特集 資格の枠を越えていけ~ベンチャースピリットでキャリアを歩む税理士~
加賀 光義氏
税理士法人大和パートナーズ
税理士
加賀 光義(かが みつよし)
東京都出身。高校卒業後、旅行会社で添乗員として勤務。税理士資格取得後は、複数の大手事務所で10年間実務経験を積む。その後東証一部上場のIT企業へ移籍し、企業内税理士として財務経理を担当。まだ税法が整備されていない最先端のビジネスが日々生まれる業界で、約9年、税務関係の案件に取り組む。2018年7月に独立、税理士法人大和パートナーズ代表社員。
税理士の加賀光義氏は、人との出会いを自らの進化に繋げていける人だ。高校卒業後、旅先で出会った人に誘われて旅行会社の添乗員になり、その後のキャリアを模索する中で知人のひと言をきっかけに税理士資格を取得。経験を積むため勤務した総合会計事務所では、担当した会社の社長に誘われて一部上場の大手IT企業へ入社――。「脱皮」ではなく次々と経験を「装着」してキャリアアップをし続けてきた加賀氏は、独立した今、さらに税理士の枠を越えた仕事をめざしたいという。
勤務税理士、企業内税理士、開業税理士という3つの働き方を経験した加賀氏に、キャリアと資格の関係についてうかがった。
添乗員時代に磨かれたコミュニケーション能力
──今、税理士として活躍されていますが、最初のキャリアは、旅行会社の添乗員からスタートされたそうですね。
加賀 はい。私の場合、大学受験はしたのですが、大学へ行って何をやりたいのか、どんなことを学びたいのか、明確な目標がありませんでした。高校時代から六本木でアルバイトをしたりして大学生のような生活をしていたので、このまま大学に進んだとしても、結局同じような時間を過ごすことになるだけだろうと思ったのです。そこでまずは世界へ出てみようと思い、大学へは行かずにお金をためて1年ほどアジアへ旅に出ました。
その旅の途中でタイに行ったとき、たまたま日本の観光ツアーと一緒になって、添乗員の方と知り合いになりました。現地ガイドがつくツアーだったようで、添乗員の方も時間的に余裕があったのでしょうね、屋台のような町のレストランで話をするうちに「添乗員をやってみないか?」と誘われて、帰国後、その旅行会社に入社して4年ほど添乗員の仕事をしました。
──スカウトがきっかけだったのですね。
加賀 そうなんです。添乗員として働く以上は旅行に関する知識を身につけなければと考えて、途中の2年間は、旅行関係の専門学校に通いながら添乗員の仕事をしていました。旅行会社では、まず国内旅行の添乗を担当しました。添乗員のつく国内旅行というと、お客様は年配者が多いのですが、スケジュール通りに旅程を進めるためには、指示やお願いをしてお客様に動いてもらう必要があります。でもこちらは20歳そこそこの若造、相手は50~60代の年長者ですから、最初は「生意気だ」などとお叱りもいただきました。
その頃の対人経験は非常に勉強になりましたね。今、資産税や遺産相続の案件では、年配のお客様が多くいらっしゃいますが、年配の方とお話をするときにどのように接したらいいかなどは、添乗員時代に培ったノウハウが役立っています。また、税理士というと真面目で固いイメージがあると思うのですが、私は会った人によく「税理士っぽくないね」と言われます。営業力というか、人と話をするのが得意なのは、添乗員をした経験があるからだと思います。「税理士っぽくない」と言われるのは、私としてはうれしいですね。
──税理士をめざしたのはいつ頃からでしょうか。
加賀 21歳から25歳まで4年弱添乗員の仕事をしてみて、「将来的にずっとこの仕事を続けられるのだろうか」という疑問がありました。縁があって旅行の仕事につきましたが、もともと自分は出版やマスコミ関係の仕事を希望していたので、やはり出版関係の仕事に携わりたいという気持ちがあり、添乗員の仕事は辞めることにしました。でも出版社の正社員は簡単になれるものではありませんから、契約社員としていくつかの出版社で経験させてもらっていました。ちょうどその頃、ある方から「どんな仕事をするにしても、簿記の知識はあったほうがいい」と言われたのです。
──その方とは、どのような方だったのですか。
