プロが教える!第3回 第3回 不動産編|家を借りるときに注意すること

  

現在、賃貸住宅市場は、未曽有の供給過多、超超超借り手市場!そこで、今月号では「トクする賃貸住宅の借り方」として、ズバリ「家賃などの値下げ交渉(いわゆる「交渉」)」についてお話します。やり方さえ間違えなければ、何もしないより、はるかに好条件で家を借りることができます。では、そのための第一歩とは?答えは、不動産会社営業マンと「いい関係を作る」こと。自分は客だからと傲慢な態度で接するのはNG!営業マンも人間、「このお客さんのためなら頑張ってみよう」と思わせれば、「交渉」が成功しやすいのはいうまでもありません。

好条件を引き出すのに最適な時期は?

賃貸物件が市場に豊富に出回るのは、転居シーズンの1~3月。大家もこの時期の完成を目途にアパートやマンションを着工するので、新築物件が多く出回ります。ただ、不動産会社にとってもかき入れ時の繁忙期。むしろ足元をみられて「早く決めないとなくなってしまいますよ」という必殺の営業トークで契約を急かされるかもしれません。したがって、「交渉」難易度は高めです。転勤などの異動が多い9月も物件は多く出回りますが、実は「秋商戦」の時期。状況は1~3月とほぼ同じで、やはり難易度高めです。「ゆっくり物件を探したい」「少しでもいい条件で借りたい」方や新築にこだわらない方は、これらの時期を外した4~8月、10~12月を狙ってみるのもいい作戦です。大家や不動産会社が恐れるのは、繁忙期に売れ残った物件が長期間にわたって空室になること。そうならないために、家賃を改定したり、設備を良くしたり…、必死に借り手を探しています。そして、この時期はそれほど不動産会社も忙しくありませんから、「交渉」がしやすくなります。うまく話を進めることができれば、思わぬ好条件を引き出すことができるかもしれませんよ。

希望エリアの家賃の相場観を身につけよう

賃貸住宅探しに入る下準備として、インターネットの物件検索サイトで、エリア、間取りや広さ、駅からの徒歩時間、設備等の諸条件を設定して、希望エリアのだいたいの賃料相場をつかんでおきましょう。「この程度の築年数、駅からの徒歩時間、広さだったら家賃はこの程度かな」といったことが何となくわかるようになればOK。おそらく20件程度の物件情報に接していれば、身につくのではないでしょうか。その他、家賃相場が簡単にわかるサイトを利用してもよいでしょう。

目指すは「フリーレント付き、礼金なし、家賃の値下げ」

さて、不動産会社と連絡を取り、内見(最低10件くらい)を重ねて「これだ!」と思える物件に出会ったら、いよいよ「交渉」開始。具体的な要望としては、「フリーレント付き、礼金(更新料があれば更新料も)なし、家賃の値下げ」を目指しましょう。「フリーレント」とは、入居月やその後の一定期間、家賃を無料(フリー)にすることをいいます。
以前から店舗の賃貸で行われていますが、最近は住宅でも入居促進のサービスとして広く行われています。最低限、「入居月」については「フリーレント」を要求してみましょう。次に「礼金」です。最近は「礼金なし」の物件も増えてきましたが、1ヵ月程度の「礼金」が必要な賃貸住宅もまだまだ多いです。実は、「礼金」は住宅不足の時代の慣習で、部屋を貸してくれた大家に対して、お礼として渡していたお金です。今や『賃貸住宅は借りていただくもの』。いまだに「礼金」を要求する大家は時代錯誤といえるかも?なお、契約の更新時に支払う「更新料」も基本的には「礼金」と同じ性質のものです。もし、借りたい物件に「礼金」や「更新料」があったら、ダメもとでこれらのカットも申し入れてみましょう。「家賃」については、自分の相場観にしたがって「高い」と感じるならば、5%程度を上限に具体的に金額を示して値下げの「交渉」をしてみましょう。その物件が気に入って、どうしても借りたいと思っているのであれば、最低限自分が通したい条件のみに絞って、例えば「家賃を3,000円下げてくれたら契約します」「初期費用が厳しいので、礼金なしで」というような「交渉」もいいのではないでしょうか。
「交渉」をする場合に1つ重要なことがあります。それは「交渉」の際には「要望が通ったら必ず契約をします」という意思を明確に示すことです。そして、実際に「交渉」の結果、要望がすべて通ったら、必ず契約しましょう。要望がすべて通ったのに契約をしないということは、尽力してくれた営業マンや誠意をもって対応してくれた大家に失礼ですし、信義則(契約はお互いに誠実にすすめるという大人のルール)にも反します。絶対にやめましょう!

もし「交渉」がうまくいかなかったら

当然、交渉で示した要望がすべて通るわけではなく、大家によっては「だったら借りてくれなくていい」とあっさり断られることもありますし、「フリーレントと礼金なしには応じるけれど、家賃はそのまま」と回答してくることもあります。契約するかどうかは借り手の自由ですから、その物件はキッパリあきらめて次の物件を探すというのも一つの選択肢です。なにしろ『賃貸住宅は供給過多の時代』です。焦らず探せば、さらに良い物件がきっと見つかるはずです。

「交渉」がしやすい物件とは?

最後に「交渉」しやすい(要望が通りやすい)物件についてまとめておきます。
① 長い間入居者がいない物件
6ヵ月以上空室の物件などは、大家は一刻も早く、空室を埋めたいと思っているので、強気の「交渉」に出てみる価値はあります。事前にどれだけ空いていたのかを内見の際に営業マンに確認しておくといいでしょう。
②敬遠されがちな物件
借り手にとってネックとなる部分の多い物件(「駅から遠い」「築年数が経っている」等)は、内見する人数も少なくなりがちです。やはり、大家は早く入居者を入れたいと思っていますから「交渉」はしやすくなります。
どうせ借りるなら、少しでも好条件を目指しましょう!

(以下、10月号に続く。乞うご期待!)

Profile

中西 伸太郎氏( なかにし しんたろう)

宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士・マンション管理士・管理業務主任者。
大学卒業後11年勤めていた大手自動車メーカーを退職し、宅地建物取引士・マンション管理士等の資格を取得。宅地建物取引士として宅建業に従事する一方で、宅地建物取引士やマンション管理士等の資格試験対策講師・宅建登録講習や宅建登録実務講習講師として、講義・教材制作に携わる。また、2017年から新しく開講したTAC賃貸不動産経営管理士講座では、不動産実務にも試験対策にも精通したエキスパートとして、イチからカリキュラムや教材を制作し、中心的存在として活躍中。

  

賃貸不動産経営管理士とは?

賃貸不動産経営管理士は、高度な専門知識と倫理観を持って業務にあたる賃貸住宅の管理に関する専門家です。
不動産管理の重要性が高まってきている現代社会に、今後いっそう必要とされる注目資格です!

合わせて読みたい

おススメ記事

「TACNEWS」に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。