特集
司法書士に転身した元フリーターの軌跡
〜自分を信じて、努力を重ねる〜
鶴見 英司氏
鶴見司法書士事務所
司法書士
鶴見 英司(つるみ えいじ)氏
1980年4月生まれ。茨城県出身。東京司法書士会所属、簡裁訴訟代理等関係業務認定会員。
内装職人を経て、27歳から司法書士をめざし勉強を始める。平成22年度司法書士試験合格後、内の司法書士法人に勤務。不動産登記業務を中心に、商業登記、相続登記等の登記業務を数多く担当する。平成25年6月に独立、東京・赤羽にて鶴見司法書士事務所開業。現在相続手続き、会社設立の専門家として活躍中。
フリーターから内装職人、司法書士へと華麗なる転身を遂げた鶴見英司さん。司法書士試験合格後、都内の司法書士法人勤務を経て、平成25年に独立開業。現在は相続手続き、会社設立の専門家として活躍中だ。資格や法律とはまったくかかわりのない人生を送ってきた彼が、なぜ司法書士をめざすことになったのか。受験時代の苦労や挫折、司法書士としての仕事のやりがい、今後の展望などを率直に語ってもらった。
フリーターのバンドマンが夢と志を胸に、内装・施工会社へ就職
──鶴見さんが前職の内装職人になるまでの経緯を教えてください。
鶴見 高校卒業まで地元の茨城県で育ちました。小学校、中学校、高校と公立の学校に通い、高校卒業後に上京。高校時代にロックバンドを組んでドラムをやっていたので、音楽に携わる仕事に就けたらと思い、音響・レコーディングエンジニアを育成する専門学校に2年間通いました。専門学校を卒業したのち、音楽スタジオで約1年間アルバイト。その後、清掃用品の配達員、居酒屋スタッフ、電気工事や足場組立解体の職人など、23歳までフリーター生活を送りました。
フリーターをしながらバンド活動を続けていましたが、あくまで趣味として楽しんでいて、プロになろうという気持ちはありませんでした。バンドもフリーターも楽しいから続けていたところがあり、自分の人生について真剣に考えることはなく、行き当たりばったりやってきたように思います。そしてフリーター3年目、23歳のときに内装・施工会社に就職をしました。
──フリーター生活から一転して、内装・施工会社に就職したのはなぜですか。
鶴見 バンドを完全に辞めてきちんと働きたいと考えたからです。短い期間でしたが、フリーターの時期に電気工事や足場組立解体の仕事を経験して楽しかったので、ハローワークに通い、内装業の求人を探しました。また内装業は独立する人も多いと聞いていたので、経験を積んでいつか開業することも思い描いていました。
初めて就職したのは、職人を約40人抱える比較的大きな規模の会社で、親方の下で内装工事のノウハウを学びました。親方は怒鳴ったり殴ったりするような厳しい人ではなく、とても優しく丁寧に仕事を教えてくれました。クロスを壁に貼ったりクッションフロアシートを床に貼ったり、内装仕上工として2年ほど修行。その後そこから独立した人について行き、小規模の会社でさらに2年間内装の仕事を続けました。
──合わせて4年間続けた内装の仕事はいかがでしたか。
鶴見 石膏ボードの上にクロスを貼って、壁が真っ白な状態になるとすごくきれいでうっとりします。仕事に対して達成感や満足感がありましたね。
職人の世界は知識や技術の個人差が激しく、上手い人もいれば下手な人もいます。技術的に未熟な職人がクロスを貼ると、壁の角の部分に空気が入ったり、クロスの下に異物が入ったりしてしまうので、自分がクロスをきれいに貼れたときは、気持ちがいいな、職人って素晴らしい仕事だな、と感じていました。
さすがに今はクロスをきれいに貼る自信はないですが、司法書士事務所を開業したときには事務所の床をクッションフロアにDIYしましたよ。カッターを使ってやったので、ちょっとボコボコしているところもあるけれど、自分の手でものを作ることは今でも好きです。
独立か転職か、27歳からの挑戦 行政書士試験失敗から司法書士へ
──独立を視野に入れて働いていた内装の仕事を辞め、司法書士をめざしたきっかけを教えてください。
鶴見 内装職人の仕事はとても楽しく自分に向いていると感じていましたが、本音ではもう少し金銭的な報酬がほしいと思っていました。今は職人が不足していて仕事の単価もずいぶん高くなったようですが、自分が4年間の経験を積んで独立を考えていた時期にはそうでもなかったのです。独立して開業した先輩を見ていても収入面で苦労しているのが見てとれたので、将来を見据えて転職しようという大きな決断をしました。
当時はどうしても司法書士になりたかったわけではなく、何か資格を取りたいと漠然と考えていた程度でした。正直どの資格でもよかったのですが、私は大学を卒業していないので資格によっては受験要件に満たないものもあって。例えば、税理士だったら試験を受けるにあたって一定の学歴や資格などが求められます。でも司法書士と行政書士は、学歴や経験に関係なく誰でも資格試験が受けられます。簡単にはいかないかもしれないけれど、しっかり勉強して結果を出せばいいのだとポジティブに捉えましたね。
──なぜ、行政書士ではなく司法書士に?
