条文の反復に尽きると思います。直前期までには過去問の問題はほぼ完ぺきに正解できるようになった上で、TACの短答答練や模試などで知識の穴埋めをし、試験本番に最高の状態に持っていくことを心掛けました。試験当日は解けない問題に出会うと何度も心が折れかけそうになりましたが、自分がやってきたことを信じて最後まであきらめずに一つ一つの枝を丁寧に解いていくことを心掛けました。試験が終わったときは正直受かるとは思っていませんでしたが、翌日自己採点して合格を確信しました。近年の短答試験の問題はかなり難しくなっており、一見してわからないと思っても、一つ一つの枝を吟味して自分の知っている知識を総動員して解いていけば正解にたどりつけると思います。しかしそれには過去問や答練の問題をやり込み、条文を読み込んでいることが必須です。人それぞれですが、時間の許す限り、それらに取り組めれば合格する力は身に付くと思います。
 短答試験合格後、1年目の論文試験は全く手応えがなく、恐らく受験生の中でもすべての科目で最低点の方だったと思います。しかし、もともと2年合格を目標としていたので気にせず、それからTACの論文上級講義のテキストをやり込みました。特に趣旨や判例は、最初は全く書けなくても、キーワードを穴埋めにして、少しずつ書ける範囲を広げていくことで試験直前には重要な趣旨や判例は何も見ずにほぼすべて書けるようになりました。
 論文試験の本試では、特許と意匠は問題文が長く、1問目を解いた段階で半分の時間が超過していたので、もう無理かなと思いましたが、今までやってきたこと、TACの講師の方々、応援してくれた家族や友人の顔を思い出し、最後まであきらめずに全ての問題の解答を書くことができました。
 論文試験後はもしかしたら合格しているかもと思い、すぐに口述試験の勉強を始めました。口述試験は、形式は口述という形でTACの模試などで練習が必要ですが、内容は短答試験や論文試験の延長線上にあると思い、特に趣旨や判例などについては論文上級講義テキストの内容を復習していました。また、口述試験の過去問10年分(早稲田経営出版)を確実に解けることは必須で、プラスアルファの学習として口述試験バイブル(早稲田経営出版)などで重要な条文の趣旨や判例、効果、要件など、全ての範囲で穴を作らず答えることができるようになることが重要です。実際に私が受験した口述試験では、過去10年の問題に類似した問題はあまり出題されませんでした。しかし、論文上級講義テキストの内容をマスターしていましたので、全ての科目について最後まで答えることができました。

これから受験する人へのアドバイス

 遊びたい盛りの幼稚園の息子は、父親と遊びたいにもかかわらず我慢するときも多く、幼稚園の七夕の短冊で他の子供たちが「サッカーをしたい」、「ゲームをしたい」などと書いている横に「パパの試験が合格しますように」と書いてくれて感無量でした。合格した後は、息子は、弁理士試験の意味はわかっていないと思いますが、自分もパパみたいに弁理士試験に合格したいと言ってくれてますます感無量でした。合格後は思う存分子供との時間を楽しんでいます。私は短期間で合格するような優秀な受験生ではなく、途中一旦勉強を中断し、挫折を何度も経験しました。それでも弁理士になる目標は失わず、チャレンジし続けることにより合格することができました。
 短期間で合格するような受験生は他の方の合格体験記を参考にしていただければと思いますが、私は、弁理士試験をあきらめようかと思っている方々に、あきらめずに時間の許す限り、最後まで挑戦していってもらいたいと思います。私も受験時代は何度もあきらめかけて中断もし、最底辺から這い上がって合格を勝ち取ることができました。人は誰でも長い人生の中で途中であきらめたり、挫折したりすることがあると思います。むしろそのような経験があることで人として、そして弁理士としても大きく成長すると思います。
 人それぞれですが、しかし、粘り強く最後まであきらめなければ道は開けることを私は身をもって感じました。弁理士は知財を通して社会に貢献できる素晴らしい仕事だと思います。これから受験されるみなさまもこの難関試験を突破し、輝かしい未来があることを祈念いたします。

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