人事担当者に聞く「今、欲しい人財」 第65回 株式会社エアトリ

Profile

土屋 孝幸(つちや たかゆき)氏

企業戦略本部 企業戦略部 部長
兼 エアトリCVC事業部 担当部長

長谷川 大耀(はせがわ ひろあき)氏

企業戦略本部 投資財務グループ 部長
※リモートで参加


エアトリは総合旅行プラットフォーム「エアトリ」を運営するエアトリ旅行事業をコアに11事業を展開し、旅行事業だけではない「何でも挑戦、わくわくエアトリ。」をめざして新たな成長領域拡大にチャレンジしている。「終わりなき成長」をキーワードに据えるエアトリでは、若手のうちから裁量を持って仕事を任され、活躍している若手社員が大勢いる。企業戦略本部 企業戦略部 部長 土屋孝幸氏と企業戦略本部 投資財務グループ 部長 長谷川大耀氏に、エアトリの人材観と採用方針、人事制度や福利厚生などについてうかがった。

「IT の力でエアトリ経済圏構築」をめざす

──最初にエアトリについてご紹介いただけますか。

土屋 エアトリは、オンライン総合旅行プラットフォーム「エアトリ」を運営するエアトリ旅行事業をコアに、11事業を展開しています。2007年に創業し、2016年には東京証券取引所マザーズ、2017年には同取引所第一部(現:東証プライム市場)に上場を果たしました。
 エアトリグループは、エアトリ旅行事業を中心に、「ITオフショア開発事業」「訪日旅行事業・Wi-Fiレンタル事業」「メディア事業」「投資事業(エアトリCVC)」「地方創生事業」「クラウド事業」「人材ソリューション事業」「クリエイティブソリューション&DX事業」「マッチングプラットフォーム事業」「ヘルスケア事業・福利厚生事業(投資先にて注力)」の11事業を展開しています。グループ会社のうち、ITオフショア開発事業のハイブリッドテクノロジーズ、メディア事業のまぐまぐ、訪日旅行事業・Wi-Fiレンタル事業のインバウンドプラットフォームの3社が上場を果たし、他の事業を展開する中核子会社も上場に向けて準備を進めるなど、グループ全体のアセット活用により、多角的に事業を展開しております。上場企業の中でも4社がグループ上場していることは、特筆すべき点だと捉えています。

長谷川 エアトリグループは、「IT の力でエアトリ経済圏を構築し未来をつくる」ことを標榜しています。そこでエアトリグループの企業価値を大きくしていくことに注力し、旅行事業だけではない、「何でも挑戦、わくわくエアトリ。」をめざして、中期成長戦略「エアトリ5000」を掲げております。これはエアトリ旅行事業では既存商材の強みを活かしつつ、新規商材を積極的に強化して拡大を図るとともに、毎期1事業以上の立ち上げによってエアトリ旅行事業以外の事業も積極的に展開し、「エアトリ経済圏」の構築によって、コロナ禍前で1,500億円であったグループ連結取扱高を将来的に5,000億円まで引き上げていこうという戦略です。このようにエアトリでは、新たな成長領域の発掘・拡大とさらなる経営基盤の強化に取り組んでいます。

学生生活を思いっきり楽しんでほしい

──エアトリの「求める人物像」とは、どのような人材ですか。

土屋 エアトリでは、例えば「TOEIC○○点以上」といった明確な必須条件は設けていません。大切にしているのは、一人ひとりの特性や個性を活かす組織運営です。ただし、企業理念やミッション・ビジョン、行動規範への共感は徹底しています。

──新卒採用、キャリア採用、どちらも各人の個性と適性を見ながら採用活動をされているのですね。

土屋 もちろんキャリア採用については即戦力前提ではありますが、新卒採用では特に条件を設けずに採用しています。エアトリでは採用方針として「入社前の時間を大切に、学生生活を思いっきり楽しんでほしい」を徹底していて、内定後の入社前研修やeラーニング、読書感想文などの課題などは一切出していません。自由な時間がある学生時代だからこそ、たくさん旅行を楽しむ、長編小説を読む、長編ドラマを観る、何でもいいのです。学生の間にしかできないことを思う存分やっていただきたいのです。入社後はしっかりと成長できる環境を用意してお待ちしています。
 ですから内定者フォローとしては、同期間の交流を深めることを目的に懇親会を定期的に開催しており、直近では、投資事業(エアトリCVC)で毎年開催している「エアトリCVCアワード」に内定者を招待しました。ただし、あくまで任意参加で強制ではありません。

