日本のプロフェッショナル 日本の行政書士|2020年3月号

Profile

伊藤 浩

伊藤浩行政書士事務所 行政書士

伊藤浩(いとう ひろし)
1961年、北海道名寄市生まれ。成蹊大学法学部法律学科卒業。1996年1月、行政書士試験合格、同年5月、行政書士登録し独立開業。
「行政書士会の役職として、東京都行政書士会の台東支部長、理事、ADRセンター東京センター長、日本行政書士会連合会の専務理事などを歴任。現在は、東京都行政書士会の権利擁護推進委員会委員長や 日本行政書士会連合会の制度調査会(シンクタンク)委員などを務めている。その他に一般社団法人日本不動産仲裁機構専務理事、総務省不服委員会委員、国土交通省賃貸借トラブル相談対応研究会委員などを現任している。」

行政書士の扱う分野の幅の広さ複雑さはダイナミックであり、
おもしろさ、やりがいにつながっています

アイデア次第でビジネスチャンスを拓くことができるといわれている行政書士の仕事。その中で、自ら新分野を拓き、活躍を続けているのが行政書士の伊藤浩氏である。また、数百件の許認可を同時に進めるなどダイナミックな業務展開も行っている。そんな伊藤氏が行政書士をめざした理由から、顧客開拓の方法、新分野への挑戦、AIに対する考え方などについて詳しくうかがった。

行政書士の仕事のおもしろさに目覚める

 現在、行政書士として活躍する伊藤浩氏。高校時代にはすでに法律家になると決めていたため、大学入試に際しては法学部だけを受験。晴れて法学部に進学すると、憲法的アプローチに興味があったことから、まずは憲法から学び始めた。ところが次第に、憲法はその基礎となる行政法を勉強しないと理論的に理解できないことがわかってきた。過去の訴訟案件を見てみると、そのほとんどが行政法にかかわっていたのである。

 「憲法に比べ、行政法のほうが実務には近く、きちんと勉強しないと憲法が理解できないことがわかりましたので、大学では行政法を専攻しました。そして行政法分野の弁護士になろうと思い、司法試験の勉強を始めました。でも、司法試験は33歳までに13回受験しましたが、結局合格することはできませんでした」

 そんな伊藤氏の将来を決めたのは、当時手伝いをしていた弁護士事務所の弁護士によるひと言だった。 「『伊藤くん、行政法を勉強しているなら行政書士試験を受験してみたら』と言われたのです。『行政書士』の名前は聞いたことがありましたが、どんな仕事をしているのかわかりませんでしたのでそう伝えると、『それなら実際何をしているか見せてもらったら』と、知り合いの行政書士の方を紹介してもらうことになりました」

 実務の様子を見てみるとおもしろそうで、今まで自分が学んできたことも活かせそうだと感じた伊藤氏は、司法試験で学んだ知識を活かして行政書士試験に臨み、見事合格を果たした。

「本音をいえば、行政書士登録をして仕事をしながら司法試験の受験を続けるつもりでした。ところが実際に行政書士の仕事に携ってみると、受験勉強レベルよりはるかに難しくておもしろい。司法試験を受けながらできる仕事ではないし、実務をやるなら行政書士の仕事に専念しなければダメだと思い、司法試験の受験はやめました。あわよくば仕事をしながら司法試験も、という甘い考えは実務の前に一蹴されたのです」

渉外分野のために6ヵ月集中して英会話を学ぶ

 司法試験をあきらめ行政書士として歩んでいくことを決めた伊藤氏だが、実務のスキルはどうやって習得したのだろうか。

  「行政書士試験を受ける前後に、主要業務分野である、建設・宅地建物・運送・渉外・風俗・環境の6分野に携わる行政書士の方に仕事を見せてもらい、やらせていただく機会がありました。その時の手ごたえから、行政書士としてやっていけそうだと考え、独立開業しました。最初に手がけたのは、ビザ等の外国人関係手続きなど、渉外分野の仕事でした」 伊藤氏が渉外に着目したのは、渉外分野の仕事を手がけている行政書士の事務所にうかがったときの経験だった。 「その事務所には毎日頻繁に電話がかかってきていましたが、1日に何本かは先生が電話に出ても黙って切ってしまうんです。不思議に思って訊ねてみると、『おれは英語が話せないから日本語が話せる人としか仕事はしないんだ』というのです」。切ってしまう理由は英語での問合せ案件だからだったのだ。

