タックスファンタスティック Tax Fantastic!!第40回テーマ 士業がセミナーをする意義って何?

監 子 税太君、Help!


税 太 監子さん、先月号、先々月号と同じセリフですが、ま、ま、まさか?


監 子 どうか私を助けて、すっかり参っているの。側にいてくれること、感謝しているわ。私が落ち着くまで支えてほしいの。お願い、どうか私を助けてくれない?


税 太 またもやビートルズの『Help!』。先々月号は1番のAメロ、先月号は2番のAメロときて、今回はサビの部分じゃないですか!今までに比べて助けを求める言葉が直接的になっているサビを歌うってことは、今回は本気で助けを求めてますね?


監 子 過去2回ビートルズを冒頭で持ち出しておいて最後のオチで回収しきれていないから、悔しくて今回も引用させてもらったわ!税太君の言う通り、今回は本当に困っているの。実はセミナーをやることになっちゃった!


税 太 そうなんですね!でも監子さんおしゃべりだし、人前で話すの得意そうじゃないですか?


監 子 それがこう見えて意外と緊張するタイプなのよ。資格を取ったのも、巧みなトーク術を持ち合わせていないぶん、専門知識を身につけて実力で勝負したいって思ったからなの。なのに「セミナー講師をやってほしい」って田久巣所長に言われちゃって。あー、税太君に代わってもらいたい!Help!


襟 糸 フフフ、口は禍の門であるとともに、福の門でもあるのさ。


監 子 ん?いつもだと皮肉たっぷりの名言を引用してくるけど、今回はけなしてるの、褒めてるのどっち? っていうか、これって誰かの名言なの?


税 太 監子さん、違いますよ。今のはたぶん襟糸先輩が作った造語ですよ。


襟 糸 何だ君たち、この襟糸先輩のエリートぶりを甘く見てもらっては困るな。これは9月号でも登場した渋沢栄一が『論語と算盤』の中で言っていることなのさ。さあ、意味を考えたまえ!


監 子 所長!襟糸先輩が偉人の名言でプレッシャーを与えてきます。名言ハラスメントです!Help!


田久巣 いやいやビートルズの話はもう終わったよね? って、ここまで先月号と同じような流れだが、筆者は原稿を作るときにコピペをしてないかい?まあ、ともかくセミナー講師を頼んだ背景も含めて解説しようじゃないか。いいかい、監子君。士業は「待ち」の姿勢でいてはいけないんだ。確かに士業の世界は大人しい人が多いし、人前で話すことが苦手な人も多いだろう。かく言う私も大勢の前で話すのは得意じゃない。でも情報発信していかないと仕事として成り立たないんだ。渋沢栄一は松尾芭蕉の「物言えば 唇寒し 秋の風」という俳句について、「『口は禍の門』ということわざを文学的に表現したものだ」と紹介し、「『禍』ばかり見ていては消極的になりすぎて良くない」「むしろ『福』につながることも多い」ということを言っている。


税 太 つまり、「発信する」ということには、「禍」と「福」両方の側面があるということですね!


田久巣 その通り。確かに、準備不足でセミナーで間違ったことを言ってしまって信用を失うリスクもあるが、そのセミナーがきっかけで仕事が増えるなど新たな縁が生まれることもある。聞き手のことを考えながらセミナーの準備や振り返りをすることで人間力が磨かれるし、ビジネスにつながったり勉強にもなったりするから、まさに「論語と算盤」を兼ね備えた手段なんだ。


監 子 なるほど!セミナー(「講演」)は自分の未来を「後援」するものなのね!


【今回のポイント】

士業はセミナー講師を頼まれることも少なくない。しかし「余計なことを言ってしまうかも」「間違ったことを話してしまったらどうしよう」と、リスクを回避するため依頼を断る士業も多い。しかし、かつてサッカー日本代表監督を務めたオシムが「リスクを冒して攻めろ」と言ったように、勝つためには攻める姿勢も大事。実際にはセミナーで揚げ足を取られて信用が失墜するようなことはほとんどない。万が一間違ったことを話してしまっても、誠意を込めてお詫びと訂正をすれば信用を取り戻すことは可能だし、そもそも間違わないように下調べを念入りにしたり、事前に先輩や上司に内容を確認してもらったりすればいいわけだ。ビートルズが攻めの姿勢で日本「公演」を敢行したことで日本のファンを増やしたように、士業もセミナー(「講演」)をすることで、リスク以上に、人脈ができたり顧客獲得につながったりとやり方次第で恩恵を多く得られるだろう。


[『TACNEWS』 2021年12月号|連載|タックスファンタスティック]

Profile

筆者 天野 大輔(あまの だいすけ)

1979年生まれ。公認会計士・税理士。税理士法人レガシィ副代表/代表社員パートナー。慶應義塾大学卒業、同大学院修了(フランス文学を研究)。情報システム会社でシステムエンジニアとして勤務。その後公認会計士試験に合格、監査法人兼コンサルティング会社に入り、会計監査、事業再生、M&A支援等を行う。その後日本で最大級の相続税申告数実績のある税理士法人レガシィへ入社。相続・事業承継対策の実務を経て、プラットフォームの構築を担当。2019年7月には会計事務所向けWebサービス「Mochi-ya」をリリース。2020年8月にはシニア世代向けWebサービス「相続のせんせい」をリリース。主な著書『改訂版 はじめての相続・遺言100問100答』(2017年、明日香出版、共著)。※誌面刊行日時点

Twitterにてご感想をお待ちしております!

合わせて読みたい

おススメ記事

「TACNEWS」に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。