人事担当者に聞く「今、欲しい人財」 第68回 株式会社テイクアンドギヴ・ニーズ

Profile

酒井 雅弘(さかい まさひろ)氏

人事部長

2006年、株式会社テイクアンドギヴ・ニーズに新卒で入社。現場のウェディングプランナー、会場支配人、グループマネージャーを経て、ブティックホテルブランド「TRUNK(HOTEL)」のスタートアップに従事し人事系業務を担う。その後ウェディング事業の営業部長を経て、2022年、人事部長に就任。新卒・中途人材採用から人材教育、評価、福利厚生まで幅広く担当。

「Creativity/Challenge/Kindness」。
3つのバリューを培うために、
テイクアンドギヴ・ニーズは幅広い制度を展開。


テイクアンドギヴ・ニーズは、それまで画一的だった日本の結婚式に「ハウスウェディング」という新風を送り込んだ。以来「世の中のニーズを捉えてサービスを提供する」ことをめざして、ウェディング業界を牽引している。ウェディング事業を軸に、成長産業のホテル事業でも事業拡大をめざすテイクアンドギヴ・ニーズでは、どのような人材観を持って社員を育成しているのだろう。人事部長の酒井雅弘氏に、テイクアンドギヴ・ニーズならではの社内制度や福利厚生について伺った。

国内挙式組数No.1のリーディングカンパニー

──最初にテイクアンドギヴ・ニーズをご紹介いただけますか。

酒井 テイクアンドギヴ・ニーズ(以下、T&G)は、社名の通り「NEEDSをTAKEし続け、サービスをGIVEし続ける」会社です。1998年の創業以来25年、世の中やお客様のニーズをキャッチしていち早く提供し、世の中のあったらいいなを届けていくことをめざしてきました。
 私たちは「ハウスウェディング」という独自の市場を日本に創造し、ウェディング業界のリーディングカンパニーとしての地位を確立しています。それまでの結婚式は、式場の選択肢がホテルや複数の披露宴会場を持つ結婚式場のみで、進行や装飾、引き出物に至るまでほぼ定型的でした。
 「ホームパーティーをする感覚で大切な方たちを迎え入れる、海外のようなオリジナリティあふれる結婚式ができたら、お客様に支持されるのではないか」。「結婚式をもっと楽しいすてきなものだと感じていただけるのではないか」。そう考え、ゲストハウスを全館貸切にするウェディングを提案しました。ハウスウェディングという新しい市場を業界に作りだした結果、お客様の支持をいただいて、現在、国内挙式組数No.1になっています。

──ウェディング事業からスタートしたT&Gは、今後どのような展開を見据えていますか。

酒井 ウェディングから派生して世の中のニーズは何かを考えていくうちに、私たちはオーダーメイドのハネムーンを提供する旅行会社を作ったり、それまで前払いが当たり前だった結婚式の費用を、ご祝儀も使って分割払い・後払いにできるブライダルローンサービスを作ったりと横展開をしてきました。
 2017年にスタートしたホテル事業では、ウェディングで培ってきた企画力や運営力も活かしながら、付加価値の高い「ブティックホテル」を展開しています。現在、約8割を占めるウェディング事業を軸に、今後は成長産業のホテル事業をより大きくしていきたいと考えています。
 2022年にはポストコロナ禍を見据え「EVOL2030」をビジョンとして掲げました。ホスピタリティ業界のリーディングカンパニーをめざして、主力事業のウェディング事業を進化させつつ、ホテル事業でも2030年までに20店舗強を展開する計画です。

