人事担当者に聞く「今、欲しい人財」 第10回 日本瓦斯株式会社 (ニチガス)

jinzai_img06_01..jpg
Profile

岩崎 陽子氏(写真右)

日本瓦斯株式会社(ニチガス) 執行役員 経営企画本部 人事部 部長

新卒で日本瓦斯株式会社に入社。入社後、企画業務部にてガスの仕入れ、機器仕入れ、損害保険代理店業務等に従事。その後総務部、開発営業部を経て、2010年より現職の人事部長に就任。

山岸 麻登佳氏(写真左)

日本瓦斯株式会社(ニチガス) 経営企画本部 経財部経理課兼財務課上席課長 公認会計士

公認会計士2次試験合格後、監査法人に勤務。2004年、一般事業会社に転職して財務経理に従事。2018年2月、ニチガス入社。現在、経理課、財務課の上席課長として決算業務、経理周辺業務のとりまとめを行う。

日本瓦斯株式会社(ニチガス)は1955年にLPガス(プロパンガス)からスタートし、現在は東証一部上場企業として関東地方を中心にLPガス、都市ガス、電気の供給、ガス機器や住宅機器の販売、住宅設備機器のリフォームなどを行う総合エネルギー会社として、国内146万戸(2019年1月末)、海外34万戸(2018年9月末)にエネルギーを供給している。保守的なイメージが先行するエネルギー業界にあって、ニチガスは「安全で、安定的に、より安価な」エネルギーを届けるために、「いろいろなことに挑戦し続ける会社」を標榜。キャリア採用として、公認会計士などの採用にも積極的だ。経営企画本部人事部部長の岩崎陽子氏と、経営企画本部経財部経理課兼財務課上席課長であり公認会計士の山岸麻登佳氏に、人材採用や求める人物像、福利厚生制度や資格に対する考え方などをうかがった。

エネルギー自由化に挑む総合エネルギー会社

──日本瓦斯株式会社(ニチガス)の事業内容をご紹介いただけますか。

岩崎 ニチガスは、関東地方を中心にガス(LPガス、都市ガス)や電気の供給、ガス機器や住宅機器の販売、住宅設備機器のリフォームなどを行う総合エネルギー会社です。事業の中核を担うガスの供給では、LPガス6割、都市ガス4割で国内合計146万戸にエネルギーをお届けしています。
 日本のエネルギー事業は自由化が加速しています。この流れを踏まえて、ニチガスは適正価格への挑戦、付加価値を付けることへの挑戦、保安体制の強化に取り組んできました。24時間365日の安全・保安サービスや事故を未然に防ぐ安全設備の導入、大災害時に対応できる設備の導入などを地道に進めるだけでなく、異業種との提携や、物流や業務の徹底した効率化を図ることでガス料金をより安く提供するなど、いろいろなことに挑戦し続けている会社です。営業拠点は関東一円にあるグループ企業の各都市ガス会社に加え、6支店60超の営業拠点を設けています。海外ではアメリカに現地法人を設立し、34万戸を超えるお客様にエネルギーをお届けしています。

──海外を含めて幅広い事業を展開するには、幅広い人材が必要になりますね。

岩崎 アメリカやオーストラリアなどの海外では日本よりエネルギーの自由化が進んでいたので、日本でのエネルギー自由化を見据えて知見を得るため海外に進出したという経緯があります。海外事業を始めるにあたっては、当然専門知識を持った人材が必要になってきました。

──現在取り組まれている事業や計画を教えてください。

岩崎 2018年秋からは電気の直接供給をスタートしましたので、今は電気とガスのセット販売に非常に力を入れています。これまではLPガスの供給がメインでしたが都市ガスも供給可能になり、さらには電気も一緒に供給し、幅広い生活関連のサービスをセットにしてお客様に選んでいただけるよう、総合エネルギー会社としてのサービスを展開していきます。

求めるのは「挑戦できる姿勢を持つ人材」

──ニチガスの人材採用方針をお聞かせください。

岩崎 新卒採用をメインに、中途採用ではここ数年間は専門性を持った方のキャリア採用を積極的に行っています。新卒採用では、文系・理系こだわりなく幅広く採用し、最終学歴が短期大学、高等専門学校、高校という方でも応募できるチャンスがあります。2019年4月に約80名が入社し、2020年4月も80~100名の採用を予定しています。

──新卒採用で求める人物像を教えていただけますか。

岩崎 いろいろな挑戦をしているニチガスでは、リスクをとっての挑戦なら失敗は責めません。一度の失敗ですべて終わりではありませんし、また次のチャンスはめぐってきます。弊社は従来通りのやり方をそのまま踏襲することを嫌う会社です。トップが常に話しているのも「変えなくていいものなんて、何ひとつない」とういこと。たとえ過去に成功したことであっても、それをさらに変えていける人材を求めています。当然、変え続けていくことは大変なことでもあるのですが、それができる忍耐力を持った人材、何より挑戦できる姿勢を持っている方を採用しています。