加賀 私の実家は事業をしているのですが、その税金関係をみてくれていた税理士の方です。とても人間味のある方で、プライベートでも飲みに連れて行ってもらったりして非常にかわいがっていただきました。その先生に、「数字の感覚を持っていれば、どんなビジネスをやるにも役立つよ」と言われたのです。「じゃあ試しに」と日商簿記検定に挑戦してみたら、思った以上にすんなりと2級まで合格できて。せっかくだからと、そのまま勉強を続けて1級も取得しました。
その後もその先生に、「日商簿記1級まで取れたのなら、もっと上までめざしてみたら?」とアドバイスを受けました。先生からは税理士の仕事や役割について、特に中小企業に対する税理士の位置づけなどの話をしてもらい、素晴らしい仕事だと思いました。出版社での仕事は、正社員になるのが難しく、正直このまま契約社員でやっていくか悩んでいたこともあったので、「やってみようか」と思ったのが税理士をめざしたきっかけです。
──そこから税理士の勉強を始めたのですね。
加賀 出版社の契約社員を辞めて、勉強に集中することにしました。当時を振り返ると、自分でもよくやったなと思うくらい勉強しましたね。夜は運送会社で仕分けのアルバイトをして、日中はTACへ通って講義を受けていたのですが、仕分けのアルバイトが割と単純作業だったので、仕事をしながら勉強することができました。理論のテキストを縮小コピーして、仕分けをしながら読んでいたのです。暗記はアルバイト中の時間を使い、計算問題は昼間に集中してやる。それができたから3年で合格できたのだと思います。
──昼も夜も勉強とは、大変な集中力ですね。
加賀 特に数字や計算が得意だったわけでもないのですが、勉強に対して苦手意識は感じませんでしたね。簿記というしくみの中では、企業の取引はすべて数字で表せる。そういう「簿記のしくみ」そのものが非常に素晴らしいと思いました。興味を持って勉強に入っていけたということは、試験勉強をする上で大きかったと思います。
日商簿記1級を取得してから税理士試験の勉強を始めたので、ベースとなる知識はありましたから、TACでは短期で合格をめざす速修のコースを受講しました。1年目は簿記論、財務諸表論、相続税法の3科目を受験して、財務諸表論だけ合格しました。2年目は簿記論、相続税法に加えて法人税法を受験して、相続税法と法人税法に合格。3年目に簿記論と所得税法に合格して、5科目合格できたのが29歳の時です。
キャリアの方向を見定めるため勤務税理士に
──資格取得後は、複数の事務所で働いていますね。
加賀 会計事務所にはそれぞれ、法人税や相続税など得意分野があります。まずはいろいろな分野の仕事を経験してどのような仕事かを知った上で、自分がどの分野でやっていくのか見定めたいと考えたのです。
最初に入所したのは、弁護士と税理士が一緒になっていた法律税務事務所です。現在は税理士事務所と弁護士事務所に分かれたようですが、都内有数の大きな事務所でした。そこではハウスメーカーと契約して、電話相談の仕事をしていました。ハウスメーカーの営業マンの方からいただく、不動産を取得した際にかかる税金についての質問に答える仕事ですね。譲渡所得や相続の仕事も多かったので、資産税の案件を多く経験しました。
その事務所では2年程勤めさせていただきましたが、資産税をもう少し深掘りしてみたいと思ったので、今度は大手公認会計士事務所へ入りました。この事務所はクライアントに法人が多かったので、法人案件を経験できました。ここには4、5年いたでしょうか。それからSPC(特別目的会社)の活用にも興味があったので、REIT(不動産投資信託)などの実績が多い総合事務所へ移り、3年弱働かせてもらいました。その後、知り合いから話をもらって、総合会計事務所へ移りました。この事務所で私が担当したのが、東証一部上場のIT企業の社長でした。この社長個人の顧問税理士を担当している時に、社長から直接「うちへ来ないか?」とお誘いをいただいたのです。
──社長直々のヘッドハンティングですか。
加賀 ちょうど私も税理士として複数の事務所で10年ほど勤めてきて、ひと通り実務を経験した実感があり次のステップを考えていたタイミングでした。今後税理士としてやっていく上で、一度クライアントの立場に立ってみるのもいいと思いましたね。これまで税理士として企業をサポートする立場で仕事をしてきたので、逆にサービスを受ける側を経験するというのもプラスになるだろうと。それに、東証一部上場という大きな企業ですから、企業情報開示関係、特に有価証券報告書をやってみたいという希望がありました。