一顧客一担当制で一気通貫のサービスを提供

──ウェディング業界を牽引してこられた「T&Gの強み」とはどこにあるのでしょうか。

酒井 ウェディング業界では、会場見学を含む新規接客、結婚式までの打ち合わせ、結婚式当日の担当を、分業制で進めているところがほとんどです。その中でT&Gは、打ち合わせから当日まで同じウェディングプランナーが担当する「一顧客一担当制」にこだわっています。1人のスタッフがプランニングから結婚式当日のプロデュースまで、お客様の一番近くで全体を見ながら結婚式を創り上げていくのが特徴です。さらに空間コーディネートをするフラワーコーディネーター、ドレスコーディネーター、サービススタッフ、キッチンスタッフも内製化しています。
 結婚式は人生の中でも指折りのハッピーなライフイベントです。しかし、高額な無形商材で、おふたりが人生で出会った大切な方々をお招きする中で、2人だけで決断できないことがたくさんあります。ハッピーなライフイベントである一方で、とても多くの不安や心配を抱えるイベントでもあるわけです。そこに寄り添うことが大切ですし、お客様の理想や希望がサービスや料理、ドレス、装飾に至るまで、一気通貫ですべてに反映されていることが重要だと私たちは考えています。一貫性と内製化にこだわっているのはそのためです。

「Creativity/Challenge/Kindness」の3つのバリュー

──多岐にわたる職種の方が活躍するT&Gで、全職種に共通する「求める人物像」とはどのような人材でしょう。

酒井 本社で働く人もいれば、現場のウェディングプランナー、サービススタッフ、キッチンスタッフ、フラワーコーディネーター、ドレスコーディネーターといったように職種は実に多岐に渡ります。職種によって求める人材要件が違う部分はありますが、1つの軸として一番大切にしているのは「Creativity/Challenge/Kindness」の3つバリューです。
 Creativityは創造力。これからホテル事業を拡大し、日本にブティックホテル市場生み出していく上で、今までの成功体験や既成概念にとらわれない創造力が大切です。一方でウェディング事業もコロナ禍を経て、結婚式を挙げる価値や結婚式の存在意義を見直しました。今後、結婚する方たちがどのようなことを望んでいるのか、T&Gで式を挙げる方たちにどのような商品サービスを提供すべきなのかを考え、これからのサービスをどんどん新しくしていくために、Creativityが重要になります。
 2つ目のChallengeは、創業以来挑戦し続けている会社なので、これまでも大切にしてきたバリューです。一歩でも半歩でもいいから常に挑戦を恐れずに踏み出し、また挑戦する仲間をきちんと讃える会社であることを、大切にしていきたいと考えています。
 3つ目のKindnessは、人に対する優しさ、寄り添うこと、親身になること。これはホスピタリティ事業をやっていく上で非常に重要なファクターです。
 この3つをベースに、センスという横軸を入れた4つに共感してくれるかどうかを大切にしています。すべて持っていればパーフェクトですが、最初から兼ね備えている方はそうそういないので、まずは共感していただけるかどうか、そして仲間の社員と一緒にそこを学び、成長していく意欲があるかどうかを最初の基準としています。

2025年4月も新卒約200人を採用

──新卒、中途の採用状況について教えてください。

酒井 現場の社員に関しては新卒の比重が高めです。ここは胸を張って言いたいところなのですが、T&Gのウェディングに対するこだわりは、業界でも随一だと自負しています。そのため、応募者の多くは「ウェディングをやるのであればT&G」と考えて当社を受けてくださり、同業他社に転職する人の割合も少ないです。また中途採用で同業他社からスキルアップのために転職してくる方も実はあまり多くなく、ほぼ他業界からの転職になります。
 現場の社員は女性が多いので、結婚や出産などによりライフステージが変わっていく中で、どうしても土日終日稼働の働き方を続けるのが難しくなってしまうことが、離職の一番大きな理由です。一顧客一担当制はやりがいがある分、責任も大きいので、やりがいと責任と働き方のバランスの中で悩んで卒業を決める方もいます。会社としてはそこをサポートできないかということで、週末も含めて勤務する日数や曜日、時間などを個別に相談して決められる「副社員制度」を作りました。この制度を利用して働いている社員は多いです。