──新卒採用の流れについてお聞かせください。

岩崎 まず会社説明会に参加していただき、エントリー、書類選考、集団面接、適性検査、個人面接、役員面接と、面接を3段階経て内定という流れになっています。人物重視なので、短い時間ではありますが、面接などでどのような人物なのかを見極めています。

──内定を出されたあとのフォロー体制はいかがですか。

岩崎 内定者には、グループワークや会社の概要を知っていただくための説明会を行います。加えて、内定者でも受けられるガス関連の資格試験に挑戦してもらうための講習会を開いています。

──ニチガスで必要な資格とはどのようなものですか。

岩崎 高圧ガス第二種販売主任者という国家資格は、LPガスの販売に必須の資格になります。加えて、甲乙丙種ガス主任技術者と液化石油ガス設備士が、営業として現場に出ている社員の必須資格なので、最低でもこの3つは取らなければなりません。管理系の内勤者は必ずしもこの資格を使うわけではないのですが、やはりガス会社必須の資格として取っていただきます。この3資格の取得は入社3年以内を目標に、内定者の段階でもできる範囲で勉強を進めていただいています。

──入社後の新入社員研修はどのように進めていらっしゃいますか。

岩崎 4月1日に入社したあと、1ヵ月程度人事部でビジネスマナー研修、合宿研修、ガスの基礎知識などの座学研修、実地研修、現場見学会などを行います。営業では車を運転することになりますので、車の運転研修も行っています。
 研修のあとは関東圏に約60ある営業所に配属され、現場で先輩たちについて実務をOJTで覚え、階層別研修で業務や立場に合わせて必要な研修を行っています。
 新卒は入社半年後にフォローアップ研修が1回あり、改めて集合研修を受けてもらいます。

──研修の中でユニークな試みがあればお聞かせください。

岩崎 新入社員研修で行う合宿研修は、ちょっと変わった体験型です。例えば、「5人グループでテントを張る」といったテーマが与えられます。まずリーダーを1人決め、他のメンバーは全員目隠しをした状態で、リーダー1人だけにテントの張り方を教えます。そして他のメンバーは、リーダーの口頭での説明だけを頼りに、テントを張っていきます。テントの完成までには、リーダーになった人の気づき、口頭説明だけでテントを作るメンバーの気づき、いろいろな気づきがあります。座学研修とは異なる、実際に身体を動かし、心も使って気づきを与える、ゲーム感覚の研修です。始めて5年ですが、導入してからは受け身ではなく自分から動く社員が増えてきたように感じています。

専門職のキャリア採用で公認会計士を採用

──中途採用はどのような流れになっていますか。

岩崎 数年前から専門職採用に力を入れています。専門職以外の採用も通年採用とスポット採用の両面から行っており、営業職は通年採用、他の職種は部署で必要とされたときのスポット採用になります。専門職のキャリア採用は、主に人材紹介会社から弊社が希望するスキルに合致した方をご紹介いただいています。

──キャリア採用で専門職採用に力を入れ始めたきっかけを教えてください。

岩崎 これまでは現場の営業職重視で採用を行ってきましたが、内部が弱くてはいけないということで管理系部署の強化のために専門知識を持った方の採用を強化しました。
 この専門職のキャリア採用で入ってきたのが公認会計士の山岸です。経財部だけでなく、総務や法務、人事でも管理系すべてにおいて専門職採用を積極的に行っていて、まだそれほど多くはありませんが、山岸の他に弁護士の資格を持つ者も社内にいます。今後もう1人公認会計士の資格を持つ方も入る予定です。

──山岸さんを採用された時はどのような人材を求めていたのですか。

岩崎 必ずしも公認会計士資格を持った人が必要な部署、公認会計士でなければできない仕事ではなかったのですが、今後経理財務を強化していくためには、分析する力や知識を持ち、幅広い経験のある人材の登用が必要だと考えていました。さらに公認会計士が社内にいることで、社員たちが良い影響を受ける相乗効果も期待してのことでした。

公認会計士のスキルを活かして幅広い業務に携わる

──山岸さんは前職も一般事業会社勤務だったそうですね。監査法人を経て一般事業会社に勤務されたきっかけを教えてください。

山岸 私の場合、社会に出るタイミングが就職氷河期だったので、女性として長く働けることを考えて、手に職をつけようと公認会計士試験に挑戦しました。2次試験合格後は監査法人に入りました。監査法人ではいろいろな会社を見ることができましたので、会社を知るには非常に良い機会だったと思っています。ただ、できあがった数字を確認するだけでなく、実際に自分で数字を作ってみることに興味を持ったので、3次試験が終わったタイミングで一般事業会社に転職しました。監査法人では、一般事業会社における業務内容や手続きを知ることができ、とても貴重な経験だったと思っています。

──ニチガスに入社された理由を教えていただけますか。

山岸 やはり、挑戦と革新が会社のモットーと聞いたことが入社の決め手でした。一般的に、経理部は保守的な部署というイメージがありますが、ニチガスでなら新たなことにチャレンジできると感じたことが一番の理由です。実際、入社後は文字通りいろいろなことに挑戦させてもらっていますが、失敗をおそれる必要が一切ない挑戦しやすい環境が整っています。他の一般事業会社との違いはそこにあると思います。保守的な業界にあっても、会社として挑戦を推進する環境が整っているのはとても大きな魅力です。そこにおもしろみとやりがいを感じています。
 現在は、会社の数字を作るだけでなく、それを使って分析したり、対外向けの資料作成をしたりといったように、経理業務だけでなく、予算や経営企画に関わる範囲まで幅広くいろいろな業務に携わっています。