鶴見 最初は行政書士試験を受けました。司法書士試験より簡単だろうと思って勉強を始めたのですが、行政書士試験には一般知識問題があったのです。これまで真面目に勉強をしてこなかったのと新聞を読む
習慣もなかったので、自分には知識の積み上げがまったくありませんでした。
耳慣れない言葉ばかりで苦手意識を持ってしまったのと、行政書士試験の勉強をしていたのが内装の仕事をしながらの半年間だけだったので、予想通り初めての受験は不合格という結果に終わりました。
──それでも諦めずに、今度は司法書士試験に挑戦したのがすごいですね。
鶴見 行政書士試験の勉強をする中で一般知識問題には苦戦しましたが、民法や会社法といったものはおもしろいと感じて、スラスラ頭に入りました。それならば同じ法律系資格の試験でも一般知識問題がない司法書士試験のほうが合格できるかなと考えて切り替えましたね。
それからは内装の仕事を辞めて茨城の実家に戻りました。27歳のときです。家賃も払わず、食事だけ親のお世話になって司法書士試験の勉強に専念。若い時に土地家屋調査士の事務所で働いたことのある母親には、「司法書士になるって、そんな簡単なことじゃないわよ」と半ば呆れられましたが、勉強に励む姿を見せていく中で、最終的には両親共に応援してくれたように思います。
長野の宿泊施設に引きこもった2年間 自分を追い込むことで集中力を高めた
──司法書士試験の勉強はどのようにされていましたか。
鶴見 1年目、2年目とも通信講座を利用して勉強しました。通学ではなく通信講座を選んだ理由は、実家の近くには校舎がなかったから。片道2時間以上かけて通学するのは、自分にとっては時間もお金も無駄だと思いました。
自宅でテキストを何回も読み、DVD教材も視聴して、過去問に繰り返し取り組んで臨んだ初めての司法書士試験。結果は惨敗でした。遊んでいた感覚はなかったのですが、今振り返ってみるとテレビを見たり、たまに地元の友達と飲みに出かけたり、まだ本気を出していなかったように思います。
──受験に失敗してしまったわけですが、どのようにして気持ちを切り替えて勉強を再開したのですか。
鶴見 司法書士試験は毎年夏に行われるので、受験が終わったらすぐ、夏休みの短期間で働ける住み込みのリゾートアルバイトをしていました。1年分の学費を稼ぐためでしたが、いったん受験勉強から離れることで心身ともにリフレッシュでき、再受験するためのやる気も出ました。
そのリゾートアルバイトが終わったら、気持ちを切り替えて勉強を再開。よく行っていた宿泊施設が長野県にあり、2年目からはそこにこもって勉強することにしました。受験に失敗した理由を自分なりに分析した結果、もちろん勉強が足りなかった部分もありますが、まわりに友達がいない環境に身を置くことで、より集中して勉強に打ち込めると考えたからです。
──1年間缶詰状態で受験勉強をしたのですね。ひとりの生活は辛くなかったですか。
鶴見 2年目の受験も失敗し、3回目の試験で合格したので、正確にはトータル2年間長野の宿泊施設にこもったことになります。自分がやりたいことをやっている時間なので、全然辛くなかったですね。むしろ引きこもるのが好きで、楽しかったぐらい。
長野での生活は毎朝6時に起床し、朝食を済ませたら40分くらい近所をジョギング。ずっと室内にいて勉強をしているだけなので、運動を取り入れたほうがいいだろうと自分で決めました。適度な運動をすることで脳も活性化し、勉強の効率もぐっと上がったように思います。
