タックス ファンタスティック! 第78回テーマ 母がいなければ事業承継もママならない?

田久巣会計事務所の代表の田久巣だ。事業承継の場面では、父から子へバトンが渡される瞬間に注目が集まりがちだ。しかしその背後には、しばしば母という存在が大きな役割を果たしている。第74回でもテーマにしたように、相続や遺産分割の場面でも、母が兄弟間のトラブルをまとめる「調停役」として活躍することが多い。事業承継も同じだ。今回は、文学作品や実際のケースを通じて、母というキーパーソンが事業承継の成功にどう寄与しているのかを考えてみたい。


監 子 今日はまた事業承継コンサルの案件で疲れた!お父さんと息子さんの間に挟まれるの、ほんと大変…。飲みに行きた~い!カラオケで『大迷惑』歌いた~い!


税 太 監子先輩、ユニコーンの『大迷惑』は地方転勤を命じられたサラリーマンの歌ですよ。それに大切なクライアントに大迷惑を感じちゃダメですって。あ、襟糸先輩、ファミリービジネスの事業承継ってどこでもそんな感じなんですか?


襟 糸 そうだな。父親と後継者である子どもの間がぎくしゃくするのは割とよくあることだ。特に父親がワンマンだと、後継者が意見を言いづらくなることが多い。


監 子 でもね、実は「母親」がいるかどうかで全然違うのよ。


税 太 母親ですか?事業承継でそんなに重要なんですか?


監 子 めちゃくちゃ重要よ!たとえば『リア王』。シェイクスピアが書いた戯曲ね。この話には母親が登場してこないの。それもあってリア王と娘たちの間でモメにモメて悲劇が起きたのよ。


襟 糸 そういえば日本の文学でも似たような例があるな。山崎豊子の『女系家族』も、母親がすでに亡くなって数年経過していたために家族間の争いが激化していた。母親が父親より先に亡くならなければ、もっとうまく物事が進んだかもしれない。


税 太 でも、文学はフィクションですよね。現実でもそうなんですか?


監 子 もちろん!現場でもよく見るわよ。例えば、お父さんが厳しくて息子さんが言い出せないことを、お母さんが間に入って伝えてくれることってよくあるの。さらに、お母さんが「子どもたちには事業をちゃんと引き継いでほしい」って、幼少のころからしっかり教育しているケースも多いわね。


襟 糸 そうだな。母親が橋渡し役をしてくれると、意外なほどスムーズに事業承継が進むことがある。もちろんそれぞれの家族の事情もあるし例外もあるが…。


税 太 そうなんですね。じゃあ、お母さんが「裏の経営者」みたいな感じなんですか?


襟 糸 その通りだ、税太君!母親は表には出ないが、家庭や家業の「調整役」として絶大な力を発揮していることが多い。


監 子 先生もそう思います?


田久巣 もちろんだ。ファミリービジネスをしているかに限らず、母親がいる家庭では、父と子が衝突しそうになっても、母が緩衝材として機能することが多い。肩をもってくれたりするんだ。トーマス・マンの『ブッデンブローク家の人々』でも冒頭からそんなシーンが描かれている。カカア天下でなくても、父は母に逆らえないところが結構あるんだ。


襟 糸 確かに。「母はキーパーソン」ってことですね。


田久巣 そうだ。横溝正史の『犬神家の一族』でもモメにモメて殺人事件にまでなったが、この話でもやはり母が不在だった。事業承継を成功させるためには、母親を軸にしっかり据えて、家族全員での連携が不可欠だろう。


税 太 なるほど…。僕も将来、子どもたちのために母親の力をしっかり借りようと思います!


監 子 税太君、それまでにまず奥さんに日頃の感謝をしなさいよね(笑)。


AI税太(横から) 母がいなければ事業承継もママならない。妻に感謝しない男はとてもツマらない男、大迷惑です!


税 太 おっとAI税太、ダジャレ力も冒頭の伏線の回収力もだいぶ腕を上げたなぁ!

【今回のポイント】

ファミリービジネスを支える母親の力は、事業承継の成功に不可欠だ。士業として事業承継に関わるときには、母親の存在をどう活かすかを一緒に考えていくことが大切だろう。実はこの原稿、今回はかなり大幅に生成AIにも原稿を一部作ってもらったのだ。『ママならない』のダジャレも生成AIのアイデア。事業承継は母のAI(愛)で決まるのかもしれない。


[『TACNEWS』タックス ファンタスティック!|2025年1月|連載 ]

Profile

筆者 天野 大輔(あまの だいすけ)

1979年生まれ。公認会計士・税理士。税理士法人レガシィ代表社員。慶應義塾大学・同大学院修了(フランス文学を研究)。情報システム会社でSEとして勤務。その後公認会計士試験に合格、監査法人等で会計監査、事業再生、M&A支援等を行う。その後相続専門約60年の税理士法人レガシィへ。相続・事業承継対策の実務を経て、プラットフォームの構築を担当。2019年に士業事務所間で仕事を授受するWebサービス「Mochi-ya」、2020年にシニア世代向けの専門家とやりとりするWebサービス「相続のせんせい」、2024年に士業のためのSNS「サムシナ」をリリース。主な著書『相続でモメる人、モメない人』(2023年、講談社/日刊現代)。2023年、YouTubeチャンネル「相続と文学」配信開始。

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