人事担当者に聞く「今、欲しい人財」 第3回 メルディアグループ 株式会社三栄建築設計
千葉 理恵氏
メルディアグループ
株式会社三栄建築設計
取締役執行役員 生産本部長
2級建築士。株式会社三栄建設設計の創業期より2級建築士として家づくりに携る。現在は取締役執行役員として経営に係わるほか、年間の総プラン1,800棟のうち約半数のチェックや、建築士のプランニング研修等を担う。
株式会社三栄建築設計は、1993年の創業以来、「同じ家は、つくらない」の理念のもと、社会的芸術性と個人的生活空間のプロデューサーを標榜してきた。いわば、住宅に関する「すべて」を自社で生産できる住宅総合生産企業として、ハウスメーカーやディベロッパー、ゼネコンや設計事務所とは一線を画す、不動産・住宅業界に類を見ない新しいカテゴリーの会社だ。2016年にはグループ名称を「MELDIA GROUP(メルディアグループ)」に変更もしている。2018年9月で創業25周年を迎えた三栄建築設計において、創業期から家づくりに関わってきた、取締役執行役員・千葉理恵氏に、同社の強み、人材採用や資格への取り組みについてお話をうかがった。
同じ家は、つくらない
──三栄建築設計は、「同じ家は、つくらない」をコンセプトに家づくりを続けてこられました。「同じ家は、つくらない」とは、どのような趣旨ですか。
千葉 三栄建築設計では、一棟一棟すべてコンセプトのある住宅を提案しています。当社の住宅には外観・内観のデザイン、間取り、どれをとっても同じものはありません。それは、分譲住宅でも徹底されている私たちのポリシーです。土地の広さや形、見える風景や周辺の町並みなどを調べ抜いて、一棟ごとに明確なコンセプトを決めることから始まる家づくりだからこそ「そこにしかない」ベストな住まいが提供できるわけです。すべて違う家をつくるために、土地の仕入、企画、設計、施工、アフターメンテナンスまで、すべて自社で行っています。
──現在のグループ全体の陣容は何人ですか。
千葉 グループ全体で約700人になります。そのうち、設計部門150人に工事部門の人数を合わせると300人弱で、施工監理150人を含む残りの約400人が営業・販売、管理部門になります。
──一棟一棟違う家をつくるためのそれぞれの部門の役割と、家ができるまでの流れをご説明いただけますか。
千葉 当社では、企画、営業、設計、販売、施工、施工監理の全部門でプロジェクトチームを組成します。まずは当社の事業のスターターである用地仕入れが最大のミッションとなります。企画営業が建築用地を仕入れ、売主との交渉から契約、決済およびプロジェクトにおけるプラン・コンセプトについてアイディアを出します。
土地の仕入れが終わると、プロジェクトチーム全員で建設予定地を視察し、周辺環境や建築条件の分析、確認を行います。現地視察、建築法規、トレンド等、メンバーが持つ情報を元に、外観、住宅デザイン、間取り、設備仕様、販売価格などを営業、設計、施工監理、それぞれの立場から意見を出し合い、コンセプトやプランを決定します。
次に、プロジェクトチームで決めたコンセプトやデザインを、設計担当が図面にしていきます。建設予定地に関わる建築法規や地域条例・地盤情報を収集し、法令を遵守したプランを作成することはもちろん、平面図・詳細図および建築確認申請までを担当します。建築法規やトレンドを活かしてオリジナリティあふれるプランを形にするのが仕事です。
平面図が完成次第、販売・仲介担当営業が販売活動を開始します。お客様へのプレゼンテーションは販売営業と設計担当がペアで担当し、企画開発者として企画の意図、建物の使い勝手や使い方など、お客様にプランの説明をします。販売担当は、販売戦略の立案、仲介業者との関係構築、購入検討のお客様に対するプレゼンテーション、契約、決済を担当する、お客様や仲介業者と最も近い場所に立つポジションです。仲介業者さんから住宅購入を検討されるお客様の希望をうかがって、当社グループで手がけた物件を始めとする物件情報を提供し、提案します。
施工監理は工事現場の責任者として、設計担当が作成した図面を最良の手順で具現化するために、工程表の作成から工事発注、指示およびスケジュール調整を手がけます。工期と予算、安全管理、品質維持でプロジェクトを安全かつ確実に遂行するのがミッションです。
こうした一連のプロジェクトと並行して、建設予定地の測量および自治体への申請をしていくのが測量担当です。プロジェクトチームの「縁の下の力持ち」的存在として、見えないところでお客様の財産となる土地測量を正確に行い、申請をスムーズに完了させます。
