vol.4 国際関係学部生のための外交官のススメ!
専門知識を世界に活かそう!
国際関係学は広い
国際関係学の関心は、現実の国際社会の問題の実態を総合的に捉え、それらを解決するための道筋を見つけることにあります。国際社会で起こる問題は広範にわたるため、国際関係学が扱う分野は国際政治・国際経済・国際法といった複数の学問領域をまたいでいます。また、この世界に住む人々の行動を文化に着目して考察する、比較文化論や文化人類学などの学問領域も発達してきました。近年では、多国籍企業やNGOは大きな力を持つようになり、国際関係に大きな影響を与えるようになりました。これを受けて国際関係学では、国家だけでなく多国籍企業やNGOといった多種多様なアクターの行動を分析してきました。これらの行動を理解するためには、国際政治、国際経済、国際組織の知識に加え、政治学、法律学、経済学、文化人類学、社会学といった様々な学問を横断的に学ぶ必要があり、「国際関係」を標榜する学部・研究科においては、多様な科目が提供されています。
国際関係学を学んだ人の進路
国際関係学が扱う分野の広さから、それを学んだ人の進路も様々です。一般的に、国際関係学を学んだ人は国際社会の問題を理解する力に富んでいます。国際的に展開する企業にとってそのような理解力を持った人物は重宝されるため、サービスや製造、金融、といった業種には、大変多くの修了者が就職している傾向が見られます。
しかし、国際関係論を通じて持った興味・関心に即した仕事を見つけるとなると、それはなかなか困難です。特に、安全保障や国際法など政府がほぼ独占的に行なう分野を学修した方の多くは、それらに対する興味・関心とは異なった仕事に就くことがほとんどです。
ダイレクトに興味・関心を満たす仕事=外交官
外交官となって働くには、2種類の試験のうちのどちらかに合格する必要があります。外務省専門職員試験と国家総合職試験です。前者は外務省が独自に実施している試験です。「専門職員」という名前のとおり、外務省専門職員には特定の国・地域や分野のスペシャリストとして活躍することが期待されます。対して後者は人事院が実施している試験です。こちらはゼネラリストとして、外務省という組織をリードする役割を果たすことが期待されます。
外務省専門職員として採用された場合、研修語として言い渡された言語を用いた仕事を軸として、長期間をかけて国や分野の専門家へと成長するキャリアプランを描くこととなります。例えばウクライナ語の研修となれば、ウクライナにある日本の大使館や総領事館と東京の外務本省を3~4年ごとに繰り返し勤務し、「ウクライナのことなら私に任せろ!」というレベルの経験・知識を身に付けていくことになります。日本とウクライナの良い関係を促進するには、日本とウクライナの二国間関係のみならず、日本とウクライナが置かれている国際社会全体の状況についても正確に分析せねばなりません。それはまさに、皆さんが学んできた国際経済・国際法・安全保障・文化に関する知識を最大限に活用できるフィールドです。さらに、これまではあくまで「観察の対象」だった国際事象の中に当事者として飛び込み、その解決のためにダイレクトに活躍することができます。外交官として働くことで、国際関係を学んで抱いてきた興味・関心に合った仕事をすることが可能なのです。
外務省専門職員試験への適性
外務省専門職員試験では、専門科目として憲法、国際法、経済学、外国語、時事論文という5つの試験が課されます。国際関係論を学んだ人の特徴の一つは、様々な学問の知識を持っているということです。大学で「憲法入門」、「国際法入門」、「経済学入門」といった授業を履修したことがある方も多いのではないでしょうか。翻って外務省専門職員試験の受験者を見ると、国際法や経済学を履修した経験がある方の数はかなり限られています。その中にあって、たとえ入門的なものであっても、国際関係論の学習のために憲法・国際法・経済学の知識を得てきた方々は他の受験生と比べてアドバンテージを持っているといえます。そのアドバンテージを活かさない手はありません。
TAC・Wセミナーは外交官志望の皆さんを応援します
TAC・Wセミナーでは、毎年大勢の外務省職員を輩出しています。専門知識や留学の経験を生かして働きたい方には奨学生割引制度も用意していますので、是非ご応募ください。
みなさんの専門知識を日本と世界のために生かしてみませんか?
国家間関係の土台に関わりたい
新井 海聖さん
研修語:スペイン語
出身校:東京外国語大学 国際社会学部
合格年度:2020年度
選択科目:憲法
もともと外国語を勉強するのが好きで、外国語を使える仕事=外交官と言うイメージで憧れを持っていました。大学でも外国語を専攻しながら、外国に関わる他の仕事も検討対象に入れて将来のことを考えていましたが、民間企業やNPOで働いていても国家間関係の発展に寄与することは可能ですが、その為には相手国で活動できる環境がまず前提になくてはならず、またそのような全ての企業等が必ずしも同じ大方針のもと活動しているわけではないように思い、外務省でそのような企業等が海外で活躍できる土台作りや環境整備に関わり、国際的に活躍する民間セクターとも協力しながら日本という国として他国との関係を構築・発展していくことに貢献したいと思うようになりました。そのためのアプローチとして、地域や分野など自分の専門性を極めて仕事をする専門職の方が自分に向いていると考え、外務省専門職を受験することにしました。
<外交官を目指す方へ>
外交官というと忙しいし、場合によっては民間企業の方が待遇がいいところだってあるし、と思っている方もいるかもしれません。実際私が内定を頂いていた民間企業は公務員より給料は高かったです。しかし、これから何十年も携わることになるだろう仕事が、自分が一番やりたい事なのか、自分が一番興味のあることなのかというのは私にとって、給料の多寡より大事なことでした。小さい頃から外国語に慣れ親しんで、国際的なフィールドで働きたい、他の国とより良い関係を築くことに貢献できる仕事がしたいと考えていた私にとって外交官の仕事は「一番やりたいこと」でした。語学が生かせる、様々な国とお仕事が出来る、日本を世界にアピールできる…外交官というキャリアに感じる魅力は人それぞれですが、外交官の仕事は他の仕事では出来ないことも多いと思います。ぜひ外交官という仕事に興味を持っていただければと思います。