タックスファンタスティック Tax Fantastic!!第58回テーマ 本試験までラスト3ヵ月!今、大事なことって何?

税 太 監子さん、大変です!


監 子 どうしたの?税太くん。なんだかこの始まり方も随分久しぶりね。税理士法人レガシィの天野さん、作者という権限を濫用してあんなにゲストで出まくっていたけど、さすがにもう満足したのかしら?


税 太 天野さんなんて正直どうでもいいですよ。もうこんな季節になってしまいました!


監 子 税太君にしては珍しく言葉がきついわね。それもそうか、もうすぐ試験直前期だもんね。


襟 糸 税太君、ということは、今年は結構勉強したということだね?


税 太 え!なんでわかるんですか?


襟 糸 がんばっている人こそ直前期の過ごし方を重視するからね。吾輩もそうだった。


監 子 税理士も会計士も本試験は8月だしね。この季節、『ウサギとカメ』の物語を思い出す人も多いわよね。


税 太 そうなんです。僕みたいな家庭持ちで働きながら勉強していると、勝負できる年とできない年がわりとはっきり分かれていて。今年は家庭も仕事もビッグイベントがなくて時間の余裕があったので、本腰モードで答練も勉強をばっちりした上で挑んでいたんです。だから成績も結構良かったんですが、「ウサギ」になったらどうしようと、怖くて…。


襟 糸 わかるぞ、税太君。吾輩も名前の通りエリートで常に成績トップだったから、追われる立場の余裕感と焦燥感のせめぎ合いが痛いほどわかる。しかし吾輩の脳はおそろしい、そんなときこそエリートがゆえに難問奇問がえらく簡単に見えたのだ。わっはっは!


税 太 襟糸先輩、それ以上はもう結構です…!それに襟糸先輩にはそもそも呼びかけしていません!


監 子 ふたりとも落ち着いて。私は在学中に会計士試験に挑戦したんだけど、合格した年も直前期までは順調とは言えなくて、答練も大学の都合で欠席したりしてて結構やばかったのよ。平均点に届くかすら危うかったりして。


税 太 どうやってその状況に対処したんですか?


監 子 基本に戻ったの。Aランクと言われている基本論点と、今年はこれがテーマになるだろうという頻出論点だけはしっかり解いて理解し、あとは流し読みというか、ほとんど捨てたわ。時間もなかったしね。でもそれが功を奏したの。


税 太 つまりその年は基本論点や頻出論点がかなり出たんですか?それって運では?


監 子 うーん、それが思ったほど基本や頻出は出なかったわ。でも、数は少なかったけどそうした問題を100%しっかり正解できた自信はあったわ。そしてその勢いで、直前期にはあまり練習しなかった問題も本番では解けちゃったの。


税 太 なるほど、つまり試験会場で焦らないための基本論点の復習なんですね。


監 子 ビンゴ!だからいつも、自分にとってわかりにくくて忘れちゃう基本論点は、もらったレジュメを駆使して表にして整理して覚えたわ。ノートにまとめ直すのは時間がかかるし変にこだわっちゃいそうな気がしたから、小さなスクラップブックに覚えやすそうと思ったレジュメのコピーを入れて、電車の中で何回も見て覚えたの。


襟 糸 あの、もうお呼びでない分際で突っ込むのもなんだが、「ビンゴ!」っていうのは少し古くないかい?イマドキ女子をめざしている監子君の名誉のために言うのだが。


監 子 く~ぅ!その言い方なのよね~。あのですね、襟糸先輩。この「ビンゴ!」っていう一見使われすぎてダサい呼びかけこそが基本論点であり頻出論点で、バカにしちゃいけないんです!これをバカにすると、最後の最後に負けを見るウサギになるんです!


税 太 ビンゴって言葉、いいですよね。「大当たり!」ですもんね。しっかり勉強した論点が試験に大当たりで出て、みんなにとってハッピーだから使ったってことでいいですよね?


監 子 ビンゴ!そんなフォローができる税太君、私が合格にします!


【今回のポイント】

試験直前期は、どんなに準備万端の人も満足のいく勉強ができなかった人も、みんながナーバスになる季節だ。私自身、不合格だった年も合格した年も、かなり不安であれこれ縁起を担いでみたものだった。しかしそんな時こそルーティンワークがとても精神を楽にさせる。また、自分は苦手だが他人が得意な基本論点は試験で取りこぼすとめちゃくちゃ痛いので、基本のみ重点的にケアをした。何が試験に出るか、未来の話は結局誰にもわからない。しかし合格するときというのは不思議と直前に確認したものが出ることが多い。カメにこそ「ビンゴ!」が宿ると信じている。


[『TACNEWS』 2023年6月号|連載|タックスファンタスティック]

Profile

筆者 天野 大輔(あまの だいすけ)

1979年生まれ。公認会計士・税理士。税理士法人レガシィ代表社員。慶應義塾大学卒業、同大学院修了(フランス文学を研究)。情報システム会社でSEとして勤務。その後公認会計士試験に合格、監査法人等で会計監査、事業再生、M&A支援等を行う。その後日本で最大級の相続専門約60年の税理士法人レガシィへ。相続・事業承継対策の実務を経て、プラットフォームの構築を担当。2019年に士業事務所間で仕事を授受するWebサービス「Mochi-ya」、2020年にシニア世代向けの専門家とやりとりするWebサービス「相続のせんせい」をリリース。主な著書『「生前贈与」のやってはいけない』(2022年、青春出版)。2023年、YouTubeチャンネル「相続と文学」配信開始。

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