人事担当者に聞く「今、欲しい人財」 第41回 ソウルドアウト株式会社

Profile

宮武 宣之氏(左)

執行役員 人財本部 本部長


池上 隼平氏(右)

人財本部 人財開発グループ


ソウルドアウト株式会社は、日本経済全体の底支えと地方創生をめざしてインターネットビジネス支援を展開している企業だ。日本全国の中小・ベンチャー企業の成長を「デジタル×マーケティング」を駆使して支援し、「中小・ベンチャー企業が咲き誇る国へ。」をミッションに掲げている。創業者・荻原猛氏の「一人ひとり、個の成長を大切にする」という思いが企業文化となって、組織風土に行き渡っているソウルドアウトでは、どのような人事ポリシーや人材観を持って採用、育成、制度設計を行っているのだろうか。人財本部本部長・宮武宣之氏と人財開発グループ・池上隼平氏にうかがった。

日本の中小・ベンチャー企業を支援

──最初に、ソウルドアウト株式会社についてご紹介をお願いします。

​池上 ソウルドアウトは、創業者の荻原猛(現・代表取締役会長CGO:最高成長責任者)が「中小・ベンチャー企業の経営者と覚悟をともにし、挑戦に寄り添いたい」「デジタルマーケティングの力で、中小・ベンチャー企業とともに成長し、ともに飛躍していきたい」という思いを持って立ち上げた会社です。言い換えれば「デジタル×マーケティング」を駆使して、中小・ベンチャー企業の課題解決のために事業展開をしてきた会社だと言えます。
 最大の特徴は、クライアントが地方を含めた中小・ベンチャー企業であること。日本では、法人約400万社のうち99.7%が中小企業で、雇用の観点から見ても、東京・大阪といった都市圏を除いて70%以上、東京・大阪を加えても日本の80%の人たちが中小・ベンチャー企業で働いていることになります。つまり日本の経済を底支えしているのが中小・ベンチャー企業で、私たちがその企業を支援することで、日本全体のさらなる底上げと地方創生を図っていく。それが、私たちソウルドアウトのめざす未来です。

​宮武 具体的にはデジタルマーケティング事業、ソフトウェア事業、メディア制作・運営事業、DX事業の4つのカンパニーで支援を行っています。日本全国には素晴らしい製品やサービスがたくさんあります。そんな素敵な製品やサービスを地方から日本全国へ、日本から世界へと広めていきたい。こんな思いで、総勢約400人の組織体で全国20拠点に展開しています。2021年だけでも4拠点開設し、今後も継続的に増やしていく計画です。

「本気で地方を元気にしたい人」の集まり

──採用計画について教えてください。

池上 新卒に関しては、2022年4月入社が18名、2023年入社は20〜40名を想定しています。
 中途採用に関しては、経済情勢や事業計画、注力すべきポジションを踏まえ、年間通してオープンポジションで動いています。特にデジタルマーケティングに携わるフロント営業や広告運用担当は、常時優秀な人材を求めています。

──新卒・中途に共通する「求める人物像」を教えてください。

池上 共通しているのは、ソウルドアウトへの理念共感です。中小・ベンチャー企業を支援することによって地方活性化を含め日本全体の底上げを図っていくこと。そのために志ある経営者にしっかりと寄り添っていく姿勢が大事ですから、理念共感に最も重きを置いています。
 新卒の場合、この理念共感とベンチャーマインドをベースに確認しています。もちろん論理的思考ができるか、成長意欲があるか、目標達成意欲があるかといったいくつかのポイントも大事ですが、まずはなぜ中小・ベンチャー企業支援をしたいのかという「想い」の部分を一番に見ています。
 一方、中途採用に関しては即戦力が求められるので、見合った経験やスキルセットを選考の過程で見極めていますが、こちらも同様に理念への共感ありきです。

宮武 採用の際は「理念共感」を本当に大事にしていますね。私がソウルドアウトに入社して驚いたのは、配属先が「地方」になった人のほうが喜んでいることです。一般的には逆ですよね。「これが地方活性化や日本全体の底上げを行うソウルドアウトの源泉なんだな」と感じた瞬間でした。
 毎年入社する新卒の内訳で見ても、内定者の3割が将来実家の家業を継ぎたい人、3割が大学のサークルなどで地域活性や地域振興に取り組んできた人、残りがマーケティングや何か新たなチャレンジをしたい人です。多くが地方に対して何らかの貢献心を持っている、「本気で自分たちの手で地方を元気にしたい」と思っている人たちの集まりなのです。そこが我々の最も大事にしたいところであり、一番ユニークなポイントだと思っています。


宮武 宣之氏
20年の社会人キャリアの中で、前半はリクルーティングなど人材ビジネス、後半はITベンチャー、メーカーでの人材開発、人事企画に従事。2019年4月、ソウルドアウト入社。現在グループ全体人事管掌SVPとして、人事、採用、教育、評価、労務などグループ全般の人事領域を統括。
※SVP…Senior Vice President