  そこで伊藤氏は、英語の新聞や雑誌に「英語対応可能」と広告を出している行政書士がいるのか調べてみた。 「その結果、当時私が調べた限りではありますが、いなかったのです。そこで、その先生が取らなかった電話の件数分だけは仕事があるはずだと考え、英語の新聞と雑誌に『英語対応ができる行政書士』と謳う広告を出しました。するとそれから3年間、電話が鳴り続けたのです」 同業者が手を出さない分野で勝負を仕掛けた伊藤氏だが、当初から英語対応ができるほどの英語力はあったのだろうか。

「もともと英語は好きだったのですが、最初は実務で活かせるほどのレベルではありませんでした。そこで私は、広告を出すと同時に英会話学校に50万円の学費を払い、英会話の勉強をスタートしました。私が通った学校は、1講義単位の授業だけではなく、先生がいるサロンで何時間でも英会話の勉強をしていいというシステムがあったので、仕事があるときは仕事をして、空いた時間はすべてそのサロンにいました。そして先生に、『こういうことを話したいんだ』と渉外分野に関する本を渡して、実務でどう話せばいいのかを教わったのです。期間にして約6ヵ月、集中的に英会話を学びました」

  伊藤氏によれば、渉外の仕事で話す内容はほぼ決まっており、「あなたはどこから来ましたか」「今持っているビザの種類は何ですか」「これからどうしたいですか」「仕事の経験はありますか」「学校はどこを出ましたか」といった内容さえわかればよく、電話でビザに関する話ができれば実務はできたという。

 「だから、今日の天気は何ですか、趣味は何ですか、なんて話はできなくてもよかったんです。」

 渉外の仕事を行うことでスムーズに船出した伊藤氏だが、メインとしていたのもやはり渉外分野だったのだろうか。 「渉外分野以外にも最初からさまざまな分野の仕事を行ってきました。前述の6分野すべてを行ってきましたね。私は34歳で行政書士登録をしたのですが、登録後5年間、所属している東京都行政書士会の台東支部で最年少の行政書士だったおかげで先輩方にかわいがられ、様々な仕事を紹介してもらえたのです。実際、司法試験の学習経験のおかげで民法も得意だったため、相続、契約書の作成、内容証明、告発など、民法の知識を活かした仕事も数多く行いました」

 また集客という意味では、開業後3年間はポスティングを半年に1回程度実施していた。その頃はかなり反響がよく、ポスティングをするとすぐに電話がかかってきたという。

 「ポスティングをしている途中でお客様から電話をいただき、すぐにうかがったことが何回もありました。その頃はまだインターネットが普及しておらず、行政書士を探す方法も限られていた時代でしたので、相続の案件のように、依頼者と直接つながる仕事の場合は特に効果がありました。」

 ただ、こうした営業活動は約10年間で不要になったという。 「10年間は徹底的にやりました。広報・広告だけでなく、異業種交流会があれば参加し、趣味の会にも顔を出しましたが、ある程度お客様が集まってからは、新規顧客はすべて紹介からになりました。このため、一時期雇っていた営業スタッフも必要なくなりましたね」

「動物法務」という新分野を拓く

 主に前述の6分野の業務を行ってきた伊藤事務所だが、伊藤氏を特徴づける業務に「動物法務」がある。一般社団法人ペットフード協会が毎年発表する全国犬猫飼育実態調査によれば、2019年は犬が約879万7千頭、猫が約977万8千頭で合計約1,875万5千頭が全国で飼育されていると推計されている。これだけ飼育されていれば、何らかのトラブルが起ることもあるだろうし、最近ではペット関連のトラブルがマスコミで報道されることも少なくない。

 法的には2000年12月に従来の「動物保護管理法」が改正されて「動物愛護管理法」が施行されたが、この改正で飼い主の責任が広く求められるようになり、ペットショップなどの動物取扱業を始めるには届出が必要となった。そして2005年6月に「動物愛護管理法」が再改正され、2006年6月に施行されると、「動物取扱業の登録」「動物取扱責任者の選任」などが必要となったのである。

