特集 学生時代から勉強を始め、22歳で官報合格!
~令和5年度税理士試験合格者インタビュー~

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Profile

砂邊 大輝(すなべ だいき)さん

ゆい税理士法人勤務

2001年生まれ、沖縄県出身
専門学校那覇日経ビジネス キャリアビジネス科 卒業
TAC受講メディア:ビデオブース講座(TAC沖縄校那覇校舎)
学習開始時の年齢:19歳

「受験者の年齢層が高い」と言われることが多い税理士試験ですが、令和5年度税理士試験より受験に必要な資格要件が緩和され、会計科目の簿記論と財務諸表論については誰でも受験できるようになりました。今後は若年層の受験者数が増加するものと予想されます。今回の特集では、19歳から税理士試験の勉強を開始し、22歳で見事官報合格(5科目合格)を果たした方にTAC「合格祝賀会」東京会場でインタビューを実施。資格取得をめざしたきっかけや、10代のうちに税理士の受験勉強を始めたメリット、将来の夢などをお話しいただきました。
※本インタビューは2024年1月に実施しました。

沖縄の子どもの貧困問題に関心、まずは "稼げる" 仕事を

──令和5年度税理士試験の合格、誠におめでとうございます。また、今回の合格祝賀会には、地元沖縄からお越しくださりありがとうございます。合格を聞いてから本日までの率直なお気持ちを聞かせてください。

砂邊 官報で自分の合格を目にしたときは、うれしさよりも「目標の3年で受験勉強を終わらせることができた」という安心感のほうが強かったです。喜びの気持ちは時間が経つにつれて湧き上がってきました。今日はTAC沖縄校那覇校舎で一緒に勉強し合格した仲間と東京の会場にやってきました。壇上で少しお話しさせていただく時間もあるようなので、緊張していますが楽しんできたいと思います。

──では、砂邊さんが19歳から勉強を開始し、22歳で官報合格をつかむまでの道のりをお聞きしていきたいと思います。税理士という仕事には以前から興味をお持ちだったのでしょうか。

砂邊 高校3年生まで、税理士という存在すら知りませんでした。もともと数学が好きだったので、将来は数学の教員になることを考えていました。しかし、周囲の友だちや知り合いが経済的な問題で苦しんでいるのを知り、その様子を見ているうちに、「沖縄の子どもの貧困を解決できるような仕事をしたい」と思うようになりました。そのためにはまず、自分自身が”稼げる”仕事につく必要があると感じました。
 将来の仕事について考えるようになった高校3年生の夏頃、母から税理士という仕事があることを聞きました。母は事務の仕事をしているのですが、「経理作業のときにわからないことがあると、税理士の先生が親切に教えてくれて、とてもお世話になっている」と感謝していました。また「税理士の仕事は、あなたの好きな数字を扱うものだから、やってみたら?」と勧めてきたのです。税理士という仕事に具体的なイメージは持っていなかったのですが、国家資格が必要な職業なら収入も安定するだろうと思いました。そこで、高校を卒業後に簿記や税理士試験の勉強を手厚くサポートしてくれる専門学校に入ったのです。

──難関と言われる税理士試験に挑戦することに迷いはありませんでしたか。

砂邊 税理士試験がどれくらいの難易度なのかわからずに勉強を始めましたね(笑)。高校まではバスケットボールに熱中しており、普通科に通っていたので会計の勉強もしたこともありません。知識ゼロの状態からのスタートでしたが、「やるならしっかり吸収し、最短で合格しよう」とは決めていました。

会計用語がわからず苦戦、19歳で初めて勉強の楽しさに気づく

──初めて簿記を学んだときの感想を教えてください。

砂邊 何もかも初めてで、最初はまったく理解できませんでした。用語がわからなくて、「『仕訳』って何?」「『賃借』ってどういうこと?」と一つひとつ覚えることから始めました。それでも、数字には強かったのですぐに勉強が楽しくなりましたね。また、普段から物事を分析する癖があるので「なぜこの仕訳を切らないといけないのか」「この取引はどうなっているのだろう」と自然と考えるようになり、理解につながっていったように思います。

