LET'S GO TO THE NEXT STAGE 資格で開いた「未来への扉」 #01
安藤 岳行氏
クリエイトライフ社会保険労務士事務所 代表
特定社会保険労務士
1985年9月生まれ。神奈川県横浜市出身。明治大学理工学部建築学科卒業。
クリエイトライフ社会保険労務士事務所を開業後は「労使ともにストレスの少ない職場づくりをサポートする」ことを経営理念に掲げ、経営者と社員双方の思いを尊重する存在として、業務に取り組む。
【安藤氏の経歴】
2008年(22歳) 大学卒業。在学中に日商簿記検定3.2級、FP技能検定3.2級などを取得。大手カード会社に入社。
2010年(24歳) 働きながら社会保険労務士試験に合格。
2013年(27歳) 資格を活かして転職を決断。横浜市内の社会保険労務士事務所に転職。
2016年(30歳) 独立開業。クリエイトライフ社会保険労務士事務所を開設。
社労士資格を持っていたからこそできた、大きなキャリアチェンジ。
これからの時代に求められる、
「人間味のある企業のアドバイザー」を目指す。
一般企業に在職中、社会保険労務士資格を取得し、社労士事務所に転職。2年8か月の事務所勤務を経て、30歳の若さで独立した安藤岳行さん。
スピーディーなキャリアチェンジを支えてきたのは、「自分でやると決めたことはやる」という姿勢と、有資格者であるという強みがあったからこそという安藤さんに、資格取得の意味、社労士の魅力を伺いました。
自己啓発のつもりだった資格取得
若くして社会保険労務士(以下社労士)として独立開業した安藤さんですが、もともと社労士を目指していたわけではありません。大学では建築学科を専攻し、卒業後に大手クレジットカード会社に就職。社労士とは無縁の部署でキャリアを重ねてきました。
「資格取得はあくまで自己啓発、スキルアップの一環でした。大学4年生のころから簿記検定3・2級、ファイナンシャル・プランニング技能(FP)検定3・2級を取得してきました」
就職後のさらなるスキルアップになる資格をと考えたとき、目に入ったのが社労士でした。FPの試験勉強で学んでいた内容と社労士の内容に重なる部分があることや、労務管理や給与、社会保険などといった、社会人にとっても身近な業務を取り扱う資格ということもあり、「社労士は取り組みやすい印象があった」と話します。
資格を取ることで何かをしたいという具体的な目標があったわけではなかったため、モチベーションを維持するのには苦労したそうですが、自分で始めたからには最後までやりきりたいと取り組んだそうです。
とはいえ、仕事と並行して資格試験の勉強をするのは難しく、TACに通うことに。
「スケジュール管理がしやすくなりましたし、定期的にテストなどを受けることで、自分の理解度の確認などフィードバックを受けることができ、結果的にモチベーションの維持にもつながりましたね」
資格の勉強は、途中で挫折してしまうことも少なくありません。全体的なカリキュラムが一通り終了し、直前期の実戦形式の勉強に入ろうかという時期に燃え尽きたような気分になったと安藤さんも話します。
「資格の勉強を通して人生の役に立つようなことは学べたし、十分満足したと思い、もうこれでいいかなと気が緩みかけたときがありました。これはもう、自分との戦いですが、ここまできたからには最後まできっちりやって合格しよう、と考えて何とか続けました」
資格があったからこそ「転職」に踏み出せた
こうして勉強を続け、安藤さんは社労士試験にストレートで合格。その後はカード会社勤務を続けていましたが、もっと直接的にお客さまと向き合える仕事をしたい、との思いが大きくなり、転職を決意します。
「新卒から勤めてきた会社を辞めるのはかなり抵抗があることだと思いますが、その時、以前に取得した社労士資格を活かせないか考えました。やってみないと分からないけれど、やらないで後悔するのはもったいない、きっと資格を生かした新しい道を開くことができるはずと、自分の背中を自分で押すように社労士事務所へ転職しました」
約3年の事務所勤務を経て、30歳で独立。現在は多忙ながらも、ひとりの社労士として顧客である企業と直接向き合い、充実感を覚える日々を送っています。
「社労士だからといって、会社にとって心臓部とも言える人事や経理の情報を、お客さまがすぐに話してくれるわけではありません。『この人になら話しても大丈夫』と思っていただける信頼関係を築くことが、社労士としてはとても大切です。そのためには一つ一つの仕事を大切にし、ちょっとした気遣いを欠かさないという、地道なことの積み重ねに尽きますが、それにより、お客さまから直接感謝の言葉をかけられたときの喜びは、とても大きいですね」
キャリアチェンジという人生の節目で、安藤さんにとって大きな役割を果たした社労士の資格。その意味は、ただ社労士という仕事を選べることにだけに留まらないはずだと、安藤さんは指摘します。
「資格が人生を変える助けになるのは確かですが、持っていればその後のキャリアがうまくいくというものでもありません。大切なのは、自分の意思で資格の活かし方や、資格を持つことの意味を考えることではないでしょうか」
資格の取得には、毎日テキストを読んで過去の試験問題を解く、といった地道な方法しかありません。素早く大きな成果を出すことを求める人には敬遠されるかもしれませんが、周囲からはあえてそういった地道な努力を、しっかり続けてきた人だと思われる可能性は高いでしょう。専門的な技能や知識を身につけた、信用できる人材というイメージもあるかもしません。
もちろん、社労士という資格そのものへの注目度も高まっていると安藤さんは考えています。
「社労士は会社において人とお金に関わる仕事であり、昨今の労使トラブルや多様な働き方へ関心が高まるとともに、その存在が注目を浴びているとも感じています。会社の事務処理など従来の業務に留まらず、経営者と従業員をつなぐ人間味のあるアドバイザーとしての役割を果たせる社労士の需要は、これから高まるのではないでしょうか。また、これから社労士を目指す人も、ただ『社労士になる』ことだけを目標とせず、資格をベースに社労士として次のステージへと進むことを考えなければいけないでしょう。資格の価値や意味は自分が決めるという思いを忘れないでください」
[TACNEWS 2018年9月号|連載|資格で開いた「未来への扉」]