特集
令和元年度 不動産鑑定士試験
最年少合格者が語る合格への道
勉強を生活の一部にして合格。
将来は独立してさまざまな世界を見てみたいです。
令和元年度不動産鑑定士試験において、昨年度に続き、TAC不動産鑑定士講座の受講生が最年少合格の栄誉に輝きました。現在、関西学院大学法学部2年生の滝本涼太さんです。およそ1年2ヵ月という短期間で合格を果たした滝本さんに、不動産鑑定士の資格取得をめざしたきっかけや受験時代の勉強法、将来の夢などについて、TAC不動産鑑定士講座の高橋信也先生とともにお話をうかがいました。
※当記事は2019年12月に取材しました
左から
■TAC不動産鑑定士講座
高橋 信也(たかはし しんや)先生
TAC不動産鑑定士講座 講師、不動産鑑定士。2003年、不動産鑑定士登録。TAC不動産鑑定士講座においては、専門科目である鑑定理論の統括講師を務めている。豊富な実務経験を生かした的確な講義内容で人気を博している。
■滝本 涼太(たきもと りょうた)さん
1999年12月生まれ、岡山県出身。岡山県内の工業高校を卒業後、グローバル入試制度により関西学院大学法学部政治学科に入学。大学1年時より不動産鑑定士試験の学習を始め、令和元年度試験において、最年少での合格を果たした。
工業高校からグローバル入学試験で大学進学へ
──本日は、令和元年度不動産鑑定士試験を最年少の19歳で合格した滝本涼太さんと、TAC不動産鑑定士講座の高橋信也先生にお越しいただきました。
高橋 滝本さん、まずはこのたびの合格、本当におめでとうございます。そして、今日はちょうど20歳の誕生日だそうですね。二重にお祝いしないとですね。
滝本 ありがとうございます。目標通りに合格することができてうれしいです。
──今回、最年少での合格となりましたが、合格したときのお気持ちを教えてください。
滝本 自分自身がうれしいのはもちろんですが、TACの受講料など、受験に関わる費用を捻出してくれた両親も喜ばせることができてよかったです。
──滝本さんは工業高校から関西学院大学法学部へ進学され、入学後に不動産鑑定士(以下、鑑定士)の資格取得をめざされたのですね。
滝本 はい。小学校・中学校ともに生まれ育った地元の学校に通ったのですが、その間ずっとサッカー部に所属し、ひたすら練習漬けの毎日を送っていました。そのため正直に言えば、勉強は全くといっていいほどしていませんでした。
高橋 サッカー少年だったのですね。中学卒業後の進学先として、工業高校を選んだのはなぜですか。
滝本 当時はまだ自分の信念というものを持たずにいて、ただ周囲に工業高校へ進学する人が多いから自分も、といった程度の認識で選んだ進路だったのです。高校卒業後は、そのまま就職するつもりでした。
高橋 それが大学をめざすようになったのには、何か大きな転機があったのですか。
滝本 高校1年生の時、ボランティアと文化交流を目的にタイに1ヵ月滞在したのですが、初めての海外でさまざまな面で日本との違いを感じ、大きなカルチャーショックを受けました。それで英語や異文化について深く学びたいと思い、大学進学を見据えて勉強を始めようと決意したのです。国内外の大学をリサーチした結果、異文化を専門に研究する教授が多く、国際色豊かな関西学院大学を志望することにしました。そしてグローバル入学試験(世界で活躍する人材獲得をめざし、英語による資格試験のスコアなど所定の要件を満たした者が出願できる)に合格して、海外文化の中でもより関心を抱いている法律や政治について学ぶため、法学部政治学科の国際法政コースに進みました。
──その後、鑑定士を知り、めざすようになった経緯を教えてください。
滝本 大学入学後まもなく、生協に置いてあったパンフレットを見かけたのが、鑑定士という職業を知ったきっかけです。その後、資格取得をめざして勉強を始めたのが、大学1年生の6月でした。
高橋 他にもいろいろな資格のパンフレットが用意されていたと思いますが、その中で鑑定士を選んで学ぼうと決めたのはどうしてですか。
滝本 時間とお金をかけて資格を取るなら、自己啓発などのためではなく、将来はそれで食べていくんだという決意でいました。そしてせっかくチャレンジするならより難しい資格のほうがやりがいがあると考え、三大国家資格といわれる「公認会計士・弁護士・鑑定士」から選ぶことにしました。この中でも合格者数が少なく、希少性の高い鑑定士に狙いを定めたのです。