──そうして簿記の知識ゼロから、入学1年目で日商簿記検定1級に合格しています。

砂邊 はい。入学した年の11月半ばの合格をめざして、4月からノンストップで3級から1級まで勉強をした結果です。1日7~8コマの講義を朝から夜8時まで受け、土曜日も登校して勉強をしました。それまでこれほど勉強をしたことがなかったので、大変でしたが打ち込めることがうれしかったです。1クラス25名のうち、最終的には私を含めて3名が日商簿記検定1級に合格しました。

──日商簿記検定1級の合格は、税理士試験の勉強を始めるにあたって自信になりましたか。

砂邊 はい。自分の実力が短期間で上がったことが実感でき、税理士をめざす上での自信になりました。また専門学校の奨学生制度を利用できることになったので、通っていた専門学校と提携しているTAC沖縄校那覇校舎にも通えるようになったことも心強かったです。

──税理士試験対策を本格的に開始したのは、いつ頃でしたか。

砂邊 試験勉強を始めたのは、専門学校1年目の日商簿記検定1級の合格がわかったあとの2月からです。TAC沖縄校が専門学校から歩いて行ける距離にあるため、早朝から夕方までは専門学校で授業を受け、終わったらTAC沖縄校に移動して夜まで勉強しました。また、TACの講義はDVDやWebでも受講ができるため、専門学校でお昼を食べながらスマホでTACの講義を視聴し、時間を有効活用していました。

無駄な時間は一切作らない、3年間限定で受験勉強中心の生活に

──学生生活と受験勉強の両立で工夫したことや意識したことを教えてください。

砂邊 「無駄な時間は作らず、使える時間のすべてを税理士試験の勉強に充てる」と決めていたので、専門学校の2年目からは学校の近くに引っ越し、通学時間を短縮しました。税理士試験にかかる費用は専門学校でサポートしてもらえたので、アルバイトをする時間も節約できてありがたかったです。また、沖縄は法事など家族や親族が集まる行事が多いのですが、そうした行事はだいたい10時か11時に始まるので、朝4時に起きてその日の学習ノルマをだいたい終わらせてから行事に参加し、帰ってからも勉強する、など調整していました。

──勉強中心の生活をされていたのですね。息抜きなどはしていましたか。

砂邊 たまにスマホで音楽を聴くくらいで、友人と会って遊んだりするようなことはがまんしていました。

──学習開始当初は、合格までのプランをどのように考えていましたか。

砂邊 3年で5科目合格すること以外は頭にありませんでした。それまで家族に金銭面で頼ってきたので急いで経済的に自立する必要がありましたし、税理士試験を最優先にした生活を続けるのは体力的にも3年が限度だと感じたからです。

消費税法が苦手科目、スピードを上げる対策に切り替えた

──1年目から3年目までの受験科目と合格科目を教えてください。

砂邊 1年目は簿記論と財務諸表論を受験し、どちらも合格しました。2年目は法人税法と消費税法を受験しましたが、法人税法のみ合格で消費税法は不合格でした。3年目は相続税法と消費税法を受験し、どちらも合格。3年目で5科目合格を達成しました。

──税法科目はどのように選びましたか。

砂邊 専門学校の方からの提案で、実務でそのまま活かせるように、法人税法・消費税法・相続税法を選択しました。周囲に税理士の方がいなかったので、どの科目をとればどのような仕事につながるかがわからなかったため、具体的にアドバイスをしてもらえて助かりました。

