タックスファンタスティック Tax Fantastic!!第24回テーマ アフターコロナ、税理士は花形か?
監 子 もしもし、税太君、今からWEB会議いいかしら?招待するわね。
税 太 あ、いいですよ。あ、URL来ました。ポチ。あ、監子さん、背景の絵変えましたね?もしかしてハワイですか?
監 子 そう、気分をトロピカルにしたくてね。あれ、襟糸先輩が横やり乱入してきたわ。
襟 糸 おい、乱入とはなんだ。ハワイの絵とは浮わついていてけしからんな。監子女史にはこの画像をプレゼントする。えいっ!
監 子 なにこれ?そろばんの絵じゃない!なにゆえ?
襟 糸 いやなに、会計士はやっぱり計算が本業だろ?でも監子君は電卓って柄じゃない。どこか前時代的な朴訥としたところがあるからそろばんがお似合いかと。
監 子 く~、今の発言、完全にレッドカードね。そもそも「計算が本業」っていうところからしておかしいわ。会計士は会計の監査やアドバイスが本業よ。計算力はその前提に過ぎない。税理士だって一緒でしょ?
税 太 でもそろばんの絵を見て思ったのですが、僕らのいるこの会計業界は、この先どうなるのでしょうか?コロナウィルスの感染が収束しても、仕事はあるのでしょうか?
襟 糸 何を言っている税太。あるに決まっているだろう。会計や税金のことというのは、それを専門的に勉強していない人にとってはなかなかハードルが高いんだぞ。
税 太 そうなんですが、僕が以前勤務していた会社はシステム導入支援の会社だったので、その最先端な技術に比べると、やはり僕らの業界はそろばんに見えてくるんです。
襟 糸 わかっていないな、税太。いずれ合格して税理士資格を持てばわかるだろうが、会計士も税理士も、プロとして本物なんだ。難しい試験を苦労して突破し、会計事務所の人間として、ビジネスの世界で戦う経営陣を相手に非常にハードな仕事量をこなしてきた猛者たちが多いのだ。そしてその猛者はこのような厳しい時代には非常に頼りになる。資金繰りや助成金対策といったうわべの技術だけではない。顧客対応を極めてくると、顧客の「本当の課題」というものが見えてくるものだ。願いを聞くことは当然するし、一方これは愚痴だと割り切ることもある。まあ確かに野暮ったく見えてしまうのも否定しない。でも「一番大切なことは目に見えない」ものなんだ。
監 子 ちょっとちょっと何?いつになくかっこいいじゃないの。最後は『星の王子さま』の物語からの引用ね。何?そのおしゃれなかんじ?
襟 糸 フフフ、危機は本物のリーダーを育てるというからね。そして最後の引用は僕が博識なわけではない、この読み物の作者が学生時代にフランス文学を専攻していたというだけのことさ。
監 子 キザなんだか謙虚なんだか…。でもレッドカードは取り下げてあげるわ。
襟 糸 でもいずれにせよ、そろばんは監子君に似合っていると思うな。そうだ、「そろそろばん(晩)ごはん」ってメッセージで、そろばんの玉をごはん粒にした画像を作ってあげようか?
監 子 ピピー!ダジャレの完成度も含めてやっぱりレッドカード復活!
【今回のポイント】
会計事務所で働く会計士や税理士はどんな人たちなのか、勉強していると気になる読者もいるだろう。外見的には何も特別なわけではなく普通の人が多い。芸能人のようなスター性はないし、メディアに出てくる経営者のような華やかさがある人はごく少数だ。しかし襟糸君が言う通り、「一番大切なことは目に見えない」。会計事務所に勤務したり、お客様になってみたりするとわかるのだが、じっくりと相談すると本物であることがわかる。勉強したことは裏切らないのだ。そして時には利益度外視で付き合ってくれる信頼感抜群の存在なのだ。だからこそ、まさにアフターコロナ時代、つまり世界が変革を強いられたとき、とても心強い存在になる。これを花形と言わずしてなんであろうか?
[『TACNEWS』 2020年8月号|連載|タックスファンタスティック]
筆者 天野 大輔(あまの だいすけ)
1979年生まれ。公認会計士・税理士。税理士法人レガシィ代表社員パートナー、株式会社レガシィ常務取締役。慶應義塾大学卒業、同大学院修了(フランス文学を研究)。情報システム会社でシステムエンジニアとして勤務。その後公認会計士試験に合格、監査法人に入り、会計監査・内部統制監査・IPO準備監査に従事。また事業再生、M&A支援等のコンサルティング業務も行う。その後日本で最大級の相続税申告数実績のある税理士法人レガシィへ。現在は相続・事業承継対策コンサルティングを担当。また情報戦略本部長としてプラットフォームの構築も担当し、2019年7月「Mochi-ya」をリリース。
主な著書:『改訂版 はじめての相続・遺言100問100答』(2017年、明日香出版、共著)