高橋 鑑定士は全国でも8,000人強と、公認会計士や弁護士などに比べ、有資格者の数はかなり限られていますからね。パンフレットを見たとき、鑑定士の仕事は楽しそうだと思えましたか。
滝本 はい、僕は旅が好きで毎月のように旅行していたので、地方出張などがあると知りワクワクしました。
高橋 不動産の鑑定評価の仕事は全国でありますからね。事務所次第というのが大前提ですが、私の場合、独立する前に勤めていた鑑定事務所ではかなり頻繁に地方出張があったので、旅好きにはとても向いている職業だなと思いました(笑)。全国に支社を持つ鑑定事務所の場合、地方の案件はそれぞれの支社が受け持つことが多いようですが、支社を持たない中小規模の鑑定事務所の場合、担当者が各地へ出向いての鑑定になりますからね。
マイペースで学べるWeb通信講座を活用
──資格取得に向けて勉強を始めるにあたり、TACでの受講を決めたポイントはどこにあったのでしょうか。
滝本 何といっても合格実績です。他の受験指導校に比べて、合格者数が圧倒的に多いですから。
高橋 教室講座ではなくWeb通信講座で受講することにしたのはなぜでしょうか。
滝本 大学までの通学圏内にはTACの校舎もありましたが、移動時間や交通費などを考えると、自宅でWeb講義を受講するほうが効率的だと思ったからです。
高橋 通信生によく聞かれる悩みとして、「己を律することの難しさ」があります。通学生なら教室へ行きさえすれば否応なしに勉強できますが、通信生の場合、自宅ではついダラけてしまい、なかなか計画通りに勉強が進まないという方もいますね。その点は不安にはなりませんでしたか。
滝本 自宅での学習に不安はありませんでした。というのも、高校時代、大学受験を決めてから英語を平日4時間、休日8時間勉強して、TOEIC® L&R TESTで820点を取得するまでになった経験があるからです。そこで身につけた学習習慣は、鑑定士試験の勉強にも活かせると思いました。
高橋 通信生は学習ペースなどを自分でしっかりコントロールしないと、どんどん講義から遅れていってしまいます。それをこの若さでやり遂げたのはすごいことですね。Web講義ならではのよさや、苦労した点はどんなところにありますか。
滝本 講義を何度も繰り返して視聴できるなど、自分のペースで勉強できるのが魅力です。逆に苦労したのは、疑問点が生じたときですね。TACでは、質問メールなどの制度が整っているので安心でしたが、やはり教室で先生に直接質問するのに比べると回答をいただくまでに多少タイムラグがあるので、あまり質問事項を作らないよう、講義をしっかり集中して聞き、できるだけ視聴中に理解するよう心掛けました。
ひたすら「反復」することで莫大な暗記内容をカバー
──大学生活と受験勉強はどのようにして両立させていましたか。平均的な学習スケジュールを教えてください。
滝本 平日は6時間、休日は8~9時間ほど鑑定士の勉強をしました。時間割がきっちり決められていた高校時代に比べれば、大学に入ってからは多少時間的に余裕がありました。
高橋 それでも、大学に通いながらその勉強時間を1年間もキープし続けるのは大変だったのではないですか。
滝本 可能な限り鑑定士試験の勉強に時間を割きたかったので、授業選択では出席日数が少なくて済む科目や鑑定士試験の教養科目と内容が重複する科目を選ぶなどして、大学生活以外の時間はできるだけ試験勉強に充てられるよう工夫しました。
高橋 サークル活動やアルバイトなど、一般的な大学生活を送りたいという気持ちはありませんでしたか。
滝本 大学は社会人になるための準備期間だととらえていたので、ブレることはありませんでした。まとまった準備期間をとれるのは、大学生の間だけですから。
──自宅学習でコンスタントに勉強し続けられた秘訣は何だと思いますか。
滝本 元をたどれば、勉強を始めたきっかけにある気がします。僕はサッカー部に所属し、小学校3年生から中学校3年生までゴールキーパーを務めてはいたものの、実は本気で何かに取り組んだ経験がありませんでした。それで、このまま人生を過ごして終えるのは悲しいなと思って、1回くらい本気で何かに打ち込みたいと思ったときに浮かんだのが「勉強」だったのです。勉強はスポーツと違って、努力が結果につながりやすい。だからとてもやりがいを感じて、目標に向かって勉強するのが苦になりませんでした。それが根本にあるので、鑑定士試験の自宅学習でも、よそ見することなく勉強できたのだと思います。
