LET'S GO TO THE NEXT STAGE 資格で開いた「未来」への扉 #40

  
tobira202202_1.jpg
Profile

西岡 晃司(にしおか こうじ)氏

まほろば行政書士事務所 代表 行政書士 

1998年5月7日生まれ。奈良県出身。兄の影響で3歳の頃よりバスケットボールを始め、高校時代には全国大会に多数出場。プロの選手になることを志すも、大学入学後に椎間板ヘルニアを患い、バスケットボールをやめることに。その後司法試験予備試験への挑戦を経て、行政書士試験を受験し在学中に合格。4年生のときにはオンライン家庭教師サービスを起業。大学卒業後は行政書士として独立し、各種のビジネスも創出しながら、行政書士として大阪や奈良の経営者・士業との人脈を活かして精力的に活動している。

【西岡氏の経歴】

2017年 18歳 関西大学法学部にスポーツ推薦枠で入学。司法試験の予備試験をめざして勉強を始める。
2018年 19歳 ケガが原因でバスケットボールを続けることが困難に。
2019年 20歳 司法試験の予備試験不合格が判明し、行政書士試験に目標を切り替える。
2020年 21歳 行政書士試験に合格。
2021年 22歳 まほろば行政書士事務所を設立。起業家としても活躍の場を広げている。

大学卒業直後に独立開業。
起業家として数多くのビジネスを立ち上げながら
仕事の幅を広げていく。

大学在学中に行政書士資格を取得。卒業後すぐ独立し、23歳の若さでまほろば行政書士事務所の代表として活動する西岡晃司氏は、行政書士であり起業家でもある。「次はこれを楽しみながらやっていこう!」というポジティブな姿勢で物事に取り組み、人脈を広げながら着実にキャリアを積み重ねている西岡氏に、資格取得までの経緯、起業家としての活動についても詳しくうかがった。

プロ選手をめざしてバスケットボールに励む日々
大学時代のケガがきっかけで挫折を味わう

 兄の影響で3歳のときにバスケットボールを始めたことをきっかけに、小学校から高校までバスケットボールに情熱を注ぐ青春時代を送っていた西岡氏。高校生のときには全国大会に出場するなど好成績を収め、大学もスポーツ推薦で進学しバスケットボール部に入部。バスケットボールプレイヤーとして順調な人生を歩んでいた西岡氏だが、勉強もおろそかにはしていなかった。「バスケットボールを続けるなら勉強もがんばりなさい」という母の言葉に従い、学校と家との移動中など隙間時間を見つけ効率的に勉強をすることで、学業でも好成績を収めていたのだ。スポーツと勉強の両立を実現していた西岡氏だが、大学に入って西岡氏は椎間板ヘルニアを患い、バスケットボールを続けていくことが困難になってしまう。このケガがきっかけとなり、大学2年頃から徐々にバスケットボールから心が離れていった。
 高校時代から「勤め人になるよりは自分で事業を興したい」という気持ちが強かった西岡氏は、実は「将来役に立つはず」と考えて大学1年の頃から司法試験の予備試験を受けるための勉強を始めていた。そしてバスケットボールから遠ざかるにつれて本腰を入れ、教材を揃え、受験指導校の講座を受け始めた。
 「大学に入れば部活や勉強で忙しくなるからアルバイトをする時間はないだろう」と算段をつけていた西岡氏は、入学時から奨学金を申請していた。成績優秀者に限定された返済不要の給付型奨学金も得ることができた西岡氏は、「将来への投資」として、そのお金を受験指導校の受講料や教材費に充てた。
「そのときは合格後の具体的な姿を思い描いていたわけではありませんでしたが、とにかく絶対に合格するぞという決心をして勉強を始めました。法律は、勉強内容が実社会と直結していて身近に感じられましたし、ロジカルなところがおもしろくて、幸いにも勉強を苦に感じたことはありませんでしたね」
 ひとつの課題に対して、どのような理論を構築していくか、法律というルールに則ってどのような結論を出していくのかを考えるのが好きだった西岡氏は、法律文書にも抵抗がなく、むしろ興味を持って読むことができたのだという。

行政書士試験に目標を変更

 しかし、大学3年のときに予備試験を受験するも、論文試験に比べ苦手意識のあった短答試験で不合格となってしまう。司法試験をめざす難しさを実感した西岡氏は、同じ法律系の国家資格である行政書士試験挑戦に目標を変えた。大学や予備試験の勉強で法律の基礎をしっかりと身につけていた西岡氏は、大学4年のときに受けた試験で一発合格を果たした。
「大学では法学部に在籍していたので、試験範囲と近い内容を学べる講義を選択することで、効率的に合格をねらうことができました」
 資格は、自分の将来のためにも有意義なものだと思っていた西岡氏。行政書士の資格を取得してどうするかは、まだ具体的なイメージはなかったが、「人のために役立つ仕事」ということに惹かれていた。大学4年、将来を決める時期に差し掛かり、一応は人並みに上場企業を数社あたり、就職活動を始めたが、高校時代からの「自分で事業を興したい」という思いから“独立開業”という文字が浮かび上がった。行政書士として独立する場合、一般的には行政書士事務所などで数年の経験を積み、スキルを高め、人脈を広げてからという流れを踏む人が多いが、西岡氏の頭の中では「少しでも早く自分の事務所を持ってチャレンジしてみたい」という思いが大きくなっていた。
 大学卒業後にすぐ独立をして仕事をしていくためには、まず人脈作りが必要だろう。そう考えた西岡氏は、叔父の親友で外資系の企業で活躍する人物に相談した。会社経営者のネットワークを広く持っているその人は「必要なら、私の人脈を使えばいい」と言ってくれた。西岡氏はその厚意に甘え、頼み込んで関西圏の経営者をほぼ網羅する幅広い人脈を紹介してもらった。
 かくして、人脈は確保できた。次の課題は実務スキルをどうやって身につけるかだった。インターネットを使って情報収集したところ、意外なことに実務経験なしで独立した行政書士も少なくないとわかった。
「行政書士の仕事は、手続きがわからなくても行政機関に聞けば教えてもらえるものも多いのだと知りました。それならとにかく依頼をたくさん受けて案件をこなしていけばいい。そのほうが早く仕事も覚えられますし、お給料をもらいながら働くよりも、直接仕事を受任したほうが収入も確保できます。また、直接様々なクライアントとつながってやり取りすれば、人脈の広がりもスピーディーになるし、営業活動の基礎づくりと勉強も効果的にできます」
 そう考えた西岡氏は、卒業後すぐに独立してしまったほうがメリットが多いと結論づけた。「本当にお客様が来るのか」という不安は少しだけあったが、“いける”と確信していた。「失うものが何もなかったですからね。これが30代、40代なら大変だったと思いますが、結婚して家庭があるわけでもないし、まだ若いので収入を維持していかなければという気負いもない。実家の自分の部屋を改装して開業したので、とりあえずの課題は、できるだけランニングコストを抑えて、利益を出すようにするということだけでした」と西岡氏は語る。