──現在、沖縄の税理士法人に勤務されていますが、「どの場所でどのように働くか」はいつ頃から考え始めましたか。

砂邊 2年目に法人税法と消費税法を勉強しているあたりで将来のことを考え始めました。「東京に行って4大税理士法人のどこかに挑戦する」という選択肢が頭に浮かんだこともあります。しかし、TACの自習室でいろいろな税理士事務所の方とお話できたことで、やはり自分は地元の人間として沖縄の中小企業をサポートしながら、将来的には子どもの貧困などの大きな問題に取り組んでいきたいという初心を貫こうと思いました。

──教材の使い方や暗記の工夫など、学習方法について教えてください。

砂邊 ノートは特に作らず、TACのテキストの余白に書き込みながら繰り返し読み込むことを基本としていました。間違いやすいところには付箋を貼って、1週間に1回、2週間に1回と間隔を空けて復習し、完全に頭に入ったら付箋を外すようにしていました。また、答案で表現すべきポイントをつかむためには、暗記すべき理論がテーマごとにまとめられたTACの基礎理論集の『理論マスター』も手放せませんでした。とてもよくできているので、「これさえやっていれば合格できる」と思いましたね。何度も繰り返し読み、元の条文も確認することを怠りませんでした。

──得意科目や苦手科目はありましたか。

砂邊 苦手だと感じていたのは消費税法です。消費税法だけは2年目で不合格、3年目で合格できました。法人税法・消費税法・相続税法と試験を受けてみた結果、消費税法は知識以上に答案作成スピードが求められている印象がありました。法人税法と相続税法は知識で勝負できるところが大きく、自分としても得意でしたね。

──消費税法が不合格だったとき、その分析や対策はご自分でされたのですか。

砂邊 ひとりでは難しかったので、周囲の力を借りました。TAC沖縄校は講義を受けたあとにみんなで討論したり、自習室で情報交換をしたりなど、受講生同士が気軽にコミュニケーションをとる雰囲気があります。そこで、消費税法を受けた経験のある先輩たちに話を聞き、試験傾向を把握しました。他の試験に比べて圧倒的に時間が足りないというのはわかっていたので、得意の計算で時間を稼ぎつつ、理論部分のスピードをより上げていく戦略でいくことにしました。この「スピードに重点を置く」という対策方法についても先輩方に相談し、アドバイスをもらえたので自信を持って進めることができました。

理論マスターが合格の要、本試験当日まで休まず回す

──これが合格につながったと感じたポイントはありますか。

砂邊 本試験当日まで各科目の『理論マスター』を1日も間を開けずに繰り返していたことだと思います。法律の条文をわかりやすく解説してあるので、読み込めば読み込むほどに理解が深まっていきました。1日のうちで最も重要視していたのが『理論マスター』を回す時間でしたね。知識重視の法人税法ならば1日必ず3時間、消費税法ならば2時間と時間を決めて読むようにし、残りの時間で計算や講義をこなす、というのが習慣になっていました。1日でも止めてしまうと、確実に理解や定着が遅くなってしまうので、「何があっても休まない」と決めて死守しました。

──学生時代から税理士受験をスタートさせたことのメリットはありましたか。

砂邊 私の場合は税理士試験を受けるために専門学校に入ったので、普通の大学生や社会人の方と比べても時間の制約が少なく、受験勉強中心に生活リズムや環境を整えることができたと思います。また、3年で合格するために、ある程度睡眠時間を削る必要もありましたが、多少無理がきく年齢の若さがあったのもよかったと思います。

──TAC講師とのやりとりで、印象深いエピソードがあれば教えてください。

砂邊 TAC沖縄校には長年税理士講座を受け持つベテランの講師がおり、サポートやアドバイスが的確でいつも助けられていました。受験した年は毎回合格の報告をしに行っていたのですが、私以上に喜んでくださるのがうれしかったです。那覇校舎は受講生こそ少ないですが、毎年着実に税理士試験合格者を輩出している点がすばらしいと思います。演習後にディスカッションしたり、答案を見せ合ったりする受講生同士のモチベーションの高さも、いつも刺激になりました。