高橋 高校時代からの強い決意が、受験生活を支えてくれたのですね。特に得意な科目とそのポイントを教えてください。
滝本 得意なのは鑑定理論です。この科目は、とにかく理解して暗記する作業を愚直に繰り返すしかありません。TACのカリキュラム通りに学んでいけば、無理なく得意科目にすることができると実感しています。
高橋 不動産鑑定評価基準(以下、基準)は、7割程度は暗記できましたか。
滝本 農地・林地の評価方針や各論第3章の一部以外は、ほぼ暗記できていました。
高橋 それはすばらしいですね。鑑定理論を得意科目にするためには、基準の暗記は最低条件ですからね。重要箇所の暗記がきちんとできていれば、短答式試験は合格できます。しかし、論文式試験の場合、問題に対して基準の規定と理論に基づき自分で解答を組み立てていかなければなりません。ですから、アウトプットのトレーニングを徹底しなければ、論文式試験には合格できないのです。1年という短い期間で合格するためには、インプットとアウトプットのバランスが重要ですが、どのように実践しましたか。
滝本 勉強を始めてから受験が終わるまで、常にインプットは続けていました。アウトプットに関しては、答練(答案練習)をしっかりこなしましたが、それでも少し足りないと感じて直前期にオプション講義の「論文特効ゼミ」を受講し、そこで配付される『論文マスター問題集』を繰り返し解きました。実は当初、過去問題集をひたすら解いていたものの、その中には出題頻度が低い問題も多く非効率に感じたのです。実際に論文特効ゼミを受講してみて、『論文マスター問題集』を解くほうが100倍ためになると実感しました。
高橋 それは論文特効ゼミを担当する身として、とても励みになる感想ですね(笑)。応用答練や直前答練、『総まとめテキスト』に載っている問題、『論文マスター問題集』の基礎と応用。受講生の方々にはこれらをきちんと回していけば、鑑定理論のすべての論点をムダなく網羅できると体感してもらえると思います。過去問題集には過去の試験で実際に出題された問題がすべて載っていますので、言い換えれば、今後は出題される可能性の少ない、クセの強い問題なども混じっています。ですから、こればかりに偏ると必要以上の労力を割いてしまう可能性もありますね。
滝本 『論文マスター問題集』で必要な基礎知識をしっかり押さえることが、合格への一番の近道だと思います。
高橋 論文特効ゼミでは、それまでの講義の総ざらいとアウトプットを行い、残りの数ヵ月でそれを復習していけば合格できるレベルに到達できることを目的としていますから、特に苦手意識のある方におすすめです。他に受講したオプション講義はありますか。
滝本 全国公開模試の結果が想定以下だったので、計算問題の得点力をアップするために「会計学計算マスター」を、それから問題演習でアウトプット力を強化するために「アクセスα(基礎編)」と「アクセスβ(応用編)」を、試験直前の7月に受講しました。
──オプション講義を受講した感想はいかがでしたか。
滝本 どれもよかったですが、特に論文特効ゼミについては、短期間で絶対合格したいと望むなら、受講して決して損はありません。というのも、この講義で身につくレベルに独学で到達するのは難しいと思えるからです。そもそも、鑑定士試験の論文用の市販教材はなかなか手に入りませんからね。
高橋 苦手な科目についても教えてもらえますか。
滝本 民法です。この科目は、論証例を覚えるだけでなく事例を分析して論点を抽出しなければなりませんが、僕はアウトプットが遅く、論証例を覚えてもなかなか得点に結びつきませんでした。そこで、答練や『総まとめテキスト』に掲載されている問題を解くなどアウトプットの練習量を増やしたのはもちろんですが、一番効果的だったのは論証例を整理して覚えることでした。論証例を単元ごとに整理しグループ分けして記憶すると、テキストでは対応できないいわゆる「捨て問題」も判別できるようになり、最低限、他の受験生に差をつけられないラインまで引き上げることができました。