資格と人脈を活かし、起業家として日々躍進中

行政書士だけではなく、起業家としての顔も持っている西岡氏。大学4年のときにはオンラインで中学生や高校生に向けて学習指導をするビジネスを始めた。卒業後は行政書士として活躍する傍ら、合同会社を作って代表社員となり、インターネット関連を中心とした広告代理業も開始した。さらに現在ではバスケットボールプレイヤー時代の人脈を活かし、プロアスリートに特化した人材紹介サービスも準備中だ。引退後のアスリートにスキルを活かした最適な仕事をマッチングする人材ビジネスだという。こうして起業する際にも行政書士としての知識や経験を役立てている。それぞれの事業は、まだ規模の大きなものではないが、西岡氏は、行政書士の資格を活かしつつ多角的なビジネス展開をまとめあげている。
 さらに西岡氏は、営業スタイルにひと工夫し、例えばアロマセラピストの学校とタイアップして、生徒が独立するときの開業支援、サイトの構築やSNSでの宣伝といった仕事を紹介してもらうようにするなど、「自動的に仕事が入ってくる」システム作りにも注力している。そんなふうに行政書士という立場から、人脈を活かして、人と人、企業と企業が同じ目的でつながる工夫をしているのだ。

国家資格を持っていることが信頼獲得につながった

 23歳という若さで様々な活躍をしている西岡氏。若さゆえの苦労や思わぬ壁に突き当たってしまった経験はないのだろうか。
「行政書士という資格を持っていることで、『ただの若い起業家』ではなく、『国家資格を持っているきちんとした人』という印象を相手に持ってもらうことができます。ただ、もちろん経験が少ない私の力だけでは仕事を進める上で難しいことも当然あります。そんなときは迷わず先輩方の力を借りるようにしています」
 国が認めた資格である行政書士という立場が信頼性を後押ししてくれると語ってくれた西岡氏。さらに若いということを、デメリットではなく、むしろメリットとして活かしている。
「若いということのメリットは、年上の人に甘えられる、可愛がってもらえるということですね。これまでも先輩方にはいろいろと無理を言って本当にたくさんの恩恵にあずかりました」
 そんな西岡氏には将来へ向けてさらなる夢が2つある。1つは起業した会社を大きくしていくこと。もう1つは再度、司法試験に挑戦することだ。どんなときも西岡氏の行動の軸となっているのは「人に役に立つことをしたい」という思いだという。最初に起業した、オンラインの中学生・高校生向けの学習塾も「子どもたちの自ら学びたいという心に火をつけて、本当の学びに導きたい」という思いからだった。
 そしてこれから資格を取ろうと考えている人たちに、こうアドバイスする。「どんな人も、資格を取ろうと思うときには覚悟を決めて勉強を始めると思います。その覚悟を持ち続け、諦めないで最後までやり遂げてほしい。自分が司法試験予備試験から行政書士試験に切り替えたように、方向性が似ている別の目標に切り替えるという選択も私はアリだと思います。諦めたらすべてがムダになってしまうので、勉強してきた時間と労力を形にできるように、最後までがんばってほしいです」
 また、資格取得の勉強法について自身の経験からこう語った。
「何回も試験に失敗している人は、とんでもなくレアな難題とばかり向き合っている場合が多いのを感じます。バスケットボールでもそうなのですが、人目を惹くようなダイナミックなプレーは、見よう見まねでやろうとしても一朝一夕にはできません。そういうことができる選手は、必ず毎日毎日コツコツと基礎的な練習を繰り返しているはずです。資格試験も同じで、80%くらいの人が解けるような基礎的な問題を反復して完全に習得しておくべきだと思います。基本があっての応用です。私自身、最初は法律の勉強とは超一流の有名大学に入るような頭の良い人がするもの、難解で理論的な思考をするものだと思っていました。でも、やってみれば多くは基礎的なことで自分にでも理解できることばかりで、楽しみながら学ぶことができました。法律の条文を私より多く暗記している人は、きっとたくさんいると思います。でも、ただ暗記していれば合格できるわけではありません。基礎的な問題に正答するための力をしっかりと身につけて、合格をつかみ取ってほしいと思います」

[TACNEWS 2022年3月号|連載|資格で開いた「未来への扉」]

合わせて読みたい

おススメ記事

「TACNEWS」に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。