企業内税理士として最先端ビジネスの税務に触れる
──IT企業ではどのような仕事をしたのですか。
加賀 入社したのは、インターネット上の決済代行システムを提供する会社です。ネットショップやECサイトがそれぞれ個々のクレジットカード会社と契約しなくても、うちと契約すれば多種類のカードでの決済が可能になりますよ、というものです。決済手段だけでなく、カードの売上を集計したデータをそのまま会計処理に使えるようにするなど、ある意味フィンテック(IT技術を使った金融サービスの創出)のひとつと考えていいかもしれません。
メインはインターネット上のクレジットカード決済ですが、電子マネーやコード決済など、次々現れる新しい決済手段を使ってどのようなサービスが提供できそうか、会社としては日々新しいサービスを考えるのです。今までになかったサービスを提供するにあたっては、法的に問題がないか、会計上はどうか、税務上の問題はないかなどを検討しなければならないのですが、その中で税務上のことについて、私が担当して検討していました。
──前例のないビジネスの税務処理を検討するのは大変だったのではないですか。
加賀 日本でまだ行われたことのないような取引については当然、税法上の規定がされていません。そうした取引をどのように処理すればいいのかということを国税局とやり取りするのです。税法の基本的な考え方に則って「このような処理が妥当なのではないか」という検討を国税局に出向いて行うのですが、1件の取引について、結論が出るまでに数ヵ月かかることもありましたね。インターネットの決済分野にはまだまだやれることがあって、会社もすごい勢いで成長し続けています。そうした最先端の企業を、企業内税理士として税務の面からサポートできたのは良い経験でした。
──事務所で勤務税理士として働くのと、会社の中で企業内税理士として働くのとでは、やはり働き方や知識の使い方などに違いがありましたか。
加賀 全く違いましたね。事務所に勤務する場合は、一匹狼というか、基本的には自分ひとりでクライアントを担当して仕事を進めていきます。税理士という資格を持って、専門家の立場でクライアントに接し業務を行いますから、ある意味自己完結する部分が多いのです。一方企業内税理士の場合は、組織の中で財務経理という役割を与えられて、チームの一員として目標に向かい、仕事を進めていくことになります。
税法に対するトーンにも違いがありました。上場企業は、決算書を監査法人に承認してもらう必要があるので、まずは会計ありきです。ですから税務については、問題があれば申告書で調整すればいいという形で、どちらかというと後回しでしたね。
それでも企業内税理士の仕事がおもしろかったのは、先にも言ったように、日々新しい取引が生まれていて、その取引に対して税務がどう関わっていくのか、最先端の現場で触れることができたからです。そして、やりたかった企業情報開示関係、有価証券報告書の作成業務も経験できました。このIT企業には9年ほど在籍したのですが、最後の年にはIFRS(国際財務報告基準)の導入プロジェクトも担当させてもらいました。
有資格者のメリットを最大限に活かすため法人を設立
──企業内税理士として活躍されていた中、独立を決めたのはなぜでしょうか。
加賀 理由のひとつは「二足のわらじ生活」が限界になっていたことです。実はIT企業の社長に誘っていただいたとき、すでに税理士としてクライアントを持っていたので、その仕事は続けたいと言いました。就業規則では副業禁止だったのですが、「業務に支障のない範囲であれば」ということで、特例として個人的に税理士の仕事を副業としてやることを認めてもらったのです。クライアントの中には法人のお客様もいましたが、メインは個人のお客様で、相続案件も年に5~6件ほど行っていました。昼間は普通に会社勤めをしながら税理士業務をやるとなると、土日や休日を使うことになります。まさに休む暇もない状態ですね。そんな状態が9年続いて、今後どうしようかと考えたときに、もう一度実務家として働きたいという結論に至りました。