高橋 そのさじ加減こそ、短期合格に欠かせないポイントです。合格のためには、完璧であることは必要ありません。限られた時間で絶対に外せない点は講義でしっかり理解し、それ以外は勇気をもって切り捨てるという割り切りが功を奏しましたね。講師は講義では試験に出やすい論点を重点的に教えますが、テキストにはそのほか、念のために押さえてほしい論点なども入れざるをえません。このため、講義をきちんと消化しきれていないと復習の際にポイントがボヤけてしまいます。受講生の皆さんには、すべてを均等に覚えようとするよりもメリハリを重視してほしいですね。
では、苦手科目も含めて、勉強するときに気をつけていたことはなんですか。
滝本 特別なことはしていません。とにかく、「反復」を意識しました。繰り返し、記憶できるまで何十回でもやるということです。その際、「エビングハウスの忘却曲線」に沿って、講義の翌日に1回目の復習をしたら次に1週間後、その次は2週間後、その次は1ヵ月後……というように、脳のメカニズムに沿った復習サイクルを心掛けました。
それと、経済学の計算問題については、TAC出版から出されている経済学の計算問題集が、問題数も多くよくまとまっていて重宝しました。
高橋 講義中は、講義録を見るだけでしたか。それとも、講師の板書をその都度ノートにとっていましたか。
滝本 ノートそのものはとらず、重要なポイントは直接テキストに書き込んでいました。性格的に、ノートに書いても、あとから見直すことはないだろうと思ったんです。それよりもテキストに追記することで情報を一元化して、視覚的に覚えやすくするほうが向いていました。
高橋 なるほど。受講生は「きっちりきれいにノートとる派」と「テキストにどんどん書き込む派」の2タイプに分かれますね。特にWeb通信講座の場合、講義録をダウンロードできて便利なのですが、それに安心してしまうと講義中はただぼんやりと眺めているだけになりかねません。そこを、必要な情報をテキストに落とし込み、講義内容の理解度を深めたのはすばらしいですね。
精度の高い全国公開模試で立ち位置と課題を確認
──勉強をする上でつらかったことや困ったことはありませんでしたか。
滝本 応用答練が始まった頃は、テキストを見ながら解答しているのに、なぜこんなに成績が悪いのかと焦りました。
高橋 TACのカリキュラムでは、応用答練の時期からは上級本科生の方が合流してきますので、ここでの実力差は歴然です。ただし初学者はそこから知識を積み上げてアウトプットを実践していけば、最終的にはキャッチアップできます。とはいえ、ここで点数や順位だけを見て落ち込んだり、焦ったりする人は多いですね。我々講師陣もそこをしっかりサポートしていきますが、受講生自身もへこたれない、強い気持ちをキープしてほしいですね。全国公開模試の順位はいかがでしたか。
滝本 1回目が全国で34位、2回目が20位でした。通信生だったため受講生仲間がいなかった僕は、それまでは自分の立ち位置がわからず不安でした。でも全国公開模試で、自分の目標には届かずともそれなりの成績を出せてようやく安心することができて、「評価の低かった鑑定理論の演習部分をもっとがんばろう」などと課題も明らかになってよかったです。TACは受講生数が多いため、自分の相対評価が高い精度でわかったのは、とても有用でした。
──そうした不安な中で勉強していると、途中で投げ出したくなったりはしませんでしたか。
滝本 暗記量も多いですし、答練の結果が思わしくないときなどは「やばいな」とは思ったものの、投げ出したいと思ったことはありません。両親から受講料を払ってもらい、応援してもらっているし、投げ出すわけには絶対いきませんから。
高橋 気分転換にしていたことはありますか。
滝本 TACの自習室や図書館などに勉強場所を変えたり、趣味のダンス動画をYouTubeで観たりして、気持ちを切り替えるようにしていました。また、甘いものが大好きなので、勉強がはかどった日はたらふく食べました(笑)。それから、2019年度の『TACNEWS』の合格者インタビューで、私と同じ19歳で最年少合格を果たした小澤堅成さんの記事を読んで励みにしていましたね。
高橋 健康をキープするために注意していたことはありますか。
滝本 運動などは特にしていませんが、常に同じペースで勉強するようには心掛けました。直前期だからと詰めこまず、1日7時間は睡眠をとるようにしていました。
