令和6年 二級建築士 設計製図試験
観光客向けのゲストハウス(簡易宿所)
【総括・答案プラン例】
令和6年 設計製図試験に関する情報[観光客向けのゲストハウス(簡易宿所)]を、随時更新していきます。
総括[12月5日合格発表を受けて]
試験元から発表された内容について
公益財団法人 建築技術教育普及センターより、合格発表がありました。
合格された皆様、本当におめでとうございます。
【設計製図実受験者数】9,947名(9,988名)
【合格者】4,680名(4,985名)
【合格率】47.0%(49.9%)
【学科からの最終合格率】21.8%(22.3%)
※( )内は昨年の数字です。
ランクⅠ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳのそれぞれの割合は次のとおりで、「ランクⅠ」のみが合格となります。
【ランクⅠ(合格)】47.0%(49.9%)
【ランクⅡ】4.7%(5.7%)
【ランクⅢ】37.1%(37.9%)
【ランクⅣ】11.1%(6.5%)
※( )内は昨年の数字です。
実受験者数は昨年より約40人減少、合格者数は約300人減少しました。
合格率は、昨年より製図試験は2.9%下がり、学科からの最終合格は0.5%下がりました。
総 括
今年の設計製図試験の全国合格率は「47.0%」でした。昨年は「49.9%」でしたので、やや合格率が下がりました。一昨年(令和4年)の合格率「52.5%」と比べても減少傾向にはありますが、おおむね例年並みの難易度だったと言えます。
ランク別の割合では、ランクⅣ(失格)が11.1%と高く(昨年より約4.6%増)、図面の未完成や重大な不適合に該当するなど、即失格となるような大きな失敗をした人の割合が増えたことが分かります。また、ランクⅡ(「知識及び技能」が不足しているもの)は4.7%である一方、ランクⅢ(「知識及び技能」が著しく不足しているもの)が37.1%と高く、設計条件や要求図書の違反など、失格レベルに相当する人の割合がより増えたことも分かります。「合格図面」と「合格レベルではない図面」の差がより顕著に現れた結果、とも言えるでしょう。
建築技術教育普及センターの採点のポイントは以下になります。
(1)設計課題の特色に応じた計画
①喫茶スペースの計画
②談話コーナーの計画
③屋外広場の計画
(2)計画一般(敷地の有効利用、配置計画、動線計画、設備計画、各室の計画等)
(3)構造に対する理解
(4)断面に関する知識
(5)要求図書の表現
(6)設計条件・要求図書に対する重大な不適合
①鉄筋コンクリート造2階建てでないもの
②要求図書のうち図面が1面以上未完成
③図面相互の重大な不整合(上下階の不整合等)
④延べ面積が、「250㎡以上、300㎡以下」に適合していないもの
⑤要求室のうち、次のいずれかの室が欠落又は設置階が違っているもの(室名は省略)
⑥著しく非常識な計画(エレベーター、階段の欠落等)
さらに、“解答の傾向”として次の記載がありました。
”「未完成」、「主要室の欠落」、「設計条件の違反(喫茶スペース・談話コーナー等の席数、屋外広場の計画、非常用電源室の配置の計画が不適当なもの)」、「要求図書の違反(防火設備の表示が不適当なもの)」に該当するものが多かった。”
以上の内容が主要な採点ポイントとなります。これらの全てにわたって、大きな欠落や条件違反をすることなくプランニングを行い、時間内に図面を仕上げなければいけません。
設計条件の違反に挙げられている「喫茶スペース・談話コーナー等の席数」や「屋外広場の計画」について、合格レベルの図面をつくるためには、基本をしっかり押さえたプランニング力が必要です。また、要求図書の違反に挙げられている「防火設備の表示が不適当なもの」については、正確な知識を有する製図力が必要です。
今回の課題は、「観光客向けのゲストハウス(簡易宿所)(鉄筋コンクリート造)」という専用施設ではありましたが、採点ポイントは計画や製図に必要な基礎知識や技能がきちんとできているかが問われた、基本に忠実な試験であったと感じます。
設計製図試験に合格するためには?