信頼関係を築くための「内定者との交流」

──新卒採用の選考フローを教えてください。

池上 まずエントリー後、説明会に参加していただきます。2021年からは説明会、書類選考、面接をすべてオンラインで実施してきました。説明会ではソウルドアウトの理念・パーパスや事業内容、将来のキャリアパスとそれに基づいてどのような人材を求めているかを説明します。参加者にはアンケートを実施し、その中で選考を希望する学生に向けてエントリーのご案内をします。そして書類選考を通過した方は人事による1次選考、各事業部側リーダーによる2次選考といった2〜3回の面接を経て、最終選考へと進みます。間に適性検査を挟みつつ、最終選考ではCEOの荒波が会社にフィットするか、我々と同じ志を持っているか、一緒に働きたいと思うか、しっかりと対話し確認していきます。

──内定者フォローのための研修や課題があれば教えてください。

池上 内定後は個別に採用担当がついて、定期的にコミュニケーションを取れるようにしています。加えて内定者を集めて現場社員との交流を図る機会を設けたり、4つの各カンパニーがどのような事業戦略を考えているのかといった説明会を実施したりしています。
 入社前の課題として内定者に課しているものはなく、また資格取得のような明確な課題も定めていません。マーケティングやデジタルの会社なので、世の中にある新しい商品や場所などに触れ、いち消費者としての経験や視点を養ってほしいと考えています。

宮武 内定者たちとの信頼関係を作っていくためには、人事以外の社員や役員ともコミュニケーションをとり、お互いがきちんと認識している状態が必要だと思っています。そのために懇親会を実施し、面接をした部長や役員以外にも、年齢や職種が異なる先輩社員たちを含めた交流の場を意識的に作っています。そして、「ソウルドアウトの先輩社員に、自分が迎えられているんだ」という安心感を持って入社していただくことが重要だと考えています。

新卒は1年間OJTがフォロー

──2022年4月の入社式はどのように実施されますか。

​宮武 私たちが内定式や入社式で一番大事にしているコンセプトは「ウェルカム感」です。とにかく内定者の「人となり」を大切にしたいという思いを伝えています。コロナ前、ご実家が製造業をしている内定者がいた年は、その会社の製品を内定式の記念品として用意したこともありました。また2022年は、役員のみならず、新卒の先輩社員や現場で面接に関わった管理職も集めてウエルカムパーティーを開催する予定です。

──新入社員研修はどれくらいの期間実施しますか。

宮武 1ヵ月程度実施しています。研修の前半は、同期の絆を創ることを目的のひとつとしていて、何かに悩んだときに同期で助け合えるような関係を築いてもらうことに一番時間をかけています。他には会社のルールや規定、システム周りの理解や商品、サービスについて研修します。すべての人事ポリシーで共通なのが、本人の「will(意思)」をとても大切にしていることです。個人の持ち味を最大限引き出してあげたいと考えていますので、研修でもカンパニーや事業部から「我々はこういう事業部で、こんな人を必要としています」と情報提供し、その人に合った配属先を選びやすいように配慮しています。
 研修の後半は、Web広告とは何か、その広告文章の作り方やキーワードの選び方、商品の裏側のしくみ等を理解するための実務研修になります。

──その後の研修はどのように実施していますか。

​宮武 新卒が配属されると、OJTとして新人や未経験者1人ずつに対して、実務を体験させながら仕事を教える担当者が1年間つきます。当社のOJTは、新人が困ったときに相談に乗るという役割だけではなく、新人が1年後にどのように育っていればいいのか、スキルマップを使いながら振り返る役割まで任います。
 他には、1年目、2年目、3年目で必ず年次研修を実施しています。現在はオンラインでの実施ですが、コロナ前は1泊2日とじっくり時間をかけて行っていました。1年目についてはキャリアと言えるものはまだほとんどないので、「can(できたこと)を棚卸ししよう」という目的で行っています。2年目になると「can」に加え「will」が芽生えてくるので、「どういうことをやりたいか」を探り、3年目からは「will」を中心に「どのような未来を描いていきたいのか」を考えてもらうワークショップなどを入れていきます。
 その他にも、CGO荻原が創業秘話や文化を語り、CEO荒波が戦略等を語るディスカッションの場を設定していて、その際に、社員たちは各々抱えている悩みや不安、疑問に感じることをその場で質問し、両2名がそれに対して一つひとつ答えていくということもしています。入社時にあったモチベーションがずっと続くような仕掛け作りをしているのです。

──中途採用の選考フローは新卒と一緒ですか。

​池上 説明会は実施せずに、エントリーから1次選考、2次選考の流れです。中途採用はスピード感が大事なので、ポジションによっては人事と現場責任者が同席して1次選考を行い、次は最終選考の2ステップの場合もあれば、最終選考まで3ステップの場合もあります。
 入社後は、初日にオリエンテーションを実施しています。ここで改めて会社の説明、業務にあたって必要な社内ツールの使い方も含めて説明し、残りの時間はCGO荻原から「この会社がどのような状況で、今後どのような方向をめざしていくのか」といったビジョンもお伝えしています。


