人事担当者に聞く「今、欲しい人財」 第54回 株式会社イントラスト

Profile

飯野 允皓氏

総務部 マネージャー

2013年、新卒で飲食業界に就職。その後、新卒採用を中心とした人材サービス会社に転職し、人事、営業を経験。2021年にイントラスト入社。総務部にて新卒採用、中途採用活動に注力している。


株式会社イントラストは、2006年に賃貸不動産業界における連帯保証人代行システムの構築をめざして誕生した。手がける保証サービスは、家賃債務保証から医療、介護、養育費の3分野にもノウハウを展開し、総合保証サービスに成長してきた。現在では東証プライム市場上場企業となり、業界のリーディングカンパニーとしてのポジションを揺るぎないものにしている。
業界を牽引するイントラストの人材観や人材戦略などについて、総務部マネージャーの飯野允皓氏にうかがった。

東証プライム市場上場の「総合保証サービス会社」

──株式会社イントラストはどのような事業を展開する会社ですか。

飯野 イントラストは、賃貸不動産業界で連帯保証人システム構築をめざして2006年に誕生しました。連帯保証人システムのノウハウとスキームを「家賃債務保証」から人々の生活に寄り添って広げ、「医療」「介護」「養育費」に応用して、今では「総合保証サービス会社」に成長しています。
 「保証」とは、間違いがない、大丈夫であると認めて責任をもつこと。そして債務者が債務を履行しない場合に、代わって債権者に債務を履行する義務を負うことです。2者間の金銭的な約束事が万一守られなかった場合、代わりに約束を守ることで双方に安心を提供するのがイントラストの役割です。
 家賃保証をする保証会社は国土交通省の管轄で約100社あると思われますが、イントラストは、総合保証サービス会社として東証プライム市場に上場する業界のリーディングカンパニーです。社訓は「明るく、楽しく、真剣に!」。働く楽しさ・おもしろさがあり、風通しがよく、自由度の高いサービスを創造し、新しい市場を開拓して成長を続ける企業です。

──今、新しく計画していることがあれば教えてください。

飯野 イントラストは家賃債務保証、医療費用保証、介護費用保証、養育費保証の4部門でサービスを提供していますが、今後数年で医療費用保証を家賃債務保証に続く第2の柱として、シェアを20%まで伸ばしていくことを目標にしています。また今ある4つの事業だけでなく、将来的に5つ目、6つ目の新しい保証サービスを開発していく可能性もあります。

面接は1人1時間。人物重視の採用方針

──採用にあたっては、どのような人材を求めていますか。

飯野 大前提にあるのは、社訓の「明るく、楽しく、真剣に!」に共感できる方です。社訓の細かい定義までお伝えすると、「明るく上を向いて歩かなければ未来は見えない。」「楽しくなければ継続できない。」「真剣でなければ成果は得られない。」です。そこには「人生において約50年間働く中で、つまらないことをやっていたら絶対に続かない。どんなにストレスや負荷がかかっても、楽しいことなら続けられる。だからとにかく楽しくやろう」という思いがあります。ですから「明るく、楽しく、真剣に!」の中で「楽しく」が最も大切で、「楽しくやるためには明るくなければならない。ただし仕事なので、そこは真剣に」というメッセージが込められています。代表も節目節目でこのメッセージを引用しますし、おそらく全社員に浸透していると思います。
 この社訓を強く意識しているので、採用選考でも主体的で最後までやり遂げていきたい、チャレンジしていきたいという思いがある方かどうかという点が、特に注目しているポイントです。

──新卒採用について教えてください。

飯野 イントラストは2018年度から新卒採用をスタートして、2023年度で6期目を迎えました。2023年4月入社の新卒は6名。2024年度に向けては10名前後の採用を計画しています。これまで新卒採用と中途採用の比率は1対9でしたが、徐々に新卒採用の比率を上げていきたいと考えています。

──新卒採用の選考ステップを教えてください。

飯野 まずは会社説明会に参加していただき、その後面接を3回経て内定という流れになります。エントリーシートは提出していただきますが、書類で合否の判断はしません。というのは、会社説明会だけでは保証会社の業務内容を100%伝えきれませんし、応募者も理解しきれないだろうと思うからです。どのような会社かわからない状態で「志望動機を書いてください」というのは、タイミングとして違うのではないかと考えています。あくまで人物重視で、選考を通じて人柄を見極めつつ、応募者側も徐々に当社への志望度を高めていただきたいと考えています。お会いすることを重視しているので、説明会に参加したあと、1次面接に進みたいと希望する学生には全員お会いしています。

──面接はどのような流れで実施していますか。

飯野 1次面接は採用担当の私が面接官を務めます。2次面接は総務部長と部長または役員の2名が担当し、最終面接は社長面接です。時間的・距離的な問題から1次面接はオンラインで実施しますが、2次面接は関東圏の方と希望者は東京本社に来ていただき、最終面接に進んだ方に関しては全員東京本社に来て面接を行います。