──2024年4月入社の新卒採用は何名でしたか。

酒井 200名強が入社しました。2025年4月入社も同数を計画しています。なお中途採用は年度計画によって異なりますが、年間約120名が入社しています。

──2024年4月の新入社員研修はどのように実施されましたか。

酒井 まずは集合研修で会社に関する基本的な情報とビジネスマナー、配属先の現場ですぐにできる業務をメインにインプットをします。研修期間は職種によって異なり、ウェディングプランナーは約1ヵ月、その他の職種は2週間ほどです。5月から現場に配属されますが、その後も現場の先輩社員だけでなく、フィールドトレーナーと呼ばれる教育担当の社員が個別に育成をサポートしています。その他にも定期的に面談やオンライン・集合研修でのフォローアップを実施しています。

──2025年4月の内定者に対して、研修や懇親会などのフォローはされていますか。

酒井 夏に内定者のオンライン懇親会を開き、10月には対面で内定式を実施します。その後は、任意参加にはなりますが、12月から月1回ペースで入社前に覚えておいたほうがよい基礎知識や敬語の使い方、ビジネスマナー、電話対応などのオンライン研修を実施します。年明けには各職種の教材を配付し、4月の新入社員研修に臨んでいただきます。

ミスマッチを防ぐコンピテンシー面接を実施

──新卒採用の選考の流れを教えてください。

酒井 基本的には、エントリーシート先行後に面接を4~5回、その間にWeb適性診断テストを実施し、企業理解のために先輩との座談会を挟みます。最終面接の面接官は、職種によりますが私が実施しています。
 学生側からも若手社員や本社で活躍している先輩と話してみたいといった希望があるので、臨機応変にオンライン等で面談をセッティングしています。

──ミスマッチを防ぐために何か工夫していることはありますか。

酒井 コンピテンシー面接を実施しています。これまでにどのような成功体験を持っていて、そこに至るまでにどのようなプロセスを踏んで、どのような努力をして成果につながったのかを、かなり細かくお聞きします。前半の面接でそうした部分を見極め、後半のマネジメント職の社員との面接では、その方の価値観が会社にフィットするかどうかを面接官の視点で見極めています。

──中途採用について教えてください。

酒井 年間の人員計画の中で退職予定者数をある程度予測し、どのタイミングでその部署に人材が不足しているかを計算しながら中途採用を進めていきます。中途採用の選考プロセスは新卒よりも短く、面接は2~3回で、既存社員との座談会等も実施しないことがほとんどです。本社社員を中心に、基本的にはスペシャリスト採用になりますから、会社の理念や事業への理解と共感は人事が確認し、専門的部分は担当部門長が確認します。入社後も即戦力で活躍していただくので、会社全体の説明をしたら、すぐに配属部署に入っていただきます。

CreativityやChallenge精神を培う制度が充実

──人材育成、人事制度で特徴的なものがあればご紹介ください。

酒井 3つご紹介します。1つ目は、「俺の私のチャンス制度」で、自らの意思で社内の募集ポストに自由に応募できる社内公募制度です。募集要件に当てはまれば年齢や職種を問わず誰もが挙手できる制度で、募集は年数回。2017年にスタートして120人超がこの制度を使用して異動しました。
 2つ目は「Professional Choice制度」という、資格取得や外部研修受講、書籍購入などの自己啓発に必要な経費を年間8万円まで会社が負担し、個人の成長を支援する制度です。例えば、サービス職種であればソムリエ検定やワイン検定等の資格取得の際の教材費や試験の受験料、ウェディングプランナーであれば国家検定のブライダルコーディネート技能検定(BIA)取得のための費用などにあてることもできます。Creativityを高めたい社員は、料理やサービスなどの体験、非日常空間の訪問などに使うことも可能です。

──「Professional Choice制度」は仕事に役立つ内容であれば制限はありませんか。

酒井 申請書を提出して上長に承認を受け、人事で一定のルールをもとにフィルターをかけて内容を確認するようにしています。使用後は報告書を作成し、全社員が閲覧可能な状態にしています。