──ニチガスに入社して1年が経ちますが、この会社で実現したい目標とはどのようなことでしょう。

山岸 今はまだ目の前のことしか考えられない状態ですが、より深く会社を理解するために、業界全体を知ることが必要と考え優先事項としています。その一貫として、高圧ガス第二種販売主任者など業界の必須資格も取得しました。さらに、AIの導入等も含め日々進化していく会計まわりの変化に常にキャッチアップし、新しいものを追い求めていきたいです。そのためにまずは責任を持って仕事ができるポジションにまで到達することを視野に入れています。

「資格を取る」という姿勢を評価

──入社後3年以内での取得が必須の3資格以外に、推奨している資格はありますか。

岩崎 ほとんどがエネルギー関連の資格ですが、約30種類ほどあります。取得した社員には、ガス関係以外でも電気、建築など仕事に役立つさまざまな資格に対して手当をつけています。また、業務に直接は関連がない資格、例えば人事部以外の部署の方が社会保険労務士資格を取ったような場合でも、資格手当は支給されます。会社にとって必須の資格は社内で講習会などを実施していますが、それ以外の資格は自己啓発ということでがんばってもらいます。

──新卒採用の際に簿記やTOEIC®L&RTEST等の資格を持っている方がいた場合、評価の対象になりますか。

岩崎 採用の合否に影響がないかというとまったくゼロではありません。例えばTOEIC®L&RTESTで800点以上の方であれば、それがすべてではありませんが、採否の判断で加点となります。また、異動や新しい事業をする際の配属の判断材料にはなってきますね。
 ただし、学生で公認会計士試験合格者ということであれば、非常に能力の高い人材として評価されます。資格を取るということは、自分を高めようという向上心のある方、自己成長のために努力する方であるはずだという判断になります。そのような方であれば、入社してからもがんばり続けてくれるだろうという評価をしています。

児童手当、出産祝い金、所得補償保険などで社員をサポート

──人事制度や福利厚生面で特徴的なものはありますか。

岩崎 弊社は社員の男女比が8対2で男性が多い会社ですが、女性である私がいいなと思う制度に、毎月の児童手当があります。例えば第一子には月々5千円、第二子には1万5千円、第三子には2万円が支給されるので、子どもが3人いる社員には月々4万円が支給されることになります。出産祝い金も、第一子が生まれたら1万円、第二子は10万円、第三子は100万円、第四子以降は200万円が一時金として支給されます。実際の子育てにかかるお金を考えるとそれでは足りませんが、うれしいサポートになりますね。
 また、病気やケガによる入院や自宅療養を余儀なくされて収入が減った場合に備えて、社員全員に対して一定の条件で所得を最大で月給の8割を補償する団体長期障害所得補償保険に会社として加入しています。会社でかけた上に個人でかけられる任意部分もある保険です。新入社員の任意加入率がとても高い制度ですね。

──手厚いサポートがうれしいですね。最後に、『TACNEWS』の読者に向けてメッセージをお願いします。

山岸 私も受験時代はTACに通い、『TACNEWS』を読んでいました。皆さんが勉強していることはすべて将来役に立ちます。私自身、今でもTACで勉強していたことを思い出すことがありますから、合格を信じてがんばってください。そして公認会計士をめざしている方は、監査法人だけでなく一般企業も含め、広い視野で将来の選択肢を考えることをおすすめします。

岩崎 資格を取得するために努力されている皆さんは、非常に意識の高い方です。ぜひ、資格の取得をゴールにせずに、学んだことを実践で活かし続け、資格に魂を与えて使えるものにしていただきたいと思います。
 ニチガスはエネルギー自由化の波に乗っていろいろな仕事ができる、いろいろな経験ができる会社です。エネルギー会社はどうしても保守的なイメージが先行しがちですが、弊社は安定志向よりもリスクをとって挑戦できる方、自分でいろいろチャレンジして学んでいこうという向上心のある方を歓迎いたします。何か自分で挑戦してみたいという方にはそのステージを用意できる会社ですので、選択肢のひとつに加えていただければ幸いです。

[『TACNEWS』 2019年6月号|連載|人事担当者に聞く「今、欲しい人財」]

会社概要

社名  日本瓦斯株式会社
設立  1955年7月29日
代表者 代表取締役社長 和田眞治
本社所在地 東京都渋谷区代々木4丁目31番地8号

事業内容

LPガス事業、都市ガス事業、ガス小売事業(コミュニティーガス事業)、高圧ガス事業、電力事業、生活関連事業、リフォーム事業、総合設備工事、海外事業

従業員数

1,803名(連結) 2018年4月1日現在

URL: https://www.nichigas.co.jp/

合わせて読みたい

おススメ記事

「TACNEWS」に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。