ジョギングから戻って9時頃から勉強をスタートし、夜の9時ぐらいまでひたすら机に向かう毎日。朝から晩まで一日中ジャージで過ごし、髪の毛も坊主刈にしていたので仙人修行のようでした。携帯電話を持っていましたが山奥で電波が悪かったので、誰かと会話することもありません。そのような生活のなかで、ジョギングは唯一の娯楽だったと思います。
受験での挫折経験を乗り越えた「やればできる」という自信と努力
──受験勉強中のエピソードを教えてください。
鶴見 こもって1年間勉強したにも関わらず、2回目の試験に落ちたときはかなり落ち込みました。これ以上ないというくらい必死に勉強をしたので、すごく悔しかったし、辛かった。試験後の手応えもそれなりにあり、「合格しているかな」とちょっと期待していたので、さすがに心がポキッと折れましたね。
そしてやってきた夏のリゾートアルバイト。山の豊かな緑に包まれ、おいしい空気を吸いながら折れた心を立て直しました。自分が好きで一生懸命やろうと思ったことに対しては、やればできるはず。合格ラインギリギリのところで落ちたので、次は絶対合格すると思い込みました。再び長野の宿泊施設に引きこもり1年後の成功イメージを想像して奮起。ひたすら自分を信じて、来る日も来る日も努力を重ねました。
──この状況において「やればできる」と考えられるのがポジティブですよね。
鶴見 今はだいぶ物事をポジティブに考えられるようになりましたが、高校生からフリーターの時期はネガティブな感情をたくさんもっていたように思います。
中学校ではバレーボールをやっていて、県のMVPプレイヤーに表彰されたことがあるくらい活躍して注目される選手でした。しかし身長にコンプレックスがあったので、高校ではバレーボールを続けずにバンド活動へ移行。その頃からエネルギーが溜まってしまい、自分が何をしていいかわからなくなってしまいました。
専門学校に進学したにも関わらず、ほとんど通っていなかったですね。「何かやればできるのに自分は何をしているのだろう」、そんな心のモヤモヤをずっと抱えて日々の生活を過ごしていました。しかし、この時代の苦い経験があったからこそ、自分の進むべき道が見えたときに迷いなく走り出せたのかもしれません。
20年分の過去問をほとんど暗記“三度目の正直”で司法書士試験合格へ
──3回目の受験で司法書士試験合格。どのような感想をもたれましたか。周りの反応はいかがでしたか。
鶴見 最後の1年間は、絶対に受かると信じて勉強してきたので、試験が終わったときには「受かったな」と自信満々でした。 試験に合格したのは、ちょうど30歳のとき。何年間勉強するとか、何歳まで挑戦するとかは決めていませんでしたが、あのときに落ちていたらもう司法書士の勉強を続けなかったかもしれません。自分としては30歳を過ぎて勉強だけをやっているのはちょっとまずいかな、社会復帰できなくなったら困るな、と思っていたので。
だから、合格できて本当によかった。やりたいことをやるためのたくさんの時間を与えてくれた親には、すごく感謝しています。地元の友達に合格を報告したら、「司法書士の試験って簡単なんだね」と言われましたけど(笑)。
──合格を勝ち取った勉強法とは?