「動物愛護管理法が施行される前から、ときどきペットに関連する問合せが入っていました。他の行政書士に問い合わせても、ペットは飼ったことがあるけれどペットの法律はわからないと言われたそうで。私は相談内容を聞き、親身になって対応しているうちに、ペットショップなどの動物関係者の間で『伊藤なら対応してくれる』という話が広まり、問合せがすごく多くなりました。そんな中、動物愛護管理法の再改正が行われ、動物取扱業を始める際は、届出制から登録制になることが決まったのです。

 これだけ問合せがあり、その上法改正も頻繁にあるのなら、『動物法務』という新分野を作ってしまおうと考えました。そして『ペット業開業・営業ガイド(共著)』『あなたのペットトラブル解決します(共著)』(ともに角川学芸出版)の2冊の本を出しました。前者は動物取扱業での登録制にともなう開業・営業ガイドで、後者は一般向けのペットトラブル解決の本です。こうした出版物はそれまでほとんどなかったので、テレビや新聞、雑誌などマスコミでもかなり取り上げられました」

 この出版を契機に、マスコミに登場したりセミナーを開催したりすることなどで、多くの仕事の依頼があったことはいうまでもない。

「動物法務」という新分野を拓いた伊藤氏によれば、行政書士は毎年のように新分野を拓くことができる士業だという。

「動物法務以前にも、当時法改正に伴う新分野として取り組んでいた産業廃棄物(収集運搬業)の許可申請も、一時期かなり多くの案件を扱っていました。

最近だと、民泊に関連する仕事を専門で行っている行政書士もいます。また、最近登録制になることが決まったドローンの登録についても、新しい分野になるでしょう。

 このように、行政書士は毎年新しい分野を拓いていくことができるのです。

 行政が行う規制は、以前は入口を厳しくしてあとは更新しやすい形とすることが多かったのですが、最近の規制は、入口を少し緩めにする代わりに毎年の報告などを厳しくするようになってきています。こうなると、許認可の入口でも毎年の更新のための報告でも、専門家である行政書士が手放せなくなるのです。

全国300店舗の許認可を同時進行で行う

 開業後、順調に歩んできた伊藤氏だが、スタッフはいつ頃から採用したのだろうか。

「開業して仕事が順調に動き出してからは、1日20時間くらい働く日もありました。昼間はお客様のところや役所を回り、夕方帰ってきてから書類作成をして、気がつけば明け方。少し寝ていると朝9時過ぎにお客様からの電話で起こされるなんてことも多々ありました。1年間はなんとかがんばりましたが、これでは体が持たないと思い、3年目にはパートタイマーを雇い、電話対応と役所から手引きや書類をもらってくる仕事を担当してもらいました。4年目頃には3〜4名体制になり、5〜6年目には15名いたこともあります。当時はまだインターネットを使った仕事ができなかったので、役所に書類を提出したりする担当、書類作成担当、営業担当などを機能で分けて、担当ごとに3名ずつくらい採用していました。動物法務を立ち上げた頃にも10名程度はいたと記憶しています」

 現在の事務所は総勢6名で、伊藤氏含め行政書士が3名、試験合格者が1名、補助者が2名という陣容だ。ただ、依頼される業務によってはその業務専任担当のスタッフを雇うことがあるという。

「2018年、M&Aに関連した業務で、全国チェーンのスーパーマーケットの店舗の許認可を約300店舗同時に行いました。なぜ同時かというと、吸収合併される側の店舗はすべての許可を1回廃業して新規に許可を取得する必要があるからです。スーパーマーケットは、一般酒類小売業免許や食品販売業登録、飲食店営業許可など、1店舗で20から30種類の申請が必要になります。そして「合併日」という期限があるので、その期限までにすべての書類を作成して提出し、許可が済んでいなければなりません。中には実査が伴う申請もあります。すべてを終え、合併日をもって許可が発行されるようにしておかなければ、その日からの営業ができないわけです。

 このときは、全国の行政書士のネットワークを使うとともに、本部スタッフとして事務所に3名入ってもらいました。書類はすべて私のほうで作成しますが、役所への届出は、郵送可能なものもあれば直接提出しないといけないものもあります。そして実査が入る場合には行政書士の立会も必要になるので、ここでも全国のネットワークを活用しました。これらの進捗管理や指示は、本部スタッフにすべてやってもらいました。