サラリーマンとして組織に属して、今後どのようなビジョンが描けるかについても考えました。でも、会社に残って出世していくという道もあると思いますが、上場企業ではまず会計があって、その次に税務があるという位置づけですから、私にとってはやはり税務は脇役というイメージがありました。もちろん税理士として活躍の場はあるのですが、主役ではないと感じていたのです。自分はひとりの税理士として、自信と責任を持ってアピールできるような仕事をしていきたいと思いました。
9年勤めた会社で、居心地もよかったのですが、自分でいろいろ考えて動きたいという気持ちが次第に強くなっていったのです。せっかく努力して税理士の資格を取ったのだから、組織の一員として知識を活かすだけでなく、その資格や知識を最大限に活かせる仕事がしたい。自分の性格上、やはり組織の中に納まるタイプではなかったのだと思います(笑)。
──どのようなタイミングで独立したのですか。
加賀 独立を考え始めた頃、大和不動産鑑定株式会社(以下、大和不動産鑑定)の方と知り合うきっかけがありました。大和不動産鑑定は、不動産の鑑定業務分野では最大手の一画を占める企業です。建築士や不動産のスペシャリストを数多く擁しているのですが、税務関係に関してはグループ内で対応しきれていないという課題があって、一緒に仕事ができる税理士を探していました。そこで「一緒にやりませんか?」ということになって、独立を決めたのです。
2018年3月にIT企業を辞めて、7月には大和不動産鑑定と全面提携した「税理士法人大和パートナーズ」を設立しました。
──具体的にどのような業務を行っているのでしょうか。
加賀 ひとつには、大和不動産鑑定との提携業務があります。大和不動産鑑定は、各種不動産の鑑定業務をする会社ですが、中でもREIT(不動産投資信託)をメインにしています。不動産を証券化する際には、不動産鑑定士が不動産の価値を評価しなければならないのです。大和不動産鑑定のお客様の多くは法人で、大手不動産会社やデベロッパーなどですね。大和パートナーズでは、そういった法人からの不動産に関する税務上の問い合わせや相談に対応しています。その他、大和不動産鑑定の周辺で不動産を売買する方がいれば、紹介してもらうという形でサポートしていただいています。ただ大和不動産鑑定のクライアントの多くは超大手企業なので、そこから個人の案件に繋がるということはそう多くありません。
そして大和パートナーズは現在、税理士や公認会計士、不動産鑑定士の有資格者で構成されていて、大和不動産鑑定との提携業務のほかに、税理士法人の業務も行っています。提携業務はこれからもしっかり行いますが、そこに頼り続けるようではいけないので、税理士法人としてきちんと事業を拡大していきたいと思っています。そのためにはBtoBもやりながら、BtoCのクライアントをもっと増やしていきたいと考えています。その実現に向けて、今いくつか取り組んでいるところです。
──どのような取り組みでしょうか。
加賀 いくつかのプロジェクトを同時進行しているのですが、そのひとつに、士業のネットワーク作りがあります。弁護士や司法書士、税理士など、士業にも種類がありますが、それぞれ独占業務が異なる上に、得意とする専門分野も違います。士業の方は、異業種交流会などで他の士業の方と知り合って、クライアントに自分の守備範囲では解決できない問題が起きた時などに連携して仕事をしたり、紹介したりということをよくしていますが、そう都合良く好適な相手に会えるとは限りませんよね。ですから士業の方をつなげるシステムが構築できれば便利だと考えています。
実際に、法人、個人を問わず、今抱えている問題を誰に相談すればいいのかわからないというケースや、問題が多岐に渡るケースなどはあると思います。そのようなケースに受け皿として対応するため、問題解決のためのプラットフォームとして「Speciality+(スペシャリティ・プラス)」という士業ネットワークを構築し、サービス提供をスタートさせました。「Speciality+(スペシャリティ・プラス)」の名称には、それぞれが専門性を活かし、新たに付加価値を創造する、そして士業としての専門知識に捉われない、専門知識プラスアルファのサービスを提供していきたいとの思いを込めています。例えば「終活」に関することを包括的にサポートするサービスでは、士業のネットワークだけでなく、葬儀会社やケアマネージャー、終活ネットサービスベンチャーなども加えた形でのプロジェクトチームを構成し、サービス提供をする予定でいます。税理士の守備範囲である相続だけでなく、「終活」をトータルで考えるようなことをしていきたいですね。こうした取り組みは事務所の売上に即効性はないかもしれませんが、現状としていろいろな方が困っていること、求めていることのお手伝いをすることで、将来的に仕事へつながっていくと思っています。
