人事担当者に聞く「今、欲しい人財」 第67回 コロンビア・ワークス株式会社

Profile

吉田 智大(よしだ ともひろ)氏(写真左)

人事総務部 部長
宅地建物取引士
賃貸不動産経営管理士



小柳 勇貴(こやなぎ ゆうき)氏(写真右)

人事総務部
宅地建物取引士


2013年創業のコロンビア・ワークスは47名と小規模ながら、住宅、オフィス、ホテル、商業施設、物流と、用途を限定せずに様々なアセットタイプを開発している。企業理念を「ユニキュべーション(unique+incubation)によって『想像』と『体験』のサイクルを生み出し、人が輝く舞台を世界につくる。」に据える同社では、どのような人材観を持って採用や教育研修を行っているのだろうか。人事総務部の部長吉田智大氏と小柳勇貴氏に、人材採用から人事教育制度、福利厚生、求める有資格者についてお話をうかがった。

個々に最適なものづくりを追求する「事業構築型不動産開発」

──コロンビア・ワークスについて教えてください。

吉田 コロンビア・ワークスは、総勢47名の少数精鋭不動産デベロッパーです。創業者の中内準(代表取締役)と水山直也(取締役)が大手不動産デベロッパーで大規模な不動産開発をする中で、数字や事業収支を偏重する開発が多いことに疑問を感じて、2013年に設立しました。「”一物一価”である土地の開発には、その土地に一番ふさわしい建物や、使う人のことをもっと考えたサービスを重視すべきだ」と考え、ただ建物を作るのではなく、「こんなものがあったらいいな」という想像を形にして、体験を通して人々が幸せを感じられる舞台(建物)を創る。そこをめざして、企業理念を「ユニキュべーション(unique+incubation)によって『想像』と『体験』のサイクルを生み出し、人が輝く舞台を世界につくる。」に据えています。
 当社の規模ではマンション専門デベロッパーなどが多いのですが、住宅、オフィス、ホテル、商業施設、物流と用途を限定せずに、様々なアセットタイプの「事業構築型不動産開発」を行っている点がコロンビア・ワークスの特徴です。特化して同じような建物を横展開したほうがはるかに効率はいいのですが、ただ建物だけを売るのではなく「ハード」×「サービス」で社会ニーズに応える不動産開発にこだわっています。個々にふさわしい最適なものを考え出し、創ることこそ、コロンビア・ワークスらしさだと自負しています。
 2024年3月27日には、仕入・開発の規模拡大とそのスピードを上げるために、直接市場での資金調達を求めて東京証券取引所スタンダード市場に上場しました。

──コロンビア・ワークスの不動産開発で特徴的なものを紹介してください。

吉田  「ホテル」×「アート」として開発した「宿泊型ミュージアム」BnA Alter Museumや「マンション」×「美」をコンセプトにした「住むだけで美しくなる」Blancé Beauté KOMAZAWADAIGAKU。高級住宅街にあえて高級健康診断(人間ドッグ)センターを誘致したセントラルクリニック世田谷(上野毛)、学生マンション需要に合わせて開発したカレッジコート南大沢といった、様々なサービスを提案しています。特にマンションでは「サービス」の部分に着目し、「朝食」「電気自動車Teslaシェアリング」「ピラティス」などのサービスを提供している実績があります。
 また、大手企業では「住宅事業部」「仕入担当」のように分業制が進む中で、当社は年次に関係なく、開発用地を仕入れた者がプロジェクトリーダーを務めます。そこから社内外の人間を巻き込んでチームを組成し、企画設計、開発マネジメント、リーシング、売却までを一貫して行うことで、やりがいを持って業務に取り組んでいます。つまり、当社の開発は、すべて担当者がゼロから用途に合わせ、自由に企画したものです。この点が当社の最大の特徴であり、強みと言えるでしょう。


吉田 智大氏

新卒で金融・不動産業界に入り、管理部門を幅広く担当。約20年間勤務したあと、2020年12月、コロンビア・ワークスに転職。グループ会社の部門長を務め、東京証券取引所スタンダード市場上場対応のため経営企画部立ち上げに従事、経営企画部長に就任。のちに人事総務部長を兼務し、2024年3月の上場後は人事総務部長を専任。