池上 隼平氏
新卒で株式会社オプトに入社し、8年間勤務した後、EC系スタートアップ企業にて2年間マーケティングに従事。2016年、ソウルドアウト入社。1年間、中国へのプロダクトサービス新規事業立ち上げにたずさわったのち、人事部門へ異動。新卒・中途採用をメインに担当。

多様性と成長機会のあるソウルドアウト

──お話をうかがっていると、社員をとても大切にする社風が伝わってきます。人事制度で特に大切にしているポリシーはどのようなものですか。

宮武 社員を大切にする企業文化は、ひとえにCGO荻原が個の成長を大切にして、一人ひとりを見ていることで育まれています。荻原が作った文化を体現する人事ポリシーも「持ち味を生かす」のひと言に尽きます。ありていに言えば「多様性」ですね。「一人ひとりをちゃんと認めていこう」ということで、これを具現化して人事制度に落とし込んでいます。こうして大切にされているからこそメンバーは人懐こく、自分のことよりもチームや周りの人を思いやることができる。これがソウルドアウトの企業風土になっています。

──多様性を大切にしたユニークな人事制度や福利厚生をご紹介ください。

宮武 個を大切にする文化が最も顕著な制度が2つあります。1つは、役員6人全員でメンバー一人ひとりのキャリアパスやスキル、持ち味を議論する「ミイダス会議」です。半年に1回、全社員に異動希望を聞いて回答してもらい、その中で異動や転職のフラグの立っている人に対し、役員が1時間の会議を3回ほど開いてそのメンバーの希望について議論しています。つまり1メンバーの身の振り方を役員全員で会議するわけです。これは他社では見ない光景だと思います。
 もう1つは新卒の配属を「ドラフト制」で決めることです。新卒と事業部長がお互いの「人となり」を充分知り合えるように1on1の機会を設け、その後「一番行きたい」という希望を募り、両者の希望を最優先して配属するマッチング制度です。
 一人ひとりに真剣に向き合う制度や文化が体現されていて、それによって一人ひとりの「will」の育まれる環境がちゃんと用意され、きちんとそこに血が通っている。それがソウルドアウトの人事制度なのです。

──資格手当や評価制度面にはどのようなしくみがありますか。

宮武 財務での簿記や各種IT系情報処理資格など、各カンパニーが奨励した推奨資格については、資格手当の支給や学びに対して還元するしくみを用意しています。
 評価制度に関しては、業績、KPI、あるいは能力開発、パーパスの実現といった成果に対して、昇給やインセンティブという形で還元しています。その中でパーパスの実現に関しては、半期に1回、納会の表彰式でフィーチャーします。また、特に若手層に対しては、能力開発によって「成果を挙げるスキルを身につけ、そのアウトプットが可能になった」「こういう貢献ができるようになった」といったことまで昇級の対象になります。このメカニズムを入れることによって、若いうちから責任と報酬が一致する環境を整えていく、成果に対してちゃんと報酬がついてくるといった、成長を実感できる環境を整えています。

──新卒採用では、学生時代に取得した資格をどのように評価していますか。

宮武 採用の段階では理念共感の部分にフォーカスしているので、資格の有無は特に評価対象としていません。ただここ数年増えてきている中小企業診断士資格は、私たちの掲げているパーパスや事業内容との親和性が高いため、「取得しました」「今勉強しています」と記載されている場合は参考にしています。

池上 資格手当に関しては、ITパスポート、MBAといった全社的に出すものと、カンパニーごとに推奨しているものの2段構造で設定しています。カンパニー推奨の資格は実務に直結するオラクルマスターやAWS(Amazon Web Services)認定資格、Google広告認定資格などがあります。ちなみに社内的に資格取得で最も多いのはウェブ解析士です。

──資格取得やキャリアアップをめざしている読者に向けてメッセージをお願いします。

宮武 資格ありきで仕事を探す方法ももちろんあると思いますが、それとは反対に、仕事に触れてから会社負担で必要な資格を取得していく方法もありだと思います。入社時には資格を持っていなくても、入社後は企業のお金で必要な研修を受けたりできるので、まずは興味のある分野を見て「この資格があれば、この業界で通用するんだ」という仕事の探し方をするのも、有意義な選択方法だと思います。

池上 まずは自分が資格を取る目的を明確にして、それが何なのかを把握しましょう。そのためには、経験を積むことが大事だと思います。経験する中で目的が明確になったら、資格をめざす。そこがスタートラインです。ソウルドアウトでは、資格手当も成長環境も用意しています。興味のある方は、ぜひご応募ください。

[『TACNEWS 』2022年6月号|連載|人事担当者に聞く「今、欲しい人財」]

会社概要

社名  ソウルドアウト株式会社
設立  2009年12月16日
代表者  代表取締役会長CGO 荻原 猛
     代表取締役社長CEO 荒波 修
本社所在地  東京都文京区後楽1-4-14 後楽森ビル19F

事業内容

日本全国の中小・ベンチャー企業の成長支援に取り組む、デジタルマーケティング事業

従業員数

419名(2022年3月1日時点 ※連結)

URL: https://www.sold-out.co.jp

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