──TACの教材のほかに、何か使ったものはありますか。

砂邊 他校の公開模試を受けたことはありますが、模試も本試験もTACの教材だけで十分対応できました。教材で他に使ったものはありません。TACのテキストで特によかったのは、条文に忠実な計算過程が学べる点です。また繰り返しになってしまいますが、『理論マスター』なしでは合格することができませんでした。テキストを見てわからないことがあれば、自分で調べたり、質問したりする。『理論マスター』の中で引っかかったところがあれば、実際に条文を確認する。それを繰り返すことで、実力がついていくのがわかりました。『テキスト』『理論マスター』『条文』という厳選された3点で効率よく学習できていたと思います。

職場も学びに意欲的、税務の枠を超えて知識を吸収し続けたい

──就職先選びで大事にしたことや、現在の事務所に正式に入られるまでの経緯を教えてください。

砂邊 TAC沖縄校には、税理士事務所で働きながら5科目合格をめざす方もいらっしゃいます。いろいろな方と自習室で顔なじみになるうちに、今の事務所の先輩に「うちはこんな感じだよ、来てみない?」と誘っていただいたのがきっかけで、税理士試験を受ける3年目のときにアルバイトを始めました。当初は「税理士業務を体験しながら勉強させていただくのが目的で、最終的に就職するのは別の事務所になるかもしれません」と正直にお伝えしていました。けれども、他の事務所をいくつか訪問してみて「やっぱりここが自分に合っている」とわかったので、合格後も税理士として働き続けることにしました。

──なぜ今の事務所が最も合っていると感じたのでしょうか。

砂邊 1年目から担当を持たせてもらえるので、いろいろな経験を積んで早く一人前になれそうだと思ったからです。また、残業時間が少ないため、自分のための勉強する時間が確保できる点にも魅力を感じました。今の事務所には、所長を入れて3名の税理士が所属しています。みなさん全員働きながら官報合格をつかんだ方たちで、他にも働きながら4科目に合格された方もいます。パートタイム勤務をしながら社会保険労務士試験をめざしている方もおり、事務所全体で学ぶことに意欲的です。このいい雰囲気の中で自分も税理士として成長していこうと思い、今後もお世話になることに決めました。

──これから、どのような税理士として活躍していきたいですか。

砂邊 まずは、税理士としてスキルを磨いて経験を積んでいきたいです。現在の事務所では、沖縄県内の中小企業の税務を主にサポートしています。沖縄の税理士は、担当企業の経営者の方と密におつき合いするのが大きな特徴で、業務の内容はもちろんのこと、社内外の人間関係や、時には経営者のご家族の事情までをお聞きしながら広い視野を持ってお手伝いしていかなくてはいけません。そのためにも、税務だけではなく、社会保険労務士の領域や経営についても勉強していく必要があると考えています。
 将来の希望としては、最初にお伝えした通り、沖縄の子どもの貧困問題を解決するような活動をしたいです。まずは税理士として私の顔をみなさんに知っていただいて信頼関係を構築し、協力してくださる企業さんを集め、沖縄全体で困っている子どもたちを減らす取り組みができたらいいなと思っています。そのためにも、「税理士」という枠にとらわれずに活躍していきたいです。

──最後に、現在学習中の方やこれから学習を始めようとしている方に向けてメッセージをお願いします。

砂邊 試験に合格することは大切ですが、それ以上に、社会に出て「税理士と名乗ることの重み」を想像することが大切だと思います。自分が下した業務上の判断が、担当する企業の運命を左右するかもしれないと思うと、どの論点も「苦手だ」などと言ってはいられません。受験勉強中からとことん調べ、考え尽くす姿勢を持ち、税理士になってからも当たり前に勉強を続けることが重要だと感じます。
 受験の資格要件が緩和されて会計科目が受けやすくなり、私のような若い世代でも税理士に挑戦しやすくなったのはとてもいいことだと思います。合格のその先を常に意識して、目の前の勉強に取り組んでほしいです。

[『TACNEWS』特集|2024年4月 ] 

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