──人物重視の採用ということですが、ミスマッチを防ぐために何か工夫していることはありますか。

飯野 1次面接、2次面接はもちろん、最終面接でも、形式的な質問はしません。採用面接用の質問リストに沿って上から順番に質問していくような画一的な選考は一切しない方針です。ですから最初の面接で、「志望動機をスラスラ言える必要はないので大丈夫ですよ。リラックスしてくださいね」などと伝えています。また、1次面接から最終面接まですべての面接で、1人あたり1時間を確保して面接に臨みます。面接を行う側の私たちも楽しんでいますので、その楽しさが学生の方々にも伝わればと思っていますね。
 採用面接は学生と企業がお互いのことを見せ合って「合うか、合わないか」を見極める場です。私たちも着飾らずに臨むことで、最終面接も含めて堅苦しくない面接を行って、フランクに話していただいています。これがミスマッチを防ぐ最適な方法だと考えています。

10日間の新入社員研修を実施

──内定者フォローはどのように行っていますか。

飯野 2023年度入社では、内定後の2022年内はとにかく同期で仲良くなってもらうことをテーマに、2ヵ月に1回ほど、本社に集まってビジネスゲームなどをしたり、内定者6名だけで話し合う場を用意したりしました。また、学生モードから社会人モードへと頭を切り替えていただきたかったので、マインド研修や会計学の読書感想文も課しました。感想文は特に成績をつけたりするものではなく、入社前の3月までに提出するだけでよかったのですが、フタを開けてみると6名とも想像を超えるすばらしいクオリティの感想文だったので、こちらが驚くほどでした。

──2023年4月の入社式はどのように実施しましたか。

飯野 東京本社に集まって入社式を行いました。社長や役員の話を聞いていただいたあと、手続きなどのオリエンテーションで1日目が終わり、翌日からは10日間、外部研修に参加してもらいました。ビジネスマナーや仕事の「報・連・相」、メールの書き方といった社会人としての基礎的部分と、ロジカルシンキング、チームビルディング、プレゼンテーションといったスキル面の両方を学んでいただきました。
 10日間の新入社員研修のあとは、3名ずつ2チームに分かれてローテーションで社内の全部署を回ります。それが終わった5月末に、どのようなことを学んだか発表してもらい、6月から各部署に本配属になります。
 配属先は、営業部門やバックオフィス系など様々です。研修期間経過後に、適性と本人の希望を考慮しつつ、配属先を決めていきます。

──本人の希望も考慮されるのですね。

飯野 事業計画に沿って人員を決めるので希望通りになるとは限りませんが、希望はお聞きします。部署のローテーションを通じて適性などをお互いに見極めながら、各部署からのフィードバックと本人の希望をすり合わせて決めていきます。

──新入社員研修のあと、同期が一堂に会するような研修はありますか。

飯野 2023年から、新卒新入社員に対して四半期に一度、振り返り研修を実施することにしましたので、年内にあと3回集まる予定です。各部署の都合がよければ、2年目・3年目も上期と下期の年2回、同様の研修を実施する予定です。その後4年目以降からは階層別研修になります。

2022年度は期初予定の倍近くの中途採用者を確保

──中途採用については、どのような流れで動いていますか。

飯野 まずは事業計画に沿って、年度で人員計画を立てます。1~2月に各部署から新卒を含めた来期の人員計画が出てきますので、中途採用もどの部署に何名採用するかという計画ができます。また、突発的なケースとして新規事業立ち上げに伴う追加採用や、欠員補填のための採用も並行して行っています。
 2022年度の中途採用の期初計画は18名でしたが、結果的に33名の中途者を採用したので計画の倍近くになりました。2023年度の期初計画は21名です。

──中途採用者向けにも研修は用意されていますか。

飯野 新卒を対象に実施している全部署ローテーションのミニバージョンとして、社内にどのような部署があるのかをひと通り見ていただきます。当社は東京本社の他にも秋田、仙台、富山、浜松、大阪、福岡に拠点があります。初日は全員東京本社に出勤していただき、本社にしかない機能について、各部署のメンバーから説明を聞きます。その後は配属先の各部でOJT研修に入ります。中途採用に関しては、その後は階層別研修になります。

充実した奨励資格支援制度

──研修制度、人事制度、福利厚生面で、イントラストらしい制度があればご紹介ください。

飯野 新卒・ベテランなど問わず誰でも新しい事業や新たなサービスを提案できるESP制度(Eはイントラスト、Sはスタートアップ、Pはプログラム)があります。2022年もこのESP制度によって年間5本ほどの提案が上がってきていました。以前、新卒採用の2次面接で「新しくこんな保証を始められませんか?」と提案してくる学生がいたと言って、部長が驚いていましたが、まさにそういうことを考えられる人材が当社の風土にピッタリです。自由に考えてサービスを創造するチャレンジ精神で市場を開拓してきたからこそ、これまで大きく成長し続けてこられたと自負しています。
 また現在、会社が急成長しているので、今の20代、30代の社員が30代後半になって脂が乗ってきたタイミングで、未来の幹部候補を育てる研修制度を手厚くしていきたいと計画しています。そしてさらにワンランク上の管理職研修にも注力していきます。

