タックスファンタスティック Tax Fantastic!!第18回テーマ 税理士はイマドキか?

襟 糸 おい税太、そういえばこの間税理士受験生向けの就職説明会に出たんだろう?入所してくれそうな人はいたかい?

税 太 厳しかったです。そもそも税理士受験生が減ってきてしまっているんです。あと、そもそも税理士になろうかも迷っている人もいて。税理士事務所よりも戦略的なコンサルティングファームに入って活躍したい、なんて人も増えてきたなぁって思います。

襟 糸 税太、それは甘いな、君の勧誘力が弱いのだ。税理士受験者が減っているなんていうのは言い訳に過ぎん。だいたい税太はだな…。

監 子 はいはい、襟糸さん、自分は説明会にも行かずにサボってたくせにそんなこと言うなんてどういうご身分かしら。

襟 糸 サボってなぞおらん。襟糸様はエリートらしく部下の行動に深く介入せず温かく見守っていただけだ。しかも身分は税太の上司だ。指示命令を発令する上司だ!

監 子 そういう偉そうな文化や雰囲気が税理士ってなんか古そうってイメージにつながるんじゃないかしら。会計士は最近、インターネット企業のIPO(新規株式公開)が盛んになってきて、その監査や支援をするってイメージが根付いてきたおかげで「イマドキっぽい!」なんて感じている人も出てきているのよ。

襟 糸 こ、これだから会計士は…。税理士を馬鹿にしているな?税理士のほうが会計士よりも実力ではずっと上で人の役に立っているのに、会計士はいつも上から見下ろす。

田久巣 まぁまぁ、第13回の続きのやり取りをする気かい?両方の世界を見てきた僕からすると、確かに税理士のほうがイメージ的に損をしている気がするね。年齢層の高い人が多いし、職人気質だし、気難しく電卓をカタカタ叩いて、町の中小企業のために小難しくて細かい税金計算をしているイメージがあるからな。

監 子 すっごくオジサンって感じがしちゃいますもん。

襟 糸 人のことオジサンって言う人こそオジサンっぽいもんだけどな。

監 子 そういう嫌味を税理士のあなたが言うとさらにイメージ悪くなるのよ!

田久巣 おいおい、子供じゃないんだから。でも僕の中では、人の役に立つという点では、外資系のかっこいいコンサルティングファームや監査法人で働くのとそう変わらない感じがするんだ。むしろ上回ることだって多いと思っている。イメージが邪魔をしているだけなんだ。税太君もそう思うだろ?

税 太 そうですね、タックスヘイブン税制、移転価格税制、組織再編税制、事業承継税制、相続税法とかは、グローバル化だったり最先端の複雑で専門的な法律や現代の社会的な問題に関連していて、とってもイマドキっぽい感じがします。あと、元SEの僕として興味があるのは、最近流行のRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)というロボットの導入です。これを実際に導入したり真剣に考えている税理士も多いと思います。実はこういう幅広い仕事をしていて、新しい技術も積極的に取り入れようとしているのが税理士だって思うと、印象は変わりますね。

田久巣 確かに、毎年末に政府から大綱が発表される税制改正にしても、その内容は時代の最先端の事象を追いかけているからね。税制改正はまさにトレンド中のトレンドと言える。テクノロジーの進歩にまつわる税制も多くなってきているしな。でも、税理士のこのイメージを変えるには具体的にはどうするといいのだろうか?

税 太 たとえばこの『タックスファンタスティック』を原作にしたテレビドラマ化はどうでしょうか?イマドキの俳優をそろえて。監子さんは見目麗しい若手人気女優を、襟糸先輩は人気アイドルグループに所属するイケメンの俳優をキャストし、恋模様も描きます。

一 同 突飛すぎる意見に「今ドキ」っとしたぞ!でもそれが実現したらまさに税理士業界としてはファンタスティック!

【今回のポイント】

税理士に一見イマドキ感がないのは事実だ。お客様から領収書をもらって帳簿をつけて確定申告を代わりにしてあげているイメージが強すぎるのだろう。でも、確かにこれは主要業務のひとつではあるが、それはあくまで一部。税太君が言うように、業務の幅は広く、しかもトレンドだったりする。そして何より、実は人への直接的なお役立ちを圧倒的にしやすい職ともいえるのだ。だからこそ年収もいい。奥様がいる方は、実際自分にドキッとするぞ。これを「ツマ(妻)ドキ」って言うのだ。え、こういうのがまさにイマドキっぽくないって?(笑)


[TACNEWS 2020年2月号|連載|タックスファンタスティック]

Profile

筆者 天野 大輔(あまの だいすけ)

1979年生まれ。公認会計士・税理士。税理士法人レガシィ代表社員パートナー、株式会社レガシィ常務取締役。慶應義塾大学卒業、同大学院修了(フランス文学を研究)。情報システム会社でシステムエンジニアとして勤務。その後公認会計士試験に合格、監査法人に入り、会計監査・内部統制監査・IPO準備監査に従事。また事業再生、M&A支援等のコンサルティング業務も行う。その後日本で最大級の相続税申告数実績のある税理士法人レガシィへ。現在は相続・事業承継対策コンサルティングを担当。また情報戦略本部長としてプラットフォームの構築も担当し、2019年7月「Mochi-ya」をリリース。https://www.mochi-ya.ne.jp
主な著書:『改訂版 はじめての相続・遺言100問100答』(2017年、明日香出版、共著)

合わせて読みたい

おススメ記事

「TACNEWS」に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。