タックスファンタスティック Tax Fantastic!!第66回テーマ 士業はなぜウェルビーイングなの?


税 太 あー、早く税理士になりたい!


監 子 いつになく冒頭から直接的な願望ね。


襟 糸 どうした、税太、勉強が順調に進んでいないのか?吾輩が教えてやってもいいのだが、いかんせん勉強すればいつも順調な吾輩では、同じ悩みを共有できない可能性が高い。だから教えることは敢えてやめておこう!


監 子 あのぉ、襟糸先輩は話に入ってこないでくれます?そんなに寂しいんですか?


襟 糸 むむむ、寂しいのは監子君だろう。いつも決算書を見ているかと思うと「はぁ」と溜息ついてぼんやりマッチングアプリを眺めてばかりじゃないか。


監 子 うわぁ、私のことをそんなに観察して、ひょっとして気があるのかしら?


税 太 あー、早く税理士になりたい!2回目!


監 子 あー、ごめんなさい!っていうか税太君への謝罪は襟糸先輩がすべきなんですけど!そもそもだけど、税太君は子供の頃なりたい職業ってあったの?前職がSEだったってことは、元々はやっぱりそっち系?


税 太 いえ、なりたいものなんてなかったです。私の父は会社員で、それこそ毎晩家に帰ってきてはビールを飲んで「はぁ」と溜息ついてばかり。会社勤めにやりがいを感じていたようには見えなかったです。かといって当時はリーマンショックもはじけたばかりで起業も魅力的じゃなかったですし、スポーツも芸術も苦手でしたし。


監 子 なるほどねぇ。私は父が士業だったから、楽しそうで良いなぁと思っていたけど。


税 太 なんで士業の仕事ってそんなに楽しく感じるんでしょうか?


襟 糸 フフフ、それは思う存分勉強ができるからだ。吾輩のように勉強がおそろしく得意な人にとっては天職だ。


監 子 それは襟糸先輩だけの話でしょ?そうね、やっぱり自由度が高いからかも。しかも独立すると特に。自己責任にはなるけど、国家資格があるから仕事には割と恵まれているし、社会的信用もあるし。


襟 糸 まともなことを言えば、横のつながりもできやすいからな。しかも士業の人は真面目で誠実な人も多いから、付き合っていても変なことにならないし、疲れない。そしてお客様との人付き合いを通して人間力も磨かれる。人間力が向上して利他の精神なども芽生えてくると必然的にウェルビーイングだ!


監 子 うわ、襟糸先輩がいつになくまとも!確かにそうよ。私の父も周りに同じ境遇の会計士や税理士がいたから、かなり励まされてきたみたい。勉強会を開いたりみんなでキャンプに行ったりして、私も子供の頃一緒に連れて行ってもらって楽しかったわ。


税 太 なるほど、ますます早く税理士になりたくなってきました。SEをめざしたのは、AIのニュースを見ていて天才プログラマーに憧れたからですが、僕は孤独にさいなまれて見事に挫折したんですよね。でも、税理士だったら違いますね。ウェルビーイングを夢見てとことん勉強をがんばって早く合格します!よし、やるぞ!


監 子 いい調子ね。「ウェル」ビーイングに「飢える」ことこそ、ウェルビーイングへの近道かも!


【今回のポイント】

士業の人のSNSを見ると、みなさんなかなか楽しんでいるように見える。もちろん必死に仕事をしてストレスを抱える局面も多いのだが、他の職業と比べて笑顔も多いように感じる。実は、これには裏付けとなる統計データがある。パーソル総合研究所が2020年に発表した『はたらく人の幸せに関する調査結果報告書』によると、士業のような専門家は、はたらく幸せ実感が平均よりもかなり上回っているとのことだ(平均4.3に対して士業を含む専門家は4.6。正社員は4.19、公務員は4.4。自営業4.6。自由業4.8)。まさに士業は今流行のウェルビーイングな職業と言える。しかしそこに至るには資格取得が必要。襟糸先輩のように、そのための勉強もウェルビーイングとなれば最高なのだが、筆者も含めて一般的には勉強ってツラいよね。でも大丈夫、講師とテキストを信じて、仲間とともに少しずつ知識を頭に「植える」と、きっと花開くはずだ!


[『TACNEWS』 2024年2月号|連載|タックスファンタスティック]

Profile

筆者 天野 大輔(あまの だいすけ)

1979年生まれ。公認会計士・税理士。税理士法人レガシィ代表社員。慶應義塾大学・同大学院修了(フランス文学を研究)。情報システム会社でSEとして勤務。その後公認会計士試験に合格、監査法人等で会計監査、事業再生、M&A支援等を行う。その後相続専門約60年の税理士法人レガシィへ。相続・事業承継対策の実務を経て、プラットフォームの構築を担当。2019年に士業事務所間で仕事を授受するWebサービス「Mochi-ya」、2020年にシニア世代向けの専門家とやりとりするWebサービス「相続のせんせい」をリリース。主な著書『相続でモメる人、モメない人』(2023年、講談社/日刊現代)。2023年、YouTubeチャンネル「相続と文学」配信開始。

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