工事開始後は、現場での安全管理と品質管理をメインに仕事を進めていきます。契約成立後はお客様の要望に応じて予算や工期を確認・調整しながらプロジェクトメンバーが連携して対応します。
工事完了後、お引き渡し前に内覧会を実施します。お部屋ごとに建材・設備の使用方法、ご入居後のアフターメンテナンスについてメンバー全員がお客様にご説明し、お客様の了承を得て、引き渡しとなります。
来年度は新卒100人を採用予定
──すべて自社一貫で家づくりをされる、御社の採用方針はどのようなものですか。
千葉 当グループでは、「誰もが、つくる人」を合言葉に採用活動を行っています。プロジェクトチーム制ですから、技術職はもちろん、営業職であっても販売だけを担当するのではなく、手がけるプロジェクトのデザインやプランに関わっていくので、家づくりに興味のあることが絶対条件です。
当社のポリシーは「やりたいことを思いっきりやらせる」なので、年に一回本人の希望を聞いて、それを尊重しています。ですから、施工から仕入の営業に異動する人もいれば工事から設計に異動する人もいる、といったように、柔軟に対応しています。
──求める人物像としてはどのような人材ですか。
千葉 手がける物件がすべて好条件であるとは限りません。どのような状況であっても諦めずにやり遂げる情熱と、独りよがりにならず周囲のアドバイスを聞く素直さを兼ね備えた方を求めています。
──現在、人員的には足りている状況ですか。
千葉 会社が成長しているのでどの部署も人手が足りていません。新しい人材を採用しつつ、会社を伸ばしていく方向です。今後も更なる成長が見込まれるので、企業の成長に伴う変化や刺激に満ちた環境に戸惑うことなく、むしろ楽しいと感じながら共に成長できるタフなマインドの方には適した環境だと考えています。
──新卒採用、中途採用はどのように行っていますか。
千葉 新卒者をゼロから育てるにはやはり3年はかかりますので、中途採用を並行して行いながら、新卒者を戦力になるまで育てていきます。社会性のある意欲的な中途社員がいれば若い新卒者をひっぱってくれるので、うまく両者の良いところを伸ばして育てていく方針です。
新卒採用では、まず意欲のある方、やる気のある方を採用したいと考えています。2018年度は新卒だけで50名採用しました。来年度は100人採用する予定です。
中途採用に関しては、人手が足りなくなった部署を補充する形で行っています。営業部門が最も採用人数が多く、中途でもやる気さえあれば未経験者でも採用しています。昨年度は設計部門の経験者枠で5人、施工監理部門で15人を採用しました。
──御社の「同じ家は、つくらない」のコンセプトは、業界的にかなり注目を集めていると思います。要となる設計部門にはどのような資質が求められますか。
千葉 やはり設計部門は人気があり、他部門への異動希望もほぼありません。家づくりを楽しむのが設計のミッションです。自分のつくりたいものとお客様がつくりたいもの、話し合ってちょうどいいところに着地点を見い出していきます。特に注文住宅は分譲のようにシリーズ化する必要性も一切なく、とても自由にできるのが特徴です。「ここが良かったよ。あそこも良かったよ」と言われると嬉しさとやりがいが湧いてくるので、それが楽しくて、どんどんのめり込んでいき、やめられなくなってしまう。ここまで設計を楽しめるところは、他ではまずないと思います。
ただし、設計メンバーは皆とてもよく勉強しています。毎週デザイン研修会を開いて宿題も出されます。宿題を出すのは、できる限りたくさんの建築物を見るクセをつけるためです。チェックした建築物にクリッピングしてメモを取るなど、日々の努力が成果につながっていると思います。
──設計メンバーの勤勉努力は御社の強みということですね。
千葉 客層や価格といった制約の中で設計することは学校では教えてくれません。学校と実務ではやはり違うので、社会に出て初めて現実を知るわけです。その実務でしか学べないことを、私たちは伝えるようにしています。しかも設計部門はプロジェクトメンバーの一員として全行程に関わっていきます。実際に現場でお客様と接するので、お客様の声を聞いて設計に反映することができる。そして喜んでもらえれば大きなやりがいに通じます。
このように、当社ではすべてを学べます。大手建築会社には営業が強い会社、工事が強い会社等々ありますが、当社は「設計に強い会社」として世間からも評価されています。
実務体験型の建築家養成学校「アーキカレッジ」を開設
──設計に強い建築会社として、どのような研修を行っていますか。
千葉 管理職研修からチームリーダー研修、営業のプレゼンテーション研修、仕入れ研修等、それぞれの部門と階層でたくさんの研修を用意しています。設計部門では各メーカーや工場に行って商品を見て研究したり、それぞれの支店単位でデザイン研修会を行っています。TACさんにも協力していただいて、木造構造の仕組み研修もやっています。