人材マネジメントポリシーは「上昇志向」「好奇心」「一体感」

──コロンビア・ワークスの人材採用方針についてお聞かせください。

小柳 当社は意思決定のスピード感や社内の風通しの良さを大切にしているので、できるだけコンパクトな組織運営をめざしています。その理由は2つあります。まず、当社は分譲マンション販売などを扱っていないので、大手デベロッパーのマンション販売部隊のような大規模な人員は必要ありません。もうひとつは、一体感を持って組織としてやっていきたいので、仲間がどのような仕事をしているのか、ある程度顔の見える人数で仕事をしていきたいと考えています。そのため私が入社した当時は19名、現在でも47名と非常にコンパクトな少数精鋭の組織になっています。

──少人数で仕事を進めるためにどのような工夫をしていますか。

小柳 必要なリソースはその都度、最適な外部パートナーと提携しています。そのために重視しているのがチームマネジメント能力です。加えて、ものづくりの会社なので、ものづくりを楽しめること、新しいサービスや世の中のニーズに敏感であることを大切にしています。
 こうした社風から人材採用においても、「上昇志向」「好奇心」「一体感」を人材マネジメントポリシーに掲げています。新卒採用ではこれに加えて、将来の幹部候補生として事業構築型不動産開発の経験を積みながら、将来的に会社経営そのものに携わってくれることを期待しています。

──新卒の場合、どのような点に魅力を感じてコロンビア・ワークスを選ぶ方が多いですか。

小柳 年々、応募者の傾向は変わりますが、直近では、ものづくりの会社を前面に打ち出した採用活動を展開しているので、何か形に残るものづくりをしたいという応募者が多い傾向はあります。その根底には、手に職をつけたい、カッコいい社会人になりたい、バリバリ仕事ができる人間になりたいといった上昇志向があるようです。

──2024年4月入社の新卒は何名ですか。

小柳 2024年の新卒採用者はゼロでした。新卒採用は毎年4名前後をめざしていますが、少数精鋭のコンパクトな組織をめざしているので、特に数字のノルマは設定せず、数合わせでの採用は行っていません。学生側の意向も含め、お互い相思相愛でぴったり合う方に来ていただきたいので、そうした出会いがなければゼロもやむなしと考えています。
 2025年採用は、2024年6月時点でほぼ選考が終わり、内定者5名になりました。


小柳 勇貴氏
2019年、新卒一期生としてコロンビア・ワークス入社。約1年半、営業職として不動産開発事業全般に携わったのち、人事総務部に異動。新卒・中途採用、社内研修、労務管理など網羅的に人事総務業務を担当。

2025年採用のグループワークは「カレー選考」

──コロンビア・ワークスの新卒採用選考フローをお教えください。

小柳 会社説明会を含めた個人面談を経て、採用担当面接、グループワーク、人事総務部長面接、営業担当役員面接、社長面接と5回の選考で内定に至ります。

吉田 選考ステップ数を多くしている意図は2つあります。ひとつは、いろいろな社員に会って欲しいため。もうひとつは、ゆっくり時間をかけてお互いに見極めたいためです。絞り込んで4~5名であれば、どのような価値観を持っている方なのか、長めの選考できちんと理解できると考えています。
 学生側からもほぼ全員からいろいろな社員と会いたいという希望があるので、そこはできるだけ叶えるようにしています。
 不動産業界は、ともすればノルマが厳しく、大量採用・大量離職のブラックなイメージがついて回ります。当社の場合、採用人数も少ないながら離職率が非常に低いのが特徴です。2022年度は約3%で、入社した人はほぼやめていません。そこは選考である程度マッチングできているからと考えています。

──グループワークではどのような選考をしていますか。

小柳 2025年入社対象者には「カレー選考」を実施しました。会社の近くのキッチンスタジオを借りて、3~4名1グループで決められた時間内にテーマに沿ったカレーを作ってもらいます。