──入社前から準備をしたい学生から、お問い合わせはありませんか。

土屋 まれにそうした質問を受けることがあります。経営幹部陣をはじめ私たち採用メンバー全員が徹底して、「学生のうちはしっかりと遊んでください。その質問を社長にしても、同じ答えが返ってきますよ」とお伝えしています。
 ただ、どうしても入社前に入社準備をしたいというやる気にあふれた方もいるので、資格であれば簿記やビジネスマナーといった内容を個人的に勉強することは推奨しています。

──応募者は旅行好きな方が多いのですか。

土屋 エアトリは創業以来ずっとオンライントラベルエージェント(OTA)として「IT×旅行」の事業活動をしてきています。内定者はITに興味のある方と旅行好きな方が半々です。男女比もほぼ同数です。

──新卒採用、キャリア採用の比率と人数を教えていただけますか。

土屋 エアトリでは生え抜きを育ててしっかりと長く勤めてもらいたいと考えているので、新卒採用に注力しています。ただ即戦力としてのキャリア採用も必須なので、新卒、キャリアともに例年10~20名の採用を計画しています。新卒採用はコロナ禍でも今まで築いてきた新卒採用文化を継承すべく続けてきております。2024年4月入社は15名、2025年4月入社も同水準の15~20名を計画しています。
 エアトリの強みの1つに、若手のうちから裁量を持って仕事ができることがあります。創業から続くこの文化がしっかりと根付いていて、そこに魅力を感じて応募してくる方が多くいます。おかげで毎年新卒採用が続き、2025年4月入社で12期目を迎えます。

新入社員研修ですべての部署を回る

──2024年4月の入社式と新入社員研修はどのように実施されましたか。

土屋 入社式は、本社にあるリフレッシュエリアで実施しました。入社式がある4月1日に配属が決まる会社もあると思います。エアトリは新入社員と事業部とのマッチングを大切に考え、4~5月の2ヵ月間は配属の可能性がある部署を回ってもらう仮配属期間としています。別途、外部でのビジネスマナー研修などの機会は提供しておりますが、4~5月いっぱいは各部署を回ってもらった上で、配属希望のアンケートを取って、6月1日から本配属になります。

──その2ヵ月間で、入社時と希望配属先が変わってくる方もいますか。

土屋 そうですね。この2ヵ月間は自分自身の適性、部署との相性、希望職種を見極める上で非常に重要な期間になります。そこで多くのことを学ぶので、手書きやパソコンでメモを取る新入社員がとても多く、日報を見ても充実しているのがひしひしと伝わってきます。私はもともと営業職希望で入社しましたが、いろいろな部署を見ていくうちに、現在の経営層に近く広く様々なことを学ぶことができる点に興味が湧いて企業戦略本部を希望しました。

──新入社員研修のあとは、どのような研修を用意していますか。

土屋 本配属後は基本的に部門別の業務研修が中心になります。全社での研修としてはマネージャー職などレイヤー別研修を用意しています。また1週間に1テーマずつ定期的に学ぶeラーニングで知識をブラッシュアップしています。この研修は役職に応じて学ぶメニューが違ってきますが、常に会社として学んでほしいことを情報発信しています。

──新卒の採用プロセスをお聞かせください。

土屋 説明会に参加してエントリーしていただいたあと、若手社員によるカジュアル面接、適性検査、テストなどを経て、取締役、役員による2次面接、社長による3次面接で内定に至ります。

──選考プロセスでミスマッチを防ぐために何か工夫していることはありますか。

土屋 私が入社したタイミングでは、1次面接が取締役と役員、2次面接が社長という流れでしたが、ミスマッチを防ぐために、そして忌憚のない意見交換をするために、1次面接は若手メンバーが担当することになりました。そこで入社後の不安や今後の働き方も含めて何でも聞いていただいて、1次面接ですべての不安を解消してほしいと考えています。

──キャリア採用はどのような方針で進めていますか。

土屋 キャリア採用に関しては通年採用窓口を設けるのではなく、部署ごとに不足している人材を必要に応じて採用しています。IT部門や、管理部門、プロジェクトマネージャーを始め、様々な領域でキャリア人材を採用しています。

長谷川 大耀 氏(写真右)※リモート参加
2018年4月、新卒で株式会社エアトリに入社。企業戦略本部に所属し、投資事業(エアトリCVC)やIR、広報などに加えM&Aも担当。2023年4月よりグループ会社でITオフショア開発を展開するハイブリッドテクノロジーズに出向し、現在はベトナム・ホーチミンに駐在。