さて、本年度試験を分析した上で、設計製図試験に合格するためにどうすれば良いのかを考えると、以下の対策が必要となってくると思われます。
(1)空間構成・構造を理解し適切に図面表現する「製図力の習得」
(2)課題の特色を理解し適切にまとめあげる「プランニング力の習得」
来年の課題は「木造」と考えられます。木造はRC造とは構造形式が異なりますので、作図とプランニングの要領が大きく異なります。また、木造はRC造と比べて作図量が多く一般に難易度は高いと言われます。近年の出題では、専用施設や専用住宅が続き、プランニング力がより重要視される傾向にあります。
課題の発表は来年6月ですので、上記(2)の「プランニング力の習得」については現時点より具体的な学習を始めることは困難ですが、(1)の「製図力の習得」については今からでもスタートすることが可能です。
試験を有利に進めるには、製図力を高めておくことは極めて重要です。短い作図時間で図面を書きあげることが出来れば、その分エスキスやチェックに多くの時間を使うこともでき、有利に試験を進めることができます。
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2024年9月15日(日)に実施された令和6年 二級建築士 設計製図の試験【観光客向けのゲストハウス(簡易宿所)】のTACオリジナル答案プラン例を公開します。本試験の振り返りにご活用ください。
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講評[本試験直後のポイント解説]
全体講評
RC造の設計課題は、過去3回に渡り「狭い敷地に3階建て」のパターンが続きましたが、今年の出題は「2階建て」でした。RC造の2階建ての場合、法的な規制が緩くなり法のチェックは簡単になる一方、1階あたりの床面積が大きくなるため、柱や廊下形状と部屋の配置などプランニングは逆に難しくなる傾向があります。
さらに、今回求められた設計条件は、主題となる「ゲストハウス」の用途に加え「近隣住民との交流」「災害発生時への対応」が求められたため、一層プランニングの難易度が上がっています。これらのことから今回の設計課題の難易度は、「標準的~やや難しい」であったと思います。
しかし、TACでは2階建ての出題を想定した構造グリッドとゾーニングの仕方をしっかり学習しましたので、落ち着いて条件を整理していけば、十分合格レベルに達する図面を書きあげることが出来たのではないでしょうか?
今回の合格ポイントは、
・屋外広場の配置(災害発生時に南側の公園と一体的に活用)
・複数の動線をしっかり整理(利用者の動線、厨房の動線、宿泊客の避難動線)
・図面をしっかり書きあげる(バルコニーの部分詳細図を含めて)だと考えます。
以下、それぞれのポイントを見ていきます。
ポイント解説
(1) RC造2階建て
平成24年から12年ぶりの2階建てです。建築基準法的には3階建てに比べて注意すべき項目はグッと少なくなります。竪穴区画は不必要で、道路斜線もまずかかりません。延焼ラインも不必要になるケースが多いのですが、こちらは設計条件の中で「延焼のおそれのある部分には所定の防火設備を設ける」と要求がありますので、延焼ラインと丸防の記号は忘れずに書き込む必要がありました。
構造グリッドとしては、3階建ての場合は奥行が8mの単スパンで済むことが多いのですが、2階建ては階あたりの面積が大きくなるので、奥行が10m~12m、柱スパンは5m~6mの組合せとなり、建物内部に柱が生じることになります。階高はとくに指定がありませんので、1階3500㎜2階3000㎜程度で設計すれば良いでしょう。すると階段は幅2m×奥行3m程度のスペースで納まります。
(2) 南側の公園(防火上有効な公園)と屋外広場
令和4年・5年に続き、3回連続で隣接地に公園がある敷地条件が出題されました。今回は冒頭の設計条件で「非常発生災害時には地域の支援を行うことができるように屋外広場を南側公園と一体的に活用できるようにする」と示されましたので、これを外すと大きな減点になりると思われます。屋外広場は敷地南側にある程度の大きさを確保して幅広く接するように配置する必要があるでしょう。
また、この公園は防火上有効な公園ですので、建築基準法2条六号によりこの面には延焼ラインは生じません。平面図に南側の延焼ラインをうっかり書き入れないように注意が必要です。TAC生はこの設定については課題の中でしっかり学習済みでしたね。
(3) 通用口のある喫茶スペース
要求室の中で最もキーとなるのは1階の喫茶スペースです。座席総数で16席とそこそこの大きさであることに加えて、災害時にも使用できる厨房や喫茶スペースの従業員用の通常口も求められました。また、駐車スペースは1台分(搬入用)とありますので、この通用口への動線を利用者用としっかり分けて確保するべきと考えられます。
TACでは、厨房への動線確保の必要な類似の喫茶スペースについて課題の中でしっかり学習いただきましたので、これも問題なく対応できたかと思います。
(4) 客室に設けるバルコニーと避難経路
客室は5室、そのそれぞれにバルコニーを設ける条件です。さらにこのバルコニーが道路に面しない場合は、バルコニー前面に空地を設けて避難経路を確保することが求められました。これは、東京都建築安全条例などで定められている内容と同じです。簡易宿所の客室は道路に面するように配置するか、敷地のアキの広い方に面するように配置して避難経路が確保できるようにする必要があります。このため、なるべくゾーニングをシンプルにし、建物の片側に客室ゾーンをつくるようにすればプランニングしやすかったはずです。
TACでは、繰返し構造グリッドとゾーニングの整理については学習しましたので、プランニングしやすかったのでないでしょうか?
(5) 部分詳細図(バルコニーの出入口)
令和3年と同じ、「バルコニーの出入口を含む」出題でした。令和5年の木造の矩計図では「多目的室(土間床)を含む」が出題されたように、近年の流れとして詳細図は標準的なものを単純に暗記すればよいものではなく、ある程度の納まりの知識を問う出題になってきています。
このことからTACでも「はね出しのバルコニー」や「ルーフバルコニーの納まり」などに取り組んでいただきましたので、多くの方が対応できたのではないでしょうか?