高橋 鑑定士試験は、学力はもちろんですが、直前期には気力・体力勝負の面が強くなってきます。特に論文式試験は3日間にわたります。年齢が若いほど合格率が高いのには、そういう側面もあると思います。
公認会計士とのダブルライセンスをめざして勉強中
──晴れて合格された今、どんな毎日を過ごしていますか。
滝本 実は、すでに公認会計士(以下、会計士)の勉強を始めています。2020年は短答式試験、2021年に論文式試験を受験し、大学在学中での合格をめざしています。
高橋 鑑定士試験の合格者は、会計士の論文式試験で選択科目である経済学または民法が免除となります。とはいえ、鑑定士試験に合格した直後に次の目標を立てられるとは、立派のひと言ですね。
滝本 人数の少ない鑑定士の世界で、会計士とのダブルライセンスホルダーとなれば、ますます希少性が増します。これから鑑定士として働いていく中で、他の人たちとより差別化できる要素として、挑戦を決めました。もちろん、実務の上でも役に立つと思います。
高橋 他にも大学生のうちにやっておきたいことはありますか。
滝本 資格の勉強だけで終えるのもさびしいので、英語をビジネスで即戦力になるレベルで話せるようになりたいです。海外留学もしてみたいですね。
──鑑定士としての今後の夢を教えてください。
滝本 不動産鑑定事務所や監査法人に就職して、鑑定と監査がしっかりできるよう実務経験を積み、将来は独立したいと考えています。
高橋 昔は、資格を取得したらすぐ独立という流れが主流でしたが、近年は、鑑定士の資格取得をめざす方のうち、特に若い方についてはあまり独立志向はなく、鑑定事務所で経験を積んだあと、他の大手鑑定事務所や国内外の金融機関、アセットマネジメント会社などへの転職を希望するといったケースが多いです。ですからこの若さで、合格時点ですでに独立を見据えているのは、新鮮に感じます。
滝本 他にも、さまざまな世界を見たいので、機会があれば海外での鑑定評価も行ってみたいです。
──ご自身が10代で資格取得をめざされた経験から、学生で「こんな人は鑑定士に向いている」と思われる点がありましたら教えてください。
滝本 鑑定士は、国内はもとより場合によっては海外でも不動産の鑑定評価やコンサルティングの仕事があるのが魅力のひとつです。僕自身がそうであるように、学生で旅が好きだという方は、将来の職業候補の中に加えてみてはいかがでしょうか。
高橋 早期での資格取得という観点からつけ加えるなら、鑑定士試験に大学2年生または3年生までに合格しておけば、金融系や不動産系企業への就職活動において非常に有利です。近年は売り手市場が続いていますが、そこにさらに鑑定士試験合格者という強みを上乗せできます。ちなみに、金融機関や不動産会社に新卒で就職した場合、配属によっては鑑定評価を担当する機会に恵まれないかもしれませんが、先ほど話したキャリアアップのための武器としてこの資格を活かすことは十分可能です。将来、不動産関連の仕事に就きたいと考えている学生の方には、鑑定士に加え、宅地建物取引士の資格取得もおすすめします。
──最後に、現在鑑定士をめざして勉強している方たちに向けて、メッセージをいただけますか。
滝本 長い受験生活を通じて最も重要だと感じたのは、「勉強を生活の一部にする」ということです。鑑定士試験は学校の定期試験と違って、長い間勉強を続けることで、最終的に合格レベルへ達することができます。社会人受験で時間面での制約がある方も多いと思いますが、学習を日常に組み込む努力が必要だと思います。僕も一時期、勉強の時間がなかなかとれない時期もありましたが、それでも、どんな時でも「1日30分は不動産鑑定評価基準を見る」というルールを徹底しました。その結果、鑑定理論を得意科目にできたので、まさに「継続は力なり」だと実感しています。
高橋 滝本さんのお話は、まさに資格試験の勉強の本質を突いています。「勉強しなきゃ」という「試験のためにやらされている意識」ではなく、日々の生活の中で試験勉強をすることが「当たり前」だというふうに前向きにとらえることが、合格までの心の持ちようとしてとても大切だということをすべての受験生に強く認識してほしいですね。
──本日は貴重なお話をありがとうございました。滝本さんのこれからのご活躍を期待しております。
[TACNEWS 2020年4月号|特集]