タックスファンタスティック Tax Fantastic!!第20回テーマ 相続で揉めるのはどんな兄弟姉妹か?
監 子 税太君、ちょっとお願いがあるんだけど…。
税 太 今のセリフ、前回と全く同じじゃないですか!作者の手抜きじゃないでしょうね?今回こそ、そのお願いは襟糸先輩じゃダメでしょうか?
監 子 今回は絶対ダメとは言わないけど、この連載の第6回『農地の価値は低い?高い?』を読むと、襟糸先輩だと心もとないのよね。
税 太 農地の財産の価値をめぐって相続が揉めてしまった話ですね。
監 子 そう。今度は私のクライアントの話なの。とあるクリニックのお医者様に資金繰りについてアドバイスしているんだけど、その方のお母様が亡くなってしまったの。お父様はすでに他界されているんだけど、その相続をめぐってすごく揉めそうなの。
襟 糸 フフフ、監子君、聞こえてるぞ。何が心もとないだ、相続といえば襟糸様、襟糸様といえば相続、神様、仏様、襟糸様だろうが!
監 子 そんなに自信があるなら聞くけど、じゃあなぜ揉めているか当ててみてよ!
襟 糸 フフフ、それは簡単だ。すでに亡くなっているお父様もお医者様だったのだろう?ということはお父様の相続でお母様が多く財産を相続したんだろう。今度はその財産をめぐって遺産を分割することになる。つまり二次相続。相続には子どもたちしかいないので、遺された子どもたちだけで配分を決めなくてはならないとなれば、当然揉めやすくなる。あとお医者様なら財産も多額だろうから、誰かが多めにほしいと思っているのだろう。どうだ、図星じゃないか?
田久巣 お、久しぶりに相続の話じゃないか。揉める要因の話だね。襟糸君の仮説はたしかに正しいよ。しかしもっと重要な何かが抜けているな。
税 太 さっきの監子さんのセリフがヒントかも!襟糸先輩じゃ心もとないと言っていましたよね。確か第6回の時、揉めた要因の1つは農地を引き継いだのが末っ子である長男でした。そのとき襟糸先輩は「僕は一人っ子だから」と話してて、なぜ揉めるのかわからないと言ってましたよね?
襟 糸 なんだか事情聴取を受けているみたいだ…。まあ確かに言ったが…あ、ひょっとして相続人の兄弟姉妹構成が問題か?
監 子 その通り!ちなみにどういう構成だと思う?
税 太 僕は何となくわかりました。ひょっとしてその監子さんのクライアントの方、女性ですか?
監 子 その通り!さて他の兄弟姉妹は?
田久巣 私も参戦しよう。ずばり他の兄弟姉妹も女性だ。
監 子 その通り!二人姉妹ってことでいいですか?
襟 糸 ん?そう聞くってことはもう一人女性がいて三姉妹か?
監 子 パーフェクト!まさに「三人寄れば文殊の知恵」ってところね。
一 同 今のような言い方こそ一番揉める要因だ!(笑)
【今回のポイント】
三姉妹や四姉妹は揉めることが多いと言われているんだ。フィクションで言えば、推理作家・横溝正史の金田一耕助シリーズ『犬神家の一族』。あれも三姉妹。もちろんそれだけが原因じゃないが見事に揉めた。相続税専門の税理士法人でも、三姉妹が相続人になる場合は揉めやすいというのが定説だ。なぜか?三姉妹だと一律して公平な立場になりにくいのが大きいかもしれない。二人姉妹だと二人とも主婦だったり、会社員だったり、境遇が似通うこともあるだろうから、遺産をキリよく折半することにもあまり異議は出にくい。また兄弟姉妹に男女が混じれば、そもそも性別が違うので立場の違いによる不平等感はあまり生じないかもしれない。しかし、三姉妹や四姉妹の場合、子どもの頃には公平だったはずの立場が、その後の就職や結婚によって結構変わってくるのだ。働いている人いない人、結婚している人していない人、子どもがいる人いない人、旦那さんの年収が高い人低い人…。いろいろと境遇が分かれやすく、不公平さをより感じてしまうからなのかもしれない。ちなみに一番揉めないのが当然ながら一人っ子。襟糸君はとりあえず安心だ。
[TACNEWS 2020年4月号|連載|タックスファンタスティック]
筆者 天野 大輔(あまの だいすけ)
1979年生まれ。公認会計士・税理士。税理士法人レガシィ代表社員パートナー、株式会社レガシィ常務取締役。慶應義塾大学卒業、同大学院修了(フランス文学を研究)。情報システム会社でシステムエンジニアとして勤務。その後公認会計士試験に合格、監査法人に入り、会計監査・内部統制監査・IPO準備監査に従事。また事業再生、M&A支援等のコンサルティング業務も行う。その後日本で最大級の相続税申告数実績のある税理士法人レガシィへ。現在は相続・事業承継対策コンサルティングを担当。また情報戦略本部長としてプラットフォームの構築も担当し、2019年7月「Mochi-ya」をリリース。
https://www.mochi-ya.ne.jp
主な著書:『改訂版 はじめての相続・遺言100問100答』(2017年、明日香出版、共著)