  ここまでの規模の仕事は初めてでしたが、ダイナミズムを感じることができましたね」

行政書士はダイナミックで日々飽きることがない

 ダイナミズムを感じる業務に取り組む伊藤氏だが、開業当初から変わらず、一個人からの相談・依頼にも対応している。

「今後増えるであろう業務としては、死後事務委任契約があります。これは一人暮らしの高齢者が、自分が亡くなったらこういう人に連絡をして、葬儀屋さんはどこでお坊さんはこの宗派、納骨はどこにして、家の整理や電話・ガス・水道・電気を止める手続きはどこに頼むか、といった契約を私たちと結び、実際に亡くなられた場合、契約に基づいて死後の事務を行うというものです。以前から、遺言書の作成を行うことや遺言執行人になるケースはありましたが、遺言ではあくまで財産をどうするかということしか決められません。そこでこの3年くらいは死後事務委任契約が増えてきています。今後さらに増えるのではないでしょうか」

 行政書士の主要業務すべてを行ってきた伊藤氏だが、常に新しい分野への興味・関心は尽きないようだ。 伊藤氏にとって行政書士のやりがいはどのようなところにあるのだろうか。

「私は13年間、法律の勉強をしてきました。ですから、短期間の勉強で合格しました、という方には負けませんよ。行政書士の業務はダイナミックで日々飽きることがありません。行政法の幅の広さ、複雑さは、行政書士の仕事のおもしろさにもつながっています。そして直接お客様と話すことができて、喜んでもらえてお金を払ってもらえる。お客様から勉強させてもらうことも多々あります。

  行政書士はお客様がやりたいことを支援する仕事です。お客様の「こうしたい」をお手伝いして、規定や書類を作成して必要な許認可を取るので、感謝されることばかりの仕事です。

AIは「使いこなす」 恐れることなし

 AIの発達により仕事がなくなるともいわれている士業。その中に、行政書士が挙げられることもある。そんなAIの影響について、伊藤氏の考えを聞いてみた。

「例えば、マイナンバーカードを機械に差し込むだけ、住所や名前を取り込んで書類の作成ができるようになりました。といっても、だからどうしたとしか私は思いません。書類の作成はできても、AIに中間監査や実査の対応はできません。むしろAIを使いこなせば、私たち士業を助けてくれるものになります。そのぶん、人間にしかできない業務を私たち行政書士が行えるのです。

 アメリカには、話しかければその内容に関する判例が出てくるシステムもあります。例えば離婚調停について話しかければ、それに関連した判例を出してくれて、あなたのケースの裁判での勝率は70%です、などと教えてくれるそうです。ただ、その勝率が高いか低いかの判断や、実際に裁判を行うのかどうかは人間が決めることです。勝率70%ということは、30%も負ける可能性があるのですから、そこは人間が考えて対応するしかありません」

 日本の場合、法令があり、政省令があり、その下に通達がある。AIには、通達までを見ることができても、柔軟な判断はできないと伊藤氏は主張する。

「例えば周囲100mの土地の真ん中に風俗施設を作りたいという依頼があったとします。風俗施設は、所在地から200m以内に保護施設(学校や児童福祉施設など)があると作ることはできません。実はそれを利用して、計画を知った行政が風俗施設の許可申請提出の前に先回りして、保護施設を作ってしまうケースがあります。これを申請時点でAIに質問すると、保護施設があるため100%できないと回答します。ところが、日本各地の判例で行政側が負けている例はたくさんあります。理由は『権利の濫用』です。こうしたケースなどは、実際に現場を見て判断できるのは人間しかいないことの証拠です」

 AIはそこまで踏み込むことはできないため、専門家の存在価値は失われない。「AI」と聞くと何でもできそうなイメージを持ってしまうが、こと実務においては疑ってかかるほうがいいのかもしれない。

「AIには相談業務はできないと思います。離婚案件などでは勝率は出せるかもしれませんが、相談業務は無理でしょう。高齢者の方が『遺言を作りたいけれど、どうしたらいいでしょう』なんて話しかけても、答えるのは難しいと思います。相談者の思いなどを汲み取ったり共感したりしてあげられるのは、やはり人間だからこそです。確かに、なくなる仕事もあることは事実ですから、それを見極めることは大切です。けれどもすべての仕事がなくなるわけではありませんし、また新しいビジネスが誕生すれば、そこに行政書士のビジネスチャンスも生まれるはずです」