吉田 ものづくりの会社なので、ものづくりを楽しんで取り組めるか、チームマネジメントができるか、テーマに対してユニークかつニーズに応えた商品を提案できるか、ものづくりに必要なタイムマネジメント、コストマネジメントができるかといった点を見極めるのが狙いです。割りばしで建物の模型を作るといったようなことは他社でも実施しているので、考えたのが「カレー選考」でした。一気通貫でものづくりをすること、当事者とチームで仕事をすることで、チームマネジメントを体験していただきます。

小柳 お題は「料理を含むコンテンツがあります」とだけ案内しておいて、何を作るのかは当日まで知らせません。テーマは毎回、若手社員1名をアサインして考えてもらうので、例えば、「野菜の存在感が感じられるカレー」や「海外の方に日本の文化を紹介できるカレー」などと、毎回テーマが変わります。上場したタイミングでのテーマは「お祝いの日に食べたいカレー」でした。

吉田 まずは、グループごとに1万円の予算で食材の買い出しから始め、90分後に食べられるようにしてもらいます。インターネット検索は自由で、買い出しや調理にかかる時間とお金をすべてグループメンバーでコントロールしてくださいという内容です。

──ユニークな選考ですね。2026年度以降の選考でもこうした企画を考えていますか。

小柳 カレー選考のような企画もブラッシュアップしながら継続したいと考えていますし、それ以外の企画も模索中です。例えば、当社の入口はバーカウンターのようなつくりになっていて、そこで毎週1回、人事総務部長の吉田がバーテンダーに扮して、社員にお酒を提供する通称「Bar吉田」を開いています。それを採用にも活用したいと考えています。

吉田 もともとバーカウンターを模した意匠の受付なので、「使わないのはもったいない」と思っていました。私が人事総務部長になったころ、社員交流の場にしようと提案したら、会社側からも「ぜひどうぞ」と言われ、その場でワーッと企画を考えて、翌日から「Bar吉田」をオープンしました。そんな会社全体のノリやフットワークが軽いところは、とてもすてきだなと思っています。

──中途採用の選考フローについて教えてください。

小柳 中途採用に関しては、欠員補充と業務拡大に伴う増員の目的で、時期と部門を絞って実施しています。即戦力採用なので、採用担当及び当該部門長の面接、人事総務部長及び経営陣の面接の2段階にして、早急な見極めを心がけています。

4部門をローテーションするOJT

──内定者フォローや新入社員研修はどのように行っていますか。

小柳 新入社員には、入社前の10月から3月までの半年間、月1回の内定者研修を実施しています。メインは社会人になるための準備期間として、時間を守る、人の発言を傾聴するなどのスキルトレーニングからビジネスマナー、不動産の基礎知識など全6回で、私が講師を務めています。
 入社後は、4月から2ヵ月間、新入社員研修を行います。前半の2週間は座学、その後はOJTとして営業3部門と開発チーム1部門の4部門をローテーションで回ります。その際は、「事業収支はこの人、営業はこの人」といった感じで、それぞれ先輩社員が担当を受け持ち、全社で教育しています。

吉田 全社巻き込み型の研修で、配属先になる先輩社員も他人ごとにしないように意識しています。
 当社では営業スタイルを決めていないので、それぞれの社員のスタイルで自由に営業し、営業資料もすべて手作りします。とことん飲んで仲よくなって情報をもらってくる社員もいれば、自分が今狙っている物件の近くに住んで地元の人たちと仲良くなる社員もいたりと、いろいろな社員がそれぞれ違う営業スタイルで自由にやっています。

──物件の近くに住んでしまうとはすごいですね。新入社員研修のあとの教育研修について教えてください。

小柳 階層別研修に移行し、主任研修、マネジメント研修を用意しています。まだ組織が小さいため「何年目だからこの研修」といった定型的研修は決めていませんので、理念浸透の全社フォーラムや若手のコーチング、階層別プレイングマネージャー研修などをスポット的に実施しています。
 今後の研修の体系化をめざしながら現在実施しているのが、入社4年目までの若手社員を対象にした「1年後に中内になる」という研修です。これは代表の中内が一担当者であった時期にはどういうマインドで、どういう行動をとってきたのかを徹底解剖し、そのエッセンスを若手社員に還元するものです。

