タックスファンタスティック Tax Fantastic!!第17回テーマ 自由と税理士

監 子 代表、事件です!簿記美ちゃんのデスクに男物の万年筆らしき贈り物の箱が置いてあります!

襟 糸 監子君、高卒新入り18歳女子の簿記美ちゃんだって、もう立派な社会人なんだ。あたたかくその恋の行方を見守ろうじゃないか。先々月号のタピオカ屋さんで素敵な出会いがあったのだろう。

監 子 襟糸さん、あなたには話してません!簿記美ちゃんに悪い虫でも付いたらと思うとウカウカしてられないわ!こんな貢物までさせるなんて相当なジゴロだわ!

田久巣 まあまあ、二人とも勘違いだよ。いやなに、僕の知り合いの税理士が今度独立するっていうんでお祝いの万年筆を簿記美ちゃんに買ってきてもらったんだ。

監 子 よかったぁ、ほっとしました。独立する税理士先生ってどんな方ですか?

襟 糸 おっと、興味を持つってことは、ひょっとして監子君、君が恋をしたのかい?一目も見ていないというのに。確かに相当なジゴロだ!

監 子 あのぉ、襟糸さん、とってもうるさいんですけど…。ひょっとして私に好意が?

田久巣 まぁまぁやめんかね。その税理士は僕の受験仲間の税理士のところで修行して頑張っていたんだが、前から独立を夢見ていてようやく準備が整ったようなんだ。僕もよく税務上の見解を教えてくれと言われて、酒を一緒に飲んだものさ。酔ってくるといつも、ガミガミうるさいマネージャーの悪口を言っていたな。もう付いていけないとかね。まあ、よくあるやつだ。

監 子 でもこれで独立して晴れて自由の身ね。そのマネージャーの言うことも聞かなくて済むし。

税 太 いきなり横から入ってしまってすみませんが、独立すると本当に自由になれるんでしょうか?

襟 糸 おっと、どうしたいきなり税太。当たり前だろ。独立すればまさに自由だよ。税太だって襟糸様の言うことは聞かなくて済むわけだ。

税 太 でもその代わりに襟糸先輩のせいにすることもできなくなります。

襟 糸 むむむ、税太君、それは聞き捨てならないね。さては自分の勉強不足で生じたミスを襟糸様のせいにして顧客に言い訳していたんじゃあるまいね?

監 子 まあまあ、税太君が言いたいのは、独立には「これからは自分の思い通りだ!」というワクワクする可能性を感じる一方で、「義務と責任を自分の身一つで引き受けなくてはいけない」というずしんとした重みもあるってことよね?

税 太 あと細かい経理や事務処理をしないといけなくなります。パソコンや申告ソフトを買ったり、専門書をそろえたり、事務所の家賃の交渉もしないといけません。

襟 糸 確かに!専門家としてはそういった作業は面倒だ。ここで1句。「自由(じゆう)とは、見方を変えれば、重(じゅう)加算。」

監 子 そこまで見方を変えるのも重(じゅう)症かも…。でもそれも考え方ひとつで、そういった作業を楽しんじゃうってのもいいかもしれないわ。家賃交渉のときには、日頃の顧客への報酬交渉やM&Aの価格交渉で鍛えたテクで、大家さんをやっつけられるじゃない。爽快かも!

一 同 その考え方こそ自由かも!

【今回のポイント】

「税理士になりたい理由は何か?」と問えば、様々な回答が返ってくるとは思う。お金の相談に乗って困っている人を助けたいから。簿記に出会って楽しかったから。親が税理士で興味を持ったから──。しかしやはり「国家資格であり独立開業できるから」というのが大きな理由の1つであろう。独立すれば、確かに自由。寝坊しても、仕事を休んでしまっても、怒る人は誰もいない(顧客との約束をすっぽかせば当然顧客から怒られるし、生活費を稼がなければ養っている家族に怒られるかもしれないが)。しかしもう一方で、人を雇わない限り、面倒なこまごまとした事務もすべて自分ひとりでしないといけない。自由は魅力のようで、その実、大変なこともあるのだ。でも監子君が言う通り、「そういった面倒な事務も経験できる」というプラス発想ができれば、独立も捨てたもんじゃない。そのあたりは重々(じゅうじゅう)わかっているって?


[TACNEWS 2020年1月号|連載|タックスファンタスティック]

Profile

筆者 天野 大輔(あまの だいすけ)

1979年生まれ。公認会計士・税理士。税理士法人レガシィ代表社員パートナー、株式会社レガシィ常務取締役。慶應義塾大学卒業、同大学院修了(フランス文学を研究)。情報システム会社でシステムエンジニアとして勤務。その後公認会計士試験に合格、監査法人に入り、会計監査・内部統制監査・IPO準備監査に従事。また事業再生、M&A支援等のコンサルティング業務も行う。その後日本で最大級の相続税申告数実績のある税理士法人レガシィへ。現在は相続・事業承継対策コンサルティングを担当。また情報戦略本部長としてプラットフォームの構築も担当し、2019年7月「Mochi-ya」をリリース。https://www.mochi-ya.ne.jp
主な著書:『改訂版 はじめての相続・遺言100問100答』(2017年、明日香出版、共著)

合わせて読みたい

おススメ記事

「TACNEWS」に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。