お客様は専門性で依頼する

 伊藤事務所には、試験合格者を含め行政書士が4名在籍している。このうち1名は伊藤氏の奥様なので、行政書士法人化を行おうとしたら、すぐに実行できる環境にある。その法人化について伊藤氏はどう考えているのだろうか。

「法人化を行うつもりはありません。なぜなら、法人化のメリットを感じないからです。例えば、法人化したからといって仕事の依頼が増えるかといえば、私は増えないと思います。お客様は法人だから依頼するのではなく、専門性で依頼していると思いますので、法人か個人かは関係ないでしょう。実際、私は一部上場企業の顧問を何社も行っていますので、法人でなければ顧問になれないということはないと思います」

 では法人化のメリットはまったくないのだろうか。

「遺言執行人や成年後見などをそのまま引き継げるという継続性の部分では確かにメリットはあると思います。しかし、私個人が持つ専門性は、残念ながら他の人に移すことはできません。実は開業して5~6年目から後継者を育てようとしたことがあります。いろいろとやってみましたが、一人ひとりバックボーンが違うので、それは無理だとわかりました。私は13年間法律を勉強してきましたし、開業してからも10年近く死物狂いでやってきた。この経験から培われた専門性を引き継いでもらうことはできないんですよ。だから、私が亡くなったら事務所は閉めて、それぞれの業務をできる先生に引き継ぐように言っています」

 なんとも大胆な発言だが、伊藤氏の真意はお客様のことを思えばこそだった。

「『事務所』という器が同じだといっても、同じことができるわけではありません。それを無理にやろうとしたらお客様に迷惑がかかります。仮にナンバー2がいて、私の後を引き継いだとしたら、お客様は私と同じような専門性を持った業務に期待するでしょう。でもそれは簡単にはできないので、お客様の期待に応えられないことになってしまいます」

 なぜ同じことができないのかについて伊藤氏は、「部分的にはできても、総合的に見ることは難しいから」という。

「例えば外国の方が日本に来て会社を作りたい、自動車の輸出をしたいと希望したとします。すると、会社の設立、古物営業の許可、ビザの取得の3つが総合的に絡んできます。実際に会社が動き始めると、輸出の際の関税の手続きもある。会社設立、古物商許可、ビザ取得のそれぞれを個々の業務としてできる人はいると思います。でも、総合的に見た上で会社設立、古物商許可、ビザ取得を行わないと、お客様にとっての最適解にはならないんです。

ですから事務所の業務を部分的に引き継いで進めていくことはできると思いますが、全体の業務を同じかたちで続けていくのは難しい。この意味で、閉めた方がいいと言っているんです」

複数資格の勉強が業務の幅につながる

 お客様にとっての最適解を追求する伊藤氏は、業務の状況に合せて事務所の規模をも変えて対応している。ただでさえ幅広い行政書士の業務分野を網羅していくために、実は伊藤氏はいろいろな資格試験の勉強をしており、合格もしているのである。こうした努力が業務の幅の広さにつながっているといっていい。

「宅建業の許認可手続きをやっていたときに、宅建業法の理解を深めたいと思い宅地建物取引士の勉強をすることで、開発行為や土地の造成などの知識が身につきました。さらにその先には測量士の勉強があると気づき、そちらも勉強することで、建築基準法などの知識を学ぶことができました。宅地建物取引士と測量士補は合格・登録しています。これらの勉強は、建築基準法の基準や土地の開発行為の規制など、産業廃棄物(収集運搬業)の許可に役立っています。その他にも、AFPも学びましたが、これは相続案件の際に役に立ちましたね。」

  最後に伊藤氏から資格取得をめざして勉強している方々に向けてアドバイスをいただいた。

「『行政書士資格を取得して何ができるか』ではなく、『自分が実現したいことのために行政書士資格をどう活かすか』というように考えれば、行政書士の仕事には無限の可能性があると思います。それだけ、行政書士はできる業務の幅が広いのです」

[TACNEWS|日本の行政書士|2020年3月号]

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