タックス ファンタスティック! 第72回テーマ 受験勉強から逃げたいときどうする?Part2

田久巣会計事務所の代表の田久巣だ。会計士・税理士受験生にとって8月は試験の月。どんなに勉強が順調でも試験日が迫ってくると緊張するものだ。時には疲れてしまって逃げたくなるときもある。さて、そんなとき乗り切る方法はあるのだろうか?先月に続いてPart2をお送りする。


税 太 監子さん、前から言いたかったんですけど。


監 子 税太君、なになにどうしたの?あなた既婚者なんだから愛の告白はやめてよね?


税 太 逆です、逆!はっきり言うと嫌いなんです!


監 子 え、晴天の霹靂!税太君、この6年の連載を考えてよ!そんなキャラじゃなかったじゃない?


襟 糸 フフフ。監子君、わかってないなぁ。税太君の気持ちが。吾輩はわかる。


税 太 ついでに言いますと、襟糸先輩も大嫌いです!


襟 糸 ムムム。お、おい税太、どうしたんだ。そんな反抗は今まで一度もなかったのに…。


税 太 確かにいつもの僕は違います。理性があります。でも今のこの時期は試験に受かって資格があるあなたたちがとても許せないんです!


監 子 確かにね。でもそんなことにエネルギーを費やすくらいなら勉強したほうがいいでしょ?現実は変わらないんだし。


税 太 確かにそれはその通りです。でも勉強に身が入らないと特にイライラするんです。しかも、のほほーんと恋愛ネタの話ばかりしている監子さんを見ていると特に!


監 子 あら、確かに気を遣わない私も悪いわ。でも元気が出る人だっているのよ。それに私も直前期はなぜか身が入らなったわ。それまで順調だったのに。


税 太 え、そうだったんですか?


監 子 うん、公認会計士試験だけどね。直前期に全答練(全国公開模試)を受けて気が抜けて、ラストスパートの時期なのになぜか脱力しちゃって。いかんいかんと思いつつダラダラ。


税 太 どうやって挽回したんですか?


監 子 しょうがないから好きなアイドルのYouTubeをとことん見て恋愛妄想してた。


襟 糸 なんだ、今と同じじゃないか。よく受かったな。


監 子 ほっといてください!でも確かによく受かったって思ったわ。


税 太 あー、やっぱり地頭がいいっていう自慢じゃないですか!やっぱり嫌いです!


襟 糸 あ、でも監子君の言うこともわからないでもないな。


税 太 何でですか?


襟 糸 つまり、無理に挽回しなかったってことだ。無理にやる気を出そうとするとストレスが猛烈にかかり、かえって能率が落ちてさらにそれを自覚することでイライラするからだ。


税 太 つまり、身が入らない時は無理する必要はないと?


襟 糸 そうだ。吾輩だって自分のエリートぶりが挫かれたときは脱力するしな。特にこの連載の初期の頃は、吾輩が独り身でこの業界しか知らないという井の中の蛙ぶりを、家庭があり他の業界も知っている税太君から鋭く指摘されてぎゃふんとさせられたものだ。そんなときこそ何もしなかった。


監 子 私も恋愛ではいつも失敗して脱力。税太君にはこの連載の中期ぐらいのときによく愚痴言って相談に乗ってもらったけど、だからといってそのあと何もしなかった。


税 太 う~、おふたりともやっぱり好きです!そしてとりあえず何もしません!いらいらぶつけません!監子さんが試験直前に見ていたアイドルも、idleって書けば「何もしていない状態」っていう意味ですしね!

【今回のポイント】

前回と重複するが、受験勉強はつらい。進学であれ資格であれ経験している人は知っていると思うが、どんなに頭脳が良くてもまた勉強のコツを知っていて順調に進んでいる人であっても、みな努力は必要。なのでつらい。直前期になると不安もやってくるので逃げたくなる。そんなとき一旦逃げるのも大事だが、それでもすぐに勉強に戻って来るのも大事だと前回は書いた。しかし、ストレスというのは始末に負えずすごく厄介だ。そこでとりあえず「何もしない」というのも手。そのうち勉強したくなることも多く、むしろそのほうがはかどったりすることもある。相続の実務でも「今は何もしない」という選択肢をとるうちに能動的になることも多いのだ。実は作者の天野さんも、監子君と同様に試験1か月前に脱力になり、数日間何もしない決断をしてニコ動ばかり見ていたそうだ。それでも何とかなる。何もしない期間があっても、合格の席は「あいとる」と思うことが大事だそうだ。


[『TACNEWS』タックス ファンタスティック!|2024年7月|連載 ]

Profile

筆者 天野 大輔(あまの だいすけ)

1979年生まれ。公認会計士・税理士。税理士法人レガシィ代表社員。慶應義塾大学・同大学院修了(フランス文学を研究)。情報システム会社でSEとして勤務。その後公認会計士試験に合格、監査法人等で会計監査、事業再生、M&A支援等を行う。その後相続専門約60年の税理士法人レガシィへ。相続・事業承継対策の実務を経て、プラットフォームの構築を担当。2019年に士業事務所間で仕事を授受するWebサービス「Mochi-ya」、2020年にシニア世代向けの専門家とやりとりするWebサービス「相続のせんせい」をリリース。主な著書『相続でモメる人、モメない人』(2023年、講談社/日刊現代)。2023年、YouTubeチャンネル「相続と文学」配信開始。

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