日常生活にも役立つ「数字力」を鍛える10分間トレーニング ティーチャー鈴木の数的センスアップ塾 Vol.1

Point-考え方-

A〜Iの9個のマスがあり、それぞれに1〜9までの数字を入れていきます。また、各数字が使えるのは1度だけなので、1〜9のすべての数字がどこかのマスに入ることになりますね。また、数字の入れ方にはルールがあり、「縦・横・斜めの3つの数字の和が等しくなる」ように入れなければいけません。このルールのもとで、Cが2だったとき、Gに入る数字は決まるようなのですが、その数字を答える問題です。「答えの数字はすぐにわかった!」という人も、理屈を考えながらこの問題を一緒にひも解いてみましょう。

はじめに【ヒント①】を考えてみましょう。縦・横・斜めで3つの数字の和が等しくなるわけですが、その和は一体いくつになるでしょうか?
まず、A〜Iの9個のマスには1〜9のすべての数字が入ることから、A〜Iまでの数字をすべて足した数がわかりますね。つまり、1+2+3+4+5+6+7+8+9=45が、AからIまでの数字をすべて足した和になります。
次に考えるのは縦・横・斜めの各列。
今回は縦の3列を例にとって考えてみましょう。各列の3つの数字の和は等しいため、A+D+G=B+E+H=C+F+I。さらに、これらの3列の総和が45なので、(A+D+G)+(B+E+H)+(C+F+I)=45と表せます。45÷3=15ですから、各列の3つの数字の和が15になることがわかるわけですね!これで【ヒント①】が解決しました。

では、【ヒント②】を考えてみましょう。Eの数字がまずわかるようなのですが、そのためにはどんなステップを踏んでいけばいいでしょうか?ここでは、どの縦・横・斜めの列を考えるかがポイントになってきます。
Eの数字を求めるため、Eを含む列を探してみましょう。
例えば縦のB-E-Hがそうですね。他にも、横の並びを見ればD-E-Fがあります。さらに、Eを含む並びは斜めでも取ることができますね。A-E-IとC-E-Gです。そして【ヒント①】で求めたとおり、これら4列でそれぞれの3つの数字の和はすべて15です。

ここで、今挙げた列のアルファベットをもう一度よく見てみましょう。縦でB-E-H、横でD-E-F、そして斜めでA-E-IとC-E-Gです。どうでしょう?図を見ながらこの列のアルファベットを見ていると、何か気づきませんか?
そう、実は、すべての列にEを含んでいますが、E以外のアルファベットが、すべて1回ずつ登場しているのです!

また、それぞれの並びの数字の和はすべて15でした。すなわち、A+E+I=15、B+E+H=15、C+E+G=15、D+E+F=15となるわけです。
ここで、これらをすべて足し合わせることを考えてみましょう。そうすると、(A+E+I)+(B+E+H)+(C+E+G)+(D+E+F)=15×4=60となりますね。
足し算の場合、( )を取っても計算の結果は変わりませんし、また順番を入れ替えても値は変わりませんから、先ほどの式の左辺は、このように表すこともできます。
A+E+I+B+E+H+C+E+G+D+E+F=A+B+C+D+4E+F+G+H+I
そしてこれらを足した和が60でしたので
A+B+C+D+4E+F+G+H+I=60
つまり、Eが4つとE以外の数を1つずつすべて足すと、60になるということです。これは言い換えれば、AからIまでのすべての数字を足したものと、Eを3つ足し合わせると60になるということです。
これを式で表すと、このようになります。
(A+B+C+D+E+F+G+H+I)+3E=60

ここまでくれば、先は見えてきましたね。AからIまでの総和は45ですので、先の式に当てはめると45+3E=60となります。あとはこの方程式を解き、Eを求めるだけです。3E=15となるので、E=15÷3=5であることがわかります!

実はこの問題の設定では、真ん中にくる数字(今回でいうとEのマス)は、常に5になるんですね!

ではいよいよ【ヒント③】の仕上げです。ここまでくればもう答えは目の前ですね!
Cに入る数字が2でしたので、C-E-Gの斜めの並びを考えればOK。C+E+G=15で、C=2、E=5なので、Gは15-2-5=8とわかります!

Answer

【答え:8】

この問題は「魔方陣」という名前の有名な数学パズルがもとになっています。Eに入る数字は5しかない、と言いましたが、実は、回転や折返しによる一致を考えなければ、3×3マスの魔方陣のパターンは、たった1種類しかないことがわかっています。例えば、2は必ず角にしか来られません。(気になる方は、ぜひ考えてみてください!)
また「魔方陣」で検索すると他にもいろいろおもしろいことがわかるので、興味がある方はぜひ調べてみてくださいね!

本連載では、皆さんの“数的センス”をアップする問題を隔月でご紹介していきます。
勉強の合間やちょっとしたスキマ時間にぜひ挑戦してみてくださいね。今後もお楽しみに!


[『TACNEWS』 2021年6月号|連載|ティーチャー鈴木の数的センスアップ塾]  


Profile

筆者 鈴木 伸介(すずき しんすけ)

TAC統計検定®・ビジネス数学検定 ・中小企業診断士講座講師
ハーモニービジョン株式会社代表取締役

各種数学セミナーで講師活動を行いながら、社会人向け数学教室「おとなのENJOY!数学クラブ」「おとな数学オンライン」を主宰、ビジネスパーソンの数学リテラシー向上に尽力している。

保有資格:中小企業診断士・統計調査士・ ビジネス数学検定1級AAA
著 書 : 『もう一度解いてみる入試数学』(すばる舎)

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