土屋 孝幸 氏(写真左)
2019年4月、新卒で株式会社エアトリに入社。投資事業(エアトリCVC)やIR、広報などを担当。入社2年目から新卒採用担当を兼任し、会社説明会から採用面接までを担う。2023年10月から、総合旅行プラットフォーム「エアトリ」の夜行・高速バスの事業責任者を兼任。

「エアトリグループの約束」

──エアトリならではの理念共有が鍵となっているように感じます。

土屋 そうですね。エアトリでは、東証プライム上場企業として和製OTA No.1や「エアトリ」が国民的なサービスとなることをめざすだけでなく、新卒、キャリア採用ともに、全社員に気持ちよく働いてもらえる環境作りを徹底しています。そこで、エアトリグループが遵守する基本方針「エアトリグループの約束(※)」を公表し、働き方改革推進とコンプライアンス強化に努めております。

──「エアトリグループの約束」を教えてください。

土屋 1点目が「『エアトリ』ブランド作り」で、和製OTA No.1をめざし、今後国民的サービスになることを目標に事業活動していることを挙げています。
 2点目が「コンプライアンス遵守とハラスメント撲滅」で、東証プライム上場企業グループとしてコンプライアンス遵守とハラスメント撲滅を日々徹底しております。内部通報制度を徹底して、日々の社内啓蒙活動によってハラスメント撲滅に対する意識を高め、クリーンな組織運営をめざしています。その一例として、会社公認の集まりがすべて任意参加であること、会社公認の集まりに参加した場合は業務時間として扱うことを徹底している点です。9時~18時の勤務時間以外の時間帯は、時間管理社員への業務連絡も一切禁止となっています。
 3点目は「ITの力で『エアトリ』経済圏を構築」です。現在11事業を展開し、グループ会社4社が上場している中で、毎年1事業立ち上げることを目標に、M&A・提携を積極的に行い、仲間集めやエアトリ経済圏の強化を図っています。
 4点目の「役職員の育成強化」では、四半期に一度、人事考課面談をしっかりと行い、成果による評価で昇級・昇格をスピード感を持って実施しています。また役職員は自薦によって異動や兼務をすることが可能です。例えば、長谷川は企業戦略本部に所属しながら、希望して現在グループ会社に出向しベトナムに駐在しています。同様に私も企業戦略本部に在籍しながら採用活動を行ったり、「エアトリ」の夜行・高速バス事業の責任者を務めたりしています。これは若いうちから裁量を持って働ける当社の大きい特徴ともいえます。

──若い社員が裁量を持って働ける環境が整っていますね。

土屋 5点目の「福利厚生の充実」では、住宅手当、家族手当、長期勤続手当、非喫煙者手当など、各種手当の充実をうたっています。ひとり暮らしには全員住宅手当が支給されますし、家族がいればもちろん家族手当が出ます。長期勤続手当も入社4年目から一律月給に上乗せされます。その他、お弁当代の最大半額補助や、有給休暇などの休暇取得時には、航空券の付与制度もあります。2024年度のトピックとして、会社で読売ジャイアンツのシーズンシートを買い、従業員の福利厚生として活用しています。このように働きやすさのための制度が充実しているのも、エアトリの魅力だと思っています。
 6点目の「ワークライフバランス促進」では、会社として成長をめざす一方で、プライベートも充実できるようにワークライフバランスを考えたルールを掲げています。代表的なルールが、行動規範にも掲げている「来客30分会議20分」です。相手がどのような地位や大企業であっても、来客は30分、会議は20分で終わらせることを徹底しています。会議は先に結論を出してからスタートし、事前に議事録に沿ってミーティングを進め、社内でダラダラする会議がないように徹底しています。出勤後8時間しかない業務時間の中でいかに効率的に時間を使うかを考えたルールです。創業以来のユニークなルールの1つとして、ホワイトな運営をめざして社内外問わず発信し、社内での啓蒙活動もしっかりと行っています。

──土屋さんや長谷川さんのように異動や兼務を自ら希望し、活躍することが会社の文化として根付いているのですね。

土屋 働き方の多様性として、兼務が非常に多いことは特徴の1つです。挙手しなければ兼務することは基本ありませんので、本当にやりたい人が自ら新しいことに手を挙げてチャレンジしています。兼務については定期的に希望を取っていますし、異動は四半期に一度の人事考課面談で何に挑戦したいかなどをヒアリングしています。そこで挙がった意見を吸い上げ、異動や兼務を受け入れるしくみです。

