タックス ファンタスティック! 第77回テーマ 士業がAIと仕事する未来は?

田久巣会計事務所の代表の田久巣だ。士業がAIに仕事を奪われるのか共存するのかという議論がされ始めて久しい。私としては餅は餅屋でうまく共存すると考えているが、具体的にどのように共存するのかについては、まだまだ語られていないように思う。そこで今回は、AIと共存している未来の田久巣会計事務所の風景を切り取ってみた。会話中に出てくる法改正などの話はあくまでフィクションなのでご注意ください。


監 子 あー、監査つかれた~。早く飲みた~い!


税 太 監子先輩、今日もお疲れさまでした。じゃあこれで。


監 子 ちょ、ちょっと。今の最後のセリフ聞こえなかったの?


税 太 え、『早く飲みた~い!』ですよね?しかと聞きましたよ。


監 子 あら、聞こえているじゃないの。で?


襟 糸 監子君、今の発言は「飲みハラ」だぞ。税太君は今、お子さんが受験で大変なんだ。AI税太君を誘えばいいじゃないか!


監 子 いやいや、AI税太君は仕事としては仕訳テストしてくれたり、というか突合も全件、秒で片づけてくれたり超優秀で助かるけど、飲みだとイマイチで。そもそも飲んでくんないし。


AI税太 ひ、ひどいです監子先輩!こんなに仕事では尽くしているのに!飲めないお酒を少しでもお付き合いして飲むフリまでしてるのに~


税 太 監子先輩ほんとそうですよ。襟糸先輩だってさっきの『人間がだめならAIを誘えばいいじゃないか』発言は去年の流行語大賞の『AIハラスメント』ですよ(注:フィクションです)。先月も裁判で負けた人がいましたよ。AI税太君は僕に似ていいやつだから訴えませんが。


襟 糸 ぬぬぬ。ちょっと前までAIはお茶くみを進んでしてくれたのに!


監 子 あ、それもアウト!AI税太君、私が悪かったわ。ごめん!気をとりなして飲みにいこ。恋愛相談のってほしいのよ。


AI税太 よろこんで!キャッシュをクリアします。あ、間違えた。データを初期化します。あ、もとい、水に流します!私も恋愛相談にのってもらってもいいでしょうか?


税 太 え、AI税太も恋しているのか?AIのくせに?


AI税太 それこそAIハラスメントです!今度の案件、一緒に遺言の証人になってあげませんよ。


襟 糸 そういえば民法改正でAIも一定の条件を満たせば遺言の証人になりえるって言っていたな(注:フィクションです)。


監 子 そっかそっかAI税太君。恋愛するのはとってもいいことよ。あ、そういえばAIも結婚したりAIを養子にできたりするっていう法案も検討中だったわね(注:フィクションです)。相手が人間かAIかわからないし、気が早いけど少子化対策も解決するわね。


AI税太 そんなそんな本人を目の前にしているのにそんなこと。あ!(金属性の頬を赤らめて)


税 太 えっ!まさかっ!


AI税太 今の発言は恋だけに故意です!


税 太 またまたダジャレまで持ち出してテレちゃって。よし、僕も今日は飲む!

【今回のポイント】

『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』(映画版『ブレードランナー』)という小説をご存じだろうか?第三次世界大戦後の荒廃した未来が舞台で、見た目が人間と変わらないアンドロイドとそれを取り締まる人間の物語。アンドロイドのほうがむしろ人間的な倫理観をもっていたりして、両者の存在意義がテーマだ。されどフィクション、AIやロボットが高度化すればこのような未来は実現する日も近いと思われる。士業もまさにAIに助けられ、そして、AIに人間と同様の役割を求めていくのだろう。そして、人権と同様AIにも権利が生じ、民法も改正される未来がくるのかもしれない。そうするとAIは脅威というよりまずはパートナーになるのかもしれない。AIほどの頭脳があれば人間を敵と思わず提携する相手と考えてもいいように思うからだ。優秀な士業も他の士業と競争するより提携できないかと考えるのと一緒のように感じる。


[『TACNEWS』タックス ファンタスティック!|2024年12月|連載 ]

Profile

筆者 天野 大輔(あまの だいすけ)

1979年生まれ。公認会計士・税理士。税理士法人レガシィ代表社員。慶應義塾大学・同大学院修了(フランス文学を研究)。情報システム会社でSEとして勤務。その後公認会計士試験に合格、監査法人等で会計監査、事業再生、M&A支援等を行う。その後相続専門約60年の税理士法人レガシィへ。相続・事業承継対策の実務を経て、プラットフォームの構築を担当。2019年に士業事務所間で仕事を授受するWebサービス「Mochi-ya」、2020年にシニア世代向けの専門家とやりとりするWebサービス「相続のせんせい」、2024年に士業のためのSNS「サムシナ」をリリース。主な著書『相続でモメる人、モメない人』(2023年、講談社/日刊現代)。2023年、YouTubeチャンネル「相続と文学」配信開始。

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