鶴見 とにかく繰り返すことが大事。いろいろなものに手を出すよりも、過去問に繰り返し取り組むことが一番の対策かなと思いますね。私は20年分の過去問を50回以上解きました。50回以上解いても、間違えるのはいつも同じ問題。間違えた問題には印を付けてチェックしていたのですが、30個くらい印が付いていている問題もあって、繰り返し取り組んでいるのを実感しましたね。試験の半年前頃には、問題を見たら一瞬で答えがわかるくらいになり、解答解説の文章まで言えるようになっていました。
資格によっては論文試験などがあるものもありますが、司法書士試験の内容は大半が暗記でクリアできるので、とにかくやればできるはず。ただ、登記申請書を作る書式問題もあって、そこだけは暗記では難しいかもしれませんが、択一式試験で得点を稼ぐにはやっぱり過去問が一番。あとは模擬試験を受けて、実力や弱点を把握しておくことも必要です。
司法書士法人勤務ののち、念願の独立開業 人脈開拓・顧客獲得に励む日々
──司法書士試験合格後に勤務された都内の司法書士法人では、どのような仕事をされていましたか。
鶴見 司法書士の資格をとって初めて勤務したのは支店を各地にもつ司法書士法人。それなりの社員数もいて、債務整理も手広くやっているようなところでした。
約2年半勤め、不動産登記業務を中心に、商業登記、相続登記などの登記業務を数多く担当しました。 これまで法律に携わるような仕事をまったくしてこなかったので、見るもの聞くものすべてが初めてのことばかり。司法書士の資格は持っているけれど、何もできない感じでもどかしかったですね。
──実際に司法書士の仕事を始めてみた感想はいかがでしたか。
鶴見 比較的ルーティンワークな業務内容でしたので、仕事が刺激的で楽しいというより、司法書士ってこういうものなのだなという感じでした。
司法書士をめざしたときから、独立して自分の思うようにやりたいと考えていたので、最初から期間を決めて事務所に入りました。勤めていた2年半の間に、独立開業するためのノウハウはしっかり学んでこられたように思います。
──平成25年6月、東京・赤羽にて独立開業。念願の独立を果たしていかがでしたか。
鶴見 仕事をひとつも引き継がずに独立したので、最初は本当に大変でした。顧客ゼロからのスタートで、開業後半年間は時間を持て余していましたね。
何をしていたかというと、起業家交流会や士業交流会など、元同僚の社会保険労務士の方に誘われて参加したのをきっかけに、ありとあらゆる交流会に参加しました。
そこで名刺交換をして名前と顔を覚えてもらったり、業務内容を伝えたりしました。交流会に行くと、「うちでもこういう交流会やっているからどう?」と誘われることも多く、全部に顔を出していたら、交流会の予定で毎日が埋まっていました。
そんな毎日だったので、お金の面でも苦労することに。
独立前に貯めたお金だけでは足りず、少しだけ開業資金を融資してもらったのですが、毎日交流会に参加しているので出費がかさみ、収入よりも支出のほうが大きくなってしまいました。
独立したのが6月だったのですが、その年の12月には貯金が底をついてしまい、さすがにこれはまずいと思いましたね。夢に見た独立も、わずか半年で廃業かなと。
けれどそれが繁忙期の年末だったおかげで、その頃から仕事をいただけるようになり、ようやく事業が軌道に乗り始めました。
人に感謝されることが仕事のやりがいに ストレスを感じたら柔術で発散
──事務所を構え一国一城の主となったわけですが、司法書士の仕事のどのような点にやりがいを 感じていますか。
鶴見 もっと稼ぎたいという理由だけで、内装職人から司法書士に転職しましたが、独立開業してみて、仕事のやりがいはお金だけではなかったと気づきました。
開業すると、依頼者の方から感謝の言葉を直にいただけることも増え、そこに仕事のやりがいを感じています。人に感謝されるのは気持ちがいいもので、独立してからのほうが司法書士になってよかったなと思えました。
またいろいろな人と出会えることにも、楽しさや喜びを感じています。独立せず組織に所属していたら、おそらくこれほど多くの人に出会えなかったと思います。
積極的に交流会に参加したのもそうですが、自分で人脈を開拓して、人とのご縁で事業が広がっていくのは楽しいですね。
──やりがいを感じながら働いていらっしゃると思いますが、現在の業務内容を教えてください。
鶴見 業務内容は、不動産登記、商業登記、相続手続のほか、外国籍の方向けの渉外登記、判断能力が不十分な方を支援する成年後見、裁判書類作成などがあげられます。そのなかでも、不動産登記と商業登記、成年後見の3つが同じぐらいの割合で多いですね。