──3つ目はどのような制度ですか。

酒井 3つ目は「社外留職制度」です。これはT&Gに在籍したまま、一定期間、他の企業で働く制度で、新しい自分の可能性を広げられるチャンスです。
 現状、当社はウェディング事業が中心で、グループ内で他事業の経験を積む機会は限定的です。
 社外留職制度では、他企業に勤務することで体験できることや見える景色を通じて成長の幅を広げ、身につけた新たな視点やスキルで社内に変革をもたらす人材になることを期待しています。この制度を利用して、ウェディング業界のDXやシステムに強い会社に留職していた社員がいますが、当社に復職後は留職先で培ったスキルや知見を活かし、DX推進や新たなシステム開発のプロジェクトメンバーとして活躍しています。
 また、同じ社外留職制度を利用し、ウェディングの専門学校で講師として働く社員もいます。未来のウェディング業界を担う学生たちを2年間指導し、ウェディングの現状やお客様が求めていることなどについて教えます。教える力が身につくだけでなく、ウェディングの仕事では関わることのなかった方たちとのコミュニケーションを通じて、より高いビジネススキルを身につけ、またT&Gで活躍してもらいます。

──福利厚生面で特徴的な制度があればご紹介ください。

酒井 最近始めたのは女性従業員特有の健康課題をサポートする福利厚生施策「Femself BOX(フェムセルフボックス)」です。当社では社員の約6割が女性、現場で働いている社員に限ると約8割が女性です。そこで女性自身のキャリアとライフプランの両立をきちんと実現してほしいと考えて、低用量ピル費用の半額補助、女性特有の健康課題相談窓口やAMH検査、卵子凍結費用補助などを実施しています。加えて男女問わず健康やLGBTQに関することなどの正しい情報を広く簡単に学べる動画サービスに、誰でもアクセスできるようにしています。

資格取得の成功体験は必ず仕事に役立つ

──「Professional Choice制度」は資格取得補助制度としても機能しているのですか。

酒井 そうですね。「Professional Choice制度」は毎年利用できるので、資格取得の補助にもなっています。またソムリエやBIAなど会社が取得を推進するいくつかの資格については、資格更新費用のすべてを会社が負担しています。
 本社では、中途採用で社会保険労務士資格保有者や財務経理部門で税理士・公認会計士なども採用しています。例えば、大学で財務会計を学び、新卒で入社して現場を理解した上で税理士・公認会計士をめざすというのは、とてもよいことだと思います。今後はそうした生え抜きの資格取得者を輩出することも、積極的にやっていきたいですね。

──新卒採用で日商簿記検定試験3級やTOEIC® L&R TESTなど、在学中に取得した資格がある場合、どのように判断されますか。

酒井 資格を持っていること自体は合否の判断材料にしませんが、なぜその資格を取得しようと思ったのか、取得のプロセスでどのような努力をしたのか、そうしたところはきちんとお聞きします。その成功体験が仕事に役立つはずです。

──最後に資格取得やキャリアアップをめざす方に向けてメッセージをお願いします。

酒井 将来やりたいことや興味のあることに時間とお金を投資して資格を取得し、自分の市場価値を高めようとしているということが、私はすばらしいと思います。そのプロセスを経て資格を取得した方は、目標に向かって努力ができること、ストレス耐性があることなど、企業から一定の評価を得られると考えます。ぜひ自分の夢をかなえるためにがんばっていただきたいです。

[『TACNEWS』人事担当者に聞く「今、欲しい人財」|2024年9月 ]

会社概要

社名     株式会社テイクアンドギヴ・ニーズ
設立     1998年10月19日
代表者    代表取締役社長 岩瀬賢治
本社所在地  東京都品川区東品川二丁目3番12号 シーフォートスクエアセンタービル17階

事業内容

国内ウェディング事業、ホテル事業、レストラン事業、コンサルティング事業、ドレス事業、ブライダルクレジット事業、ハネムーン事業

従業員数

1,358名(単体)・1,661名(連結) ※2024年3月31日時点

URL

https://www.tgn.co.jp/

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