資格取得を正当に評価し、認めてくれる文化

──業務上で必須となる資格はありますか。

土屋 この資格がなければできないという仕事はありませんし、採用時にもこの資格があれば内定に直結するという資格はありません。ただ、旅行業務取扱管理者や、ハイスコアのTOEIC® L&R TEST、MOS(マイクロソフト オフィス スペシャリスト)などを持っていれば、評価の対象になります。

長谷川 また、当社では、資格取得や社員の自発的な能力向上をサポートする制度を設けており、書籍購入補助等を定めております。資格取得の奨励は、各社員の目標設定や業務での必要性に応じて、部署ごとに判断してサポートしています。

──社内に弁護士や公認会計士といった国家資格保持者はいらっしゃいますか。

長谷川 まず代表の柴田裕亮が公認会計士であり、代表取締役社長兼CFOに就任している点が特徴です。また、管理本部・企業戦略本部には管掌役員も含め複数名、グループにも10名ほどの公認会計士が在籍しております。実は私も入社後に米国公認会計士(U.S.CPA)を取得しました。取得した理由は、企業戦略本部の配属となってから公認会計士でもある上司と仕事をする機会が多くなる中で、上司の方々が資格によるスキルと知識を活かして自分自身の活躍の幅を広げていく姿に憧れたからです。
 エアトリには、仕事上の成果はもちろんのこと、資格取得を含めた社員の自己研鑽の努力も正当に評価し、認めてくれる文化があります。私も入社直後から海外に行きたいという希望を会社に伝えておりましたが、それが実際に実現した背景には、これまでの仕事における評価に加えて、自ら業務に関連する資格や知識を習得する姿勢も評価していただいたと実感しております。また、資格を取得したあとは、結果を評価してもらえるだけでなく、実際に任せてもらえる仕事の幅がとても広がったと感じております。このように、エアトリは、各社員の目標やキャリアステージに合わせて、新たな機会の提供を積極的に実施している点も特徴的です。私自身、いろいろな面で、資格を取得して本当によかったと思っています。

──土屋さんも長谷川さんも役職者として活躍されていますね。おふたりの姿からも若手でもやる気があればどんどんキャリアアップしていける環境が整っているのが伝わってきます。

土屋 そこはエアトリの文化の1つだと思います。若いうちから役職を持つメンバーが非常に多く、年齢問わずしっかりと評価してもらえる風土は、エアトリの大きな魅力の1つです。
 私のいる企業戦略本部には希望して入ってきた新卒メンバーがいます。社会人の第一歩を踏み出し、何も知らない状態から仮配属期間に業務を通じていろいろ学び、自分でも調べながら積極的に業務に臨もうとする姿が、ものすごく印象的です。エアトリには、若手に限らずリスキリングして、業務に必要なスキルを身につけ、幅を広げようとする意識の強いメンバーが多いです。

──最後に資格取得やキャリアアップをめざしている読者に向けてメッセージをお願いします。

長谷川 資格取得によって思い描くキャリアがあり、目標の実現に向けて努力を継続されるのはすばらしいことです。自身の目標を決め、現状と目標とのギャップを埋めるために日々自己研鑽している方を、エアトリは応援しています。皆さんが無事合格し、資格取得を通じて得た知識やスキルを活かして、今後さらに活躍されることを心から願っています。

土屋 エアトリには、入社前から専門的な資格を保有している方や、入社後に資格取得に向けて自己研鑽しつつ、仕事でも活躍されている方々が大勢います。エアトリとしても個人的にも皆さんの資格取得を応援しています。


※エアトリグループの約束:https://www.airtrip.co.jp/promise/

[『TACNEWS』人事担当者に聞く「今、欲しい人財」|2024年6月 ]

▲本社のエントランス

会社概要

社名     株式会社エアトリ
設立     2007年5月11日
創業者    取締役会長・グループ創業者 大石崇徳
       グループ創業者 吉村英毅
代表者    代表取締役社長 兼 CFO 柴田裕亮(公認会計士)
本社所在地  〒105-6219 東京都港区愛宕2-5-1 愛宕グリーンヒルズ MORIタワー19F

事業内容

エアトリ旅行事業、ITオフショア開発事業、訪日旅行事業・Wi-Fiレンタル事業、メディア事業、投資事業(エアトリCVC)、地方創生事業、クラウド事業、人材ソリューション事業、クリエイティブソリューション&DX事業、マッチングプラットフォーム事業、ヘルスケア事業・福利厚生事業*投資先にて注力

従業員数

グループ:925名(株式会社エアトリ:145名) (2024年4月現在)

URL

https://www.airtrip.co.jp/