事務所を構える北区は、高齢者が多いわりに司法書士の会員数が少ないと思います。ですから成年後見の案件も結構回ってきます。成年後見の仕事は前にいた事務所でもやっていなかったので、自分で勉強しながら対応しています。高齢化社会に向けて、今後ますます増えていく業務だと思います。
──お忙しい毎日を送られていますが、仕事をしていて大変だと感じることはありますか。
鶴見 事務作業を手伝ってくれるパート職員の方が3名いますが、有資格者は私しかいないので、基本的には自分で仕事をとってきて、自分で処理しなければなりません。大変だなと感じることもありますね。
また、独立開業して2年経ったときに結婚をして今は1歳2ヵ月の息子がいます。親バカになるほどかわいいですね!妻も働いているので子育てや家事を手伝ってあげたいと思いますし、息子との時間もなるべくもちたいと考えているので、仕事がなかなか終わらずに帰れないときはストレスを感じますね(笑)。
──仕事のストレスはどのように解消していますか。
鶴見 2年前から柔術を始めたのですが、これがすごく楽しくて良いストレス解消になっています。週に2、3回スクールに通って練習に励んでいます。試合に出るときは息子を連れていくと、喜んで見ていますね(笑)。
仕事以外に打ち込めるものがあると、もっと仕事を頑張ろうと思えます。だから仕事が終わらずにイライラしてしまうときは、いさぎよく切り上げて気分転換をしたほうがよいかもしれませんね。
従業員10人弱の事務所経営が理想 司法書士を軸に仕事の幅を広げたい
──開業5周年を迎えましたが、今後の事務所の方向性を教えてください。
鶴見 自分がいなくても事務所がまわるような形にしたいので、もう少し人を増したいと考えています。理想は10人弱ぐらいの事務所にして自分は営業活動に専念したいですね。
その理想に近づけるために、まず司法書士有資格者を入れたほうがいいのか、パート職員を増やしたほうがいいのか、すごく悩みます。 今のように司法書士がひとりだときついけれど、パート職員を増やすとなるともっと仕事をとってこないといけません。人が先か仕事が先かわかりませんが、そこはバランスよく少しずつ様子を見ていくしかないと思っています。
矛盾してしまいますが、いまだに登記書類を作るのが楽しいと感じる部分もあります。人を増やして事務所がまわるようにしたいと思う一方で、いつまでも現場に立っていたい気持ちもどこかにあるのだと思います。
だからまだ事務所拡大に踏み切れないのかもしれませんね(笑)。
──この先、司法書士以外にやってみたいと思う仕事や取りたい資格はありますか。
鶴見 司法書士の資格は、自分が努力して手にした資格なので、あえてこれを活かせない仕事を選ぶ必要はないと思っています。ただ、司法書士の業務だけで一生やっていくという強い気持ちはないですね。司法書士はあくまで仕事をやっていくためのひとつの手段にしかすぎないので、この資格を活かしながら、チャンスがあれば違う事業もやってみたいと思っています。
昨年、不動産業に興味をもち宅地建物取引士の資格を取得しました。まだ仕事には活かせていませんが、これもまたビジネスを生き抜くためのひとつの武器になればいいですね。
──内装仕上工から司法書士へ。新たな道に進んでよかったと思いますか。
鶴見 司法書士になって本当によかったと思っています。私は大学も卒業していないし、特別な資格も持っていなかったので、それまでは肩書きというものがありませんでした。学歴がすべてではないと思いますが、司法書士の資格は自分が何者なのかを一言で表現してくれるという意味で、肩書きとしてすごくいいです。
お客様を相手にしていても、「司法書士です」と言うと信頼していただけますし、お客様の接し方も違うように感じます。もちろん、自分の気持ちの部分でも違いはあると思いますが。
仕事をしていくうえでも、人生を豊かにする意味でも、肩書きというものは大事かなと思います。
──最後に、資格取得をめざして勉強中の方やこれからスキルアップを考えている方に、メッセージをお願いします。
鶴見 司法書士をめざして勉強しているとき、答練(答案練習会)でひと桁上位の成績をとったことがありました。そのときは、努力した分だけ結果が出たことがすごく嬉しかったです。
高い成果の出せる勉強方法といわれるものもありますが、司法書士試験は「やれば絶対受かる!」と信じて、過去問に繰り返し取り組むのが最も効果的です。あきらめずに頑張ってください。
──本日は貴重なお話をありがとうございました。
[TACNEWS 2018年8月号|特集]