加えて、設計・開発の指導と大工さんの育成を考えて、「設計学院アーキカレッジ」という建築家養成学校を自社で作りました。
──アーキカレッジとは、どのような学校なのですか。
千葉 ひと言で言えば「建築のプロになるための養成講座」です。アーキカレッジは、一般的な大学の建築科や建築専門学校でも学ぶことが難しい「超・実務体験型」教育を行うのが最大の特徴です。建築のプロには多くの能力が求められます。このプロの世界でリアルに求められる経験を得られるのがアーキカレッジです。2年間という短期間でプロの資質を合理的・実践的に身につけ、修了後には準経験者と呼べる即戦力保持者となっています。設計の道を志す未経験者や、建築系の学校を出ても実務に足る力がないと感じている方を、建築界で求められる人材に育成します。
その強みは、大学や専門学校にはない「現場」を持っている点です。映像や机上で終わるのではなく、実際に現物を自分の目で見て、完成品と基礎を実感してから図面を引く。そんな、現場でしかなかなか得ることができない体験ができる、「勉強」ではなく「経験」を教える場です。
産休後100%の復帰率
──資格に関してはどのような制度がありますか。
千葉 2級・1級建築士、施工管理技士、宅地建物取引士(宅建士)といった業務上必要な資格には手当てがつきます。ただし、資格を取るのは自己責任です。業務上、2級建築士はプロとして働く上での免許のようなものなので、取るのは当たり前と理解しています。ですから必要な部署のほとんどの社員が取っています。2級建築士なら平均1~2年で合格しているので、受験する際には上長に相談し、早めに退社して受験指導校に通ったり、本試験の1週間前から有給を取って試験に臨んだりしています。1級建築士となるとなかなか難しいので、その都度柔軟に対応していきます。
宅建士は、建築会社を運営していく要件として、事務方含め5人に1人は持っていなければならない資格です。そこで入社1年目は、業界の知識を教える意味も込めて宅建士の社内研修を行い、宅建士の取得をめざしてもらいます。2年目以降に資格取得をめざす人は、それぞれ外部の受験指導校に通っています。
──新卒社員は学生時代に宅建士を取っておくと有利ですね。
千葉 大変有利ですね。業界の知識のベースができているので、すぐに現場でOJTに入れます。その分同期よりもスタートが半年ほど早くなりますね。建築士試験を受けるためには建築科卒業後の実務経験が必要ですが、宅建士なら在学中に取れますので、入社前に宅建士資格を取得されている方は大歓迎です。
──特徴的な人事制度があればお教えください。
千葉 当社の設計部門は女性が半数近くと、業界内でも多い傾向があります。しかも女性の出産後の復職率は100%です。加えて、2人目の産休・育休を取る女性社員が圧倒的に多いのが特徴です。
実は当社は、自分が働きやすい環境や子育てしやすい勤務形態を、自分で考えて決めることができます。子どもが3歳になるまでは時短勤務で働く人が多いですが、その後は「サポート体制があるから周囲も納得の上で正社員に復帰したい」という人や、「契約社員として勤務し責任をちょっと減らして時短勤務を続ける」という人、そして「その後に復帰」という人もいます。働きやすくなる方法をそれぞれ自分で選択すればいいわけです。そうやって気持ち的にも時間的にも余裕があると2人目を考えられるので、当社は2人目率がとても高いんです。皆仕事ができるので、2人目の産休もすごく惜しまれて入っていきますね。
──資格取得をめざしている『TACNEWS』の読者に向けてメッセージをお願いします。
千葉 資格は、取ろうと決めたら早いうちに取ってしまいましょう。時間がないから、難しいからと言い訳せずに、思い立ったらすぐにでも行動して取るべきです。学習期間中は勉強できない日も出てくると思いますが、たとえその日休んでも、次の日はまた勉強を続ける。それが結果を生むはずです。
合格して資格を手にしたとき、そこにどんな幸せが待っているかをイメージしてください。新しい自分が生まれるチャンスを自分に与えるというのは素晴らしいことです。
[『TACNEWS』 2018年11月号|連載|人事担当者に聞く「今、欲しい人財」]
会社概要
社名 株式会社三栄建築設計
設立 1993年9月29日
代表者 代表取締役社長 小池信三
所在地 東京都新宿区西新宿1-25-1 新宿センタービル32F
事業内容
戸建分譲事業、注文住宅・請負事業、賃貸収入事業
従業員数
610名(2017年4月末現在)