──資格取得についてのサポート制度はありますか。

飯野 奨励資格支援制度があるので、自ら手を挙げて「この資格を取得したい」と希望する社員をバックアップする体制は整っています。具体的には、推奨資格に合格した場合、受験料が補助されるだけでなく、さらに受験料の2倍の金額が奨励金として支給されます。例えば受験料5,000円の資格を取得すると、受験料の5,000円を会社が負担してくれるだけでなく、倍の1万円が支給されるのです。会社からの「よくがんばったね、おめでとう」というメッセージですね。
 適用される資格には、一般常識系ではビジネス能力検定、ビジネス文書検定、ビジネス実務マナー検定、CMA(日本証券アナリスト協会認定アナリスト)、個人情報保護士、コンプライアンス・オフィサー、モチベーション・マネジャー、マイナンバー実務検定など。営業系ではコンタクトセンター検定、ITパスポート、オープンソースデータベース技術者など。財務・労務系では簿記や税理士、公認会計士、社会保険労務士など。その他にもFP、宅地建物取引士(宅建士)、マンション管理士、ビジネス実務法務検定試験®、司法書士、行政書士など、たくさんの資格があります。

──社内業務を遂行するために必要となる資格もありますか。

飯野 浜松オフィスにあるソリューション事業の一環で火災保険チームがあります。そこでは火災保険を案内する損害保険募集人の資格が必要ですが、その他には必須の資格はありません。ただ「不動産管理会社の方と同じ目線で話をしたいから」と、宅建士資格を取得する社員はいますね。

──新卒応募者がエントリーシートに学生時代に取得した資格を記載していた際、どのように判断しますか。

飯野 当社では書類による選考は行いませんので、記載があるかないかで判断はしません。ただもちろん、記載してあるほうが印象には残りますね。また2022年・2023年入社の採用時には、コロナ禍の影響で大学の授業がオンラインになって外出しにくかったためか、何らかの資格を取得している学生が非常に多かった印象です。具体的には簿記検定とFPが目立っていて、その他ではMicrosoft Office Specialist(MOS)が多かったです。また、宅建士を取得している学生も見受けられましたね。取得理由を尋ねると、学部によっては授業の一環で取得したという学生もいましたが、宅建士資格の場合は「不動産業界で働きたかったから」など、志があって取得されていた方が多かったです。

──中途採用の場合、例えば経理部では簿記検定1級などの要件をつけて募集する場合もあるのでしょうか。

飯野 経理部の中途採用の場合、税理士や簿記検定1級といった要件を付加することはあります。リーダークラスや主任クラスになると簿記検定3級や2級は当たり前のように持っていますね。ちなみに当社の経理部部長は税理士保持者で、財務経理担当役員は公認会計士保持者です。

──働く女性を応援する制度やしくみはいかがですか。

飯野 子育てサポート企業の証である「くるみん認定」はすでに取得済みで、女性の活躍推進の取り組みを認める「えるぼし認定」は申請中です。社員の男女比率は男性6に対して女性4で、女性の活躍を促進しています。育休取得率は70%以上で、休暇を取りやすい環境が整っているので、職場復帰率は100%に上っています。復帰後は、在宅勤務を交えながら時短勤務からのスタートで柔軟に働くこともできます。

──最後に、資格取得やキャリアアップをめざしている方々に向けてメッセージをお願いします。

飯野 資格を取得するということは、ある一定期間、夢中になって目標に向かい続けることだと思います。資格取得を通してできるそうした経験は、仕事においても絶対無駄にはならない、すばらしい経験です。ぜひ、自分自身で立てた目標に向かって、最後までやり切る努力を続けてください。そして、資格取得後はその資格の「活かし方」が大事になってくると思うので、資格を自分自身の強みやパワーとして発揮できる環境を見つけていただけたらと思います。

[『TACNEWS』2023年8月号|連載|人事担当者に聞く「今、欲しい人財」]

会社概要

社名     株式会社イントラスト
設立     2006年3月
代表者    代表取締役社長 執行役員 桑原 豊
本社所在地  東京都千代田区麹町1-4
       半蔵門ファーストビル2F

事業内容

【保証事業】
 家賃債務保証、医療費用保証、介護費用保証、養育費保証
【ソリューション事業】
 C&Oサービス、Doc-onサービス、保険デスクサービス         

従業員数

134名(2023年3月末時点)

URL

https://www.entrust-inc.jp/

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