ベンチャースピリットで仕事を創り出していく
──税理士の枠を越えた事務所になりそうですね。
加賀 AI化が進んでいけば、士業の仕事はいずれなくなるとも言われています。あと数年で消えてしまうようなことはないでしょうが、作業的な部分で税理士の手を離れる業務は出てくるでしょうね。ただ、コンサルティングの部分は人間の仕事ですから、作業的な部分はAIを使いより効率的に業務をこなせるシステムを作り、コンサルティングに十分な時間を使えるような方向にしていけばいいと思います。実務家としての税理士の仕事はひとつの柱として続けていきますが、今後は税理士という立場を活かし、起業家的なスタンスで仕事をしていきたいと思っています。幸いなことに、IT企業に長くいたので、ITという視点から考えられることはたくさんあります。また、最近では税理士と直接関係はありませんが、大手携帯キャリアと新しいサービスの可能性を検討したりと、税理士の枠を越えた新しい取り組みにもチャレンジしています。いろいろやっていて時間がなく、自分ではほとんど税理士としての仕事はしてないですね(笑)。
また、折々に良い方とのご縁があって、今の自分があります。だから今後は、自分が誰かのきっかけになれるようなことができればとも思っています。例えば、女性の活用ですね。税理士の資格を持っていて実務経験もあるけれど、結婚して子育てなどのために働きたくても働けないという女性たちがいます。こうした熱意もあって優秀な女性の方々に活躍していただける場を提供し、短時間でもいいので継続して働いてもらえるような制度を整えていきたいですね。
──本当にいろいろなことをしていますね。
加賀 昼間はほぼ事務所にいません(笑)。勤務時代の先輩税理士からは「まず人と会うことが大事」と教わりました。昨年7月に事務所を設立してから、千人くらいの方々と名刺交換をしています。税理士の仕事はウェブでの集客が難しいと言われていますが、もちろんウェブの強みもわかりますから、インターネットやSNSを活用しながら、自分の足でも稼ぐ。人と会うという手段には、絶対的な強さがあると思います。士業ネットワークにしても、中身のある有益なネットワークにするためには、まず仕事を取ってこないといけませんよね。ありがたいことに、業務提携している大和不動産鑑定は、業界では名前を知らない人のない大手ですから、そのネームバリューを活用させていただいて、大企業ではできない仕事のチャネルを作っているところです。
──税理士としていろいろな働き方をしてきた先輩として、税理士をめざす方々へメッセージをお願いします。
加賀 資格があれば、学歴がなくても税理士として企業の社長と対等に話ができます。これは一般のサラリーマンに置き換えて考えてみると、すごいことですよね。また、資格は就職や転職の際のひとつの基準として評価してもらえるメリットもあります。一方で、この業界には資格はなくても実務に精通している優秀な人も大勢います。ですから、資格をただの飾りものにすることなく、資格をどう活かすか、資格を使ってどのようなことを成し遂げたいかを考えて実行していくことが大事です。税務の実務経験が豊富な方も、資格がなければ独立することはできませんから、より柔軟な働き方をしたいのであれば、経験の裏付けとなる税理士資格があると強いですよね。
あとは自分の性格に合った働き方を選択することですね。自分で新しいことをしたいタイプの方にとっては、組織は窮屈かもしれませんが、安定を求めるなら組織に入って活躍するのがいいでしょう。自己完結的に仕事をするなら勤務税理士、チームプロジェクトが好きなら企業内税理士などという選択もあると思います。
私は勤務税理士、企業内税理士を経て、最終的に独立開業する道を選びましたが、いろいろな立場で働いている方とお会いして、仕事の話に限らず、たくさん話をする中で、新しいアイディアの種が生まれていると感じています。皆さんもぜひ、資格を活かして自分に合った働き方を見つけてみてください。
[TACNEWS 2019年6月号|特集]