開発部門、管理部門で有資格者を積極採用

──新卒では、入社前に取得を推奨している資格はありますか。

小柳 不動産業界なら宅建士(宅地建物取引士)は運転免許と同様に持っていて当たり前の資格だと言われているので、時間のある学生時代に宅建士を取得するよう強く推奨しています。基本的にテキストを購入し自主学習をしてもらいますが、月1回のペースで私が作った模試を受けてもらうなど会社からもサポートしつつ、合格をめざしてもらいます。一定数は入社前に合格しますが、入社前に取得できなかった人も1年目の合格をめざしてもらいます。

吉田 営業部門では宅建士は必須で、不動産コンサルティングマスター、不動産証券化協会認定マスター、賃貸不動産経営管理士など業務に直結する資格についても推奨しています。経理部門では、宅建士は求めず日商簿記検定2級を取得してもらいます。これらの取得については、取得費用を全額会社が負担する資格取得推奨制度があります。
 上場後は、かなり事業規模が拡大しているため、開発部門を中心にどの部門も人手不足気味です。入社1年目、2年目でも土地を仕入れたらプロジェクトリーダーになるのが当社のスタイルなので、彼らの専門性が不足している部分を補うために設けているのが開発チームです。そこはゼネコン出身、設計事務所出身の専門知識を持った中途採用の有識者で構成されていますが、現在30件ほどの案件が同時並行で動いているので人手がかなり不足しています。管理部門でも決算開示業務等に公認会計士、税理士などの資格保有者を求めています。そのため現在は、この2部門で積極的に中途採用を進めています。

──新卒採用で履歴書に宅建士などの資格の記載があった場合、どのように評価していますか。

小柳 宅建士資格を持っていれば当然ポジティブな印象になるので、書類選考は通りやすくなります。ただし、面談でお会いしたときに、取得の動機が当社に向いているかどうかは見極めます。

──福利厚生や社内制度でコロンビア・ワークスらしいものがあればご紹介ください。

吉田 特別なものはありませんが、人材マネジメントポリシーに「一体感」とあるように組織としてのイベントは大切にしています。中でも年2回の社員旅行は、社員同士が仲良くなるためだけではなく、国内外の新しいサービスに触れてみたり、実際に新しい建物を使ってみたりすることも目的の1つです。これも有志を募って旅行実行委員会を立ち上げ、社員が運営しています。新入社員研修と同じように、巻き込み型にすることで他人ごとにしないように意識しています。

──最後に資格取得やキャリアアップをめざしている読者にメッセージをお願いします。

吉田 資格は取得して終わりではありません。資格取得の勉強の過程で知識の抜け漏れを補い、かつ資格試験で得られない実務経験を仕事で得ていただく。その両輪を活かせれば、その先の仕事でもいい出会いが待っているでしょう。がんばってください。

小柳 当社にはスーパークリエーターがいるわけではありません。だからこそ好奇心を大切に、おもしろいものを作るんだという意識を持っている集団です。ただ、世の中で今何がおもしろいと言われているのかわからなければ、おもしろいものは作れません。そこで新卒の内定者には、残りの学生時代にいろいろなところに出かけて建物を見たり、経験したりしてほしいと考えています。社会人になってからも、何となく道を歩くのではなく、「カッコいい建物だな」「どこのデベロッパーが作っているのかな」と、いろいろなところにアンテナを張ってほしい。そうしたことの積み重ねが、商品企画につながります。
 資格取得をめざしている方は、どのような資格でもやると決めたら最後までやり切ってください。ただ、大切なことは資格を取得することを目的にしないことです。この資格が自分のキャリアになぜ必要なのかを考えた上で、めざす資格に向かっていただきたいと思います。

[『TACNEWS』人事担当者に聞く「今、欲しい人財」|2024年8月 ]


▲作品名:BnA Studio Akihabara

会社概要

社名     コロンビア・ワークス株式会社
設立     2013年5月14日
代表者    代表取締役 中内 準
本社所在地  〒150-0002 渋谷区渋谷3-28-15渋谷S.野口ビル3F
       ※2024年9月中旬に「渋谷区渋谷2-17-1渋谷アクシュ9F」に移転予定

事業内容

不動産開発事業、不動産コンサルティング事業、不動産再生事業、ホテル事業

従業員数

47名(2023年12月現在)

URL

https://columbiaworks.jp/

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